その後、視力は薄皮を剥くように回復し、「これなら何とか仕事に復帰出来る。」という自信も出て勤務を続けることが出来ました。恐れていた再発もなく10ヶ月後には新会社を作りビジネスコンサルタントとして活動を始めた途端、あれよあれよという間に収入も増え、近くに築160年の古いテラスハウスを事務所兼住居として購入するまでになりました。そのままでは内部が相当傷んでいるのでその時代の建物・内装に修復しようと思った時、ふと彼女の顔が浮かびその総てを依頼しました。その分野で彼女は有名なのを僕は新聞や雑誌で読んで知っていたからです。彼女は実によくやってくれて内装一切と家具などのその当時のものを集め、また工事も職人の手配から監督までをこなしてくれました。半年後に完成したテラスハウスは素晴らしいものでした。細部一つ一つにしてもその時代のものだとかその再生品という凝り様でほぼ完璧でした。僕は喜んで最後に彼女と内部を一巡りして、さて最終の支払いをしようとした時に「お仕事有難う!とても良い顧客で私も仕事を楽しんだわ、これはそのお礼よ、きっと気に入ってくれるわ!」と大きな包みを渡しました。さっそく開けてみると立派な額に入った版画絵(a woodcut; a woodblock print)で描かれているのは黒猫(それも手足は白い)がフルーツバスケットかなにかイタズラで入ってこちらを見ているものでした。「どう?エロルに似ているでしょ?私ずっと考えていたんだけど、彼は貴方の身代わりだったような気がするの、だって突然目が悪くなってそして死んでしまってその後に貴方が日本から帰って来てその後視力も回復して成功して今私の前に顧客として立っている。なんだか、エロルが貴方と私を遭わせて助けているような気がするのよね?」って、その時になってふと僕の守り神は黒猫だという幼児期に母から言われて育ったのを思い出しました。そしてその事に感動して落涙してしまいました。驚くそのインテリアデザイナーにその話を聞かせましたら「私はユダヤ人だから判らないけど、貴方達日本人は仏教徒で仏教ではそういうのは輪廻というのでしょう?何かで昔読んだわ」と驚いていました。その版画絵は素晴らしいものでやはり年代ものでした。僕のは100枚刷った中の65番目で彼女のが40番代だそうで。それからその絵は仕事場部分の会議室の暖炉の上に飾られていました。僕が手がけた大きな仕事の一部始終をみていた筈です、僕もそういう仕事を成し遂げた後などに独りのその絵を眺めるのがとても好きなひと時でした。