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鼻声のアーカイブコミュのかーくん

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幼稚園というと、楽しかった記憶を思い出す方が多いかもしれない。
だが、私にとって幼稚園は耐えがたい牢獄だった。
いかにしてずる休みをするか、いかにして1日をやり過ごすか。それが毎日の課題であり日課だった。
どうしてそこまでして幼稚園を避けていたのかといわれれば、そこにいた「人」との相性が悪すぎたからかもしれない。

幼稚園児はその名の通り幼稚である。感情を率直に表に出し、他人を傷つけることを恐れない。ある意味、人類で最も残酷な種類の生き物である。
人見知りで感情を表に出すことが少なかった私とは、正反対な個性を持った園児が多すぎた。

その中でも特筆すべき人物が1人いる。かーくんだ。
私の幼稚園ライフをずたずたに壊した彼は当時の私にとって、人の形をした邪悪な何かだった。

年長で迎えた最後の運動会。
朝から浮かない顔をして登園した私の目の前に来たかーくん。一瞬目が合って彼はほほ笑んだ。
今日は機嫌が良いな、とほっした刹那だった。
彼は「どーん!!」と大声を発したと思うのと同時に、私のみぞおちに強烈なパンチを食らわせた。
意味が分からない。どーん、じゃねぇだろ。おはよう、だろ。そんな怒りにも似た感情がが体中を駆け巡った。
しかし、そんな反論が出来るほど当時の私は強くなかった。

泣いた。ただただ泣いた。さめざめと。なんと不条理な世の中だろう。なんと理不尽な社会だろう。
運動会が始まり、全園児の親が誇らしげにわが子を見守る整理体操の最中、泣いていた。泣きながら柔軟体操で身体をほぐした。しかしガラスのハートはほぐれる訳がない。
体をほぐしても「平成のデクノボウ』との異名を持つ私は、ブービーの足の速さを引き立てるくらい圧倒的な差をつけられ徒競走も最下位となった。
まぎれもなく幼稚園時代でワーストに入る一日である。

それからしばらく経ち、私が小学生になってから、かーくんはある病だったことが分かった。今まで私にしてきた行動の原因も、どうやらそこにあったらしい。
その話を聞いた時から、彼のことを悪く思うのはやめた。原因は彼自身ではなかったからだ。
風の噂に、彼の病はだいぶよくなって、今も元気にしているらしいと聞いた。今となっては当時の嫌な記憶も、笑い話へと変わった。

あの時運動会で流した涙は、文字となってこのエッセイを彩ってくれている。
人生、なにが良くてなにが悪いかなんて分からないものである。

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