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メトロン星人の本棚コミュのローレライ 異聞

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ローレライ 異聞  
                                                

昭和20年7月29日(日)午後11時

日本帝国海軍「伊-158潜水艦」は太平洋のど真ん中、レイテ島とグアム島、パラオ島と沖縄を結ぶ交差海面に進出していた。 
艦長は橋本以行(もちつら)。特攻兵器「回天」を6機搭載、特攻隊員6名を乗せていた。
太平洋戦争末期、戦局はひっ迫し日本は追いつめられていた。
帝国海軍の象徴「戦艦大和」は沈められ、空母機動部隊もすでになく、特攻機さえ飛ばす燃料に事欠く始末。
かつて世界第三位といわれた帝国海軍は、ほぼ消滅していた。
艦長、橋本は呉軍港を出撃するときの事を思い出していた。
かつて、港内いっぱいに並んだ軍艦は姿を消し、沖からながめる街並みは一面の焼け野原となっている。
同僚の『後から行くぞ!』の声に送られ、出撃する特攻隊員達は必死に涙を耐え、いまだ姿を変えぬ山々の緑を見つめ、いつまでもいつまでも艦橋にたたずんでいた。
日本の将来は絶望的であった。
このまま米軍に本土上陸されればどうなるのか。
勝利の望みのないまま悲惨な陸上殲滅戦になることは必至である。
いかに残された戦力で反撃しようとも、国土と国民は甚大な損害をうけ、国体はもとより歴史も文化もすべてが破壊し尽くされるであろう事は明白であった。
現実の戦闘に目を向ければ、日本の艦艇、飛行機は、もはや通常の方法では敵に近づくことさえ不可能となっている。
日本本土への上陸を少しでも遅らせるためには、もはや特攻しか道はなかったのである。
ことに潜水艦による特攻、人間魚雷『回天』は一撃で敵有力艦艇を撃沈し、戦局を有利に転換する能力を秘めていると思われていた。


月が出てから約一時間、伊-158は海面に浮上した。
待機中の信号員がハッチを開けて真っ先に艦橋に飛び上がる。
水上用の電探も活動を始めた。その直後「艦影らしきもの左、90度!」の叫びが上がった。
橋本艦長は艦橋に飛び上がり遙か彼方に双眼鏡を向ける。
まさしく黒一点、月光に映える海面には敵の姿が認められた、しかもこちらに近寄ってくる。
「潜行!!」
艦長の一声で艦橋にいた全員が艦内に突入。信号長がハッチを閉め「ハッチよし!」と叫ぶ。
「ベント開け!」
艦はたちまち潜行を始めた。この間、一分とかかっていない。すべてが反射的におこなわれた。
完全に潜行状態になると「艦影発見、魚雷戦用意、回天戦用意」と次々に命令が発令される。
ときに午後11時18分。伊-158は敵に向かって進路を取った。
しだいに大きくなる艦影、すでに発射管に注水も終わり6本の魚雷はいつでも発射できる。
しかし依然として敵の正体は不明であった。この海域、味方の艦船ということはありえない。
もしかするとこちらに気づき爆雷攻撃に来る駆逐艦かもしれない。
艦種が不明では距離もわからぬし、聴音器にはいまだ反応はなし。
艦長は魚雷の発射数を6と命じ、同時に回天6号艇と5号艇の準備をさせた。
敵が駆逐艦の場合も考え、爆雷防御の命令も出した。
緊張のまま潜望鏡の影を見つめていると三角の影の頂点が二つに分かれた。
前後に大きなマストが二つあるということだ。さらに二つに分かれたことにより、進路がずれ真上に来る心配がなくなった。
それと同時に艦種の見当もつく。
マストの高さを重巡、戦艦クラスの30メートルと仮定し、距離は4000と見た。
発射時の予想距離約2000、方位右45度と指示する。
聴音機にも敵のスクリュー音が入ってきた。
この時、敵の艦影が月あかりを背景にはっきりと浮かび上がった。
前方に砲塔が2基、大きなマストのある艦橋が見える。
回天搭乗員からはしきりに「発進準備はまだか」との催促が来るが、艦長は魚雷で沈めるつもりだった。
敵は、そうとうな大物だ。しかもこちらに気づいてはいない。まさに千載一遇の好機。

