「キングダム／見えざる敵」 The Kingdom
07年10月13日公開
07年アメリカ ＵＩＰ配給
上映時間：110分 日本語字幕：非公開
監督：ピーター・バーグ
出演：ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー
アシュラフ・バルフム、ジェイソン・ベイトマン、ジェレミー・ピヴェン
ダニー・ヒューストン、リチャード・ジェンキンス
http://
ここで言う「キングダム」とは、Kingdom of Saudi Arabia、つまりサウジアラビアのこと。中東諸国の中心的位置づけにありながらも、米国など西側に近いスタンスを取っている特殊な国です。その国で起こったテロを捜査するFBI捜査官が直面する危機を、ド派手なアクションで描いています。製作は「コラテラル」「ヒート」のマイケル・マン。監督は俳優出身で、近作に「プライド 栄光への絆」。
サウジアラビア・リヤドの米石油産業を中心とする外国人居住区で自爆テロが発生、多数の死傷者を出した。同僚の捜査官を失ったフルーリー（ジェイミー・フォックス）は、犯行はアルカイーダによるものと断定、国防総省やホワイトハウスに、自らリアドに乗り込んでテロの首謀者を逮捕したいと希望する。アメリカの介入を許したくないサウジ側が難色を示し、その希望は却下されるが、駐サウジ大使を半ば脅迫して、精鋭の仲間３人とともに強引にリヤドに潜り込む。しかし、行動は制限され、サウジ側の監視も厳しく、ろくに捜査ができない。協力を名乗り出たアル・ガージー大佐の手助けで、ようやく犯人逮捕につながる足がかりをつかむが、果たして首謀者に行き着きことができるのか!?−−
高速道路を車が転がり爆発を起こすカーチェイスにロケット砲まで飛び交う銃撃戦など、ド派手な絵にもかかわらず、飾り気のない研ぎ澄ましたような演出は、マイケル・マンの影響によるものでしょうか。巷にあふれるノー天気アクションとは一線を画す、かなり硬派なサスペンスアクションです。
舞台がサウジアラビアという特殊性もあるのでしょう。サウド家が絶大なる権力を握る絶対君主制を敷き、親米国でありながらテロリストを多数生み出し（９・11テロの実行犯の大半はサウジアラビア人。ビン・ラディンもサウジ出身）、石油で稼いだ金で買った武器をテロリストに流している国。
日本人にとって、サウジといって思い出すのは石油、砂漠、メッカくらいなものでしょう。しかし、米国にとっては、裏で怪しい動きをしているのを知りつつも、石油と言う膨大な資源を抱えるがために、強硬な立場を取れずあいまいな対応に終始せざるを得ない、いわばアンタッチャブルな存在なのです。そのサウジアラビアと米国の微妙な関係が、現地に乗り込んだＦＢＩ捜査官が苦労する下りや、捜査の過程で明らかになる事実などを通じて、さりげなく描かれています。
「しょせん"世界の警察"を自任する米国のＦＢＩ捜査官が、アラブ国に乗り込んで派手にドンパチを繰り広げて、テロリストという"諸悪"を退治する映画だろ」、と言われれば、確かにそういう展開のお話になっています。けど、米国とサウジとの微妙な関係について予備知識を持って観れば、それらとは微妙に違うことが肌で感じられることでしょう。
ソリッドでスタイリッシュで、お話もよくできてるし、好き嫌いで言えば好きな作品ですが、劇中のラストの一言。製作者側はその一言で物語を集約させ、観た人に「あなたも考えてほしい」という宿題を投げかけようとしているんでしょうが、私は逆に、あまりに狙いすぎで読めてしまい、興ざめしてしまいました。よって、この点数。
ジェイミー・フォックスは、「コラテラル」「マイアミ・バイス」に続くマイケル・マン作品出演ですが、最近出演作が多くて少し食傷気味。クリス・クーパーは相変わらず渋い演技。「パラダイス・ナウ」のアシュラフ・バルフムがなかなかいい演技をしていました。ただ、アラブ人がみな同じ顔に見えて、少々こんがらがった（笑）。
映画の感想という面からみれば余談なのですが、私がこの作品で一番気になったのは、「日本語字幕」の担当者を非公開にしていることです。宣伝担当者によると、「国際的・政治的に微妙な話を描いているため、明らかにしない方がいいという判断を下しました」とのこと。けど、それなら監督やスタッフ、出演者だって同じことじゃないの？？？ 11月公開の「マイティ・ハート 愛と絆」（アンジェリーナ・ジョリー主演）も、同様の理由で非公開とか。「キングダム」はユニバーサル作品、「マイティ・ハート」はパラマウント作品だから、本国側の指示じゃなく日本独自の判断のはず。そんなことまで規制するなんて、過剰反応じゃない？ 今後こういう"自主規制"って増えてくんじゃないか？ と心の中に棘が引っかかったような気分でした。
私的採点：3.5点（5点満点）
8月16日 UIP試写室
07年10月13日公開
07年アメリカ ＵＩＰ配給
