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村上春樹∽短編小説コミュの嘔吐1979

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彼は長い期間にわたって一日も欠かすことなく日記をつけることができるという稀有な能力を身につけた数少ない人間の一人だったので、自分の吐き気がいつ始まっていつ終わったかという正確な日付をきちんと引用することができた。彼の吐き気は1979年6月4日(晴)にはじまり、同年の7月15日(くもり)に終わっていた。彼は若手のイラストレーターで、一度だけ僕とくんである雑誌の仕事をしたことがあった。
(本文より)


■初出
1984年10月号 IN・POCKET

■収録
1985年10月 回転木馬のデッド・ヒート

コメント(10)

またでた!電話!ってのが第一印象です。
今は相手が表示される携帯電話が主流ですが、黒電話は何処の誰が掛けてきているのかわからない、ブラックボックス的不気味さがありますよね。
村上さんの作品にはちょくちょく電話が登場し、大事な役割を果たしています。今回も、電話を掛けてきている謎の男が気になる存在ですね。

でも、読み解くのはちょっと難しい…
彼は友達の彼女や奥さんとばかり寝ていて、仕事もフリーランス。1日のうちほとんどを一人で過ごします。
こういう生活って、本人は馴れているみたいですけど、やや特殊ですね。引きこもりとかニートとかでもなく、仕事をしている社会人でそこそこ友達もいそうなのに。

作中にも出てきてますが、肝はやはり彼自身の孤独に対する気付きじゃないかと思いました。
この嘔吐がやってきてから、彼は、自分が一人ぼっちだと改めて気がつく。
嘔吐と電話は、彼の心の何処かが「こんな生き方でこれから先やっていけるのか?」と警告を発しているような気がしました。
その警告に対して、彼は返事をしなかった。
嘔吐が再びやってくるかはわかりませんが、別の形で静かに警告は続いていくのだと思います。
最低な奴ですね。
でも狂おしいほどうらやましい。
男ってそんなもんです。
村上春樹は男を妬ましくさせる描写に長けてますね。
女性にはわからないだろうけど、この手の小説を読むとけっこう苦しいものですよ。
感想は後で考えます。
INOさん、取り敢えずの書き込みありがとうございます(^_^)
プールサイドといいこちらといい、男性からすればイラッとしちゃう主人公像でしょうねー。
でもこれ、性別が逆だったらあり得ないタイプのお話です。やってることが同じでも、女性がやると生々しくなりすぎる。
男性はドライな描写が様になりますが、女性はなんか水っぽいですよね。男性作家と女性作家を読み比べてもよくそう思います。

脱線失礼しました。。。

初期の頃の作品ですが、短編一つ一つを丁寧に拾ってみると、村上さんのぶれない軸を感じます。
電話も嘔吐も、彼の内面から来ているのは間違いないと思うんですよ。
だけど、神経衰弱による幻聴とか、強迫観念とか妄想とか、内面がすぐさま形になっているわけではない。
彼の内面が一度現実という回路を通って、他者性を持ち、何か別の形(電話と嘔吐)として発露している。

現実の回路を通って他者性を得る、というパターンは多く見られるような気がします。
そして、彼にとっての電話と嘔吐は、私たち誰にでも起こりうることなんじゃないかなとも思いました。
見たくない自分のエゴとかイドとか、そういうものが何かモンスターのようになってある日私たちを脅かすのかもしれない。
気になった箇所を抜き出してみます。

(略)でもさっきも言ったように、そういう相手の声はちゃんと知ってるんです。聞けば一発でわかります」
「でもね、まともな人間は友達のつれあい専門に寝たりはしないもんだぜ」
「とすると」と彼は言った。「村上さんはそれが僕の中のある種の罪悪感が――自分でも気づかない罪悪感が――嘔吐とか幻聴とかいう形をとって結像したものじゃないかって言うわけですね」
「僕は言ってない。君が言ってるんだ」

この会話の流れ、まともな人間は〜を受けて、僕の罪悪感が結像したものって流れになるのは不自然で唐突な気がします。
普通の会話の上での言葉として聞くと、単純に「恨まれる覚えもないし同業者の恨みを買うほどでもない」とい言葉に対してのものだと思うんですよね。悪いことは何もしてないって態度に対しての。
だけど、そこで罪悪感という言葉を咄嗟に持ってきた。されは自覚があるからじゃないですか?
この電話はわけなわからない悪戯で、全くの他人から掛かってきたとは本人も思ってないんですよ。きっと。