午後11時26分。

敵はまだ気づいてはいない。方位右60度、距離1500と調定を変更、さらに近づいて発射することにした。
息づまる瞬間。
「用意! 撃てっ!」の叫びと共に6本の魚雷は扇状に広がり、敵に向かって突き進んでいった。
艦首を敵と平行に回しながら命中を待つ。
命中まで約一分。その長いこと。
突然、敵艦首の一番砲塔の真横に水柱が上がった、続いてそのすぐ横にもうひとつの水柱があがる。
同時に真っ赤な火柱がマストより高くあがった。さらに3本目が命中。
火柱の数は3つになり、魚雷の爆発音が3つ等間隔で艦内に鳴り響く。
乗員のすべてがおどり上がって喜んだ。
間もなく誘爆音が響いてきた。命中した時の爆発音よりも大きい。潜望鏡で見ると敵艦上にいくつもの閃光が認められた。しかしなかなか沈まない。
回天からは「敵が沈まないなら出してくれ!」と再三言ってくるが、一度出せば収容できないことを思えばそれは出来ない命令だった。
その時、聴音機に敵の探信音が感じられるとの報告が入る。
護衛艦が来たか、艦長は反撃を警戒し、伊-158は速やかに深く潜行した。
魚雷命中から1時間後・・・・
伊-158は再び海面に浮上したが、そこに敵の姿はなかった。
あれは、幻だったのかと思えるほど海面は静まり返り、ただ暗い波のうねりだけが広がっている。
聴音や探信の報告から、敵を撃沈したのは間違いないが、この暗い海面では漂流物を発見することも出来ない。
伊-158は、敵の来襲を警戒し一路進路を北東へと取った。
終戦後、この船が広島、長崎を一瞬にして破壊することになる新兵器「原爆」をテニアン島に届けた、重巡インディアナポリスだった判明する。
まして、伊-158の戦果報告が魔女と異名をとる戦利潜水艦「伊-507」の最後の戦いの始まりになろうとは。
神ならぬ身の知るよしもなかったことであった。



7月30日(月) 午後9時

「艦長、お話があります」
艦長室のドアをノックし入ってきたのは、特攻隊員の林義明(よしあき)一飛曹であった。
先日の重巡撃沈の時、しきりに回天の中から「出撃させてくれ」と懇願してきた隊員である。
なにか腹に一物あるのだろう。橋本は聞いてやろうと思った。
「僭越とは思いますが、ぜひ聞いていただきたくまいりました」
橋本艦長はテーブルを挟んで座るようにすすめた。
林一飛曹の表情は硬く、目は真剣そのもの、全身からにじみ出る緊張がこちらにも伝わってくる。
「先日の出撃ですが、無念でした。無二の好機と思い覚悟を決めておりましたが、なぜ出撃を許可いただけなかったのでしょう」
やはりその話か。橋本は林一飛曹を見つめた。
年はまだ二十歳を過ぎたばかり、少年の面影が残る端整な顔立ちだ。たしか予科練からの入隊組だと聞いていた。
「言ったはずだ。3発の魚雷が命中した以上沈没は目に見えている。もし発射して命中するまでに敵艦が沈没したらどうする。いったん出せば収容はできんのだ。命を粗末にするな」
「しかし、前回27日の戦闘では伴中尉と小森一飛曹が出撃され、見事戦果をあげられました。私は・・・・」
林一飛曹の声がとぎれた。握りしめた拳が小さく震えている。
彼ら予科練上がりにとって敵と戦って散ることは望むところであり、生死は眼中にないのだ。
「貴様の気持ちはわかる、だがなよく考えろ。私の仕事は貴様達の命を無駄に散らすことではない。出来る限り確実な戦機を捕らえ、送り出すことが任務なのだ。敵艦はひとつだけではない。次を待て」
橋本は、そう言いながら自分の言葉の裏にある矛盾に気がついていた。
果たして次があるのかと。

戦前から日本の潜水艦は水上艦艇の劣勢を補うための犠牲にされてきた。
真珠湾以来、潜水艦は艦隊決戦に望み積極的に前線に送り込まれ、敵が待ち受ける死地に真正面から突っ込んでいかねばならなかった。
特に敵が電波探知機を装備し、駆逐艦を使った対潜防御態勢を整えてからは、いたずらに犠牲を増やしていく。
橋本は潜水艦隊長官に進言したことがある。
『飛行機と駆逐艦を中心とする、水上軽快艦艇と共同した対潜掃討作戦に対して、電探も持たない水中速度2ないし3ノットの鈍足で、しかも40時間程度しか連続潜行できない現状の潜水艦の性能では、自滅を待つのみです。ぜひとも作戦の見直しを。せめて電探が各艦に配備されるまで今しばらくの猶予をいただきたい。さもなくば少しの戦果も挙げることなくすべての艦が撃沈されるでしょう』
しかし、潜水艦隊長官は言った。
「戦局はひっ迫しておる。作戦の変更は出来ない。帰らざる艦は皆戦果を上げたものと認めておる」
そう言って断固として作戦の強行を押し通した。
橋本は悔しかった。同期の仲間達は次々と戦死してゆく。
さらに特攻兵器回天の投入である。こんなもので、本当に戦局を挽回することが出来るのか?
橋本には信じられなかった。いたずらに貴重な人命を消耗するだけではないのか。
そう思えてならなかったのだ。

