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アーマード・コアシリーズ名言集コミュのACでSS

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自由参加のSSスレです。

名言を生んじゃいましょう。

「今この瞬間は、面白いものが全てだ。
私を笑わせてみろ!」
HN.格納にもグレネード

コメント(79)

数日カラードからの連絡が途絶え

マスコミは連日のように謎のネクストや軍事関連の事を
岡部氏が連日のように装備についてあれやこれや有効射程がなどと説明している・・・・

そんな時に・・・・
外にネクストが急に降り立つ音が聞こえる
ビルの中に居た3人が外に出てみると
コンテナを両手に持ってアンビエントが佇んでいた・・・

セレンさんは頭をかきながら
どうしたんだ?とアンビエントにたずねる

アンビエントから降りた少女は
ハイ!お届け物です

有沢様からメイにお手紙と
日用雑貨らしいですよ。
何でもGWで怪我をされた有沢様が
帰郷のさい温泉の成分を
自前の爆薬研究班に研究させて作った
温泉の素だそうです・・・
ちなみに15t入ってるそうですよ・・・・

っき!と僕をにらむと
じろじろ見ないでください
いやらしい・・・っと一言

僕・・・もう立ち直れそうにありません・・・・

そうそう先日でのカラードの集まりでですが・・・
どうもアクアビット側から首輪付きのリンクスに
例の計画実行するに当たって
貴方に取引を持ち掛けたいと言っていましたよ
美人の研究者っぽい人が・・・

私は自分がなぜこんなにションボリしているのかわからず戸惑いながら話を続ける・・・

メイは其れを聞いて
どんな人
どんな関係?
っと急にかれを問い詰める・・・

本当に微笑ましい光景なのですが・・・
リリウムは・・・アクワビットの動きとこの首輪付きの動向を探れるのでしょうか・・・ 王大人・・・
まぁどうせ裏で別ルートでも調べてると思いますが・・・

そんな事を思っているとメイはどうぞどうぞと強引にビルの中に私を引きずりこんで行く・・・・



こんな朝から人が来ると思ってなかったから食事の用意どうしよっか?
っとメイ

リリウムは何が食べたい?
食べれないもの無かったわよね?

少しうつむきながら
ハイっと答える

今日セレンさんの当番じゃないんですか?っと僕が聞くと

セレンさんはイヤ・・・今日はメイが作ってくれるそうだっと苦笑する・・・

僕はあぁ・・・なるほどっと手を叩くと

セレンさんは・・・ふてくされた顔でぷいと他所を見る

じゃあ僕も手伝いますよっとメイに言うと
メイもじゃあお願いね☆
リリウムもお手伝いしてよろしいでしょうか?
メイはもちろんよ☆
そんな会話が続き
食事を終え少したった頃・・・
自室でリリウムから貰ったファイルを見たメイは明らかに
怪しい笑顔で
もう間違いなく不純なスマイルで
フフフ・・・っと笑っている
リリウムも内容を理解しているらしく・・・・
先ほどからなにかを準備しているようだった・・・

そして・・・リリウムとメイがセレンに何かを告げると・・・
セレンもほうぅ其れは面白いっと獲物を狩る目つきで僕を見ている・・・・

そして何食わぬ顔でセレンさんは・・・僕に向かってそうだ・・・・
お前このビルの地下にレジャー施設が有る事を知ってるか?などと言い出した・・・
お前らそこで遊んで来い私も後で行くっとセレンさんは言ったとたん・・・
メイとリリウムは両脇から手を回し間接をかけるような体勢で僕を連行した・・・
(罠ですヤバイです支援機が裏切るとかそんなレベルでなくヤバイです・・・・助けてください・・・神様・・・・)



抵抗をあきらめ地下に来ると・・・
明らかにプールのような施設が無人のまま稼動していた・・
あの・・・・ココは?
メイにたずねると元々このビルはGAの都市開発の一環で作ったんだけど
GAEのごたごたで開発されなかったの・・・・
でも水周りとか清掃ロボットとかは稼動し続けないと逆に施設がいたんじゃうからね・・・

太陽光パネルとか今でもこの施設が稼動してるから生産されてるものも有るし周囲にはGAの工場とかも有るしね
まぁ・・・このビルは立ち入り禁止になってるし誰も居ないけどね
といいながらスーパースパと書かれた所に連れて行かれる・・・

メイは真剣な顔で
っで・・・・
私たちは女湯に入るから一緒に入る?などと聞いてくる

僕はえんりょうします・・・・と答えると

メイは・・・水着きせるから大丈夫よ?っと言ってニコニコ連れて行こうとする・・・・

いえ・・男湯に入りますっと答えると

リリウムさんが急に
なんでも有沢様曰く温泉というものは裸で入らないといけないとか・・・
私もどうしようかと思っていたので・・・
っと言うなりうつむく・・・

なんだかんだで
2:1で
僕は男湯に入れる事になった・・・

更衣室のようなところに入ると
木の札の付いたロッカーがあり
出入り口には大きな自販機しかも珈琲牛乳のみ
・・・・
なんなんです?ココはと大声で叫ぶと
壁越しに

有沢さまの趣味で作らせた銭湯と呼ばれる施設だそうです。

そうなんだ・・・っと思いありがとうリリウムと答えると

ハイっと答えが


因みに入浴場正面の壁のモニターに映し出されている絵は
富士山とよばれる伝統的な山だそうです

そんなこんなでお風呂に入っていると

セレンさんが隣に入ってくるのが解る・・・
やがてリリウムは上せましたといって
リリウムが上がった

セレンさんとメイは何かを話している
僕も上がりますねっと告げ更衣室に向かうと・・・・

そこには・・・
水着のリリウムが待っていた・・・
其処には紺の一体型の水着でやや薄い胸元には
りりうむ
と平仮名で名前が書かれていた

ッキ!っと睨みながら・・・
王大人が・・・その・・・っと言いながらうつむく

前を・・・隠してください・・・その・・・
今の状況にきずいた僕はハッときずき隠すと・・・

リリウムは・・・・っとうつむきながら・・・・
一方その頃

メイ?貴様どういうつもりだ
この壁は鉛板を入れているのだろ?とセレン

ふっふっふメイは楽しそうに
リモコンを取り出し・・・・
そうこの壁はコジマ粒子も放射能すら通さないし
電動ドリルでも穴を空けれない鉄壁よ
このビルの隔壁と同じね☆
そんなこんなをしている時に壁越しに声が聞こえる・・・・


リリウムさん・・・・それはさすがに怖いですよ・・・・

そうですか・・・初めては誰でも怖いと思いますが・・・

では無しでいきましょう
・・・
しかし硬いですね・・・

っあぁ・・・
くすぐったいですよ・・・

くっ

っは・・・

どうですか?
リリウムはお役に立てているでしょうか?

凄く・・・気持ちいいです・・・

すみませんが姿勢を変えてもらえますか?・・・


メイは壁の向こうで起こっているであろう状況を想像し
怒りの余り
リリウム!!!

おいっとセレンは止めたが・・・
それは既に手遅れだった・・・
リモコンのスイッチを押し
文字どうり男女の垣根が自動で下がっていく・・・・

メイは裸のまま壁を飛び越え湯気で視界が狭い部屋全てを見回し
声の主達が居ない事を確認すると
声が聞こえる更衣室に向かって駆け込んだ・・・・・

メイは目の前でうつ伏せで気持ちよさそうに
マッサージされている首輪付きと旧スクール水着でマッサージをするリリウムを見て
半泣きでバカ!っとその場に座り込んだ・・・

小僧・・・お前には山ほど説教が有る先に言って待っていろ!!っとセレンは言うなり

泣いているメイにバスタオルをかけると
そっと湯船のほうに誘導して連れて行った・・・
爆乳ジナイーダ


 ジナイーダは悩んでいた。

「くそ…何て事だ!どうして私は…」


 姿見に映った自分の体を見て呻く。


「どうして私はこんなバカな事を!」




 事の発端はエヴァンジェだった。

 それはジナイーダが休日に食料品の買い出しに出掛けた時の事だった。



 日付は1ヶ月程前、大型スーパーマーケットの一画、甘いデザート等が並ぶスイーツ(笑)コーナーで、レイヴンに贈るチョコレートを市販の物で済ませるか、それとも手作りにしようか悩んでいた時の事。

「おや?お前はジナイーダ、こんなところで何をしている」

 ハッとして振り向くと、そこには精悍な顔立ちのレイヴン、エヴァンジェが立っていた。

 後ろではジャウザーとプリンがチョコレートを選びながらイチャついている。


 癪に思っていたらエヴァンジェがジャウザーの尻に蹴りを入れた。


「ん?いや…な」

 言葉を濁すジナイーダ。

「まさかレイヴンに渡すチョコか?」

 そこへ、鋭くツッコむエヴァンジェ。

「ばっ、バカな事を言うな!何故私が、そっ、そっそんな俗なイベントに振り回されなければならない!」

 必死に否定したが、こんなに取り乱せば返ってバレバレだった。

 だがエヴァンジェは敢えてそれには触れず、わざとらしく言った。

「ふん、甘い物もいいが歯磨きは忘れるなよ。ドミナントとの約そ…」

 そこで一旦言葉を区切るエヴァンジェ。

 そして一度まじまじとジナイーダを見てから言った。

「ジナイーダ、お前太ったか?」

「!!!」

「いや…腹周りが以前に比べて…バレンタインに浮き足立つのもいいが、そんな脂肪は腹ではなく胸に付けたらどうなんだ。レイヴンも奇特な男だn…」

 最後まで言い終わる前にエヴァンジェは股間を蹴り上げられ意識を失った。

 ジャウザー達の後ろからフランスパンの入った袋を抱えたトロットが現れ、股間を押さえて泡を噴くエヴァンジェを見て悲鳴を上げた。


 人口呼吸をしようとするトロットをジャウザーが静かに制した。


 ムシャクシャしながらスイーツ(笑)コーナーを後にした。


 余談だが、その時同じコーナーの手作りチョコの材料コーナーで言い争うカップルと思しき二人組が口論しているのを見た。


「いいじゃないか!妻が夫にチョコを贈ったって!」

「はぁ?あんたバカァ!?そーゆう事を言ってるんじゃないわよ!腹に入れば同じなんだから安いのでいいじゃない!バカバカしい!」

「キミは何も分かってない!旧姓バレンタインのくせに、夫に渡すバレンタインチョコの値段を渋るなんて!」

「名前は関係無いでしょ!?大体仕事のある日も昼間から飲んでるくせにあたしより依頼の成功数が少ない飲んだくれが、バレンタインのチョコに欲しがったのがあんなバカ高いウィスキーボンボンだなんてそっちの方がどうかしてるわよ!!名前の通り泡盛にでも溺れて死ね!!」