上映時間：110分 日本語字幕：非公開
監督：ピーター・バーグ
出演：ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー
アシュラフ・バルフム、ジェイソン・ベイトマン、ジェレミー・ピヴェン
ダニー・ヒューストン、リチャード・ジェンキンス
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ここで言う「キングダム」とは、Kingdom of Saudi Arabia、つまりサウジアラビアのこと。中東諸国の中心的位置づけにありながらも、米国など西側に近いスタンスを取っている特殊な国です。その国で起こったテロを捜査するFBI捜査官が直面する危機を、ド派手なアクションで描いています。製作は「コラテラル」「ヒート」のマイケル・マン。監督は俳優出身で、近作に「プライド 栄光への絆」。
サウジアラビア・リヤドの米石油産業を中心とする外国人居住区で自爆テロが発生、多数の死傷者を出した。同僚の捜査官を失ったフルーリー（ジェイミー・フォックス）は、犯行はアルカイーダによるものと断定、国防総省やホワイトハウスに、自らリアドに乗り込んでテロの首謀者を逮捕したいと希望する。アメリカの介入を許したくないサウジ側が難色を示し、その希望は却下されるが、駐サウジ大使を半ば脅迫して、精鋭の仲間３人とともに強引にリヤドに潜り込む。しかし、行動は制限され、サウジ側の監視も厳しく、ろくに捜査ができない。協力を名乗り出たアル・ガージー大佐の手助けで、ようやく犯人逮捕につながる足がかりをつかむが、果たして首謀者に行き着きことができるのか!?−−
高速道路を車が転がり爆発を起こすカーチェイスにロケット砲まで飛び交う銃撃戦など、ド派手な絵にもかかわらず、飾り気のない研ぎ澄ましたような演出は、マイケル・マンの影響によるものでしょうか。巷にあふれるノー天気アクションとは一線を画す、かなり硬派なサスペンスアクションです。
舞台がサウジアラビアという特殊性もあるのでしょう。サウド家が絶大なる権力を握る絶対君主制を敷き、親米国でありながらテロリストを多数生み出し（９・11テロの実行犯の大半はサウジアラビア人。ビン・ラディンもサウジ出身）、石油で稼いだ金で買った武器をテロリストに流している国。
日本人にとって、サウジといって思い出すのは石油、砂漠、メッカくらいなものでしょう。しかし、米国にとっては、裏で怪しい動きをしているのを知りつつも、石油と言う膨大な資源を抱えるがために、強硬な立場を取れずあいまいな対応に終始せざるを得ない、いわばアンタッチャブルな存在なのです。そのサウジアラビアと米国の微妙な関係が、現地に乗り込んだＦＢＩ捜査官が苦労する下りや、捜査の過程で明らかになる事実などを通じて、さりげなく描かれています。
「しょせん"世界の警察"を自任する米国のＦＢＩ捜査官が、アラブ国に乗り込んで派手にドンパチを繰り広げて、テロリストという"諸悪"を退治する映画だろ」、と言われれば、確かにそういう展開のお話になっています。けど、米国とサウジとの微妙な関係について予備知識を持って観れば、それらとは微妙に違うことが肌で感じられることでしょう。
ソリッドでスタイリッシュで、お話もよくできてるし、好き嫌いで言えば好きな作品ですが、劇中のラストの一言。製作者側はその一言で物語を集約させ、観た人に「あなたも考えてほしい」という宿題を投げかけようとしているんでしょうが、私は逆に、あまりに狙いすぎで読めてしまい、興ざめしてしまいました。よって、この点数。
ジェイミー・フォックスは、「コラテラル」「マイアミ・バイス」に続くマイケル・マン作品出演ですが、最近出演作が多くて少し食傷気味。クリス・クーパーは相変わらず渋い演技。「パラダイス・ナウ」のアシュラフ・バルフムがなかなかいい演技をしていました。ただ、アラブ人がみな同じ顔に見えて、少々こんがらがった（笑）。
映画の感想という面からみれば余談なのですが、私がこの作品で一番気になったのは、「日本語字幕」の担当者を非公開にしていることです。宣伝担当者によると、「国際的・政治的に微妙な話を描いているため、明らかにしない方がいいという判断を下しました」とのこと。けど、それなら監督やスタッフ、出演者だって同じことじゃないの？？？ 11月公開の「マイティ・ハート 愛と絆」（アンジェリーナ・ジョリー主演）も、同様の理由で非公開とか。「キングダム」はユニバーサル作品、「マイティ・ハート」はパラマウント作品だから、本国側の指示じゃなく日本独自の判断のはず。そんなことまで規制するなんて、過剰反応じゃない？ 今後こういう"自主規制"って増えてくんじゃないか？ と心の中に棘が引っかかったような気分でした。
私的採点：3.5点（5点満点）
8月16日 UIP試写室
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