「林一飛曹、君の故郷はどこだ」
橋本は棚から茶碗をふたつ取り出すと出がらしの番茶をゆのみに注いで差し出した。
「まぁ飲め、気を楽にしろ。そんなに緊張ばかりしていると肝心の時に役にたたんぞ」
じっと下を向いて黙り込んでいた林一飛曹の顔があがった。
「は・・・恐縮です」
「俺の故郷は京都だ。小さな神社の神主の息子でな、親に跡を継げと言われるのがイヤで海軍に入った」
ぽつりぽつりと話すうちに林一飛曹の顔が変わった。
憑き物が落ちたような表情になり、湯呑みを手に取ると一息に飲み干した。
「私の故郷は台湾です。台南の第一中学を卒業しました。でも両親が商売に失敗し、戦争も始まったので内地に戻ってきたんです。落ち着いた先は親戚のある福井。兄弟は3人、私が長男で下に弟と妹がいます」
「そうか、ご両親はご健在か」
「はい、でも引き上げ者のうえに借金まで抱え。父は心労がたたって寝込んでしまいました。やっかいになった叔父には迷惑のかけ通しです。借りた納屋に親子5人が寄りそって暮らし、母は朝から晩まで働き通し、私も幼い兄弟もいっしょに農作業を手伝いました。それでも暮らしはよくなりません」
「そうか・・・・」
「そのうち、叔父に召集令状が来ました。うちの父親は起きることも出来ないし、親戚の手前もあって、私は軍に志願したのです」
橋本には彼のおかれた境遇がよく理解できた。きっと叔父が出征したあと、家族が虐められたのだろう。
母や兄弟を置いてゆくわけにはいかないが、軍に入って手柄を立てなければならない彼の立場が痛いほどわかる。
橋本は、つい心にわだかまっていた思いを口にした。
「林一飛曹。貴様にこんな話をすると国賊だと言われかねんが、この戦争は我が国の負けだ。よく考えろ、回天がどれほどあっても、敵の数の方が圧倒的に多い。また回天を前線に運ぶための潜水艦がもうないのだ。精一杯やって、たかだか10や20の戦艦や輸送船を沈めたとて戦局に影響はない。いずれ米軍は本土に上陸するだろう。日本はもってあと半年、いやもっと早いかもしれん。・・・生き残るという道もあるとは思わんか」
突然、林一飛曹が立ち上がった。
「艦長、なんと言うことを・・・私は、私は命など惜しくはありません。自分の事を考えて志願したのではありません。父と母と兄弟達を守るために、それに・・・・それに・・・」言葉が続かない。
「今の艦長のお言葉は聞かなかったことにさせてください。失礼します」
そう言い残すと、林一飛曹は艦長室から飛び出していった。
「無理か・・・・・」
橋本艦長は、ぬるくなった茶を湯呑みに注ぐと、机の上に飾ってある写真を見つめた。
そこには潜水学校で同期だった友人の写真が飾ってある。共に肩を抱き、熱い闘志に燃えていた頃の写真だ。
「絹見真一、『命を粗末にするな』は、おまえの口癖だったな。お互いずいぶんケンカもしたが、まさか俺まで特攻隊員にあんなことを言ってしまうとは・・・教えてくれ俺はどうしたらいい、絹見・・・・」

林一飛曹は自分のベッドに戻ってきた。
頭の中には艦長の声が、いまだに鳴り響いている。
「生き残る道、生き残る、生き残る、生き残る、生き残る、俺が、俺が生きて帰る・・・・・・」
歯を食いしばり必死に、その言葉を頭から振り払おうとする。
大津島の基地で過ごした命がけの訓練期間、死に直面しながらもさわやかな笑顔を絶やさなかった友人達、固く一撃必殺を誓った出陣式。それらを必死に思い出し、平常心を保とうとするが、目覚めた肉体は本能的に死への拒絶反応を示していた。
『死にたくて死んだ特攻隊員はいないのである』
「十死零生」というように、特攻隊員にとって死は、使命を遂行したあとに突然訪れる不可避な事態であった。
死を恐れてはいたが、それに勝る強烈な使命感が死の恐怖を忘れさせてくれた。
隊員ひとりひとりにとって、最も大切なものに尽すことへの満足感が、死を美しいものへと変えていったのかも知れない。
しかし今、その使命感の空しさを艦長が口にした。
貴様が死んでも何も変わらないのだと・・・・・ならば、『回天』はなんのためにあるか!
なぜ俺はここにいるか?
今になって、艦長がなぜそのことを口にするのか。
林一飛曹の脳裏にひとりの女性の姿が浮かびあがってきた。
せわになった叔父の一人娘、女学生の典子の姿である。
叔母や親戚が揃って、邪魔者扱いする中で唯一彼女だけは、家族に優しくしてくれた。
父のために家人の目を盗んで高い薬を届けてくれたこともある。
腹を空かして泣く妹たちにそっと焼き芋を渡してくれたこともある。
なにより彼女の笑顔が、林にとって何ものにも代え難い生きがいになった。
彼女のためなら死んでもいい。彼女がいればあとの心配はない、そう思って志願したのだ。
別れの夜、ささやかな祝宴の後、彼は典子に裏の神社に呼び出された。
そっと守り袋を手渡し、中に自分の写真が入っているといった。
「お願いです。死なないで、生きて帰ってきて」
典子は目にいっぱい涙をためてそう言った。ふたりの気持ちが初めて通じ合った瞬間だった。
それからの事はまるで夢のようだった。ふたりは互いに抱き合い、激しく求めあい、思いを遂げたのだ。
あの時の想い出さえあれば、俺は満足だ。
何の悔いもなし、笑って死んでゆける、そう思っていた。
それが、今になって典子の事が思い出される。あの笑顔、抱きしめた感触、熱い肉体。
林一飛曹は何度も己の頭を殴りつけた。思い出すな、忘れるんだ、忘れるんだと・・・・



