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転職支援 英会話教室コミュの6、A−26英検1級を目指すと英語の上達が遅れる

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 英検1級を目指すのは「労多くして功少なし」です。難しい単語の暗記や聞き取りの練習に嫌気がさしてしまいます。合格したとしてもまだ「英語で考える」力はついていません。銅メダル時代は日本語から英語へと頭を切り替えることを最優先すべきです。今日は銅メダルの上位から銀メダルを目指すかた向けのアドバイスです。

「英語で考える」が最大の難所

 銅メダル(英語力20点)には誰でも簡単になれる、というのがこのコラムの基本的な主張です(『銅メダル英語でここまでしゃべれる』参照)。これまでたくさんの時間をかけたのに、ネイティブとのコミュニケーションが取れなかったのは、「正統な英語を覚える」という学校式の勉強に終始してきたからです。「通じればいい」という観点に立てば、銅メダルのまん中くらいまでは難なくたどりつけます。

 しかし、銅メダルでも上位になるにつれて、さらに上達するための道のりが険しくなってくるのは確かです。つらい時期が来る前で自分の英語力を留めておくというのも一つの見識だと思います。しかし、今日は敢えて、その上を目指そうという方に向けて、最も楽な方法についてお話しします。

 英語の勉強には越えなくてはならない高い山が待っています。それは銅メダルの後半からから銀メダルにかけてやってきます。この難所とは「英語で考える」ことです。最初のうちは日本語で発言内容を考え、それを翻訳して口にします。少しずつですが、この翻訳のプロセスを踏むことなく、英語で考え、英語で直接話せるようになってきます。

 この高い山は語学特有の試練ではないかと思います。「日本語で考える」から「英語で考える」に切り替えることは、ある意味で日本語を捨てることになるのですから大変です。しかも、ここが語学学習の本質ですから、初期からこれに取り組まなくてはなりません。

 ぼくの場合、投資の仕事においてプロレベルの実力をつけるまでに、高いハードルがやって来ることはありませんでした。一般に、職業に必要な技量を向上する過程において、初期段階で高いハードルが来ることはないのではないでしょうか。

 単語の暗記なら、「1日1語覚えれば、1年後には365語覚えられる」といった目標が立てやすいでしょう。毎日ちゃんと覚えていけば、「少しずつだが、確実に目標に近づいている」という安心感があります。

 一方、「英語で考える」のは頭の中の質的な変化ですから、目標に対してどの程度進んだのか、後どのくらいの期間でできるようになるのかがはっきりとは分かりません。山が高いだけでなく、先が見えない。二重に苦しいのです。ぼく自身、「本当にできるようになるのだろうか」と不安になったことが何回もありました。

英検1級を目指すと余計な負荷がかかる

 世の中には試験合格を励みにして勉強する方が多くいます。漢字を書くだけならばわざわざ試験を受ける必要はないのですが、それでも漢字検定が人気を博しています。こうした傾向を見ると、日本人の勉強好きを感じます。

 その意味では英検1級やTOEICのためにコツコツと勉強するのは素晴らしいことです。否定するつもりはありません。でも、コミュニケーションのための「通じる英語」を身につけることが目的なら、実りの多い方法が良いとぼくは思います。

 英検1級にごうかくするためには、難しい単語や慣用句の暗記、高度なリスニングの練習を行わなくてはなりません。こうした負荷は大き苦痛となって襲いかかります。英検1級を目指す方の苦労曲線は図表1のようになります。

 英語の試験制度を作った人たちは英語の達人たちでしょう。その方々は英語大好き人間で、日本語から英語に頭を切り替えることがどれだけ難しいのかを、あまり意識することなく上達されたのではないでしょうか。

2011年5月6日(金) 日経ビジネス
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110425/219640/

 ぼくの知っている英検1級に合格したばかりの方々は、難しい単語の意味を知っているし、複雑な文章を読んだりできます。しかし、英語で考えるレベルにはまだ達していません。

 当面は「英語で考える」という山を越えることだけに焦点を絞るようにするのが望ましいでしょう。それがひらめき法を中心とした、英語脳を育てることに焦点を当てた学習方法です(『最速の上達を約束する『ひらめき』英語法』参照)。図表2にあるように、越えなくてはならない山の高さはかなり低くなります。

銀メダルになるのに、それほど時間はかからない

 英語脳の育成に力点を置くことで、銅メダルから早く脱却できます。銀と銅の最大の違いは「英語で考える」ことができるかどうかです。ここにある程度の目鼻がつけば、知っている単語の量は少なくても、銀メダルの末席に連なることができるのです。ただし、難しい単語や表現を覚えることを先送りすることになるので、銀メダル時代に覚えることが多くなります。

