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東京クラシックス読書会コミュの過去の読書会レポート

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このトピックでは、過去の読書会のレポートを順次更新していきます。
過去の読書会の様子を知りたい方は、ぜひご覧ください。

コメント(55)

2013年3月21日(木)19:30〜21:00
■特別企画:「レ・ミゼラブル」を語る会
■参加者:2名(司会・JONYさんをのぞく)
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

今回もいつもどおり、事前に発表した「お題」を軸に進行した。

(1)お気に入りの登場人物とその理由

「レ・ミゼラブル」の魅力のひとつは、言うまでもなく、強烈な個性をもつ登場人物にある。ジャン・バルジャンやジャベール、フォンテーヌといった主役級から、修道女や革命家のような脇役にいたるまで、これほど印象に残る人物造形は滅多にない。本作のような大長編においては、繊細な心理描写などはむしろ邪魔である。思い切って、登場人物の性格を類型化し、それを舞台の上で縦横無尽に活躍させたのは大正解であった。
 参加者の人気投票では、やはりジャン・バルジャンが圧倒的大人気。ジャベール・ファンの司会は肩身が狭い。

(2)「レ・ミゼラブル」がこれほど人気作となった理由

おそらく、「レ・ミゼラブル」ほどに通読されることが少なくて、だが、あらすじや登場人物が知られている作品も珍しい。翻訳はもちろんのこと、縮冊版や簡略版がいくつも出回っているし、ミュージカル化され、また幾度も映画化されている。この人気の秘密は、いったい、どこにあるのか。娯楽作品としての完璧なできばえ(親しみやすい登場人物、緊迫した時代背景、劇的な展開と構成)、豊富なエピソードを含めために単一の筋に回収されない、勧善懲悪的な世界観などの理由が、参加者から挙げられた。


■全体の雰囲気

急なキャンセルなどが重なってしまい、知名度の高い作品の割には、思いのほか参加人数が少ない会となりました。それでも、「レ・ミゼラブル」という作品の底力か、名場面や登場人物をめぐって会話はとても盛り上がりました。しかも、参加者の誰ひとりとして原作の通読経験がないというのが、面白い。原作者ユゴーの筆力はもちろんですが、原作の魅力を伝えるために工夫を重ねてきた、編集者、舞台作家、映画監督たちによってこそ、本作の人気は支えられているのかもしれません。

今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)
2013年6月17日(水)19:30〜21:00
■イェイツ(編)『ケルト妖精物語』
■参加者:5名
■担当司会:れとろ

■内容としては・・・

今回はクラシックスとしては初めて、ゲスト司会をれとろさんにお願いしました。音楽、アニメ、旅行などで耳にする「ケルト」ではありますが、実際にその神話に触れるのは初めてという方がほとんどでした。博識な司会のおかげで、ヨーロッパの中でも独特の位置を占めるケルト文化の特徴が、よくわかりました。特に話題に上ったのは、日本文化との共通性。アニミズム的・多神教的思考は日本人にとっても受け入れやすく、また、よく似た民話があることにも驚きました。

今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)

ps. 読書会中で言及されたイエイツの詩を確認しましたので、興味のある方はどうぞ。



「イニスフリーの島」

ああ、明日にでも行こう、あの島へ
そしてあそこに小屋を立てよう。
 壁は泥土、屋根は草葺きでいい
 豆の畑は畝(うね)を九つ、蜂蜜用の巣はひとつ
その蜂たちの羽音のなかで独り暮そう。

ああ、あそこなら、いつかは心も安らぐだろう
安らぎはきっと、ゆっくりとくるだろう
 水の滴(したた)りのように、また
 朝靄(もや)から洩れてくる虫の音(ね)のように。
そして夜は深く更けても微(ほの)明るくて
真昼は目もくらむ光にみちて
夕暮れには胸赤き鳥たちの群れ舞うところ。

ああ、明日にでもあの島へゆこう
なぜならいまの僕には、いつも
昼も夜も、あの湖の水の
岸にやさしくくだける音が聞こえるからだ。
 車道を走っていようと
 汚れた歩道に立っていようといつも
あの水の音がいつも
心の奥底のほうに聞こえるからだ。