8月11日(土) 午前6時30分

テニアン沖で『伊-507』の最後の死闘が繰り広げられていた。
1対40、いや50か。とてつもない戦力差をものともせず伊-507は一直線に突き進んでいた。
雨あられと降り注ぐ新型爆雷『ヘッジホッグ』の弾幕をくぐり抜け、ローレライシステムの急所パウラの心を守るため、信管を外した魚雷で正確に敵艦の舵とプロペラをねらい打つ。
絹見艦長の神業ともいうべき操艦技術と、熟練した乗組員のチームワークがまさに奇跡を起こしていた。
海上を漂うスクラップとなり果てた艦隊の下を、黒い艦影がすり抜けてゆく。
「『シーゴースト』だ・・・・」
目撃した乗組員達は口々に呪いの言葉を口にし十字を切った。
しかし魚雷の数はわずか17本。一撃必殺としても、とても足りる数ではない。
いずれ追いつめられ、撃沈されることは目に見えていた。
やがて海底に突っ込んだ伊-507の目の前にガトー級潜水艦が現れた。
伊-507は『ナーバル』を分離、ナーバルに残された最後の魚雷を使って決戦を挑んだ。
互いの魚雷が交差し、ナーバルから発射された魚雷がガトー級に命中した。
敵潜水艦はひとたまりもなく爆裂、轟沈した。
その後、艦長から発せられた命令は、ナーバルの操縦士征人にとって信じられない言葉だった。
「現時点を持ってナーバルを廃棄する。ナーバル乗員は自力で戦場を脱出し、以後自らの判断によって生存の道を探ること・・・以上だ」
「艦長・・・!!」
征人の叫びを残し、伊-507は最大戦速で原爆を搭載したB-29を撃墜するべく突撃していった。
パウラも泣いていた。いや嗚咽を必死に押し殺していた。
これからは生きるも死ぬもすべて自分の責任。
パウラの命も、伊-507の男達の熱い想いを生かすも殺すも自分の責任。
「くそっ、なにがなんでも生き延びてやる」征人の中に生への情熱がわき上がった。
伊-507のスクリュー音は、もう聞こえない。
ナーバルのモーター音とパウラの息づかいだけが、残された二人を包み込んでいた。
「これより本艇は、絹見艦長の最後の命令を実行に移す。敵影感知、出来るな?」
「・・・・はい」パウラが涙をぬぐい、うなずいた。
「進路上に敵影なし、北東から南南東にかけて敵艦多数接近中」
ナーバルに残された二つの命は、生き残るための戦いを始めた。

コメント(7)

8月14日(日) 午後5時

日本に向かって移動し始めた時点で、艇内に備蓄してあった食糧の総量は6食分。
二人で消費しても節約すれば三日や四日はもたせられる。問題は水の方だった。真水タンクに50リットル近い水を積んでいたが、マリアナ諸島を離れた途端、不意に襲いかかってきた台風によって、そのほとんどを失ってしまった。
闇にまぎれ浮上走行し充電中だったため、潜行して逃れることが出来ず。荒波にもまれ艇が転覆するかと思われるほどの衝撃に耐えるうちに、タンクの弁が開き、水を失ってしまったのだ。
残された水はわずかに5リットル。人体が必要とする水分は一日2リットル。まして30度を超える酷暑の中では汗の量も多くなる。
放っておけば一日で無くなる量の水を切りつめ、極限まで乾きに耐えるうち、二人の肉体は体力と注意力を奪われていった。
乾きの苦痛と疲労、睡眠不足のうえに水に浸かりっぱなしの艇内で体が冷えたのだろう。
征人が体調を崩した。パウラの防水スーツには温度調節機能があるが、征人の潜水服にはそれがないのも原因のひとつだ。
乾きに苦しむパウラの感知範囲もしだいに狭まり50キロも離れた海域に意識を飛ばすと、吐き気や頭痛に襲われるようになった。
それに、敵がすんなりとナーバルをあきらめたとは考えづらく、追っ手がかからないという保証はどこにもない。
さらに本土に近づくにつれ敵の数は増え続けている。
まだ米軍の手のおよんでいない島に逃げ込むことも考えたが、戦況がわからぬ以上戦闘にまきこまれる危険を冒すことはできない。
出来るだけ潜行し、本土までの最短距離を進むしか、生き延びる方法はなかった。


