実務家からみた司法試験コミュの司法改革の失敗

司法を職業としてめざす場合はしっておいたほうがいい知識です。

司法改革の失敗
──弁護士過剰の弊害と法科大学院の破綻
２０１２年４月２０日　初版第１刷発行
著者　鈴木秀幸、武本夕香子、鈴木博之、打田正俊、
　　　松浦武
発行者　平田勝
発行　花伝社
発売　共栄書房
ＩＳＢＮ９７８－４－７６３４－０６３２－３
Ｃ３０３６

目次

序論　鈴木秀幸
?　司法のあり方と適正な弁護士人口政策
鈴木秀幸

１　今回の「司法改革」とあるべき司法政策との乖離
（１）司法改革の発端の法曹基本懇、法務省と日弁連の
　　　対立
（２）中坊日弁連会長による弁護士自己改革中心の司法
　　　改革路線
（３）戦後及び臨司意見書から藤井会長までの司法問題
　　　の取り組みの歴史
（４）法曹養成制度改革協議会の発足と意見書
（５）司法制度改革審議会の発足と意見書、小泉内閣の
　　　閣議決定
（６）司法制度改革審議会意見書に対する基本的な批判
２　日弁連の司法改革の熱狂と暴走、委員会と有志の抵
　　抗の全過程
（１）日弁連の従来の路線と政策決定方式の破壊
（２）会員アンケートと専門委員会の意見の否定
（３）会員有志の反対運動と派閥の横暴、第１回臨時総
　　　会と関連決議
（４）第２回臨時総会の判検増員を条件としない１００
　　　０人決議
（５）第１６回司法シンポジウム・法曹のあり方と法曹
　　　人口の準備と報告
（６）第３回臨時総会の修習期間２年堅持案と１年半短
　　　縮案の対立
（７）日弁連の基盤協のＡ案、Ｂ案と改革実現本部の合
　　　格者１５００人以上案
（８）中坊司法審査員のフランス並の法曹人口と３００
　　　０人案の受諾
（９）法曹一元の幻想と騙し、久保井会長の３０００人
　　　案の受諾
（１０）第４回臨時総会の前代未聞の午後９時半過ぎの
　　　　強行採決
３　司法改革の失敗とその原因
（１）司法改革の失敗、割に合わない勘定
（２）行政府の有識者審議会方式の選択と対応の誤り
（３）新自由主義的司法改革に対する批判回避の誤り、
　　　研究者の批判
（４）奉仕活動不足論による弁護士「自己改革」と大量
　　　増員の誤り
（５）弁護士激増受け入れの人気取りと自滅の道
（６）大増員論者の理不尽な会員批判と排除
（７）法曹一元制度実現の運動と見通しの誤り
（８）大増員論者の強弁と自賛、国策追随、責任転嫁
（９）日弁連執行部派の権力志向と体制化の問題
４　戦後の弁護士制度を解体するイデオロギー、マスメ
　　ディアの責任
（１）新自由主義の競争原理による弁護士大量増員の問題
（２）資格試験論による合格者数制限に対する批判の問題
（３）マスメディア幹部の弁護士批判の責任の問題
５　弁護士の実需と弁護士人口の基本論
（１）弁護士需要と低い利用価値の裁判所及び国民意識
　　　の関連性
（２）弁護士の実儒と過大な見積り、法学部卒と隣接業
　　　種の存在
（３）先進諸外国の司法との比較論法の誤り
（４）弁護士の業務拡大の努力と弁護士へのアクセスの
　　　問題
６　今回の司法改革と裁判所・検察庁の改革否定の問題
（１）司法官僚制の温存、法曹一元制の否定、弁護士任
　　　官の失敗
（２）貧弱な司法、裁判官不足、裁判迅速化、弁護士強
　　　制の危険性
（３）法曹の過剰と質の低下、民事裁判の劣化と改善策
（４）刑事司法の現状
７　合格者と弁護士の激増と過剰、法曹三者の不均衡、
　　就職難
（１）合格者と弁護士の激増
（２）法曹三者の人口不均衡と裁判官・検察官の増員の
　　　必要性
（３）就職難
（４）弁護士の格差拡大
８　弁護士の所得の減少と１０年後の予測（人口２．５
　　倍、所得半減）
（１）日弁連の経営実態調査の１０年前との比較、１０
　　　年後の予測
（２）弁護士の所得格差拡大と医師との比較
９　弁護士過剰の弊害と良い弁護士制度（職務の独立・
　　適正の確保条件）
（１）弁護士過当競争政策が諸問題の根本的原因
（２）弁護士過剰の国民に与える弊害の負の連鎖
（３）業務拡大の実相と弁護士過剰の弊害
（４）国民にとって良い弁護士制度のあり方
（５）弁護士報酬基準規定の復活の必要性
１０　司法審意見書批判運動、各地の合格者減員決議、
　　　非執行部会長の誕生
（１）司法審意見書批判運動の展開
（２）２００７年の弁護士飽和状態と平山日弁連執行部
　　　の無策
（３）各地の３０００人計画見直しの決議とアンケート
　　　調査
（４）２００８年２月の日弁連執行部派に対する不信任
　　　選挙
（５）２００９年１０月の中弁連の１０００人決議
（６）２０１０年３月の宮﨑日弁連執行部の提言とその
　　　批判
（７）真の司法改革の取り組みの必要性
（８）２０１２年の日弁連会長選挙と法曹人口基本政策
１２　自治組織の日弁連の意思決定のあり方
（１）会内民主主義の保障
（２）会員投票制の新設の必要性

