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からすま ますたぁ〜どコミュの超短編小説 『人造人間第一号』

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 ある日、私は古くからの知り合いである博士に呼ばれ、彼の屋敷を訊ねた。
 玄関の扉を開けるなり、彼は私に抱きつき、叫んだ。

「やったぞ! ついに完成したんだ!」

 突然のことに呆然とする私の手を取ると、博士は屋敷の中へと引っ張っていった。
 そのまま私は、なかば引きずられるようにして、地下の一室へと通された。
 室内には、数台のスーパーコンピューターを始め、モニターにコンソール、さらには心電図や手術台と、仰々しい機械達が雑然と並べられている。博士の研究室である。

「これだよ、これを見てくれ!」

 興奮した様子で、彼はなおも私を部屋の奥へと力強く導いた。
 そこには、大きな白い布をかけられた何物かが置かれていた。縦に細長く、高さは私と同じくらいだった。
 博士の手が布を掴み、勢いよく翻した。

「これは……いや、彼は一体?」

 果たして、布の下から現れたのは一人の男だった。
 男は目を閉じ、直立したまま微動だにしない。立ったまま眠っているように見える。

「ただの人間だと思うかね?」

 人好きのする微笑をその顔にたたえて、博士は自信と挑戦に満ちた目を私に向ける。

「まさか、完成したというのは、この男のことですか?」

「そう……これは世界初の、人造人間だよ!」

 博士は興奮を隠すこともなく、大袈裟なジェスチャーで直立不動の男を示してみせた。

「人造人間!?」

「そう……今までのサイボーグやアンドロイドといった、表面だけ人間の子供騙しではない。体の組織は全て、蛋白質を中心とする有機化合物と、水、そして少量の油脂から構成されている。肺から酸素をとりこみ、ものを食べ、水を飲み、排泄もする」

「それは凄い! まさに生命体だ」

 これは確かに、機械化はびこる現代社会における、画期的発明といえるかもしれない。

「で、博士。彼は一体、どんな能力を持っているんです?」

 私はわくわくして訊ねた。

「うむ、まず速さだが、歩く速度は時速五キロ、走る時は時速三六キロまで出せる――百メートルなら十秒だな。力は片手で約二五キロの物体を持ち上げることが出来る程度だ」

 私は、おや、と思った。

「なんだ、そこはあまり大したことありませんね」

 人造人間というからには、もっと超人的な能力を期待していたのだが。
 博士は眉間に皺をよせた。

「そりゃあ君、これは完全なる人造人間だもの。人間と同じ性能でなければ意味がないだろう?」

「ああ、なるほど」

 私は得心し、同時に感心した。なにからなにまで人間と同じに造るから人造人間。まったくその通りではないか。

「よし! では起動スイッチを入れよう!」

 博士は徐に、人造人間の脇に置かれた小さなテーブルへと、歩を進めた。テーブルの上には、レバーの飛び出した変圧器のような装置が鎮座している。

「生物が動くのに必要なものは、栄養以上に、電気による信号だ。この起動スイッチを入れた瞬間、ダイナモから、人造人間が最初に動くのに必要な分の電気エネルギーが流れ込み、彼は動き出すのだ」

「なるほど、かのフランケンシュタインが雷を利用したのと同じですね」

「その通りだ。さあ、よく見ていたまえ」

 博士の手に力が籠められる。
 レバーが、がちゃん、と音を立てて動く。
 人造人間の身体が、びくびくと波打った。どうやら、かなりの量の電流が流れているらしい。
 博士が、レバーをもとに戻した。
 私は興奮して、彼が目を開けるのを待った。
 しかし何としたことか。十秒ほど経っても、一向にその時は訪れないではないか。

「おや、おかしいなあ」

 博士も焦りを隠せないらしい。額に冷や汗を滲ませながら、発明品の背中のスイッチを入れたり切ったりしている。

「博士、まさか失敗では?」

「いいや、そんなはずはない。理論は完璧だし、設計にも自信はある……」

 しまいには腕を組んで、うーん、と考え込む始末。

「おお、そうじゃ!」

 突然、博士は目を丸くして、手をぽんと打った。

「なにか分かったのですか、博士!?」

「いかん、いかん。電池を交換し忘れとったのだ」

 博士はいそいそと、人造人間の首筋から筒型の電池を取り出した。

「ああ、なるほど」

 私は博士と同じく、手をぽんと打った。

「しかし博士、彼はそれですら、我々と同じなんですねえ……」  

コメント(3)

 昔々、とある賞に応募して落選したものですね。自費出版を薦める電話がかかってきた事だけがいい思い出ですよ。
 オチの弱さは今でも痛感しております。
え?あんまりオチがよくわからないのですが。。。
これって博士とかみんながすでに造られたものですよってこと??
>まいちゃん
う〜ん、作者的には「みんな電池で動くような造られた存在なんだけど、それが日常的過ぎて、それすらも忘れてしまっている」って感じかな。

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