パウラは眠っていた。体中がだるく、疲れが全身を岩のようにこわばらせている。
しかし意識の奥底では、何かが覚醒をうながしていた。
まだ寝ていたいのに・・・・・と思ったのは一瞬だった。
コーンと甲高い探信音が艇内に響き渡る。
パウラはとっさに座席の昇降レバーを倒し、座席が水面下に沈むより早く、艇内に張った海水に両手を差し入れ、開けた感知野に意識を集中した。
敵だ、しかもこちらに向かってくる。
「征人! 起きて」
後部座席に向かって叫ぶ。
「う?あっ・・・・・!」とうめき声がして後部座席に沈み込んでいた征人の上体がはね上がった。
「北東の方角、約10キロに駆逐艦らしき艦影七つ、巡洋艦か護衛空母らしき艦影二つ、そのうちのひとつがこちらに向かってくる」
「見つかったか・・・・?」
「たぶん・・・油断したわ。こんなに近づくまで気がつかないなんて」
「今のナーバルじゃ敵を振り切ることは無理だ、出来るだけ潜降してやり過ごすしかないが、爆雷をくらったら一巻の終わり、こっちには反撃の武器もないからな」
「じっと隠れるしかないのね・・・・」
パウラは振り返り征人を見た。
この数日間で以前より身近になった男の顔を見つめる。
あきらめた表情ではない。
神経を集中しナーバルの操縦に全力を尽くす。
それはすでにパウラが最初に出会った頃の、頼りない同年代の少年の顔ではなかった。
激しい戦闘をくぐり抜け、熱い男達の魂の洗礼をうけた、最後の最後まであきらめない男の顔になっていた。
パウラの口もとに小さな笑みが浮かんだ。
まかせよう、ナーバルの運命も私の命も。
征人といれば心がおちつく。
再びコーンという探信音が響く。さらに近い。敵は間違いなく、こちらに気づいている。
征人はナーバルを限界ギリギリまで潜降させた。ぎしぎしと艦体がきしむ。分厚い水の壁が四方からナーバルを押しつぶそうとしていた。
「これが限界か・・・・・」うめくように征人がつぶやいたとき、パウラが叫んだ。
「潜水艦がいる」
8月14日(日) 午後5時16分

本土に向かって北上中の伊-158は敵を発見した。
艦長橋本は、ただちに魚雷戦を用意、続けて三号艇に回天戦を準備させる。
潜望鏡をあげてよく見ると、敵は15000トン級の護衛空母と巡洋艦らしい。
まわりには駆逐艦の姿もある。その中の一隻がこちらに向かってくる。発見されたかと一瞬肝を冷やしたが、そうではないらしい。
同じ海域を何かを探るかのようにジグザグ運動を繰り返している。
三号艇艇長、林一飛曹に搭乗命令を出す。

「艦長、お世話になりました」
林一飛曹が、すれ違いざま声をかけた。
「行くか」
互いの視線が一瞬絡み合うように交錯したが、それ以上の言葉は必要なかった。
ときに午後5時20分。敵速度、進出方向、時間などを電話で知らせる。
目標はあくまでも敵大型艦だが、駆逐艦に阻まれ爆雷攻撃をうければ、それもかなわぬ。
3号艇は機械を発動、「よし」と電話で報告が来た。
橋本艦長の「発進」の号令のもと3号艇をつなぎ止めていた最後の留め金がはずれた。
「艦長、ありがとうございました」
林一飛曹の最後の言葉は、わずかに震えているようだった。

全長14.75メートル、重量8.3トン、最高速度30ノット、搭載爆薬1.55トン。巨大な戦艦をも一撃で葬ることの出来る破壊力を持つ兵器は、いま自らの意志によって恐るべき凶器となり敵艦に向かっていった。
回天の内部は操縦する以外は身動きがとれないほどの空間しかない。
林一飛曹は全身の神経を集中させ、目前に迫る敵を見つめていた。
脳裏には何も浮かばない。
家族も恋人も、そして自らの意志さえもなく、ただ、機械の一部品としての機能だけが、とぎすまされた攻撃本能によってつき動かされていた。
これは戦争なのだ。
『回天』に乗り組んだ若者達は「行かせられた」のではない。
特攻を「命じられた」のでもない。
皆、自分が今あるべき日本の状況を考え、軍人としての責務を最善を尽くして全うしようと考え、そして行動した。
彼らは精一杯生きていたからこそ、自ら死を選んだとは考えられないだろうか。