(加島祥三訳)
2013年8月28日(水)19:30〜21:00
■キケロー『友情について』(岩波文庫)
■参加者:8名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

今回は小説や戯曲ではなく、哲学エッセイとでもいうべきジャンルの読書会となりました。友情論という主題や、わかりやすい語り口とも相まって、多くの参加者に恵まれ、盛り上がった読書会でした。友情を、利益や惰性ではなく、徳高き者に対する愛に発する感情、そして人間本性に根差した関係と定義するキケロ。良く言えばバランス感覚に満ちた、悪く言えば常識的な論旨に不満な参加者も多く、とりわけ「相手を善人か判断してから友人になりなさい」、「相手が反社会的行動をしたら縁を切ってよし」という教えに対して、批判が続出しました。

ただ、僕の目には、なんだかんだ参加者の皆さんはキケロを批判するけど、友人の中に「第二の自己」を見出すのが友情だとするキケロの定義に、案外、すっぽりおさまっているような気も…。もっといろいろな面で皆さんの友情論をうかがいたかったのですが、興味深い主題のせいか、楽しい時間があっという間に過ぎてしまいました。

今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)
2013年9月10日(火)19:30〜21:00
■一周記念特別企画「なぜ古典を読むのか」
■参加者:6名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

今回は一周年記念特別企画ということで、通常の読書会ではなく、「なぜ古典を読むのか」というテーマで語り合いました。題材には、カルヴィーノの同名エッセイを使いましたが、簡潔ながらも要を抑えた文章でした。特に盛り上がったのが、参加者ひとりひとりによる「自分だけの古典」紹介です(下にリストアップしました)。古典というのは単に、それ自体の内容のみならず、読み手の人生とリンクして強烈な化学反応を起こすものなのかな、と改めて感じました。

興味深かったのが、「自分だけの古典」に出会う時期の多くが、高校生前後の時期だということ。やはり思春期だからこそ、その後の性格までも決定してしまうような影響を古典から受けるのでしょうか。そうした繊細な時期に、文学や古典の道案内をする教師の役割というのは、なかなか大きいものなのかもしれません。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)


○紹介された「自分だけの古典」

『聖書』
ドストエフスキー『罪と罰』
エドモン・ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』
司馬遷『史記列伝』
夏目漱石『こころ』
泉鏡花「外科室」
2013年9月26日(木)19:30〜21:00
■モンテーニュ『エセー』
■参加者:6名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

『エセー』を読むとつくづく、本にはそれぞれ、ふさわしい「読むべき速度」があるのだな、と感じさせられます。波乱万丈の長編小説などは、細かい部分など読みとばしてでも、一気呵成に読破するほうが、作品世界をより味わうことができると思います。逆に、『エセー』は毎日、少しずつ読むことで、作者モンテーニュの思考がゆったりと読み手のこころに流れこんできます。読みとばしてしまうと、この独特な薫りは、消えてしまう。

教育・生・哲学・死・嘘・習慣・マナーなど、だれもが日々接する話題をめぐる、モンテーニュのひとり語りに接すると、なにか話したくなる気になってくるから不思議です。モンテーニュによれば、『エセー』は自分自身について、自分自身のために書かれた本とのことですが、その超個人的な作品が、時空をこえて読み手を魅了しつづけている、ある種の普遍性をもちつづけているというのが、面白いところです。


とても好評だったので、今度はまた別の巻を取り上げてみたいです。
ちなみに、必ずあるはずと話題にのぼった「モンテーニュbot」、さっそく見つけました(笑)


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2013年10月12日(土)13:00〜14:30
■オウィディウス『恋愛指南』(岩波文庫)
■参加者:5名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

半蔵門クラシックスとしては珍しく、今回は題名どおり「恋愛」がテーマです。土曜日という変則的な日程のせいか、参加者は少なめでしたが、そのぶん密度の濃い会になりました。参加者のひとりが指摘したように、2000年以上前の恋愛マニュアルが本質的には現代のものとほとんど同じ内容というのが、興味ぶかいところです。ちょっと男性目線すぎるのでは、という女性陣からの猛ツッコミもあり、大いに盛り上がりました。オウィディウスの面白さは、精神論に頼らないところにある。