 「それでも、図表2には山がある。最も楽な方法でさえ、かなり大変そうだ」と思うかもしれません。そういう方のために、ここで朗報をつけ加えておきます。

 それは、この「英語で考える」ことを身につけるまでの道のりは精神的には厳しいですが、長い時間を日々英語の勉強に充てる必要はありません。ぼくらは中学、高校で英語を習っているので、相当の知識を持っています。ゼロからスタートするのとは全く違います。英検2級レベルの人ならば、英語で考えることができるレベル(銀メダルになる)に2〜3年で到達できます。

 さらに言うと、勉強の主戦場は細切れの時間です(『英語の勉強には細切れの時間が最適』参照)。細切れの時間にひらめき法を行い、コミュニケーション語を暗記します(『覚えるならそのまま使える表現を!』参照)。加えて、ラジオの英語講座などを聞けば完璧です。

 「それでも2〜3年はかかるの?長いよ」とがっかりしないでください。

 長年日本語だけで暮らしてきた自分の頭を英語に切り替える作業ですから、一朝一夕にはできません。これに対して、銀レベルの人が金に達するには「読む」練習に5年、「聞く」練習に5年の月日が必要です。2〜3年ならば、かなり短いと考えてください。

 銅メダル英語でスピーキングの力を伸ばすことに集中すれば、その最終盤に入るころには、「話す」ことにはだいたい目鼻がつきます。しかも、「書く」力は特に努力をしなくても一緒に大きく伸びています。この結果、「話す」「書く」「読む」「聞く」の4つのうち、「読む」「聞く」だけが課題となります。この2つを本格的に勉強するのが銀メダル時代です。

難しい単語を知らなくても、コミュニケーションは取れる

 2〜3年という期間は世間の常識からすれば短くないかもしれません。英語学校に2〜3年通い続ける人はごく少数でしょう。長く続かない根底には「通っても、うまくならない」という気持ちがあるからです。費用や時間をかけた割に効果がなければやめたくなるのが人情です。

 次から次へと新しい単語や表現を覚えさせられるだけで、英語でコミュニケーションできるようにならなかったなら、嫌気がさしてきます。

 「難しいことをいろいろ覚えなくても銅メダルを卒業できる」とぼくが気づいたのはMBA時代の友人のおかげです。正確に言えば、友人の妻のアガサの英語を聞いた時でした。

 友人はマレーシアの金融機関勤めを辞めて、アガサとともにアメリカに来ていました。マレーシアの金融取引は、自国人同士でも英語で行います。そのせいか、友人は流暢な英語を話します。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110425/219640/?P=2

 これに比べて、アガサは海外留学の経験はないし、仕事でも英語を使っていなかったらしいのですが、打てば響くような受け答えができるのです。親しくなるにつれて分かってきたのは、彼女がとても簡単な単語だけで会話をしていることでした。

  例えば、摩天楼のビル群を指して、
 Looking is closer than going.
  と言いました。彼女は「見た目では近いけど、行ってみると案外遠い」と言いたかったのです。正しくは、
 The buildings look closer than they actually are.
  と言うべきでしょうが、周りにいた人たちは、皆すぐに彼女の言いたいことが分かりました。ぼくにはアガサの英語の言い回しの方が分かりやすいくらいでした。

  大きな本も太っている人もbig、驚いた時だけでなく、怒った時もショックを受けた時もsurprise、2階建ての家も2段重ねのケーキもtwo layer。医療の話をする時は心臓外科(cardiosurgery)、小児科(pediatrics) といった難しい単語を使いますが、アガサはheart doctor、child doctorで済ませていました。

 アガサは、ぼくにとっては身近な「株主」、「世論調査」といった新聞の単語は得意ではありませんでした。しかし、ぼくが苦手な日常表現、例えば、「鼻をかむ」「時計回りに」などはすぐに口に出てくるのです。

 彼女の易しい言い回しを聞く時、「なあんだ。これくらいだったら、ぼくでもできそうだ」と最初のうちは思ったものでした。ところが、実際に会話を続けてみると、まるで太刀打ちできないのです。ぼくが、生活に必要な表現を知らないだけでなく、英語で考えることができないため、すぐには相手に反応できないからでした。