「征人、魚雷が来る。大きい・・・特攻兵器よ」
パウラの感知野に突如、現れた大型魚雷は、素晴らしいスピードで一直線に敵護衛空母に向かっていった。
これが征人から聞いた帝国海軍の特攻兵器『回天』、何とか生き延びようと海中で息を潜め隠れているナーバルとは対照的に、猛スピードで敵めがけて突き進む。
誰が乗っているのか。生と死の狭間を、その運命の不思議さをパウラは想った。
その時、ナーバルに向かっていた駆逐艦が突然方向を変え、魚雷の前に立ちふさがった。
回天の目標となった護衛空母を死守するためだ。回天の航跡がまっすぐに駆逐艦へとのびてゆく。
敵駆逐艦もまた、自らの命をかけ味方を守ろうとしたのだ。
閃光、そして大爆発。
回天は駆逐艦の前部砲塔の真下に直撃した。
駆逐艦は真っ二つに折れると見る間に沈んでいった。
爆発的に広がった衝撃波がパウラの感知野をたわませる。
まっ白なエネルギーが頭の中に容赦なく流れ込み、パウラの自我を空白にする。
そして次の瞬間、流れ込んできた無数の声が、まっ白になった頭を埋め尽くした。
「熱い、熱い」
「ママ、助けて」
「神よ」
「腕が、腕が・・・・」
衝撃で五体を引き裂かれ、または全身を火で炙られ、重傷で海中に投げ出された男達の断末魔の声が、パウラの中に押し寄せる。
その味わった痛みを教えようと、脳を、神経を、脊髄をパウラの肉体から引きずり出し、ひとつひとつ焼き尽くし、引き裂いてゆく。
感知野が衰えているはずのパウラにとっても、それは耐えられない痛みだった。
激痛に身をよじり、大声で叫びながら、それでもパウラは感じた。ひとりの若者、征人と同じ日本人の青年の満たされなかった命の声を・・・・
それは痛みを訴える声ではない、深い深い悲しみの声であった。
本当は、生きたかった、生きてもう一度会いたかった。抱きしめたかった。
その強い想いがパウラの中に流れ込んできて、ひとつの言葉となって弾けた。
「のりこ・・・」
パウラは、どこか遠くに征人の呼ぶ声を聞きながら、真っ暗な意識の深淵に沈み込んでいった。

伊-158の艦長橋本は、巨大な水柱と黒煙が立ち上るのを見て合掌した。
乗員皆、粛然とし林一飛曹の冥福を祈る。
翌、8月15日の夕方。
伊-158は、一通の新聞電文をうけとった。
見ればところどころが抜けてはいるが、明らかに終戦の詔勅である。
ただしこのことは帰還するまでは乗組員には知らせなかった。
いまだ戦闘航海の途中であったからである。
8月17日、伊-158は平生特攻基地に帰還する。
「総員集合前部甲板」艦長の命令により全員が集まった。
そこで終戦の詔勅を涙と共に棒読。呆然たる乗組員をあとに橋本は艦をあとにした。
「林一飛曹、すまぬ・・・・・あと一日早ければ」
橋本艦長は、やりきれない想いを胸に目の前に広がる故郷の山河を見つめていた。


昭和32年7月

折笠温子こと、パウラ・A・エブナーは、東京の下町にある病院で女の子を出産した。
パウラは29才、征人は31才になっていた。
体重3400g、まるまると太った血色の良いかわいい赤ちゃんである。
病院のベッドで赤ん坊に母乳をあたえていると、征人が見舞いにやってきた。
「元気そうだな・・・」
征人といっしょに来た、3つになる長男真史(しんじ)が、めずらしそうに赤ちゃんをながめている。
「真史、おまえもおにいちゃんになったんだぞ」
征人が真史の頭をごりごりとなでる。温子はそんなふたりを笑みを浮かべながら見守っていた。