 その後もしばらく口論が続き、ジナイーダも興味をそそられ見入っていると、嫁の方が旦那の股間を蹴り上げるのが見えた。
 結局バレンタインの日にはチョコは渡せず、落ち込むレイヴンにエヴァンジェに言われた事を当たり散らしてしまった。



 ジナイーダにフラれてふさぎ込んでいたレイヴンがジャックに襲われ、後ろの貞操を奪われたと言う噂が流れ始めた時はさすがに焦り、レイヴンに電話をしたが、デマだった。

 正確には後ろの貞操を奪われたのはトロットだったらしい。

 行くとこ行くとこ着いて回るトロットを鬱陶しく感じたエヴァンジェがジャックに彼を売り飛ばしたのだと言う。


 それはともかくとして、ジナイーダはレイヴンとの電話で彼にこう話した。

「来月のホワイトデーまで、会うのを控えたい」

 レイヴンはかなりショックを受けていたようだったが、エヴァンジェのせいでボディラインが気になって仕方が無いジナイーダはダイエットを決意したのだ。

 禁欲の為に、レイヴンには会えないと話をした。

 奥手でツンデレな彼女はレイヴンとはまだ手を繋いだ所より先に進展はしておらず、キスさえ交わしていなかった為、バレンタインデーにロストバージン出来なかったジナイーダは早急にダイエットをする事が求められた。





 さて、そうして始まったジナイーダのダイエットはと言うと、全く持って上手く行かなかった。

 当初はネットで大好評を博したキサラギ製のダイエットサプリをアテにしていたのだが、ジナイーダがダイエットを決意しレイヴンとの電話を終えた次の日のニュースで、サプリメントの主成分がAMIDAの体液から抽出される成分だった事が公表され、返品注文が殺到したのだ。


 いやがおうにも地道なダイエットをする意外道は無くなったが、ホワイトデーまでの1ヶ月でウエストを絞り込む事は絶望的に思えた。

 しかも彼女は一流のレイヴン。黙っていても仕事が入ってくる。

 多い日は一日に5件以上も依頼を受けるジナイーダ。

 女磨きに勤しむ時間等皆無といっても差し支えない程多忙な日々を送る彼女には、地道なダイエットをする時間的余裕は無かった。


 しかし、愛する彼の為弱音は吐いていられない。


 1週間程経った頃には、プニプニのお腹を摘んで

「軽くヤバい」

なんて古いCMのマネをする精神的余裕も無くなり、コカ・コーラZEROのCMでスレンダーな体を晒し、声高にカロリーゼロを謳うエリカ様には本物の殺意さえ湧く様になった。


 人間と言うのはどうしようも無い生き物で、こうなると徐々にストレスの為自暴自棄になり始める。

 始めはレイヴンを想ってやる気をひねり出していたのが、3月に入りホワイトデーまで1週間を切った頃にはジナイーダのお腹周りの事情は激変していた。

 現実逃避の為に有ろう事かヤケ食いをしてしまったのだ。

 ウエスト+10cm。

 鏡の前でジナイーダの顔からは生気が抜け、蒼白になった。

「運命か……」

 思わずそう呟いてしまった。

 日付は3月8日。

 レイヴンとの約束までもう日が無い。

 ジナイーダは悩みに悩んだ末に知り合いの女レイヴンやオペレータに助けを求めた。



 まず最初に電話を掛けたのはシーラだった。

 だが電話を掛けて5分でジナイーダは受話器を置いた。


 守銭奴で有名とは聞いていたが、その悪名に偽り無し。

 有効な手段があるにはあるらしい。実際自分も使っているとある薬を使えば、ジナイーダの悩みは5分で解決すると言われた。

 だが、詳しく聞きたいなら金を出せと言う。

 おまけに人の弱みに付け込んで、レイヴンでさえ法外に感じる額を提案して来たのだ。

 ワーカーホリックの為受け取った報酬を使う機会が無く、かなりの貯金があるジナイーダもさすがに即答は出来ず、答えを待って貰う事にした。
 次に助けを求めたのはムーム。

 ムームもどうやら最近ダイエットに成功したらしいと言う噂を聞いたジナイーダは、藁をも掴む気持ちでムームに電話をした。


 だが結果は…


「ってゆーかぁ、ガルムはあたいにベタ惚れだしぃ、別にあたいにダイエットなんて必要無いってゆーか?キャハハ!まぁねぇ、確かにダイエット成功したはしたけどぉ、別にしてもしなくてもガルムの愛わ揺らがないっつー訳でぇ」


 ジナイーダは暗澹たる気持ちで電話を切る。

 今時“あたい”って……。

 いくら姐御キャラでも“あたい”はさすがに無いだろう…。


 だが時間は無い。

 せめてこのウエストさえごまかす事さえ出来れば。


 ジナイーダは思い詰めていた。


 次に電話を掛けたのはプリンだった。

「もしもし?」

「お前の噂は聞いている。そこそこ巨乳らしいな」

「え?」

「突然の申し出となるが、私の悩みを聞いて欲しい」

「……もしかしてジナ?一体どうしたの?なんだかただならぬご様子だけど…」

「………実は、」



 ジナイーダは意を決し、恥を忍んで全てを話した。

「なるほどね」

「ああ…」

「シーラ…あの性悪女、あたしのおかげで痩せたような物のくせに」

「え?」

「ムームもよ。あたしに連絡寄越してきた時には電話口で『このままじゃガルムに嫌われるぅ〜』って大泣きしてたんだから。まぁあたしもジャウザーの為に今だにお世話になってるんだけど…」

「何かいい方法があるのか?」

「……まぁね」


 プリンはそうしてとあるサイトのアドレスをジナイーダに控えさせた。

「これは?」

「ちょっとした女性向けの通販サイトよ。そこで今話題になってる薬があるの」

「薬?」

「そう…“脂肪移動薬”って言うんだけど…」

「シボウ、イドウ…?」

「まぁ買えば分かるわ。あっ、いっけない!定例会議の時間だわ、行かなくちゃ!じゃね!」


 そう言うとプリンは電話を切ってしまった。


 だが収穫はあった。

 ジナイーダは早速教えられたサイトにアクセスし、脂肪移動薬を探した。

 値段は何と10万コーム!

 一般人ならおいそれとは手が出ない額だ。

 だが最早悩んでいる猶予は無かった。

 脂肪移動薬は、次の日速達で届けられた。

 ペットボトル程の大きさのガラスの瓶に、ハチミツの様な黄金色の液体が入っている。

 フタを開けて匂いを嗅いでみる。
 特に変わった匂いはしない。

 用法・容量が書いてある説明書を見た。


〇当薬は贅肉を身体の別の部位に移動させる為の飲み薬です。

〇同梱のカップの一番上の線まで薬を注いで飲んで下さい。

〇一度に移動させる量に関係無く、1杯だけ飲んで頂ければ結構です。

〇薬を飲んでから5分程してお腹がもにょもにょしてきたら、手でしっかりと贅肉を掴んで移動させたい部位に贅肉を移して下さい。

〇水で薄めたり等しないで下さい。

〇このデブが!




 切羽詰まっていたジナイーダは注意書きには目を通さずに薬を飲んだ。

 口に入れて嚥下すると、まるでプラスチックが焼けた時の様な風味がして吐き気を覚えた。
 3分程すると、お腹がもにょもにょし始めた。

「こ、これは…っ」

 お腹を触ってみる。

 いつもより少し硬く感じた。

 更に待つ事2分。

 お腹の違和感が最高潮に達する。

 脇腹をくすぐられているようで、ジナイーダは爆笑しながら転げ回った。

「あははははははははははは!!ごめんなさい!分かったから!分かったからやめて!!!!あはははははははははははははははは!!!!」


 ひとしきり笑って息が切れ、何とか座り直してお腹を触ってみる。


 まるでそこだけスライムになったかのようなプヨプヨ感。

 ジナイーダはハッとした。

 ウエスト周りの肉をそっと持ち上げてみる。

「!!!」

 肉が“ズレた”。

 掴んだ部分の贅肉が、皮膚の下を泳ぐ様な、不思議な感覚。

 気持ち悪さは無い。

 しかしどこに移動させようか。

 悩んでふと鏡を見て、ジナイーダは顔を輝かせた。


 そしてゆっくりと脂肪を持ち上げ、胸の所で手を離す。

 しっかりと定着した様だ。

「はは…は…」

 鏡の前でジナイーダは笑った。

「やった…!脂肪が胸に移った!!」

 ジナイーダは両手を掲げて叫んだ。

「\(^o^)/やったー!!」


 正にHEROSを彷彿とさせる喜び方だった。

 かなりシュールではあるが、ともかく今のジナイーダはあの有名な当時のOPそのままのスレンダーな体にして、プリンを超える豊満なバストを手に入れたのだ!

 調子に乗って腰周りの肉はお尻へ移動させる。

 文字通りボンッキュッボン!なジナイーダの完成である。

 レイヴンは少なからず驚くだろうが、嫌な顔はしない筈だ。

 ズベンも「巨乳は万国共通の男の好物ですやん!」って言ってたしな!