?　弁護士人口論の原理と法文化
武本夕香子
１　はじめに──２０００年という転機──
（１）２０００年という鬼門
（２）３０００人路線の理由付けの分類
２　原理原則論
（１）所謂「法の支配」論について
（２）「大きな司法」論について
（３）弁護士の社会的使命論について
（４）弁護士を配置させるべきとの主張について
（５）「司法における国民の統治主体性の確保」に対す
　　　る批判
（６）「大きな司法」に対する批判
３　弁護士需要論について
（１）弁護士は足りないのか
（２）日弁連臨時総会決議について
（３）司法改革審議会が行ったアンケートについて
（４）日弁連の実施したアンケートについて
（５）企業や官公庁に対する需要について
（６）社会生活上の医師たらんとするため
（７）他士業の果たす役割について
（８）審理期間の長短について
（９）「司法過疎解消のために弁護士数の増加が必要」
　　　との立論について
（１０）統計結果から見えるもの
（１１）業務拡大について
（１２）被疑者国選問題について
４　自由競争論とその批判
５　法曹一元のための法曹人口増とその批判
６　グローバル化対応論とその批判
７　法科大学院と院生擁護論とその批判
（１）法科大学院と大学の既得権益の保持
（２）合格者が増えると信じて司法試験を始めた人の問
　　　題
８　合格者１万２０００人、日弁連蚊帳の外という暴論
（１）「３０００人に賛成しなければ、１万２０００人
　　　になっていた」のか
（２）「既に決まっている。既定路線に反対しても無駄
　　　である」のか
（３）「日弁連が司法改革に反対したら蚊帳の外に置か
　　　れた」のか
９　弁護士激増の先に見えるもの
（１）弁護士のあり方の変容
（２）市民の受ける弊害
（３）「法曹人口の増加」が意味するもの
１０　今後の運動論
（１）弁護士会内における活動
（２）国会議員及び行政に対する働きかけ
（３）市民に対する働きかけ
（４）最後に
?　弁護士の実際の需要（分野別）
鈴木秀幸、武本夕香子、鈴木博之
１　全裁判所の新受事件数
（１）全事件の新受事件数の推移
（２）各事件の新受事件数の推移
２　地裁民事通常訴訟事件
（１）１９９０年代の状況
（２）２０００年代の状況
３　専門分野の裁判事件
（１）専門的知見を要する事件
（２）労働に関する訴え
（３）株主代表訴訟
４　本人訴訟
（１）弁護士関与率の低下
（２）弁護士選任の強制について
５　破産事件
６　刑事事件
（１）１９９０年代の司法改革時の議論状況
（２）２０００年代の状況
（３）低額な国選弁護費用
（４）弁護士過剰
７　過疎、偏在
（１）１９９０年代の議論
（２）２０００年代の日弁連の対策
（３）偏在問題の性格
（４）ひまわり基金法律事務所の現状と将来
８　民事法律扶助
（１）１９９０年代の議論
（２）２０００年代の状況
（３）日本司法支援センター
（４）弁護士会の業務委託事件、給付制、報酬増額問題
（５）法テラスの初期相談構想
９　法律相談
（１）年間２００万件なら弁護士１万人で足りる
（２）有料相談が減少し無料相談が増加
（３）その他
１０　顧問需要
（１）顧問業務の実態
（２）上場企業等では飽和状態
１１　中小企業の需要
１２　渉外、大企業の需要
（１）１９９０年代の議論状況
（２）２０００年代の状況
（３）外国法事務弁護士
（４）弁護士等が雇用する外国弁護士
１３　企業内弁護士
（１）１９９０年代の議論状況
（２）２０００年代の状況
１４　人気付公務員、公務員
（１）法学部卒生の進路
（２）任期付公務員
１５　弁護士隣接業種
（１）隣接業種人口
（２）フランスとの比較
１６　新たな分野での需要
（１）１９９０年代の議論
（２）２０００年代の状況
１７　若手弁護士への影響と意識
（１）若手弁護士の実態
（２）弁護士人口問題との関連
?　法学教育、司法試験、法曹養成、法務専門家養成の
　　あり方
鈴木秀幸
１　戦後の統一・公平・平等の司法修習制度の創設
２　法科大学院創設の経緯
（１）ロースクール構想の登場
（２）専門委員会と司法研修所教官の反対表明
（３）日弁連執行部の強行採決
３　法科大学院制度の根本的な問題
（１）無駄で無理な制度
（２）法学部と司法修習の軽視
（３）教養、基礎知識、専門性の位置付け
（４）不合理な実務教育編入
（５）不公正な受験資格付与
（６）混ぜ合わせの教育課程の不合理
（７）法科大学院の不透明な選抜方法と序列化
４　法科大学院の危機的状況
（１）志願者、入学者の激減
（２）志願者、入学者の質の低下の原因
（３）法科大学院の研究者教員不足
（４）法学研究と研究者養成の犠牲
（５）受験待機
（６）新司法試験の成績分布と合格ライン
（７）旧司法試験組に対する差別
（８）二回試験の不合格者の増加
（９）給費制廃止の影響
（１０）就職難、就職活動の影響
（１１）弁護士の取得の減少の影響
５　法科大学院制度の設計ミスと病理
（１）法学部、司法修習、研究者養成の軽視
（２）間違った弁護士の進出先
（３）有為な人材の確保が困難
（４）法曹の統制と司法官僚制の強化
（５）予備試験のあり方と実態
６　日弁連の法曹養成制度の改善の緊急提言批判
（１）２０１１年３月の緊急提言の手続的な問題
（２）緊急提言の内容的な問題点
（３）日弁連の大学院教育と修習の連携の提言批判
７　法務省の法科大学院に関する政策評価
８　法務専門家養成と資格付与の拡散と司法弱体化
（１）弁護士需要を超過する法曹資格者がもたらす事態
（２）法曹養成研究会の法曹像の変更と法曹資格の拡散
　　　増大の提言批判
（３）法曹養成フォーラムの反司法性
?　我が国の弁護士制度とロースクール制度の問題
打田正俊
１　はじめに
２　我が国における弁護士制度の位置付け
（１）基本的人権擁護の重要性
（２）弁護士制度の保障
（３）弁護士制度は基本的人権保障のための制度
（４）司法改革による法曹増員政策の誤り
３　ロースクール制度の問題点
（１）法律知識を持つ多数の人材の必要性
（２）アメリカの制度と日本の制度の比較
（３）従前の法曹養成制度
（４）ロースクール制度の問題点
（５）ロースクールをめぐる問題の根本原因
（６）司法試験は単なる資格試験ではない
４　まとめ