あれからすでに12年の歳月が流れた。
水や食料はもちろん燃料すらも底をついたナーバルは、宮崎の南那珂郡(みなみなかぐん)にある松森岬に漂着した。
燃料を節約し、沿岸を取り巻く米軍の警戒網を回避しつつ、機雷網をくぐり抜け闇にまぎれてようやくたどり着いた後は、ナーバルを一刻も早く処分しなければならなかった。
洞窟に船体を隠し、ローレライシステムを完全に破壊し、キングス弁を抜いて自沈させた後、空腹に耐えかねた二人は早々にその場を後にした。
ナーバルから持ち出した工具や部品を農家で交換し、わずかな現金と食べ物、パウラの衣服に変えた後は、列車に乗って征人の故郷に戻った。
征人の母はすでに亡くなっていた。軍需工場に働きに出て空襲にあったのだという。
誰もいない埃の積もった部屋の中で、肩を振るわせ泣いている征人を見て、パウラも泣いた。
なにかを言わなければならない、自分をあの鋼鉄の暗闇から救い出してくれた男に。
パウラはこの時、折笠温子になる決心をしたのである。
翌朝、二人は朝一番の列車に乗る。自分たちの新しい家を手に入れるために東京に行くことにした。
もう故郷に未練はなかった。
東京についた二人が向かったのは、墨田区にある戦友清水の実家である。
東京大空襲で焼け野原になった墨田区にはバラックが建ち並び、清水の実家もかつての敷地に掘っ建て小屋をたてて清水の両親と兄弟達が肩を寄せ合い暮らしていた。
征人が清水の戦死を告げると、母親は泣き崩れた。パウラと征人が立ち去ろうとすると清水の父親が呼び止めた。
息子の代わりにと、食事を振る舞われ、ぜひ息子の話を聞かせてくれと頼まれた。
故郷に帰ったが働き口も身よりもなく、許嫁を連れて東京に出てきたという征人の嘘に、清水の父親は敷地内に住んでも良いと言ってくれたのだ。
征人とパウラは焼けこげた廃材を拾い集め、小さな小屋を作った。そして職安に通いながら清水の父親の時計店の手伝いをし、パウラは母親を手伝って家事の手ほどきをうけた。
苦しくも幸せな、二人の生活が始まった。
やがて征人は機械いじりの才能が認められ大手時計メーカーに就職することになる。
パウラの身元は闇市の朝鮮人業者にわたりをつけ、須崎温子という少女の戸籍を手に入れた。
当時は戦災で戸籍簿が焼け、隣組単位の自己申告で再登録を受け付けていたのだ。
時代は駆け足で過ぎ去ってゆく。
日々平凡だが、一歩一歩生活の足元を固めてゆく手応えがあった。
昭和26年には朝鮮戦争が勃発し、日本は朝鮮特需にわいた。
征人は工場の宿舎に泊まり込み、パウラは清水家に近いアパートに移り住み、互いに働き通しの毎日を過ごす。
朝鮮特需のさなか、征人が突然結婚を申し込んだ。
給料も上がった、賞与も出た、二間のアパートを借りて一緒に暮らそうと・・・・・
パウラは思わず吹き出した。こっちはとうの昔に決めていたのに、何をいまさら。
昭和27年の暮れ、二人は正式に夫婦になり、パウラは折笠温子になった。
式はあげなかったが仲人をかって出た清水夫婦の好意で、新装なった清水時計店で簡単な披露宴をおこなった。
昭和29年長男、真史(しんじ)誕生。
意外なことに真史の誕生をなにより喜んだのは清水夫妻だった。自分の孫のように慈しんでくれたのである。
そして3年後の昭和32年7月、長女が生まれた。
「名前どうしようか?」
征人が、しげしげと赤ん坊の顔を見ながらたずねる。
開け放した窓からは、蝉の声が聞こえる。風が白いカーテンをゆらゆらと揺らしていた。
「清水のお母さんが、もういくつか考えているらしい。長男はおとうさんが名付け親になったんだから、今度は私の番だって」
「気が早いのね。ゆっくり考えましょ。二人の子ですもの、今度は私達で名付けてもいいと思うの」
母となった温子は以前よりふっくらとした印象になった。
自分が家族を持てるようになるなんて考えても見なかった。少女時代を過ごした悪夢のような『白い家』も今は霧の彼方、遠い出来事のように思える。

「赤ちゃんのようすはどうですか?」
病室に洗面器を抱えた看護婦が入ってきた。
年は温子と同じくらい、すこし細面の白衣の似合う美しい看護婦だった。温子が入院した時に担当になり、以来なにかと細かく面倒を見てくれる。
いまでは温子の良い話し相手だった。
「じゃあ、俺は仕事に戻るから、真史は清水のおかあさんにあずかってもらうよ」
征人が、おかあさん~~と、温子に甘えたがる真史を連れて出ていった。
「良いご主人ですね」
「ええ、仕事ばかりの人ですけど・・・」
「暑いでしょ、まだお風呂には入れませんから、せめて体を拭こうと思って」
そう言いながら看護婦はドアを閉めると、洗面器にタオルを浸し、授乳の終わった温子の体をふき始めた。
「すみません」
「いいんですよ、赤ちゃんを見ていると私も楽しくて、それにこの仕事好きなんです」
「林さん、ですよね。お子さんはいらっしゃるんですか?」
温子は、彼女のことがなんとなく気になった。征人の後ろ姿を見つめる彼女の切ない表情にひかれたのだ。
「ええ、私にも男の子がいます。小学校5年生、今11才になります。うちは父親がいないので、あんなおとうさんがいればいいなって、そう思ったんですよ」
そうなんだ、やはり父親は戦争で亡くなったのだろうか・・・温子は濡れたタオル越しに触れる看護婦の手から、好奇心で感知野を伸ばしていった。