 かくしてダイエット(?)に成功したジナイーダは意気揚々と街へ繰り出した。

 途中、グリーンホーンがバスカーとボラボラにカツアゲされていた。


 公園に行くと、水飲み場でエヴァンジェが歯磨きをしていた。

「よぅ、エヴァンジェ」

「む、ジナ…ジナァぁぁぁぁぁぁあああ!!!!??」

「ふふん、どうだ。巨乳、その称号は私にこそふさわしい」

「い、一体どうしたんだ…」

「ヒミツだ。しかしこう悩ましいボディをしていると男共の視線が突き刺すな…」

「あぁまぁ…多分意味が違うと思うが……」

「何か言ったか?」

「い、いや」

「まぁ、私もこれでナイスバディの仲間入りだ。これからはファシネイター共々、鉄板等とは呼ばせんぞ」

「そ、そうか…」

「そうだな、“ラストボンキュ”…とでも呼んでもらおうか」

「ぼ、ぼんきゅ…?どうでもいいが、なんだか今日のお前ヘンだぞ?」

「そうか?すまんな、テンションが上がってしまって」


 複雑な表情のエヴァンジェ。

 元よりジナイーダは美人な顔立ちだ。

 今までは幼児体型と見事なまでのまな板のせいで魅力を感じなかったが、ナイスバディになった今、まるでモデルの様にも見える。

 男性の様に短く切ったショートカットの髪型も、健康的で爽やかな美人と言う印象に変わり、そこに抜群のプロポーションが加わる事で何とも言えない魅力的な女性になっていた。


「ギャップ萌えか…けどアレはなんか違うよなぁ」

 ポツリと呟くエヴァンジェ。


 視界の端では、トロットがバスカーとボラボラにジャンプさせられていた。
 ひとしきり街を歩き、道行く人々に自慢のボディを見せつけて帰って来たジナイーダは有頂天だった。

 女として申し訳程度の身だしなみは普段からしている……つもりだったが、あくまで清潔にしたり、眉を整えたりと言った程度で、出撃前でさえばっちりメイクをするプリン等とは対極だったジナイーダ。

 そんな、色気とは無縁とも言える自分が、今日は街で羨望の眼差しを集めたのだ。


 戦場に出れば、集める視線は“羨望”では無く、完全なる“畏怖”。

 企業は勿論、同業者からも恐れられる名の知れたレイヴン。

 強者は常に孤独なのだ。

 そんな中、自分に並び、遂にはこのジナイーダを討ち倒したレイヴンの存在が彼女の中で特別な物に変わるのに時間は掛からなかった。

 悪夢の様なパルヴァライザーとの死闘を制し、お互い満身創痍でレイヴンと向かい合った決戦の記憶は今も脳裏に焼き付いている。

 あの時の自分は、誇り高く死ねる事に至福さえ感じた。

 だがレイヴンはそれを許さなかった。

 大破し、今にも爆発しそうなファシネイターによじ登り、コクピットから彼女を引きずり出したのだ。



「人間なんて、望まなくてもいつかは死ぬんだ。ジナイーダ、お前は誇り高く生きろ」



 狭いコクピットの中でレイヴンに抱かれ、インターネサインから脱出した時、砂丘の向こうに見えた朝日はとても美しかった。

 メインディスプレイを塗りつぶす様な朝日の朱に照らされるレイヴンの横顔を見て、柄にも無く胸がドキドキした。

 そんな事を思い出してジナイーダは自分の体を抱きすくめた。

「わっ…私は何を!くっ…いかんな、アイツの事を考えているとどうにも調子が狂う」


 メイクなんてしなくても十分過ぎる程綺麗な顔だったが、ジナイーダはホワイトデーにレイヴンと会う時は少しくらい化粧をしようと思った。

 肝心の化粧道具は持っていなかったが、そんな事は今は彼女の頭の中に無かった。


「しかし今回のダイエットを通じて分かったな。私は少しでも食べ過ぎると簡単に太ってしまう体質の様だ…。満腹になるまで食べるのは自重しなくてはならないか」

 実際にはダイエットらしいダイエットなんてしていないし、肝心の脂肪も都合の良い場所に移動させただけなのだが、そんな事は綺麗サッパリ頭から離れている。

 洗面台の前でシャワーを浴びる支度をしながら、自分の体を見て独り言を言った。


 さて、人間と言うのは欲望に弱い生き物で、自分に取って都合の良い道具があればすぐにそれに頼る、或いは逃避してしまう生き物な訳で―――


 シャワーから上がったジナイーダは再び鏡の前で独り言を言っていた。

「ま、我慢は体に毒だしな。食べても大丈夫なのに食べないと言うのはあまり意味が無いだろう。レイヴンに会う時までにはもう少しボンキュになっといた方が色々とアレだしな。うん。それに無理な食事制限によるダイエットはリバウンドが危ないし!」

 ―――だからキミはダイエットらしい事してないでしょ。


「やっぱ風呂上がりは冷やしたビールに冷やしたチーズケーキだな!夕飯はめんどいからラーメンでいいや」



 レイヴンに会うまで、後5日―――
 次の日―――


 ジナイーダは久し振りのオフの真っ最中だった。
 基本的にはアークが発信するミッションの依頼の受諾件数に縛りの様な物は無い。

 優秀なレイヴンは山程いる訳だし、レイヴンにとっても収入は完全に歩合制なのだから仕事をするしないはほとんどレイヴンの自由なのだ。

 時折名指しで依頼される緊急ミッションでさえ、受諾の可否はレイヴン本人が決める訳であって、強制力も無い(勿論依頼を受けなければ信用が無くなり仕事も減るが)。


 ここで言う休暇とは、一定数以上の依頼遂行を果たしているレイヴンがアークに申請する事で、クライアント側からの指名をシャットダウンする制度の事だ。

 よほどの緊急依頼の場合はそれでも依頼が飛び込んで来る場合もあるが、その場合は前述の逆で、企業側がレイヴンの信用を無くす。

 こうなると優秀なレイヴンに依頼を受け取ってもらえなくなる為、やはり企業側も遠慮をする。

 ジナイーダが休暇を申請したのは2週間。

 依頼が入れば出撃すると言うスタイルの彼女には、普段休みらしい休みは無い。

 レイヴンとしても優秀なので、名指しの依頼が1日に十数件も舞い込む事さえある。

 そんな訳で、ゆっくりと落ち着ける余裕がある時は基本的にガレージでファシネイターのオーバーホールに勤しむのが常だが、女の子に目覚めたジナイーダがそんなオイル臭い休暇の過ごし方をする筈も無く―――



ムーム「そしたらガルムのやつ、何て言ったと思うぅ?」

シーラ「何々?何て言ったの?」

ムーム「『ATフィールドが欲しい』だってー!wwwwww」

一同「だ れ う ま !wwwwwwwwwwww」


 今日は女ばかりで集まって、プリンの家で鍋を囲んでいた。

プリン「そう言えばジナ、レイヴンとはどうなのよ?」

ジナ「え?い、いや…まぁ」

シーラ「何よぉ、答えなさいよぉ!ねねね、どこまで言ったの?B?Cはまだだよね?」

ジナ「な…何?BとかCとか…え?」

プリン「ちょっとシーラぁ、ジナはオクテなんだから分かんないわよww」

シーラ「え、ガチで?wwwwww」

ジナ「う…」

ムーム「まぁったくもぉー、いいぃ?恋愛のABCっつぅのがあってぇ、Aはキスでぇ、Bは愛撫でぇ、Cはぁ…もう分かったぁ?むふふwww」

シーラ「ちょっとムームぅ、アンタ酔ってない?wwwwww」

プリン「さぁジナちゃん、Cは何でしょー?wwwwww」

ジナ「ばっ…バカ?知るか!////」

ムーム「まぁたまたぁwwwwww」

プリン「何の為におっぱいおっきくしたのよぉwwwwwwこのっこのっwwwwww」

ジナ「あっ…や、やめろ!」

シーラ「いいじゃんいいじゃん、女同士なんだしぃwwww」

ジナ「ち、違う!レイヴンに…とっときたい…」

プリン&ムーム&シーラ「かぁぁわぁぁうぇぇぇぇぇwwwwwwwwwwww」

ジナ「ばっ…バカ!バカっ!」



 夜は更けて行く。


 レイヴンに会うまで、あと4日…
 ビールのカロリーが高い事は常識だ。

 ダイエット中であれば飲酒は誤法度なのは当たり前。


 しかし彼女達には心強い味方がいる。

 脂肪移動薬。

 このトピの住人の多くは男性だと思われるから敢えて言うが、女の子の体って言うのはカロリー高い物を食べるとすーぐにお腹や腰回りなんかにムダなお肉が付く訳で、体型維持の為にお風呂上がりのストレッチをしたり、普段から適度な運転をしたり、野菜もしっかり食べたりなんて言うのは口で言う以上に大事な事なのです。

 あたしは幸い人より太りにくい体質なのでそんなにダイエットに苦労した事はありませんが、実はジナイーダも真っ青の貧乳で……まぁそれはいいか。


 話を戻すが、彼女達は一様にこの“脂肪移動薬”の力を過信していた。

 だが悲しいかな、人と言うのは痛いメに遭わないと学ばない物で、この時の彼女らはまだそれに気付いていなかった。



 今日もまたジナイーダは家に帰るや否やビールを開け、昼間から晩酌状態。

 ハイボールも真っ青な飲みっぷりである。

 おまけにスルメや柿ピーなんかの高カロリーなおつまみを気の赴くままに食べまくった。

 当然そのカロリーたるや莫大な物となる訳だが、今は全く気にする必要もない。

 だって太った分だけおっぱいを大きく出来るのだから、一石二鳥である。


 そんな風に甘く考えていたのだ。


 ジナイーダだけではない。
 プリンシパルも、ムームも、シーラもだ。


 夜8時前に酔いつぶれて眠ってしまったジナイーダは、次の日の午前3時頃に目が覚めた。


 プヨプヨのお腹の肉は脂肪移動薬で胸に持ち上げて処理完了――の筈だったのだが、そこでジナイーダはハッとして鏡の前に走った。





 今まさに、このSS冒頭のあのセリフをこぼした所だ。



「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁあああ!」


 ―――そこには、爆乳を遥かに通りこし、超巨大な肉のカタマリを胸からぶら下げたジナイーダの姿があった。


 服の裾から完全に胸がはみ出している。

 アンダーとの差を計りたくなくなるような超巨乳だ。

 人間の規格を完全に逸脱している。

「これは…厄介なことに…なった……」


 叶姉妹の5倍はあろうかという胸。

 だがゴージャスさは欠片も無い。これはマズい。



 レイヴンには明日会う約束だ。

 こんな胸ではキサラギの非道な人体実験を施された人間AMIDAと勘違いされてしまう。

 いや、それならまだしも、勘違いしたレイヴンが私を撃ち殺したりしないだろうか?

