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叫べない、なんちゃって詩人の会コミュのポエムお題:「シド&ナンシー」

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「黒い皮コートの女」

バンドの打ち上げ。

黒い皮のロングコート、
黒いロングブーツ、
黒い長髪、
黒づくめの女が、
カウンター席に座って、
ボックスで騒ぐ我々をチラチラと見ていた。

となりの眼鏡の男と話していたが、
我々から嬌声が上がるたび、
女は眉を上げてこちらを見た。
ときどきメンバーが行って話しかけていたので、
今日のお客の一人のようだった。

終電もなくなり、
店には我々とその女たちだけになった。
酒もまわった頃、
女はすっと立って、我々のボックス席に割り込んで来た。

音楽の間に聞こえてくる彼女の話。
「ナンシー・スパンゲンが………!」
「アニタ・パレンバーグが………!」
「マリアンヌ・フェイスフルが………!」
音に負けじと大きな声だったが、その先は聞き取れなかった。

ファンの子のひざ枕でメンバーが横になり出した時、
女は俄然、動きが激しくなった。

持ち込みの一升瓶が何本も開いていた。
女はせっせと瓶を集め、
残っている酒を、一本の瓶に集めようとしていた。
女が一升瓶を抱きかかえたので、
“子羊くん”と呼ばれている一番若いドラマーが、
下の一升瓶を押さえてあげた。
一升瓶の口と口が合わせられ、
私は女がつぎ終わるまで、目を離すことが出来なかった。

みんな赤い顔で眠そうだったり、眠ったりしていた。
女は二、三人固まっている塊りを巡っては、
何かを大声で叫んでいた。
私は後ろを向いて座り直した。

最後に見たとき、
女は皿のキャベツの千切りをつかんで、
“子羊くん”に投げつけていた。
子羊くんは頭にキャベツを乗せてじっとしていた。
女は眼鏡の男に抱きとめられ、店を出て行った。

始発の時間になった。

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