林さん、名前はのりこ・・・・のりこ・・・・
どこかで聞いたことのある名前、のりこ。
その時、稲妻のように記憶が甦り、温子は12年前のあの時の感覚を思い出した。
もしかして、のりこって、この人?
温子は突然、タオルを濡らそうと洗面器の水に手を入れた林看護婦の手を握りしめた。
間違いなかった。彼女こそあの日、駆逐艦に追いつめられ死を待つばかりの征人とパウラを助けた回天の特攻隊員、林一飛曹の恋人だったのだ。
名は知らないが、自分たちを救ってくれた特攻隊員の命日を征人とパウラは覚えていた。そしていつも線香をあげ、絹見艦長や乗組員と共に弔ってきたのである。
林典子、旧姓板倉典子はあの時、林一飛曹の子を身ごもってしまったのだ。
それを知った叔母、典子の母は激怒し、子供を堕ろせと執拗に迫った。
しかし典子はあきらめなかった。
ガンとして堕胎を拒み、17才の少女の身ながら林一飛曹の家族を守って戦った。
やがて、出征した叔父の戦死の連絡が届き、気丈な典子の母も心痛で病の床に伏す。

そして終戦。
しばらくしてから伊-158潜の橋本艦長が林一飛曹の戦死を知らせに来た。
典子は、黙って頭を下げ橋本艦長に礼を言い、遺品を受け取った。
その後、典子の母と林一飛曹の父が相次いでこの世を去る。心痛と戦後の食料不足が重なったのだ。
残された、林一飛曹の母と兄弟、そして典子と赤ん坊(名は林一飛曹と同じ義明と名付けた)、世間の目をはばかるように福井の実家を処分し、東京に出てきたのだ。
典子は看護婦になり、林一飛曹の兄弟達は立派に成人し、典子と共に家計を支えるまでになっていた。

典子は突然手を握りしめ、ぽろぽろと涙をこぼし始めた温子に驚いたが、どうしても話を聞かせて欲しいという言葉に、身の上を語って聞かせた。こんな事を患者に話すのは初めてのことだった。
「私と夫は、あなたのご主人、林さんに命を救われたのです。引き上げの船が襲われたとき特攻隊の回天が戦って敵を沈めてくれました。本当にありがとうございました・・・・」
それは思わず口からでた嘘ではあったが、気持ちは本当だった。
典子も泣いた。
心の夫、ただ一度しか情けを通わすことの出来なかった最愛の人の最期を、見とってくれた人がここにいる。
それだけで良かった。夫の死は無駄死ではなかった、人を救うために死んでいったのだと。
初めて心から納得できたのだった。

後日、改めて征人と温子は、林典子の家をたずね、位牌に手を合わせた。
帰り道、温子は征人に言った。
「赤ちゃんの名前、徳子(のりこ)にしない?」
東京の下町に夕日が沈む。真っ赤な夕焼けが征人と温子を包み込む。
「そうだな、温子の思うとおりにすればいい」
温子はうれしそうにうなずくと、懐かしそうに歌い始めた。
そう、あの「モーツアルトの子守歌」だ。
やっと、子供のために、この歌を歌える時がきた。
生きていることを素直に喜べる時代がきた。
あの時と変わらぬ美しい歌声が、夕焼けの空に吸い込まれていった。


                                                                                 了



あとがき

この作品には、史実が含まれています。
インディアナポリスを撃沈した「イ158」の部分と、回天の乗組員「林義明」さんのくだりです。
橋本艦長、林義明は実在の人物ですが、生い立ちその他は、すべて私の創作です。
この作品を書くにあたって、様々な方に貴重なご意見や資料をいただきました。
ここに改めてお礼を申し上げます。


樋口監督の映画「ローレライ」は自分にとって、感動以外の何ものでもありません。
試写会も含め、三回見に行って三回とも泣けてしまいました。

さらに、この作品を書くにあたって、特攻隊員の手記や資料を調べるうちに、自分の中に大きな疑問が生まれました。
特攻とテロは違うものなのか? 
彼らは何を思い回天に乗り込んだのか?
パウラと征人、林一飛曹と典子の生き様を通して、少しでも当時の特攻隊員の気持ちに近づきたいと書き続けました。
「ローレライ」という作品に出会えた事を感謝いたします。
樋口監督、ありがとうございました。
ごめんなさい。

太平洋戦争については、言葉が見付かりません。

私の母方の祖父も、戦死してるもので。
乗っていた輸送船が沈没したと聞かされております。
この作品は、私にしてはめずらしく太平洋戦記ものです。
「ローレライ」という作品から、強い影響を受け、特攻隊の手記や記録を読み漁り、戦記物を書いているプロの友人からも意見をいただきました。

当時戦っていた方々は、今の自分よりもはるかに若く、しかし強い意志をもっていました。
日本を守るということは、どういうことなのか。
家族や身内の命を守るだけではなく、もっと大きなものを守るために散っていったのではないか。
そう思えてなりません。
平和な今こそ、もう一度改めて、日本人として生きているとは、どういうことか。
きちんと考える機会を、この映画は教えてくれました。

でも「イ-507」カッコいい。
もう一度、ローレライ見よう。

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