 いきなり撃たれはしないにせよ、最強と呼ばれるレイヴンだ。

 下手をすればキサラギを潰し兼ねない。

 もしそうなったらファシネイターはどうなる。

 ファシネイターのFCSはキサラギ製の「MIROKU」。

 あれの代替となるFCSを探すのは面倒だ。
 何せシステム周りのスペックというのは数値だけを見ても割り出せない。

 機体にあったソフトウェアは何度もテストを重ねて選ぶ必要があるのだ。

 懸念事項はそれだけでは無い。

 もしキサラギが潰れたらファシネイターの右肩には何を乗せろと言うのだ!

 フロムの謀略の為、強化オプションを使っているファシネイターは、機体の最高速度を調節する様にアセンブルされている。

 800マシがメインなのにリボハンを格納に積む意味は一重にそれの為なのだ。

 ACwikiに書いてあったから間違い無い筈!

 いくらフロムに踊らされてるとは言え、ジナイーダはファシネイターのビジュアルが気に入っていた。

 もしミサイルの代わりにロケットやアンテナを積むなんてことになれば今後のモチベーションに響く。

 それでなくても過去にハンドレールガンなんて産廃を持たされた上にパルとレイヴンの連戦なんて無茶苦茶な事をさせられたのだ。

 巨乳になって喜んでいた結末が自殺アセンで戦場行きなんて何としても避けたい。



 ジナイーダは焦った。

 とにかくこの不気味に肥大した(させた)胸をどうにかしなければいけない。
 ジナイーダは考えた。

 どうすればこの肉をごまかせるのか。

 元よりごまかそうだなんて横着をしなければ良かったのだが、今頃それを言っても仕方が無い。

 とは言え、会心の案は浮かばない。


 取り敢えず胸の肉を目立たない場所に移し変えるしか無いのだ。


「そうだ、足の裏に…!」


 だがこの考えは甘かった。


「しまったぁぁぁぁぁぁあああ!」

 hydeが見れば間違い無く欲しがる様なシークレットブーツ。

 しかしコレは悲しいかな天然物。

 怠惰が産んだ贅肉と言う名の産物なのだ。

 ジナイーダの足の裏はそれぞれ厚底ブーツの様になっていた。

 その長さ、目測にして左右それぞれ1m。

「……隠れてねぇ!!」

 思わず自分にツッコミを入れるジナイーダ。

「そうだ、頭!頭なら髪の毛に隠れて…」

 隠れるハズ無いのである。

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


 おでこの広さ(長さ?)がこれまた不気味さを帯びてくる。

 座っていても頭のてっぺんは天井スレスレ、これもダメだ。


 その後、手のひらや顎の下等々、様々な部位を試したが無駄に終わった。

 手のひらに集めると物が持てなくなってしまう。

 顎の下に集めれば『平成義民伝説代表人』の主人公の必殺技、シャクレ・ディフェンスを不本意ながら実演してしまうのだ(誰が分かるんだろう、このネタ)。




 しかし、前身にまんべんなく脂肪を移動させるとただのデブになってしまう。

 理不尽極まりない“デブ”に対する怒りが湧いてきた。

 本来なら自分に腹を立てるべきなのだが、女と言うのは得てしてそんなものなのだ。

 ジナイーダは目立たない程度におっぱいの脂肪を全員各所に移動させると、それでもまだ風子と並ぶかの様な爆乳をサイズの合わないサウナスーツに無理矢理押し込めて家を出た。


 次ライウンに遭ったらきっと殺してやろうと、デブに対する理不尽な怒りをメラメラと燃やしながらランニングに出た。



 街まで出て来ると、夜中だというのに公園には人が沢山いた。

 そこでジナイーダは軽く悲鳴を上げた。


 公園にいるのは皆女だったのだ。

 皆一様にジャージやサウナスーツを来て激しい運動をしている。

 胸が異様に大きい者、頭が異様に長い者、妊婦のようなお腹を抱えた者、皆奇抜な体型をしている。

 その中には異様に頭の長いムームとプリン、異様に胸の大きいシーラの姿もあった。


 ジナイーダも半ベソをかきながらランニングを始める。


 不気味な笑い声が聞こえて来そうだった。

「笑う…笑う…笑う…何だっけ?笑う…サラリーマンだっけ?あっ、そうだそうだ、笑うサラリーマン…」



 セールスマンです。
 ジナイーダを含め、彼女達が一様に読まなかった脂肪移動薬の説明書の使用上の注意の欄にはこう書いてある。



〇当薬はあくまで脂肪“移動”薬であって、脂肪“消滅”薬ではありません。

〇人によっては、この薬の為に一時的に太りやすくなる場合があります。

〇このデブが!




 彼女は皆、自分の都合の良い道具に頼った挙げ句、今こうして悲惨な目に遭っている。

 ジナイーダもまた、いくら汗を流そうが1日で体重が都合良く減る筈もなく、レイヴンとの逢瀬の日当日がやって来た。



 こうなれば最早道は一つしかない。

 全てを素直に打ち明け、真面目にダイエットをすると誓って許して貰うしかない。



 約束の時間に、レイヴンがジナイーダの部屋に訪れた。

 彼女を見て絶句するレイヴン。

 ジナイーダは心底落ち込んで事の次第を話した。


「馬鹿野郎!」

「!!!」

 怒鳴るレイヴン。叱られる事は覚悟していたが、やはり辛い。

 だが、別れを告げられるのを覚悟しかけた時にレイヴンの口から出たのは意外な言葉だった。

「お前は俺を、ちょっとやそっと太ったぐらいでお前を見捨てる様な、そんな男だと思っていたのか…?」

「…え?」

「考えてもみろ、俺とお前は戦場で出会って、一時は命を賭けて戦って…そんな事があったのに今は、お互いを大切に思って、一緒にいたいと感じている」

「……」

「ジナ、俺はお前がほんの少し太ったぐらいでお前を嫌いになったりしないよ」

「お前…!」


 嬉しさと申し訳無さで、ジナイーダは涙を堪えることが出来なくなった。

 レイヴンは子供の様にしゃくり上げて泣くジナイーダの頭を抱いて、その髪を優しく撫でた。

「すまない…私が…バカだっ×※£*◆$▽〇」

「いいんだ…」

 最後の方は嗚咽のせいで言葉になっていなかったが、レイヴンは優しくジナイーダを抱き締めた。


「けど…」


 ―――けど、


「…え?」

「さすがに太りすぎだぞ、お前…ちょっと真剣にダイエットしないと……」

「ぐっ…」

「安心しろ、俺も付き合うから」

「……本気か?」

「今度はズルしないように見張らないとな」

「うっ…」

 いたずらっぽく言ったレイヴン。

 ジナイーダは顔を耳まで赤く染めた。






 何はともあれ、二人の愛は深まったのでした。

 めでたしめでたし
コクピット内に、ダメージ警告が表示される。その原因は、味方であるはずのACが振ったブレードだった。レーダーの表示では敵はいないはずなので誤って当たったというわけではなさそうだ。

「どういうつもりだ…」

返事は無い。ならば、その答えは明白。

「そちらがそのつもりなら…!」

彼女…ファナティックは怒りをにじませた声でそう宣言し、友軍信号をカットする。それと同時に、味方だったはずのACに襲い掛かった。相手は中量二脚、初期機体を全体的にグレードアップしたようなACだ。彼女の愛機、レッドアイの火力ならば撃破はそう難しいことではない。

しかし、ちょこまかと動き回るのでマシンガンの命中率は落ちるし、距離を離そうとするためスラッグガンの有効射程に収めることができない。対して、相手の武器は初期装備のものから若干攻撃力を高めたライフルであり、連射こそ利かないが確実にこちらの耐久力を削ってくる。

「クソッ…!」

耐久力低下警告がコクピット内に響いたとき、彼女は焦りから致命的な失敗をおかしてしまう。ついいつもの調子でマシンガンを持った機体の右側を相手に見せるようにして回り込もうとしてしまったのだ。移動先に障害物となるビルがあるのを一瞬忘れて。

「っ、しまった…!」

その致命的失敗に気付くのと、耐久力の限界を頭部COMが告げてレッドアイが黒煙をふいたのはほぼ同時。脚部から力を失った機体は真正面に迫っていたビルに突っ込み、その衝撃で彼女は意識を失った。
「………ん」

気がつくと、視界一杯に白い色が広がっていた。一瞬自分が死んだのかとも思ったものの、数秒かかりはしたがそれが天井であり、自分が寝ている状態にあると理解する。視線をめぐらせると、腕に繋がれた点滴が目に入る。それでようやく、彼女はそこが病院の個室であると理解した。

(助かった、のか)

どうやら自分は死んでいないらしいことを確認し、ほっと安堵の溜息をつく。そして、誰かは分からないものの助けてくれた人に礼くらいは言っておかないといけないかな、と考えたそのとき、部屋の扉が開かれる。その扉の向こうにいた人物を見て、彼女は絶句した。

「…目が覚めたか」

若い見た目に似合わないほど落ち着きのある声でそう呟いたのは、先の任務で味方だったはずのレイヴン…彼女を裏切ったレイヴンだった。所々に包帯が巻かれていたりしていることから、彼も怪我をしていることが分かった。

「ここは俺の行きつけの病院だ。無理言って急患として担ぎ込んだんだが、医者の話じゃたいしたことは無いそうだぞ」

その言葉を聞いて、彼女は自分を救ってくれたのが目の前の男だということを理解した。そして、理解すると同時に彼女の中で怒りの炎が燃え上がる。無論、その矛先は自分を殺そうとしたくせにのこのこと目の前に現れたレイヴンに対してだ。

「貴様…ッ!!」

飛び起きて組み伏せようとするが、上体を少し起こしたその瞬間全身に激痛が走りファナティックは上体も起こせずベッドの上で動きを止める。それを見たレイヴンはやれやれとでも言いたげにため息をつきながら歩み寄り、上体を起こそうとしていた彼女の額を押さえて再びベッドに横たえさせた。