司会者も職権を利用して(笑)、日頃から感じている恋愛疑問をぶつけてみました。女性をデートに誘うときは、さりげなく?、それとも、ちょっとは匂わすべき?
男女の恋愛作法が意外に共通していること、そして、微妙だが決定的にことなっていることをあらためて実感する1時間半でした。
うーむ、もう少しars amatriaを磨かねば…。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2013年11月5日(火)19:30〜21:00
■ヴォルテール『カンディード』(岩波文庫)
■参加者:8名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

モンテーニュ、パスカルと並んで、フランス三大文豪に数えられる(ヴァレリー)ヴォルテールですが、その代表作はまさしく奇想天外、ハチャメチャシーン満載の物語でした。その息もつかせぬ怒涛の展開と、過激な言い回しに思わず笑ってしまったという参加者が多かったです。この作品の主題のひとつは「幸福」ですが、はたして主人公のカンディードが「幸福」になれたのかについて、意見が分かれました。そこから、参加者ひとりひとりの幸福観がうかびあがります。欲望の充足をもって「幸福」としてよいのか、欲望には限りがないのではないか。かといって、欲望を超越することは、聖者でもないかぎり、むずかしい。
ストーリーのあまりの荒唐無稽ゆえに不安を感じていた司会者ですが、主題のおもしろさゆえか、とても盛りあがる読書会となりました。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)


2013年11月4日(水)19:30〜21:00
■ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』(岩波文庫)
■参加者:8名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

『動物農場』や『1984年』などの寓話小説で有名なジョージ・オーウェルの処女作が今回の課題本です。イギリス帝国主義に嫌気が指したオーウェルは、植民地ビルマから本国にもどり、作家を目指しました。そして、まず最初に飛び込んだのが、パリ・ロンドンの最底辺社会。傍観者としてではなく、実地体験をもとに綴られたルポは、ありがちな労働者階級賛美に陥ることなく、むしろユーモラスですらあります。底辺社会の吐き気をもよおすほどの汚さ、施す人間に対する貧困者の激しい憎悪、飲食業界の虚偽、そして、社会の最下層においてさえも階層化がみられることを指摘する一方、オーウェルは、そこに生きる人々の生命力あふれる人柄を描き出します。近すぎず、遠すぎず。この微妙な距離の取り方こそ、オーウェルの文業に一貫する特徴といえるのかもしれません。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2013年12月18日(水)19:30〜21:00
■プラトン『ゴルギアス』(岩波文庫)
■参加者:7名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

哲学の祖プラトンの作品の特徴は、論文形式ではなく、あくまで登場人物同士の対話によって真理がうかびあがるところにあります。『ゴルギアス』の主題は、幸福、あるべき生、正義、政治と人間…などとかなり重厚ですが、読書会は、まさしく対話篇さながらの盛り上がりをみせました。みなさん、積極的に論じあい、司会自身もとても楽しかったです。これも、抽象的な論点を具体的に論じる切り口、個性あふれる人物造形のおかげでしょう。プラトンの分身ともいえるソクラテスは、見事に常識的なものの見方を転倒させてゆきます。すこしばかり強引な論理(?)すぎるのでは、という意見も多かったのですが、そうした過激な部分も含めて、プラトンの魅力は尽きません。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2014年1月15日(水)19:30〜21:00
■セネカ『怒りについて』(岩波文庫)
■参加者:7名
■担当司会:坊(代役)

■内容としては・・・
セネカはストア派の立場から、「感情」を「理性」が劣化したもののように捉え、怒りを全否定します。しかし、参加者からは怒りには有用な面もあるのではないかという反論が集まりました。たとえば、歴史を動かす(フランス革命など)、芸術的な創造につながる、カタルシスを感じるなどです。また、セネカは怒りをいろいろと分析しているが、ではなぜ人間に怒りが存在するのか、には踏み込んでいないという指摘もありました。

本の中では怒りを抑えるための具体的アドバイスも多いのですが、これには意見が分かれました。はっきり「つまらなかった」という人もいれば、人生の極意でもあるかのように貪り読んだ人もいたようです。これには、本人がそもそも怒りやすいかどうかが関係しているのかもしれません。