続きます。
どちらにせよ、これは仮説だからね。仮説でいいんなら、百だって二百だってひっぱりだせるさ。問題は君がどの仮説をとるかってことなんだ。それから、そこから何を学ぶかってことだな」
「学ぶ?」と彼は意外そうに言った。そしてしばらく額にグラスの底をつけていた。「学ぶって、どういうことですか?」
「もう一度それがやってきたらどうするかってことだよ、もちるん。
(略)
「あるいは、それはぜんぜん別の人の身に起こるのかもしれませんよ。

この辺りの文章は、物語そのものをどう解釈するかって話をしているように読めます。
結局、電話の相手が誰とか、嘔吐がどんな意味を持つのかとかはあんまり関係無い。百も二百もある解説はどうでもよくて、大事なのは読者がどの解釈を選ぶかってこと。
そして、読者それぞれの身の上に同じことが起こったらどうすればいいかを考えること。
物語(フィクション)ってのはそういうものだよって言ってるみたいです。


だから、教科書的な解釈なんかより、自分の頭でちゃんと考えた感想が一番大事なんです。ね。
「あなただって潔白ではないでしょう?」あなたの身に同じことが起こったらどうする?

と考えさせているのが面白いですね。

私だったら・・・ きっと、生き方を改めるか、あるいは嘔吐への対処法を考えるか、あるいは意地になって何も学ぼうとはしないか、ですね。

作中の「彼」のしていることは最低だと思いますが、彼のそういった行動は、実は彼の人間としての根幹に係るものなのかもしれない。
だから彼は生き方を改められないのかな・・・?と好意的に解釈してみましたが。
ヤミーさん、感想ありがとうございます。
そうですね、彼の生き方はきっと彼自身の根幹に関わるモノなのでしょうね。
だから、こんな風に負けたくないと生き方を改めなかった。
彼はこれからもこういう生き方でやっていくんだと思います。
それには共感できます。

彼の話は、たまたま彼の生き方がやましいものだから「真っ当に生きれば済むじゃん」って簡単に思いがち。
でも、そういうあからさまに悪いことをしてなくても、こういう事態は起こるかもしれない。

自分の生き方の歪みがどこかで自分に帰ってくる。
という話、なのかな?
ダメだ!
何度読んでも苦しい。
お前など体の中のもの全部吐いて、栄養も水分も全部吐いて死んじまえ!
としか思えない。
男の嫉妬は女より激しいんだ。

彼も馬鹿じゃないのだからわかるはずです。
自分の行いを友人が知ったらどれだけ苦しいかを。どれほど深く憎み呪うかを。
たかが作り話を読んでるだけの私でさえこうなのだから、もしこれが現実に自分の身にふりかかったら・・・
だからやっぱり、この意識の上では封印しているけど、彼がはっきりと理解している苦しみ・憎しみ・呪いが自分を襲い、幻聴や嘔吐という結果になって現れているのでしょう。
「私が誰だかわかりますか?」
そりゃ特定個人じゃない。無数の私ですよ。
特定個人ではないという理解が、また呪いを意識のずっと奥深くに押しやって彼の嘔吐は止まったのでしょうね。
でもいつか来る次の症状はこんなものじゃ済まないぞ。
ざまあみろ!!!!!!!!

でも他人から呪われているのはもちろん彼だけじゃない。
私も他の人もみんな多かれ少なかれ「嘔吐」の症状が出ているのでしょうね。
(結局きれいにまとめてしまいました。)
INOさんは嘔吐や電話の呪いが、友人達からの呪いだと解釈されたんですね。
なるほど、納得です。
かといって、友人達が妻や恋人の不貞を知り、その相手である僕に怨念を向けている、といった生々しい話ではなさそうな印象。
多分、彼の言うように、彼のやっていることはバレてはいないんだと思います。
でも、他の男と寝る女性がまともな状態とはあんまり思いたくないし、そういう状況ってことは夫婦間に隙間があるってことなんじゃないかな。
言い換えれば、隙間のある(夫婦間に問題のある)女性ばかりと関係を持っていた。
そんな女性とのセックスによって、何か悪いものを引き寄せてしまった。
とも考えられますね。
いえ。私も友人たちにはばれていないと思います。
幻聴と嘔吐の原因は、彼の想像上の友人たちの呪いです。
結局、人はだませても自分に嘘はつけないですからね。

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