「馬鹿。医者が言うには外傷はほとんど無いし内蔵も無事だって話だけど、ビルに突っ込んだときに全身打撲だけはきっちりやってんだ。無理はするなよ」

「……っ!!」

そんなレイヴンを、ファナティックは殺意すら浮かぶ瞳で睨みつける。だがレイヴンは全く動じることなく近くのイスを持ってきて、壁にもたれるようにして座った。
「………」

「………」

そう、座っただけだ。あとは何事か考えているのか、腕を組んでただ黙っている。室内を支配しかけた静寂を破ったのは、ファナティックだった。沈黙に耐えられなかったのもあるが、気になることもあったからだ。

「…なぜ、助けた」

「は?」

搾り出すように、しかしはっきりと口にしたはずのその言葉に対してレイヴンがあまりにも間の抜けた声を出したものだから、彼女は自分の体の状態も忘れてガバッと起き上がりながら怒鳴るようにもう一度問い質す。

「何故助けたかと聞いているんだ! 自分から襲い掛かってきたくせにどうしてそれを救うようなマネをする!? 〜〜〜〜〜〜っ……!」

そこまで言ってから、思い出したように全身を襲う激痛に苦悶するファナティック。

怒りに満ちた彼女の言葉に、レイヴンは苦虫を噛み潰したような表情になり、さも面倒くさそうに口を開く。

「…一つ訂正だ。先に襲い掛かってきたのはお前の方だぞ」

その言葉に、ファナティックの頭の中は真っ白になった。先ほどまで身体を支配していた怒りはどこかへ吹き飛び、代わりに混乱が訪れる。

「ど…どういう、ことだ…? 先にブレードで斬りかかってきたのはお前のはずだ…!」

困惑の表情で聞き返すファナティックに対し、レイヴンはぴっと人差し指を立てて「問題です」と言う。ふざけるなと怒鳴りつける前に、レイヴンはさっさと言葉の続き…その「問題」を口にする。
「あの任務で出てきた敵の増援はなんだった? 俺があんたと戦うう前の話だぞ」

「それが一体…」

「重要なことだ。思い出して答えろ」

見た目からは想像もつかないほどの迫力に押され、ファナティックは言われるがままに任務の状況を思い出す。任務開始から少しの間は可変MT「ブルーオスプリー」を数機撃墜していた。そして、彼の言うように確かに増援は現れたのだ。特殊MT「フリューク」が。

「フリュークだ」

そう答えると、畳み掛けるようにレイヴンは質問を重ねる。

「では次の問題。フリュークの特殊機能は?」

「光学迷彩とステルス機能だ。馬鹿にしているのか?」

こんなことはACで戦場に出るものならば、新人でもない限り大抵知っていることだ。そんなことを問題として出してきたことに少々イラっとしたファナティックは不機嫌を隠そうともせずに問う。

「重要なことと言ったが、こんなことのどこが重要なんだ? フリュークなんか珍しくもないだろう」

しかし、次のレイヴンの言葉を聞いた瞬間、彼女の思考は凍りついた。

「あの時はお前のACのすぐ隣にフリュークがいた」

「な…なん…だと…?」

辛うじて声を絞り出してそれだけ言った彼女に対し、レイヴンは淡々と続ける。

「俺はお前に襲い掛かったわけじゃない。お前のすぐ隣にいたフリュークを斬っただけだ。ブレードが当たったのはそのフリュークがお前の機体とかなり近い位置にいたせいだ」

「そ、そんなはず…私の機体のレーダーには何も…!」

彼女は反論しようとするが、それもレイヴンは予想していたかのようにあっさりと彼女を完全に沈黙させる言葉を吐く。

「当たり前だ。お前のACに搭載されてるレーダー、あれにはステルスセンサーが無いだろう。先に言っておくが俺の機体のレーダーには着いてるぞ、ステルスセンサー」

「………」

「嘘だと思うなら俺の機体の戦闘記録を見せてやるが? オペレーターに確認をとってもいい」
レイヴンの言葉に嘘は無いのだろう。でなければここまで自信満々にいえるはずが無い。ということはつまり、裏切ったのはレイヴンではなく、自分の方だったということになる。

「…だとしたら、余計に分からない…なぜ私を助けたんだ?」

もはやファナティックの言葉に先ほどまでの威勢は無く、弱々しささえ感じられた。

すがるような目で見つめられながら問われ、レイヴンは困ったような顔をしながら相変わらず淡々と告げる。

「俺があんたのACを撃破したのは下らん勘違いで殺されるのはゴメンだったからだ。助けたのはな、そんな下らん勘違いが原因で殺してしまったんじゃ寝覚めが悪いからだよ」

言葉の端々にどこかとげとげしさを感じるのは気のせいでは無いだろう。そんな勘違いで襲い掛かられたりすればファナティックでも怒りたくなる。もっとも、彼女の場合は相手を生かしておかないだろうが。

「…すまない……」

「全くだ。ロクに話も聞こうとせずにさっさと友軍信号切りやがって。あんたのACを撃墜するのに使ったせいでライフルは弾切れするわダメージ食いすぎて耐久力低下警告鳴るわ散々だったんだぞ。対AC戦をそんなに考えてない機体構成だったせいで苦戦したもんだから弾薬費と修理費で報酬7割近く飛んでったっての。ミッション終わったとき俺のAC煙吹いてたぞ」

レイヴンの言葉に再び絶句するファナティック。彼の言葉が事実なら、自分は対AC戦にそこまで向かない機体に敗れたということになるのだ。自分ではそこそこの実力があると思っていただけにショックも大きく、言葉が出なくなってしまった。
再び室内に訪れる沈黙。

今度は、レイヴンがそれを破った。

「…あんたには、謝らないといけないことがある。ここへ来た本来の目的はそれだったんだ」

「…?」

その言葉に、ファナティックは首をかしげる。一体なんだというのだろうか。

「まず一つ。あんたのACだが、回収はできなかった。あんたの救出を優先したから置いてきちまったんだ。元がないと修理のしようもないからな…すまない」

「…そんなことか」

彼女の機体を放置したことに対して律儀に頭を下げるレイヴンに、彼女は苦笑しながら気にしていない旨を伝える。

「機体はまたパーツを揃えれば作れる。私自身は生きているんだからそれで良しとしなければ」

その彼女の言葉に、レイヴンはなぜか気まずそうに目を逸らす。

「どうした?」

「………もう一つ、謝らないといけないことがあってな」

「?」

心底困った表情をしたレイヴンに疑問を覚えるファナティック。まさかミッションでの話が嘘だったんだと言い出すのではあるまいなと警戒し始めた頃、ようやく彼が口を割った。
「どうやら、表向きには俺があんたを殺してしまったらしい」

「…は?」

言葉の意味が一瞬理解できず、間の抜けた声を上げてしまうファナティック。しかし、その意味を少しずつ理解するにつれて表情が引きつり始める。

「…あんた、コーテックスから登録抹消されたんだ。慌てて機体ほったらかしてきたのがまずかったらしい。コーテックスに連絡入れなかったのもまずかったな」

つまり。

レイヴンが言いたいのはこういうことなのだ。

撃破した後救出したのはいいが、ACを放置し、コーテックスにも生存の連絡を入れなかったため、彼女は「戦死」扱いになっている、と。

「は、はは…さすがにトップランカーに戦場で喧嘩を売って生きて帰れるとは思われなかった、か…」

乾いた笑を漏らしながら、ファナティックは呟くように言う。

そうなのだ。彼女の目の前にいるレイヴンは、つい先日不動のトップランカー「エース」を下し新たな王者となったレイヴンなのである。

「………すまん」

「どうしてくれるんだぁっ!!」

ものすごく気まずそうな顔でもう一度謝罪したレイヴンを、ファナティックは涙目になりながら怒鳴りつけた。





後日、コーテックス内では新たにトップランカーとなったレイヴンが街中で女性二人に買い物に付き合わされている姿の目撃情報があったという。しかし、そんな有名人が街中でそう簡単に見かけられるはずがないと否定する意見も多く上がった。





真相は、今の所不明である。

                                  〜了〜
〜林檎少年奮闘記〜



大型輸送機の中、全く同じ外見の二機のACが佇む格納スペース、その端にある簡易椅子に二人の青年が座っている。片方はどこかボーっとしている印象がある青年。もう片方は、いかにも好青年といったやや童顔の青年である。

後者の青年は緊張した面持ちで、小さな声で何かブツブツ呟いている。

「この試験を通らなきゃ…この試験に受からなきゃ…」

この輸送機は、グローバルコーテックスの行なうレイヴン試験、その最終試験の現場へ向かっている。シミュレーターによる適性検査などをクリアした者たちが、レイヴンになるための最後の試練として実戦に放り込まれるのだ。

実戦といっても、たいしたものではない。アセンブルが整った歴戦のレイヴンならば、1人で3分以内に片付けられるような仕事である。だからこそ、試験には最適なのだ。



この程度の任務がこなせないようでは、レイヴンとしてやっていけない、と。


話は戻るが、輸送機の中では相変わらず童顔の青年がブツブツと呟いていた。

その隣では、彼と同じパイロットスーツを着たもう1人の青年が特に何をするでもなくボーっとACを眺めている。その表情には一切緊張というものが感じられず、放っておいたら居眠りでも始めそうな雰囲気すらある。

「…緊張、しないんですか?」

そんな彼に、さっきから呟いていた青年…レイヴン名:アップルボーイは尋ねてみる。会話をすることで少しでも自分の緊張をほぐそうとおもったのだ。しかし、

「あんまり」

尋ねられた青年…レイヴン名:イレヴンはその一言を返しただけで、それ以上口を開かない。

「…すごいですね。僕なんかさっきから緊張しっぱなしなのに」

そういって俯いたとき、二人に声がかけられる。そろそろACに搭乗しろという指示だった。

椅子から立ち上がり、ACに向かう直前。イレヴンが、たった一言呟いた。

「生き残ろう」

「え?」

突然のことに、思わず聞き返してしまうアップルボーイ。しかしイレヴンはそれ以上何も言わず、すたすたと自分のACに向かって歩いていってしまった。

不思議と、アップルボーイの緊張はその一言だけでほぐれていた。
ACに搭乗し、各種計器を立ち上げる。ジェネレーターに火をいれ、あとは戦闘モードを立ち上げるのみという状況にしておいてから数分。試験官から、音声通信が入る。