身近なテーマだっただけに、怒りにまつわる参加者の体験談なども飛び出し、意義深い読書会になったのではないかと思います。急な代役で見苦しい点もあったかと思いますが、参加者の皆様ありがとうございました。残念ながらゲンツさんのニタニタ笑いだけはコピーできませんでした。

(坊)
2014年1月28日(火)19:30〜21:00
■シラー『ヴァレンシュタイン』(岩波文庫)
■参加者:6名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・
ゲーテと並ぶドイツ文学の雄、シラーの代表作です。後期作品である本書は、初期作品『群盗』にみられるような激しい情念の劇ではなく、むしろ緻密に構成された思想劇といった趣です。ヴァレンシュタインという「カリスマ」を中心に、多彩な性格の登場人物が星座のように配置され、それぞれの思惑を抱くという構成になっています。ところが、司会にとってはまさしく傑作以外の何物でもない本書の評判が、イマイチよろしくなかったのには驚きました。わかりにくい、勢いがない、登場人物に魅力がない、長すぎる…などなど。司会の作品体験を、当然のことながら参加者が共有するわけではないという自明の真実に、あらためて気づかされました。はたして、拙い僕の司会でこの作品の魅力がすこしでも伝わったのか、はななだ疑問です…。みなさん、ぜひ読み返してみてください〜!

(ゲンツ)
2014年2月5日(水)19:30〜21:00
■モリエール『人間ぎらい』(新潮文庫)
■参加者:7名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・
フランスの喜劇王の名にたがわず、登場人物の性格づけと筋の明快さの点で、追随をゆるさない作品でした。お世辞や世間知、そして偽善をひたすら嫌いぬく主人公、アルセストの人物に、ある参加者は過去の未熟な自分を見いだし、ある参加者はなにごとにも臆せず直言する性格をうらやんでいました。また、ある参加者の発言のように、こうした偽善や嘘を嫌う部分は、多かれ少なかれ、誰しもがもっているのかもしれません。特に盛り上がったのは、この頑固者が、なんともコケティッシュな女子に恋をしてしまうところ。単に容姿のうつくしさに惹かれたのか、はたまた、人間は自分とはちがう異性を想うものなのか。論点がきわだち、楽しい会になりました。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2014年2月18日(火)19:30〜21:00
■ダンテ『神曲・地獄篇』(河出文庫)
■参加者:9名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・
誰もが名前だけは知っている『神曲』の一部を今回は取り上げました。新訳の力量も手伝ってか、文章的にはとても読みやすく、さわやかでした。内容としては、とにかく次から次へと登場する地獄絵図の想像力に圧倒され、なかにはあまりの憂鬱さに参ってしまった参加者の方もいました。それほど読者を恐怖させたと知れば、さぞやダンテも本望でしょう。また、作品後半部から続編につなげる手法も斬新でひきこむものがあり、『煉獄篇』以降も扱ってほしいというリクエストが出たのも印象的です。機会があれば、ぜひ挑戦してみようと思います。



