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†Dead Poets Society†コミュの†佑羽詩†

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[春を閉ざす前に]


春を閉ざす前に
せき立てられて
黒いスケッチブックを買った

見知らぬ群衆に
沈められてはならないと
抱きしめて帰った

今の私には
恋人よりも
夕飯のロールキャベツの方が大事
けれどもそれを
彼に云ってはいけないそうだ

明日の命を
繋ぐ方が大切なのは
当然なのに

空き缶に仕舞ってあった
色鉛筆を取り出して
スケッチブックに
絵を描いた


温かい色がないので
寒くて寂しい
絵になった

これが私なのだろう

春を閉ざす前に
どうしても
スケッチブックを埋めなくては

まだ春の名残のあるうちに
私は彼に
別れを告げなくてはいけない

本当は
ロールキャベツよりも
愛しているからよ

最後のページに描くものは
決まっていた





コメント(9)

▼[葬想]


ゆるゆると
たち上る焔の馨

掌で
無骨に塞いだ
月の道程を
瞼の裏に再生し
啼いている
ふりをしていた

語ること、を
厭い始めた舌と
伝えること、を
手放し始めた声と
届くこと、を
諦め始めた言葉が
生々しく
腐食して
喉の奥に
堆積されてゆく

心の中でだけ
饒舌に
紡がれる想いも
出口のない
檻の中では
あまりにも不確か

いつまで
わたしは謳っていましたか
いつまで
わたしは歌っていましたか

声は
言葉は
心は

どこにいったのでしょう

たち上る
焔の馨
滲む煙の
どこかには
あの日の涙も
あるでしょか






▼[羅針盤に浮かぶ名前]


オイルの中で針が揺蕩う
コンパスはただ朔を指すばかりで
君の行方を教えてくれはしない

夜の海辺に埋めた手紙も
三桁を数える頃
書くことに疲れて
全ての便箋を燃やしてしまった

それは
自分の魂を傷付ける暴力だった
或いは
君への想いを傷付ける拒絶だった

アドレスのない封筒が持て余される
万年筆は渇き切って文字を綴れない
かつてあれほど綴っていた
君の名前さえ





▼[春の針]


針の飛んだ
レコードの
千切れた声は
まるで
ささくれのようで
ささやかな
けれど鋭い痛みを残した

発情期を迎えて
春は
散る美しさを教える
咲き誇る美しさを
まだ
知らない私に
雨のように
雪のように
塞ぎながら

淀みなく流れれば
それは奇麗だろうか
吃音のひどい
告白が
心臓を何度も掠めて
私は恋をしたのだ

蓄音機はもう
壊れていて
レコード盤はもう
傷だらけで
ぼろぼろになった歌は
それでも
まっすぐに伝わり続けた





▼[歌芯]


柔和だと信じた横顔が
人知れず闇に馴染んだ時
透き通る水晶のようだった哀しみは
一度大きく砕かれたのだ
あれが最後だった
あれは最期だった
繰り返すそれは言い聞かせるためでなく
多分
掌を解放するため
この掌から柔らかなものを
解放するためだった

余計なものを視てしまうからと
左眼を潰した夜は過去に埋葬されて
醜く引き攣れた眼窩だけが残された
知っていただろうかこの傷を
愛おしいと触れてくれたから
君は特別になった
君が特別になった
あの日の私を優しく殺してくれたから
辿り着くことが出来たのだ
漸く、今に

さあ
最後の天使が間もなく飛び立つ
翼を叩く音を仕舞ったら
足が折れても
擦り切れても
這ってでも
歩みを止めないと誓おう

半分の闇と半分の光を道連れに
君を謳い続ける






▼[永遠の欠片]


その指を
切り落とさせてください

痛い想いは
させませぬ
二度とはもう
乞いませぬ

その指を
私にくださるのならば

滿ちてゆく月の
朧なる輪郭をなぞりながら

雲の棚引く
階層に埋没しようかという

その指を
切り落とさせてください

一本でいいのです
その心臓と繋がっているという
薬指





▼[溜息]


優しい音色を
奏でている

水のハープが
並べている

泣いている
左側の顔

優しい音色を
奏でてください

水の弦
月の弓で弾いてください

趨っている
右側の顔

滑る空の領域を
素肌が撫でていく

産毛の緩衝材
光沢を守った

優しい音色を
奏でましょう





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