『そろそろ目標地点に到達する。もう一度、君達に課せられた依頼を確認する』

それと同時にデータが送信され、コクピット内のディスプレイに作戦内容が表示される。

『目標は、市街地を制圧している部隊の撃破。敵勢力は戦闘メカだ』

試験官の言葉とその内容に違いがないことを確認し、アップルボーイはスロットルレバーを握りなおす。ほぼ同時に、輸送機のハンガー内にガゴン、と鈍い音が響いた。

『この依頼を達成したとき、君達はレイヴンに登録される』

大型モーターが回転するような駆動音と共に輸送機の後部ハッチが展開し、ACのモニターに上空から街を見下ろす景色が広がった。

『このチャンスに二度目はない。必ず成功させることだ』

その言葉が終わると同時に、GOサインが出された。

『これより作戦領域へ投下、ミッションを開始する』

アップルボーイはACを歩かせ、輸送機の外へと飛び出させる。着地するかしないかの内に戦闘システムを立上げ、『システム キドウ』という抑揚のないコンピューターの声を聞きながら着地と同時に動き出す。

「これに生き残れば…!」

前進して敵を武器の射程内に…と思った瞬間、彼の機体の横を何かが猛烈な速度で駆け抜けていった。

「!?」

一瞬なんなのか分からなかったが、その後姿を見てすぐに理解する。自分が乗っているのと全く同じ見た目のACだ。一緒に試験を受けているイレヴンがOBを使って敵に突っ込んで行ったのである。

さっきまでならんで座っていた、ぼーっとした姿からは想像もできない積極的で攻撃的な動きに一瞬呆気に取られるアップルボーイ。

『レーダーに表示されている赤いラインは作戦領域を示している。1歩でも外に出た時点で作戦放棄とみなす。気をつけろ』

どうやら危ないところまで飛んで行ったらしい。試験官にイレヴンが注意されているのを聞きながら、アップルボーイは交戦を開始していた。敵は手近にいた逆関節のMT。安価で広く普及しているらしいが、総合的な戦闘能力はそう高いものではない。相手の攻撃を避けるために動き回りながらライフルで攻撃していると、そう苦労することもなく一機撃破することが出来た。
(次は…)

敵の位置を確認するため、アップルボーイはレーダーを確認し…そして驚いた。先ほどアップルボーイが1機撃破する間に、敵を示す赤い光点がもう2つほど減っていたからだ。味方を示す黄緑色の光点が、頻繁に動き回っている。おそらくイレヴンの仕業だろう。

(すごい!)

アップルボーイはイレヴンの戦闘力に素直に感心し、彼から一番離れた位置にいる敵へ向かうことにした。幸い、アップルボーイからはさほど遠くない。

敵を射程内に捉え、攻撃を開始。今度はライフルを撃ちながら接近、ブレードを一閃して撃破する。同じ要領でもう一機撃破したところで、試験官から再び通信が入った。

『輸送機の飛来を確認。どうやら敵の増援のようだ。予定外だが敵は敵だ、全て撃破しろ』

(増援!?)

その言葉を聞いて、アップルボーイはかなりの焦りを覚えた。それこそ、パニック1歩手前といった感じである。

(ど、どうすれば…っ?)

冷静に冷静にと自分に言い聞かせるが、それをすればするほど焦りは加速する。混乱状態に陥りかけた時、たった一言の短い通信が入った。

『…落ち着け』

それは、出撃前に聞いた声。イレヴンが入れた、たった一言の通信。

たったの一言、ただそれだけなのに、緊張感というものと無縁なその声がつむぐ言葉が、アップルボーイに冷静さを取り戻させる。

(そ、そうだ。焦ってちゃダメだ。まずは増援の数と機体を確認して対処法を考えるんだ)

落ち着きを取り戻したアップルボーイはレーダーを確認し、新たに出現した光点の数を数える。

(3機か。数はたいしたことないな。問題は種類だけど…)

ビルの陰から様子を窺うと、そこには投下された3機の重装MT、スクータムがいた。

スクータムの戦闘能力は、先ほどの逆関節メカよりははるかに高い。しかし、所詮はMT。ACであれば、負ける確率は低いだろう。

アップルボーイはビルの陰に機体を隠したまま右腕だけを出し、ビルを盾にしながらライフルで攻撃する。側面から撃った数発は多少のダメージを与えたが、正面に向き直られ、盾を構えられて防がれてしまう。ダメージが全くないわけではないがかなり通りが悪かった。

と、そこに後方からAC特有のブースト音を響かせ、イレヴンのACが接近してくる。敵を2方向から同時に攻撃すればどちらか片方には必ず有効打がいく、そう考えて通信でそれを伝えようとしたその瞬間、ブースト音が聞こえた方向にアップルボーイはまた驚かされることになった。
「え、上!?」

イレヴンのACは、驚いたことにビルの屋上を飛び跳ねるように移動していた。そのままスクータム3機の上へと躍り出ると、ブースターで上昇してスクータムの真上からライフルで攻撃を始める。そんなに長くENがもたないためにすぐに落下するも、その位置もあらかじめ考えていたのかスクータムの真横。振り向かれるより早くブレードを一閃し、そのスクータムを1機撃破してしまった。

残る2機のスクータムはイレヴンのほうを脅威と判断したのか、2機ともイレヴンのACに向かっていく。そのがら空きになった背中に、アップルボーイは容赦なく襲い掛かった。

背後からのライフルとブレードによる攻撃で、また1機スクータムが撃破される。

「これで最後だ!」

そう叫びながら、後方からの奇襲にうろたえるスクータムにライフルを撃ち込む。何発か食らわせた直後、反対方向からのレーザーブレードによる一閃で、最後のスクータムも爆散した。

『敵部隊の全滅を確認。なかなかいい動きだ、そうでなくてはな』

戦闘を終えた2人のACに、試験官から通信が入る。どっとした疲れを感じながら、アップルボーイはこの言葉は自分よりもイレヴンにかけられた言葉なのだろうと考えていた。実際、まだレイヴンになっていない自分から見てもすごかったのだ。

『力は見せてもらった。ようこそ、新たなるレイヴン。君達を歓迎しよう』

その試験官の言葉と、『モクヒョウ タッセイ』という相変わらず抑揚のないコンピューターの声を聞いて、ようやくアップルボーイは人心地ついたのだった。
コーテックス本部から、新たに与えられたガレージと隣接したマンションの一室に向かうアップルボーイ。同時に試験を終えたこともあり、イレヴンと一緒に本部を出てそこへ向かっていた。

「イレヴンもこっちなんですか?」

「そうみたい」

「ひょっとしたら、案外近い部屋かもしれませんね」

「ありえるね」

本部から現在位置まで、およそ20分ほど。ここまででアップルボーイがイレヴンについて知ったことは、やはり普段はボーっとしているらしいこと、そして口数が少ないということだった。ずっと黙っているわけではなく、会話を振れば応対してくれるし、質問をすれば答えてくれる。そして時たま質問を返してくる。ただ、その一言一言が簡潔で短いのだ。

会話を続けながらもうすこし歩いたところで、アップルボーイは目的地に到着した。

「3124…ここだ。どうやら僕はこの部屋みたいですね」

「予想が当たったね」

突然出てきたその言葉に、頭上に?マークを浮かべるアップルボーイ。しかし、イレヴンが指の間に挟んで見せた彼の部屋のカードキーのナンバーを見て納得した。

そのカードキーには、3125、と数字が刻まれている。案外近いどころか隣の部屋だ。

「改めて、よろしく」

口の端をちょっとだけ持ち上げて微笑しながら、イレヴンは手を差し出して握手を求める。

「…こちらこそ、よろしくお願いします!」

アップルボーイは快くその握手に応じた。



レイヴンとなった初日が、もうじき幕を下ろす――。



                                  終
〜林檎少年奮闘記2〜



レイヴン試験からしばらくの時が過ぎた。アップルボーイはレイヴンとしていくつかの依頼をこなし、今のところ着々と資金をためつつ生計を立てている状態だった。アリーナに登録されていれば一縷の望みをかけて戦いに行くのだが、運悪く登録からあぶれてしまっていた。

隣に住んでいるイレヴンは同時期にレイヴンになった中では、レイヴン試験をトップの戦績でクリアしており、1枠だけ開いていたアリーナの空席にその名を連ねていた。アップルボーイはそれをうらやましいとはおもったが、ねたんではいない。彼の戦いぶりを間近で見ていたこともあり、当然の結果だとおもっていた。

アリーナの観戦はアップルボーイにとって以前からの楽しみの一つであり、レイヴンとなった今では戦い方を学ぶ重要なものでもある。そして最近では、改めて同期のレイヴンであるイレヴンの強さに驚かされていた。彼は機体の装備をほとんど変えないまま、ごく短期間でアリーナのEランクを制覇。Dランクの中盤に上ったときには、すでにその機体はコア以外別の機体になっていた。頭部はまるで頭がないかのような薄っぺらいパーツに、腕は初期機体のものの姉妹機と言われるSOL、脚部は重量二脚の中では最も安いもの。ライフル、ブレード、ミサイル、レーダーという武装の構成はそのままにそれぞれを1〜2ランクアップした武装に強化し、エクステンションには急速旋回を可能にするターンブースター。そして、当然のように内装やブースターも強化されている。

対して、アリーナでの賞金という特別収入が見込めないアップルボーイは機体の色以外は変わっていなかった。

そのためアップルボーイは、いつか愛機:エスペランザを強化できたときのために、そしてその資金をためるために腕を磨くことにしていた。
そんなある日、ミラージュから協働依頼の要請が来た。どうやら、レイヴンを雇ったがAC1機では戦力不足になる可能性があると思ったのか、寮機の候補に入れられていたらしい。そして、寮機候補にはACが3機。それぞれにアセンブルの確定している二機…フラジャイルのAC:ナイトフライヤーと、ゲドのAC:ゲルニカを押しのけて、初期機体であるにもかかわらずアップルボーイのエスペランザが選ばれたのだという。