今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2014年3月5日(水)19:30〜21:00
■シェイクスピア『ロミオとジュリエット』(新潮文庫ほか)
■参加者:7名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・
今回は久しぶりのシェイクスピア作品、誰もが知ってる恋愛悲劇『ロミオとジュリエット』です。筋は知っていても、原作を実際に読んだのは初めてという方が多かったです。ロマンティックな予想に反して、破格好みのシェイクスピアらしく、猥雑でドタバタ場面も満載な、この作品。論点は、はたしてロミオとジュリエットの恋愛をどう見るか、です。素直に運命の恋を応援したいという方もいれば、あまりに未熟な恋愛に周囲をまきこむのはよろしくないという意見までさまざまでした。
ちなみに、「悲劇・喜劇」の区別はあくまで作品構造上の問題であって、お笑いシーンの有無とは無関係です。抱腹絶倒限りなき「悲劇」もあれば、厳粛なる「喜劇」もあろう。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2014年3月18日(火)19:30〜21:00
■福沢諭吉『福翁自伝』(岩波文庫ほか)
■参加者:9名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・
まず驚きだったのが、『福翁自伝』でよくもまあ、これだけ多くの参加者が集まったということ。みなさん、一万円札で肖像は知っていても、実際に福沢の作品は読んだことがないという方がほとんどでした(少数の熱烈なファンの方もいましたが…)。自伝から浮かび上がってくるのは、良くも悪くも「自分本位」な人間像です。知的好奇心と独立心のおもむくままに行動しているとみるか、自己本位のエゴイストとみるかは、意見が分かれました。自伝ゆえに福沢が誇張している部分も多いとはいえ、こうした独特のメンタリティがどのように形成されたのか、興味は尽きませんでした。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2014年4月2日(水)19:30〜21:00
■森鴎外「安井夫人」(ちくま文庫ほか)
■参加者:9名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・
森鴎外は夏目漱石とならぶ近代日本文学の双璧として有名ですが、そのわりには、あまり読まれていないのではないでしょうか。今回も、教科書で「舞姫」を読んで、それっきりという方がほとんどでした。最初期の作品である「舞姫」では、主人公の懊悩がじっくりと描かれるのに対して、中期以降の歴史小説では、極端に心理描写が排されています。本作の筋も、ごくありふれた見合い結婚の話です。唯一のポイントは、みなが振り向く美人が稀代の醜男に嫁ぐという点です。なぜ、彼女は彼の妻になることを決意したのか、恋愛感情はあったのか、彼の心境は、彼女の人物像は、など、30ページほどの小編ながら、話題は尽きませんでした。心理描写を排しているがゆえに、読者が多くを推量して楽しむことができるということなのかもしれません。鴎外については、別の機会にも取り上げたいと思います。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)


2014年4月15日(火)19:30〜21:00
■カエサル『ガリア戦記』(平凡社ライブラリーほか)
■参加者:9名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・
いよいよ古典中の古典、カエサル『ガリア戦記』の登場です。話の筋立ては単純明快で、ガリア地方(現在のフランス・ベルギー)への遠征がひたすら語られるというものです。戦記モノ好きの男性ばかりが集まるかなと思いきや、ほとんどが女性の参加だったのは意外でした。それほど、闘争本能を秘めているということなのか…。耳慣れない人名・地名に苦戦しながらも、先見性があり、決して臆せず、いつでも自信満々で、迅速に勝利をつかむカエサルの手際には、いくぶんかの自己演出がそこに含まれていたとしても、惚れ惚れしてしまいます。これがモテ男の秘訣でしょうか。ちなみに、個人的なお気に入りは、ライヴァル同士の百人隊長ふたりが大暴れする場面です(5, 44)


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

(ゲンツ)
2014月5月20日(火)19:30〜21:00
■ゲーテ『ファウスト』(集英社文庫ほか)
■参加者:8名
■担当司会:JONYさん

■内容としては・・・

主人公のファウストの身勝手で尻軽な行動に嫌悪を感じた方もいれば、なぜ最後に昇天できたのか、それも女性(天使)に救われるというのはどうなのか、といった疑問を抱いた方もいました。ひとつの作品として見た場合、第一部はともかく、第二部はいろいろな要素を詰め込み過ぎで、よく分からなかったという意見が大半でした。それでも参加者たちは、そこにニヒリズムとその超克の先駆けを見たり、老いても若い女を愛した文豪の情熱を感じたり、政治家としてのゲーテの体験を読み取ったりしたのです。読書会ではそうした意見もシェアすることが出来ました。機会があれば、また読書会で再挑戦してみたい一冊です。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(坊)
2014月6月4日(火)19:30〜21:00
■モーパッサン『脂肪のかたまり』(岩波文庫ほか)
■参加者:10名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