英検1級は25〜30点の実力でしかない

 英語試験に注力する問題点はもう一つあります。それは、英検に合格したり、TOEICで高得点を取ったりするには大変な努力が要りますが、その割に評価されないことです。

 英語の実力を建物に例え、銀メダルを2階、銅1階を考えます。1階でも床と天井では高さがかなり違いますが、どちらも1階であることには変わりがありません。

 スキルは一般に、日々努力したとしても、毎日伸びるわけではありません。あるところに達するまでは、ある同じレベルに留まったままです。そこを超えると次のレベルに移ることになります。別の言い方をするなら、実力には幅があって、その幅の中では多少の上下があっても、大きな見地からは大同小異だ、ということです。これが1階、2階の意味するところです。

 1階と2階を分けるのが「英語で考える」力です。英検1級を取得しても、その力はまだ1階です。これに対して、英語で考えることのできる銀メダルのレベルに達すれば、英語がかなり使えるようになります。

 図表3で、銀メダルと銅メダルを比較しました。一目で分かるように、「仕事で使えればいい。とにかく通じることを優先する」という銅メダルレベルと英語のプロの仲間入り果たした銀メダルレベルとではかなりの差があります。

 メダル別の英語の実力を、英米人を100点として表わすと、

 銅 20点以上
 銀 35点以上
 金 50点以上
 となります。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110425/219640/?P=3

 英検1級に合格したばかりの英語力はだいたい25〜30点くらいだと考えてください。
 「英検1級って雲の上の存在だと思っていた」と思う方がいらっしゃるでしょう。もし自分の現在の実力が15点なら、そこから10点上昇しないと25点になりません。これは伸び率67%増ですから、こうした方には「雲の上」に感じられるのです。

 英検1級への挑戦は、英語で考えられるようになり、銀メダルになってからでも遅くはありません。ただし、そのころ、あなたは「英語のプロ」と周りから見なされるようになっているので、そうした試験には全く興味がなくなっているはずです。

英検1級も2級もネイティブから見たら大差がない

 そもそも我々は、ネイティブとうまくコミュニケーションがとれるようになるため努力をしています。別の言い方をすれば、ネイティブから「あいつは手加減なしで話ができる」と思われるか否かが大事です。

 20〜35点は皆同じ銅メダルですから、ネイティブから見れば大同小異であって、同じような実力です。100点の立場にいる人からは20点も30点も同じように見え、同じように扱われるということです。このレベルの人に対して、ネイティブは分かりやすい言い方を心がけ、ゆっくりとしたスピードで話します。

 せっかく努力をしたのなら、それを評価してもらいたいと思うのが人情でしょう。英検1級の人は「2級と一緒にされたらたまらない」と思っているでしょう。同じように、TOEIC高得点の人は自分より100点も下の人と同じように扱ってほしくないでしょう。でも手加減が必要だという点では、わずかな差しかありません(この点を逆の観点から見れば、英検2級の人やTOEICで伸び悩んでいる人には朗報です)。

 ぼくの知っている日本の大企業の専務は、英語で手紙を書く際、自分の部門にいる英検1級の若手に英訳をさせていました。でも、出来あがった訳文に自信が持てないので、社内随一の英語力を持つ課長(銀メダル)に再チェックしてもらっています。

 「ぼくの英語は英検1級なのに」と若手は悔しがっていました。しかし、正確な英語が書けるか書けないかと、英検の級の上下とは関係がない、ということを専務は肌で感じていたのです。

 外資系または海外で働く場合、英検の級やTOEICの点数は全く意味を持ちません。ぼくは、いくつかの外資系企業を経験しています。転職する際に、英検のレベルを聞かれたことは一度もありません。就職面接では必ず、英米人の担当者が、英語で質問してきます。その席で十分に受け答えができるか否かがポイントです。その際の評価の基準は「金か銀か銅か、それ以下か」だけなのです。

 英検やTOEICといった試験に重きを置くのは日本の会社だけです。その理由は社内に英語ができる金銀メダル級の人材がまずいないからです。モチベーションを高く持ってもらうために、銅メダルの中で差をつけるわけです。

 ぼくの提案は、1)銅メダルの初期で英語力を留めておくのか、それとも2)英語で考えられるようにして銀に達するか、のどちらかにすべきだというものです。せっかく努力をするのなら英語の試験のための勉強に時間をかけてはもったいないです。

 * * *

 次回から、銀メダル、金メダルの世界を覗いてみます。金銀メダルの勉強法について銅メダルの方にも役立つ解説をいたします。ご質問やご意見については可能な限り連載の中でお答えしていきます。コメントを拝読しますと、いつもお読みくださっているのが分かり、うれしいです。金曜日に更新します。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110425/219640/?P=4

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