二機とも耐久力に問題を抱えたACであり、他に比べて硬いエスペランザが選ばれたのだろうというのがオペレーターの分析だった。

しかし、アップルボーイは選ばれた理由がそれだけでは無いような気がした。



なぜなら、寮機にアップルボーイを指名したそのレイヴンというのが、イレヴンだったからだ。



彼は以前、イレヴンと一緒に夕食を取りに出かけたことがある。理由は、アリーナ初勝利のお祝い。同期のレイヴンとして、お隣さんとして祝ってあげようとおもったのだ。もっとも、所持金を理由に夕食の料金を負担してもらうことになってしまったが。

その夕食のときにこんな会話があったのだ。



「仕事はどう?」

「がんばってるんですけど、まだそこまでうまく出来なくて。報酬は運がよければ辛うじて3分の2もらえてる状態です」

「そっか」

「イレヴンはどうです?」

「似たり寄ったり」

「そうなんですか。あ、そうだ。僕、寮機斡旋に登録したんですよ。もしよければ、イレヴンの任務に呼んで下さいね」

「ん」
そして、今に至る。

出撃前に顔をあわせたイレヴンは、いつものようにどこかボーっとした雰囲気を漂わせていた。

「呼んでくれたんですね」

「うん」

相変わらず口数の少ないイレヴン。そんな彼の様子に苦笑しながら、アップルボーイはミッションの内容を確認した。

任務は、モノレール防衛。電力が復旧するまで、敵勢力…おそらくはクレストの部隊に狙われているモノレールを守ること。作戦領域について戦闘システムを起動すると同時に、モノレールの運転士から通信が入る。

『レイヴン、敵部隊がこっちへ向かったという連絡があった。こちらはまだ動けない。護衛を頼む』

『移動反応多数!! 接近中です!』

その言葉に、アップルボーイは気を引き締める。通信が入ってから間もなく、レーダーに敵影の反応があった。数は6。2小隊と言ったところだろうか。

それを確認した瞬間、エスペランザの横をイレヴンのACが駆け抜けて敵に向かっていく。

アップルボーイはイレヴンが向かったのとは反対方向から来る3機を相手にすることにした。近づかれる前にライフルで攻撃し、近づいてきたところをブレードで斬る。スクータムは流石に硬く、ライフルでダメージを与えた上で2回は斬り付けなければならなかった。1機撃破している間に残り2機に接近され、2発ほどバズーカの直撃をもらってしまう。

「まだっ!」

アップルボーイはエスペランザを2機のスクータムを結ぶ直線の延長線上へと移動させ、1機の陰に入り込む。こうすることで、もう1機の攻撃を封じたのだ。被弾率を減らし、半ば強引にレーザーブレードでスクータムを切り捨てる。その間に、もう一機のスクータムは側面から回りこんだイレヴンの手で撃破された。
『敵、第2波接近!』

一息つく間もなく、敵の増援の報告がオペレーターから入る。今度は4機と先ほどより数は少ないが、また挟撃だ。

『こっち頼む』

「了解!」

イレヴンからの短い通信に応じ、接近する敵を待ち構えるアップルボーイ。その間に、イレヴンのACはターンブースターで急速旋回し、重量機にしては速い速度で反対側の敵に突撃していった。

アップルボーイはスクータムに対し、モノレールのある側から回り込みをかけて攻撃を仕掛ける。いかな重装MTスクータムといえど、ACを放置しておくのは不味いと判断したのか1機はアップルボーイを狙ってきた。アップルボーイはライフルで牽制しつつ危険を承知でスクータムのバズーカを持った腕の側に回りこみ、レーザーブレードで斬りつける。と、どうやらバズーカの弾に誘爆したらしく、右肩の辺りを中心に爆発を起こしてそのスクータムは吹っ飛んだ。爆発のあおりを食って少々ダメージを受けたものの、まだなんとかなるレベルだ。アップルボーイはモノレールに向かっていったスクータムの後を追い、イレヴンからのライフルでの援護をうけつつ背後から2回ほど斬りつけて撃破した。

『第3波、来ます!』

「またですか!?」

オペレーターからの報告に思わずそう言ってしまうアップルボーイ。しかし、愚痴を言っても敵は帰ってくれない。本当に息つく暇もない。

レーダーに表示された敵影は2。先ほどより速く到着したことと、数が少ないことから、第2波の部隊の一部が遅れてきたのかもしれない。

『各個撃破で』

「分かりました!」

イレヴンは再び距離的に遠い敵へと向かい、アップルボーイは近い方を迎撃する。ライフルを撃ちながら接近する最中、敵の撃ったバズーカを避けようとして、

「!?」

何かにぶつかり、バズーカを避けられずに直撃を食らってしまう。慌ててそちらを確認すると、避けようと下方向にはこのターミナルを支える柱があった。着たい状況をチェックすると、ダメージが蓄積され始めている。

「これ以上は…」

ダメージを受けるのは避けたいところである。いくら安価なパーツ構成ゆえに修理費がさほど高くないとはいえ報酬に響くのはいただけない。

アップルボーイはこんどは柱に注意しながら、時にそれを盾にしながら移動してスクータムに接近しようとし、

「!!」

次の瞬間、イレヴンのACが側面からスクータムにOBで突撃してブレードで斬り捨てた。どうやら反対側の敵を倒し終わったので助けに来てくれたらしい。

「…やりますね!」

突然のことに一瞬呆気に取られていたが、何が起こったのか把握できれば何も驚くことは無い。

第3波をなんとか捌き、周辺警戒を続けていたところ、モノレールの運転士から通信が入った。

『電力が回復した! 全速でこの地域を離脱する!』

その言葉を合図に、護衛目標であるモノレールが動き出し、徐々に速度を増して作戦エリアを離れていった。アップルボーイとイレヴンは並んでそれを見送り、見えなくなったところでようやく安堵する。

『護衛目標の離脱を確認。作戦成功です』

『モクヒョウ タッセイ』

オペレーターからの通信と、コンピューターの声を聞き、誰知らずコクピットの中で溜息をつくアップルボーイであった。
久方ぶりに、イレヴンと並んでマンションへの帰途に着くアップルボーイ。もともとイレヴンの口数が少ないのと、二人ともミッションの後で疲れているので会話は無い。が、お互い特に苦になっている様子は無かった。

マンションの部屋の前まで来たとき、急に自分が住んでいるのの向かい側の部屋の扉が開く。中から顔を出したのは高校生くらいと思しき女の子だった。

そういえば、確か昨日新しくレイヴン試験を突破した人が住むことになったと聞いている。

「ひょっとして、3124と25に住んでる人?」

その女の子は快活さを感じさせる声音で二人に問いかけてくる。イレヴンは無言のまま頷いて答え、アップルボーイは「僕は3124に」と答える。それを聞いて、その女の子は「良かった〜」と心底安堵したように呟いた。そして、一瞬だけ真面目な顔になると、

「昨日からここに住むことになったレジーナよ。これからよろしくね」

と、朗らかな笑顔と共に自己紹介して手を差し出してきた。

「僕はアップルボーイ。最近レイヴンになってここに住み始めたんです。よろしく」

アップルボーイも笑顔で自己紹介しつつ握手に応じる。その隣で、イレヴンがなぜか首をちょっと傾けていた。

「? どうかしましたか」

気になったので訊ねてみるが、「んー…?」と唸るように言うだけで返事らしい返事がない。何かを思い出すようにレジーナの名前を何度か呟き、突然「ああ、そうか」みたいな顔をして、ぽつりと言った。

「あ…昨日のメールの」

「へっ!?」

驚いているのはレジーナだ。アップルボーイには何のことだか分からない。それより、彼としてはイレヴンが自己紹介に応じていないのが問題だと思えた。

「ちょっと、とりあえず自己紹介しないと。失礼ですよ?」

「そうか。俺はイレヴン。よろしく」

いかにも彼らしい、簡潔すぎる自己紹介。それを受け、硬直していたレジーナの頬がみるみる紅潮していく。

「いや、短すぎますって。せめて僕と同期だってことぐらい言いましょうよ。…あれ、どうかしました?」

やや遅れてレジーナの異変に気付き、アップルボーイが声をかけた瞬間、

「ええーっ!!?」

レジーナの声がマンションの廊下に響き渡った。



後から聞いたのだが、彼女は昨日レイヴン試験を受けた際妨害を受けそうになり、そのとき少し離れたエリアでその武装勢力を殲滅して彼女を助けてくれたのがイレヴンだったらしい。

ご近所さんを一人増やして、彼の庸兵家業は続く…。



                                    終
※このSSは筆者のフロム脳による妄想の暴走を多分に(割合にして9割5分)含んでおります。そのことに留意し、突っ込みどころにはご了承ください。



最後のその後
『基幹ユニットの損傷率が…90%を超えました…エネルギー供給率…低下……』

最高出力を誇るブレード「MOONLIGHT」の一撃によって、管理者は機能を停止しようとしていた。

『再生プログラム…最終レベルへ移行します…』

「…?」

『地上への…ゲートロックを…解除…』

「…!」

停止する間際のその言葉を聞き、管理者にトドメを刺したレイヴン…サイフォンは息を呑む。

『本命令の実行を…持って…プラグラムの…全行程を終了…システムを…てい止シマす…』

『今の言葉は一体…地上…?』

彼の相棒たるオペレーターのレインが、その管理者の言葉に首をかしげている様子がありありと想像できる。

なぜならば、戦いで傷ついた愛機のコクピットの中でサイフォンも同じく首をかしげていたからだ。

「…とにかく任務は終了だ」

考えても仕方が無いか、と、サイフォンはレインに管理者破壊という任務完了を伝える。

『そうですね…お疲れ様で…! 待って、これは…!』

それに応じようとするレインだが、その途中で突如通信にノイズが混じる。

『通信妨害…! レ…ヴン……を…けて…』

そのノイズは徐々に激しくなり、とうとうオペレーターとの通信が繋がらなくなってしまった。
そして同時に、自分が入ってきたゲートがロックされる。

「………」

サイフォンはすぐさま愛機の状況をチェックし、周辺を警戒する。

(マシンガンは残弾103…撃ちすぎたか。ミサイルは残弾48か。しかしここが閉所だということを考えるとアテにはできないな。ブレードは健在、耐久力数値はざっと6割強、ってとこか。敵がMTなら問題は無い。AC1機なら何とかできなくもないが…厳しいな)

しかし、いくら警戒していてもレーダーに敵の増援が映る様子はない。まぁ当然といえば当然である、唯一の入り口が閉まったままなのだ。

「なんだ…?」

地上へのゲートを開けたとか言っておきながら自らを破壊したレイヴンを幽閉して道連れにする気だろうか?