長編小説大流行の19世紀にあって、ひたすら短編小説をてがけつづけた作家、モーパッサン。本作では、占領下の重苦しい雰囲気のなか、同じ馬車に乗り合わせた人々の人間模様が描かれます。最初こそ、なんとなく連帯意識が生まれるものの、危機的な状況に陥ると、たちまち世間の偏見や価値観が首をもたげてくる。娼婦だけが犠牲を払わされ、しかも冷淡なあつかいを受けるという結末はやりきれない、という声も多かったです。周囲の人々の身勝手さには腹が立ってしかたがない、そういう方もいました。しかし、どのような社会であろうと、上下関係、貧富、身分、偏見は存在します。自分の身におきかえても、なお、娼婦ひとりに犠牲を強いつつ、ばか騒ぎする人びと、すなわち世間を嗤えるか、どうか。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)
2014月7月8日(火)19:30〜21:00
■デフォー『ロビンソン漂流記』(新潮文庫ほか)
■参加者:8名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

英文学史上のみならず、18世紀西洋文学を代表する古典である、デフォーの『ロビンソン漂流記』です。大航海時代以来の航海熱を反映して、当時は旅行文学が流行していましたが、なかでも本書は群を抜く売れ行きで、またたくまにベスト・セラーとなりました。その理由はやはり、無人島での漂流生活という設定の斬新さにあったのでしょう。参加者の間では、つねに先のことを考えて計画的に行動し、損得の収支に敏感で、危機に陥った時には神頼みのロビンソンについて、チャーミングだとも、セコいとも賛否両論でした。とくに無人島を自分なりに改造してゆく過程では、ロビンソンの努力は、「未開」の環境への適応にではなく、「文明」をそのまま持ち込むことに向けられているのではないか、という指摘も出ました。また、あらゆる社会的価値を奪われた環境にあって、いかに孤独と向き合い、自我を保つかも話題にのぼりました。ロビンソンは神との対話に活路を見いだしましたが、非キリスト教者はこうした場合、どのようにふるまうのでしょうか。興味ぶかい問題です。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)
2014月7月16日(水)19:30〜21:00
■田山花袋『蒲団』(新潮文庫ほか)
■参加者:8名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

あたりまえのようですが、読書会とは、ひとつの本について参加者全員で話しあう会です。自室に閉じこもる読書とは違います。だから、ひとりで読むと引き込まれる作品なのに、読書会であつかうと、どうも盛りあがりに欠けるということは、よくあります。逆に、完成度の低い作品でも読書会では大盛りあがり。こういうことも、よくあります。今回の『蒲団』は後者の典型です。鳴かず飛ばずの中年作家の、美しい女弟子への妄想悶々日記とでもいうべき本作は、文学史上、古臭い「自然主義」「私小説」の元祖として位置づけられてきました。しかし、読書会で語りはじめるや、そうした教科書的図式はふきとんでしまいます。登場人物の人柄、置かれた立場、家族と恋愛、語りの視点など、話題は尽きませんでした。無能で小心な中年男の愚痴とみるか、「真実の愛」と「世間」の狭間でなやむ新知識人の告白とみるか。読書会で読む私小説ほど、面白いものはない。私小説嫌いの筆者の感想です。


今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)
2014月8月6日(水)19:30〜21:00
■クライスト「チリの地震」(河出文庫)
■参加者:10名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

ゲーテやシラー、さらにはロマン派作家たちの陰にかくれがちな作家クライストですが、テーマと叙述の鋭さは同時代の水準をはるかに超え、現代作家たちにも刺激を与えつづけています。今回の課題図書である「チリの地震」は、大地震によって通常の法秩序が消滅したときの人間の在り方をえぐりだします。クライストの鋭いところは、例外状況下の人間は本能のままに暴れたりするのではなく、むしろ、自分がこのような状況に置かれている意味(たとえどれほど非合理的であろうと)を求めることを見抜いた点です。そして、そこで獲得された意味が、良くも悪くも状況を動かしてゆくということでしょうか。登場人物への感情移入を徹底的に排して、淡々と出来事を叙述するなかで、人間性の限界をうかびあがらせるという手法は、鴎外にも通じるように思えます。実際、鴎外はクライストの作品をいくつか翻訳していました。



