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ちゃむ(coLd)コミュの【探偵彼女】

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 僕の彼女は天然だ。

 僕の彼女はフワフワしている。

 僕の彼女は何も無い所でつまづく。

 僕の彼女はプリンをプッチンできない。

 僕の彼女は『ぷ○ぷよ』で上手く連鎖が組めない。

 僕の彼女はファミレスで自分が呼びベルを押したにも関わらず、店員に「お待たせ致しました」と声をかけられると、ビクッと驚く。

 僕の彼女は……時にとんでもない観察眼と卓越した推理力を発揮する。



「おかえ……ただいまー」

 一週間ぶりの来訪。彼女は決まってこんな調子で入ってくる。
「おかえり」と「ただいま」がごっちゃになっているのだ。

「はい、おかえり」

「なんやぁ最近暑なってきたねぇ」

 靴を脱ぎながら彼女は言う。
 春の穏やかさは日ごとに太陽を地面に近づけ、時折吹く風は徐々に夏の気配を漂わせている。

「ほんまやな。もう夏やな」

「あんなに寒かったのにねぇ。厚着してたんが嘘みたいやわぁ。……うわぁ、厚着してたん思い出したらまた暑なってきたぁ……忘れよ忘れよぉ、あちぃー」

 彼女がうちわ代わりにパタパタやる古いファッション雑誌の見出しは『冬のあったかコーデ☆』だが、もはやそれには触れまい。

「……あれー、部屋掃除したん?」

「まぁ、たまにはな」

「雨降るなぁ」

「調度ええやろ」

「……なんかあったん?」

「え……いや、別に、ただの気分転換や」

「ふぅん……」

 少し部屋を見渡して彼女は右の眉毛を下げた。

『ドキリ』

 この表情を見せる彼女は「スイッチ」が入っている。

「ほぅほぅほぅ……“気分転換”か……」

「……なんやねん」

「気分転換にしてはえらい綺麗にしたなぁ思てなー」

「時間、あったし……」

「ゴミ袋は2つ」

「燃えるゴミの日、明後日やからまだ出されへんよ……」

「ちゅう事は」

「なん……ですか……」

「アンタがさっきから無意識に遮ってる戸棚、開けて良い?」

「なぜ……ですか?」

「開けて良い?」

「ナゼアケルノデスカ?」

「戸棚じゃなくてその口、限界まで開けたろか?」

「トダナハコチラデス、アシモトオキヲツケクダサイ」

「素直やん」

「ボクハスナオデス」

 するり開けられた戸棚から隠された風俗情報誌とエロ本を取り出すと彼女は僕を見ずに読み始めた。

「ほぅほぅほぅ……“エッチな女の子大集合!”やて。“大人の花見は何回転?”いや、別にウマないし。“女子○生ナンパシリーズ”コイツ絶対サバ読んでる」

 何も言えない。

「“大人の花見”は楽しかった?」

「それはもう……いやっ、違う! それは付き合いで!」

「付き合いで雑誌まで買って?」

「……詳しく調べよっかなーって……テヘ」

「花見の場所をかい!」

「すいませんでした!!」

 殺される……。

「ウチの目ぇは……えと……なんやっけ……えっと……こういう時なんて言うんやっけ……うわ、ここまで出てんのに!」

 自分の手を鼻の高さまで上げてトントンとやる彼女に「いや、それ喉にトントンやで。口越えてもうてるやん」と言える空気ではない。

「……ふ、ふしあな……」

「それや! ウチの目ぇはふしあなやないで!」

「お見それしました!!」

「さーて、このおとしまえ、どうやってつけてもらえるんかなぁ?」

「何なりとお申し付け下さいませ!!」

「お買い物行こか♪」

「お付き合い致します!!」

「夏物ぉ、まだ見たいショップあったんよぉ〜♪ウフフ……」

 罪状:大人の花見参加
 判決:有罪
 実刑:夏物ショッピング僕持ち



「……なぁ、なんで解ったん?」

「アンタ隠し事するとき普段せん事するやろぉ」

「そうかなぁ……え……それだけ?」

「ゴミー」

「ゴミ?」

「青いビニールテープー」

「青いビニールテープ?」

「最近の成人指定雑誌には立ち読みできんように青いビニールテープが貼ってあんねーん」

「……貼ってあった……」

「あのサイズの青いビニールテープなんて、エロ本用くらいでしか見たことないわぁ」

「はぁ……」

「だからこのテープがあるって事は、イコール雑誌があるって事ぉ」

「はぁ……」

「エロ本自体は必死になって隠すんやけど、証拠になるテープは気にせず捨てるぅ……皮肉なもんやなぁ」

「はぁ……」

「元コンビニ店員ナメたらあかんよぉ」

「はぁ……」

「なんにしてもそうやけどぉ、どれだけ巧妙に事実を隠してもぉ、必ずその痕跡は残るもんやねーん。アンタ気ぃつけやぁ」

「勉強になります……」

「すぐに顔に出るタイプやしってうわっ! 危なぁっ! コケるか思たぁ……」

「何も段差無かったやん……」

「ホンマに!? なんかに引っ掛かった気ぃしたんやけどなぁ……」

 僕の彼女は天然だ。

 僕の彼女はフワフワしている。

 でも、僕の彼女は……時にとんでもない観察眼と卓越した推理力を発揮して、僕の退屈な日常に少しだけドキドキをくれるんだ。

「荷物はアンタが持ってやぁ」

「そら僕が持ちますよ……」

「アンタはウチが持ったげるからなぁ」

 差し出された右手に名探偵の優しさを感じた。





coLd

コメント(4)

これ、やっぱりいいね!!

テンポの良さも、彼女がとびきり可愛いところもだい好きだ!

ちゃむたん、作品の幅ひろいなー。すごい!
うたね→

ありがとう(^^)

いつか続きを書くかも、ね
ののさん→

ありがとうございます!

はみ出すくらい詰め込んどきましたぜ!

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