それはどうだろう。この場所のことはすでに依頼主であるユニオンが知っているし、自分がここにいることはオペレーターのレインが知っている。救助が見込めない状況ではない。

訳が分からない状況に首を傾げつつ、それでも何か脱出の糸口がないかとサイフォンは管理者のあるそう広くない中枢を歩き回り始めた。
すると、その途中…ほとんど灯りがなくなって暗い中枢に、一筋の光が差し込む。

ゲートが開いたわけではない。ゲートの向こうだってそう明るくはないのだ。では何かといえば、壁に縦長の穴が開き、そこから光があふれ出ていた。

(…扉?)

サイフォンから見ると、そうとしか形容できない。しかもサイズは、ACでは到底通れない人間サイズ。

と同時に、さっきから静かにノイズが流れっぱなしだった通信に声が割り込んできた。

『……て』

「っ!」

通信が繋がったのかと思い、感度を上げるサイフォン。しかし、聞こえてきたのは、聞きなれたオペレーターの声ではなかった。

『来て…』

「………」

はっきり行って不気味である。

誰もいない管理者の中枢区画で、管理者を破壊したと同時に通信をシャットダウンされた挙句に閉じ込められ、明らかに出口ではない扉が開いて、トドメに通信機を介して聞いたことのない女の声がそちらへ来いと誘っている。

「ホラー映画かオイ…」

悪態をつくサイフォン。これが映画であればベタだなぁとか言って淡々と見ているのだが、当事者になってみると以外に怖い。

だが、どの道ここにいても状況が変わりはしない。先ほどまで動き回っていた小型自律兵器の機能停止は確認しており、おそらくACを降りても問題は無いだろう。

サイフォンは意を決して、緊急用のサバイバルキットを背負い、拳銃を手にACから降りた。
予想通り、攻撃は無かった。

煌々と灯りに照らされた、どことなく研究施設や病院の通路を思わせるそれを、サイフォンは拳銃を構えたまま油断なく進んでいる。

通路は一本道で、ACを降りてからもヘッドセットから先ほどの声が彼を招いていた。

しばらく進むと、突き当りで通路が途切れ、部屋らしきものの扉があった。

サイフォンは開閉スイッチのある側に身を隠しながらそれを操作し、扉が開いたらそっと中の様子を窺う。

部屋は通路とは打って変わって薄暗く、部屋の中央にある大きなガラスの筒から発せられる淡い光のみが光源だった。そのほかにはその筒に繋がっているらしい大小のケーブル類が床に散乱しているだけで、それ以外には何も無い。

それでも拳銃を構えたまま部屋にゆっくりと足を踏み入れ…光源である筒を見て、サイフォンは絶句した。

「なっ…!!」

絶句もするだろう。

なぜなら、その筒の中には髪の長い少女が入っていたのだから。

筒の中で眠るように眼を閉じている少女は入院患者や非検体などが着ているような質素な服に身を包み、たゆたうように全身の力を抜いておそらく筒の中を満たしているであろう液体の中を漂っている。

びっくりするほどきれいなその少女に半ば見惚れていたサイフォンだが、部屋に鳴り響いたブザーのような音で我に返った。

反射的に銃を構え、油断なく周囲に目を向ける。

しかし、一切変化はなく、一体なんだったのかと思いながら目線を筒に戻して…唯一の変化と、眼が合った。
「……な、に…?」

筒の中の少女の目が、開いている。そしてじっとこっちを見ている。

お互いに魅入られたように見つめあい…ふと、少女が微笑んだ。

その瞬間、筒につながれていた各種のケーブルが次々と外れ、筒のガラス部分が持ち上がる。

同時に内部を満たしていた溶液があふれ出し、その中に浮いていた少女の脚が筒の底に着く。しかし上手く脚を着けなかったのか、バランスを崩し、筒が上がりきるころにはぺたんと座り込んだ状態になってしまっていた。

お互いに、無言。

数秒間の沈黙を破り、先に口を開いたのは青みがかった銀髪を持つ赤い目の少女の方だった。

「来てくれた…やっと、会えた」

微笑みながら言う少女に、しかしサイフォンは答えられない。そして、呆然としていたサイフォンもようやく、一言を搾り出した。

「君は…誰だ…?」
それを聞いた少女は一瞬きょとんとしたが、すぐにいたずらっぽい笑みを浮かべてそれに答えた。

「そうね…貴方から見れば私とは初対面、分かるわけがない。でも、貴方は確かに私のことを知っている。そして当然、私は貴方を知っているの、サイフォン」

「っ!」

名乗っていないはずなのに名前を呼ばれ、サイフォンの表情が強張る。

そんな彼の様子を見ながら、少女は立ち上がって歩み寄ってくる。サイフォンはわずかに身を引こうとしたが、動くことが出来ない。頭2つ分以上小さな少女に完全に気おされていた。

対する少女は、そんなことお構い無しにふわりと微笑んで自己紹介をする。

「初めまして、サイフォン。私の名前は「DOVE(ドーヴ)」。よろしく」

「ドー、ヴ?」

その名前を聞いた瞬間、サイフォンは何か頭の片隅に引っかかりを覚える。

(ドーヴ、ドーヴ…待てよ、確かに覚えが…)

そして、いくつも記憶を引っ掻き回しているうちにその答えにたどり着く。

「!! まさか…っ!」

「ええ、正解。私は貴方達が「管理者」と呼んでいたものの擬似人格部分」

あまりにも突拍子のないその答えに「ありえない」と否定したくなるが、続く言葉がそれをさせてくれない。

「最後の門番も、よくよく考えれば企業が粛清のためにだまし討ちまでして送り込んだ2機のACを下した貴方には手ぬるい障害だったかしらね?」

「!!」

その情報は、送り込んだ張本人であるミラージュと、実際に襲撃されたサイフォン、報告を受けたコーテックスの一部の人間しか知らない事実だ。それを、何故この少女が知っている…!

「私はありとあらゆることを知っている。このレイヤードの中である限り、個人の生活ですら知ることが出来る。…いえ、今は「出来た」の方が正しいけれど」

そこまで言われると、サイフォンにはもう「ありえない」とはいえなかった。
しかし、そうだと認めると同時に疑問がわいてくる。気がつくと、サイフォンはその疑問を口にしていた。

「何故…レイヤードを滅ぼそうとしたんだ? 中枢での最後の一言…地上へのゲートって、どういうことだ?」

「そうね…私が貴方に課した試練を乗り越えたご褒美と、迎えに来てくれたお礼に教えてあげる」

少女…ドーヴは、穏やかな笑みをたたえながらサイフォンの疑問に答えを返した。

「レイヤードはね、最初からこうする予定だったのよ。もともとは大破壊から逃れた人類を、地上が人が住めるまでに回復するまでの間保護しておくシェルターだもの、いつまでも閉じこもっていてはいけないわ。完治した患者はいつまでも病院において置けないでしょう?」

「だったら何で破壊させた…それを伝えればよかっただろうに」

「ただ伝えるだけではダメ。自分の意思で地上に出てもらわないと」

ドーヴは急に不機嫌そうな表情になる。

「私がいることに慣れすぎて、私に頼ってしまう癖がついているのよ。特にクレストは顕著ね」

確かに、そうかもしれない。意識することはなくても、レイヤードの全ては管理者が決めていた。それが、当たり前になっていた。

「だから、二度と頼れない状況を作り出す必要があった。そのために一番手っ取り早いのが、管理者が破壊されるということ。破壊されたら、あのユニットはもう二度と直らない。システム自体が一部を残して消去されるようになっているの。もっとも、全部の消去が間に合ったかどうかは分からないけど」

そこまで言って、彼女は再び微笑を浮かべる。

「そこで、その破壊役として選んだのが…」

「俺か。何でまた。レイヴンなんてほかにいくらでもいるだろ」

「貴方でなければダメ。他の妨害を一切受け付けないだけの強さがないといけない。貴方はそれを持っていた。今まで無敗を誇った王者を下し、他のレイヴンと鉢合わせても退けるだけの力があった。そして、その力が本物であるかどうか試すために私が用意した試練も乗り越えた。だからこそ、貴方」

「なるほど。光栄だね」

苦笑しながら、サイフォンは皮肉るように言う。それを聞いてくすりと笑ったドーヴだが、次の瞬間クシュン、と可愛らしくクシャミをする。

「濡れたまま話してたら体が冷えたみたい」

「まるで人間みたいだな」

「そういうふうに作ってあるから」

いいながら、寒いのかドーヴは自分の体を抱きしめるようにして身を縮こまらせる。そんな様子を見ていてサイフォンは一つ溜息をつくと、自分のジャケットを脱いで彼女にかけた。

「!」

「少しはマシになるだろう。いい加減出よう、ACの中なら空調も効いてるだろう」

「ありがとう」

ぶっきらぼうに言う彼に、ドーヴはやわらかい笑みを返して礼を言った。
管理者の中枢からガレージに戻り、ACを降りると心配してくれていたのかレインが待っていた。涙目になりながら「おかえりなさい」と言おうとして…コクピットから出てきたサイフォンともう一人を目にし、その表情が凍りつく。

「レイヴン…その子は一体どうしたんですか?」

最初に言おうとしていた言葉が吹っ飛び、その代わりに出てきたのは冷たい声音での今の言葉。

「あー、コイツは…ちょっと説明しづらくてな」

「今日からサイフォンのところでお世話になるの」

ドーヴの言葉に、一瞬レインの思考が凍結。

そして、次の瞬間、

「貴方は何を考えているんですかあああああああああああああああああああああっ!!!」

レインの怒声がガレージに響き渡った。



この後、サイフォンとドーヴが二人がかりでレインに事情を説明するのに四苦八苦する羽目になるのだが…それはまた別の話。

                                    完

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