今回もお忙しい中、ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。


(ゲンツ)
2014月9月16日(火)19:30〜21:00
■スタンダール『パルムの僧院』(新潮文庫)
■参加者:9名
■担当司会:坊さん

■内容としては・・・


今回は押しも押されぬ19世紀ロマンの傑作でしたが、当時の時代背景や、19世紀の小説というスタイル(語り手の「私」が出てきたりする)になじみが薄かった参加者は、読むのにだいぶ苦しんだようです。また、前半の戦争の描写に興味が湧かず、主人公にもあまり魅力を感じなかったという意見も多く、それも読書を停滞させた要因だったと思われます。それでも物語が転がり出すと、イタリアの地方都市を舞台に繰り広げられる一大絵巻に惹きつけられた方もいらっしゃいました。

主人公がやや冴えないのと対照的に、脇を固める人物たちの魅力は満載。特に、主人公のため縦横に活躍する侯爵夫人(ジーナ)には人気が集まりました。他にも、クレリアの可憐な態度を愛らしく思ったり、お尋ね者の詩人フェランテ・パラにロマンを見出したり、モスカ伯爵の機知と献身的愛と忠臣ぶりにメロメロになった人もいました。

そのほか、『赤と黒』との類似点・相違点が話題に上ったり、『罪と罰』のような作品に比べてアッケラカンとしているという指摘があったり、『限りなく透明に近いブルー』の登場人物が読んでたのはなぜなのか、といった疑問が出たりして、広がりのある読書会になったと思います。

(坊)
2014月10月7日(火)19:30〜21:00
■志賀直哉「小僧の神様」(新潮文庫ほか)
■参加者:7名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・


誰もが名前は知っているけれども、読まれること少ない作家、志賀直哉の短編小説が今回の課題図書でした。本作は、志賀直哉の代名詞ともいえる作品のひとつといわれるだけあって、読み応えのある作品でした。著者があまり自作を説明しないタイプの作家であるということも、幅広い読み方をうながしたようです。この点、ユルスナールのような、作品に自著改題をつけて「正しい読み方」を作者の側から示すタイプの作家とは、正反対といえます。
金持である貴族院議員が、丁稚小僧に寿司をごちそうするという単純な筋書きのなかで、「お金」を媒介する不均衡な人間関係の型がみごとに描き出されています。ただ「お金」という要素が加わるだけで、親切や善意といったものが、恥ずかしさや偽善にすりかわってしまうという不思議。最後の5行ははたして蛇足なのかどうか。これほどの短さにもかかわらず、どこまでも読者に深読みさせてしまう作品も珍しいです。


(ゲンツ)
2014月10月17日(金)19:30〜21:00
■トゥキュディデス『戦史』(中公クラシックス)
■参加者:4名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・


やはり、ギリシアの地名・人名になじみがなかったせいか、キャンセルも出てしまい、久々に少人数の読書会となりました。それでも、読んできた方はいずれも、まさしく古典中の古典にふさわしい迫力ある内容と絶賛していました。
トゥキュディデスの戦史の特徴のひとつが、要所要所で挿入される演説です。事件の顛末だけを書けばよいものを、長々と演説が展開されるのはなぜなのか?ある参加者曰く、この演説があるから、歴史がまさしく人間の手で作られていくということがよくわかるし、何より、単なる事実経過よりもはるかに奥深い叙述を可能にしたとのことでした。正論や建前はどこへやら、欲望と恐怖にひきづられてゆく人間たちのすがたは、現代人にも重なります。2400年前に「永遠の財産」として書かれた作品は、いまだ光を放ちつづけているようです。


(ゲンツ)
2014月11月21日(金)19:30〜21:00
■シェイクスピア『オセロ―』(新潮文庫ほか)
■参加者:10名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

さすがの有名作品だけあって、ひさびさに大盛況の会となりました。映画や演劇ですでにあらすじをご存じの参加者も多かったのですが、上官オセロ―を陥れようとやっきになるイアゴーの凄まじい執念は、みなさんにとって印象的だったようです。また、オセロ―が終始受け身の立場にいるのが不自然という意見も出ました。
本作のテーマは作中でも何度も語られるように、ずばり「嫉妬」「羨望」です。自分が欲しいものをもっている、あの人この人が憎くてたまらない。こうした感情は、誰しもが一度は感じたことがあると思います。一方、参加者のみなさんが、「何に対して嫉妬・羨望の念を懐いたか」について頑なに黙秘していたのは、やはりこの感情には生産性がまったくないからかもしれません。これほど否定的で非生産的な感情をなぜ、創造主は人間に植えつけたのかと、参加者のひとりが不思議がっていました。



