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ほぼ日刊『お兄ちゃん』コミュのFC笑っしょい

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完璧な人間など、この世にはいないなんて世迷い言は良く聞くが、ならばあの世にはいるのだろうか。

残念ながらあの世には行ったことがないし、行き方はわかるが、それよりも生き方を考えた方が幾分お利口だと僕は考える。

第一、あの世に『人間』がいるのかどうかも定かではない。
だったら半歩譲って完璧な猿ならばこの世のどこかにいるかもしれない。

そんな事を考えている最中に猿似の友達カンタくんの笑顔が僕の空想にひょっこり顔を出したので、したためようと思う。





******





あれは大学三年生の春。
早い者は就職という渇いた牢獄に入る準備をはじめ
緩い者は蹴職という湿った砂場に足を埋める準備をはじめる。
つまりは中途半端な大人が出来上がる時期だ。

僕が所属していた外国語学部は、文字通り外国の言葉に魅力を感じた人間が集まっている。
ただ、中には外国語になど無関心で遊びほうける輩も少なくなく、体よく言えば語学力と誤学力のバランスの取れたコミュニティーだった。

その日、僕らは授業までの空き時間を溜まり場でもある喫煙所にて、吐き出す煙で輪っかを作ることに一生懸命取り組んでいた。

ふと視線をあげると噂のカンタくんがひとり、こちらに駆け寄ってくるのが輪っか越しに目に入る。
どうしたものかと話かけると、英語のテストがあるのだが持ち込み自由なので電子辞書を貸してほしいと自慢の笑顔で懇願してきた。

ちなみに僕は外国語学部英語学科卒。
カンタくんは外国語学部中国語学科卒である。
今思えば大学四年間でカンタくんが中国語を喋ったところを見たことがない。そもそも日本語ですら不自由な彼に中国語のトークスキルを磨かせようなんて全裸で葬式に参列するくらい無謀なことだから得に気にはしていない。

快くご所望の品を進呈し、お互いに教室に消えた。一時間ほどカーネルサンダース似の教授のありがたい戯事を聞き流し、僕らは決まり事のように体にニコチンを貯蓄すべくあの場所へ足を向け、吐き出す煙で輪っかを作ることに一生懸命取り組んだ。

ふと視線をあげると噂のカンタくんがひとり、こちらに駆け寄ってくるのが輪っか越しに目に入る。
その手には電子辞書がふんわり握られていた。
様子を伺う限りうまくいったようで親友の僕としても鼻が高い。
カンタくんと別れた後、何気なく電子辞書の検索履歴を覗いてみた。

いの一番に調べたであろう単語が目に入る。
そこには[English]と書かれていた。
彼はその日、英語を知った。





******





そんなカンタくんは大のサッカー好きであり
転じて大のフットサル好きである。
『蹴る』という行為が好きな僕も例外なく球蹴りが好きなので、ならばチームを作ってフット猿にでも成り上がろうではないかという話になった。

7〜8人の暇な蹴職野郎達を集め
練習場所を確保し
ユニフォームの色形を決め…
全てにおいて順調極まりなく事が運んでいた。
そこで誰かが気付いた。
チーム名はどこへ行ったのかと。

そう、キムチ鍋にキムチがないとただの鍋。
名前が無ければ色がでない。
皆で意見を出し合いマックでポテトでもつつきながらグダグダ決めようかなんて一人思っていたら、カンタくん曰く既にチーム名は決まっているらしい。
チーム名は【FC笑っしょい】
わっしょいと読むらしい。お祭りごとが好きな僕ららしい名前にカンタくんのネーミングセンスが光る。

そしてその流れのまま各々が背番号の上につける名前は何がいいかという話し合いに発展した。
ある者は生海老アレルギーなので「生海老」
ある者は練習に欠かさず参加するので「皆勤賞」
ある者はいつも申し訳なさそうな顔をしているので「謝罪会見」
またある者は寺の息子なので「師走」
と、速さと正確さと残酷さを兼ね備えた会議により名前が続々と決まっていく。
ちなみにカンタくんは「玉子」に決まった。
王子と書くつもりが間違えて点をつけてしまった、という部分が笑うポイントだそうだ。

後日、ユニフォーム作りをお願いしていたスポーツ店に、チーム名と個人名をユニフォームに入れていただけるようお願いに伺った。
皆で行くのもなんだと言うことで、代表してカンタくんが行くことになったのだが、それがそもそもの間違いだったなんて後悔しても後の祭りである。
お使いから戻ってきたカンタくんからよくわからない発言が飛び出した。

「かっこいいから【笑っしょい】の文字だけ英語にしてきた」

仮にも英語学科の僕ですら即座に【笑っしょい】を英訳するのは不可能である。
ましてや先日までEnglishを英語と訳すことすら知らなかったカンタくんが電子辞書もなしに即座に英訳なんてできるはずもなく、きっとローマ字表記か何かにしたのだろう等とも考えたが【笑SSHOI】なんてかっこ悪いことこの上ない。一体全体どういう仕上がりになっているのか誰もわからないまま、数日が過ぎ、ついにユニフォームが完成した。

出来上がったそのユニフォームの背中には、カンタくんの個性が遺憾なく発揮されたチーム名が輝いていた。


【笑 SHOW WE】


なんじゃこりゃ。
カンタくんは笑っしょいを、その音の響きだけで笑 SHOW WEと英訳してしまったのだ。
文字通り発音すると「ワッショーウィー」である。
ずば抜けた誤学力を見せ付けたカンタくんはひとり、嬉しさのあまりその場でユニフォームを着てはしゃぎまわり、文字通り笑いを私達に見せてくれた。

その後、試合数をこなす私達は、参加する大会全てにおいてギャラリーの笑い者と化していったことは言うまでもない。
背中で笑われていこうじゃないか、と開き直るほか打開策が見つからない。

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