?　司法と法曹の役割、司法修習と給費制
松浦武

１　はじめに
２　司法の役割と法曹三者（裁判官、検察官、弁護士）
　　の業務
（１）国民が求めている社会と社会秩序
（２）国民が求めている社会秩序、司法及び法曹三者の
　　　役割
（３）法曹三者の業務の重要な公共性
３　あるべき法曹養成制度
（１）法曹三者養成制度のあり方
（２）戦前の法曹養成制度
（３）戦後の法曹養成制度（司法修習制度）
（４）司法修習期間２年の意義
（５）２年間の統一・平等の修習制度の社会的、国民的
　　　有益性
（６）オン・ザ・ジョブ・トレーニング導入の修習期間
　　　短縮論
（７）修習期間１年の制度の不当性とあるべき法曹養成
　　　制度
４　司法修習生の給費制について
（１）法曹養成に関するフォーラムの「第一次とりまと
　　　め」
（２）国家事務を担う法曹三者の養成制度と給費制
（３）司法修習制度の沿革と給費制
（４）弁護士になる司法修習生と給費制
５　司法試験合格者数と弁護士制度
（１）司法審意見書の市場原理による合格者増員論
（２）司法審意見書のいう「法の支配」
（３）司法審意見書の企図する弁護士制度
６　法科大学院制度の問題性と悲惨な状況と予想の現実
　　化
（１）法曹養成制度ワーキングチームの懸念の表明
（２）予想の現実化
資料編・日弁連史に刻まれなかった資料の幾片
あとがき　武本夕香子