(ゲンツ)
2014月12月19日(金)19:30〜21:00
■ホメロス『オデュッセイア』(岩波文庫)
■参加者:9名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

今年最後の読書会の課題本は、ついに古典中の古典というべき、ギリシア叙事詩の祖ホメロスの『オデュッセイア』となりました。聞きなれない古代の神々や地名に面喰らったのか、リタイアの方も多かったのですが、すんなり作品世界に入り込めたという参加者も少なからずでした。のちの聖書のような説教ではなく、ホメロスの叙事詩は、英雄と神々が入り乱れる物語です。とりわけ、その人物造形は他の追随を許しません。『オデュッセイア』というと、セイレーンや魔女が登場するファンタジーというイメージが強いですが、参加者のほとんどが、故郷への帰還とワル貴族の成敗をあつかう後半が気に入ったというのは意外でした。前作『イリアス』で活躍する英雄たちが懐かしい顔を見せてくれるという理由から、個人的には前半が気に入っています。また、端々にあらわれるホメロスの人間観察に興味を惹かれる方もいました。


それでは、本年も当読書会を応援していただき、本当にありがとうございました!
来年もどうぞよろしくお願いいたします。


(ゲンツ)
2015月1月16日(金)19:30〜21:00
■バルザック『ゴプセック』(岩波文庫)
■参加者:6名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

今年はじめの読書会は、以前にも『ゴリオ爺さん』でとりあげた、バルザックの短編「ゴプセック」です。西洋文学で「高利貸し」といえば、下賤な守銭奴というイメージが定番です。ところが、バルザックはその高利貸しであるゴプセックを、なんとも魅力的な主人公に仕立て上げています。ゴプセックは、金銭を社会をめぐる血流、すなわち生命線として理解します。金儲けによって他の欲望を実現するというのではなく、金銭を得ることは、彼の肥大した権力欲を満足させるものなのです。このシニカルで貪欲で、しかし、どこかストイックな高利貸しを、駆け出し弁護士の視点から語るという手法も面白いです。参加者の多くの方が、リアリズムに徹したデフォルメともいうべきバルザックの人物描写に感心していました。バルザックはまた機会があれば、とりあげてみたいですね。



(ゲンツ)
2015月2月20日(金)19:30〜21:00
■プルタルコス『似て非なる友について』(岩波文庫)
■参加者:8名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

友情や友人と完全に無縁な人生など、およそ考えられません。友達がいない人でさえも、おそらく、自分にとって望ましい、理想の友人関係を想像することはあるはずだからです。友情という身近なトピックのせいか、大盛況の会となりました。プルタルコスらしく、のらりくらりとした話がつづきます。本当の友人と、自分に取り入ろうとする「追従者」を見分ける基準とは何か。本当の友情を育もうとするときに注意すべきことは何か。読書会では、参加者ひとりひとりの友情観をうかがいましたが、ほとんどの方が、信頼関係こそ友人関係の基本だと語っていたのが印象的でした。濃密なコミュニケーションの存在した古代では友情論が盛り上がった一方、SNSやインターネットの発達した現代において本格的な友情論が乏しいというのが、面白いところです。



(ゲンツ)
2015月3月28日(金)19:30〜21:00
■中島敦『わが西遊記』(講談社文芸文庫)
■参加者:8名
■担当司会:ゲンツ

■内容としては・・・

だれもが知っている、中国の古典『西遊記』を、沙悟浄を主人公にアレンジしたのが本作です。未完成の作で、あまり長い作品ではありませんが、いかにも中島敦らしい硬質な文体と所々に登場するマニアックなネタが興味をそそります。とくに参加者たちのあいだで話題にのぼったのが、前半部分、自意識にとらわれて苦しむ沙悟浄が魔界のさまざまな賢者たちを訪ねて歩く場面です。どの賢者の説に共感するかで、そのひとの性格がよくあらわれていました。



(ゲンツ)

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