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発掘アーカイブ2コミュの【ラーメン菜楽】

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寒風吹く冬の昼下がり。
都内の幹線道路は師走前ということもあり車道を走る車も心なしか、せわしげに見える。
その幹線道路わきの歩道を携帯片手に行ったり来たりしている男がいた。

「住所的にはここなんだよなあ。江東区八目町2-34-8・・・。ラーメン菜楽・・・。」

いわゆる某有名グルメサイトで江東区のラーメン店で最近注目の店。男もそのグルメサイトで偶然目にしたひとりだったのである。

自転車でその幹線道路は、幾度となく往復しているはずなのだが、近所なのに全く記憶にない。
数回、その住所のあたりを往復したり裏路地に回ったりしたのだが、ラーメン菜楽という看板はおろか料理店の痕跡すら見つけることができなかった。

あきらめて帰ろうとも思ったが、グルメサイトに掲載されていたレビューの高評価が気にかかる。
結構なレビュー数をあげているレビュアーの満点の評価。
「こんなうまいラーメン食べたことがない。」
「ここの醤油ラーメンを食べたら他のラーメンはもう食べられない。」
「最高至高の自分だけのラーメン店」・・・。

男は、思い出し、ごくりと唾を飲む。そして意を決して携帯に送った店舗情報に掲載されていた電話番号に電話をかけた。

五回ほどの呼び出し音。
「・・・・はい。ラーメン菜楽です。」
「すいません。今日開店してますか?」
「・・・はい。大丈夫です。」
「場所がわからないんですけど・・・。」
しばしの沈黙。
「・・・黒い革ジャンを来た背の高い方ですよね。」
電話の向こうの声がかすかに笑ったような気が男は、した。
「そうです。近くなんですか?」
「目の前にシャッターの閉まっている閉店したクリーニング店がありますよね。」
「はい」
「開けて入ってきてください」
「は?」
「中で営業してます。今日は、お客様でスープがおしまいですよ。どうされますか?」

男は、古びたクリーニング屋の看板の隅っこに付いている最新式の監視カメラの赤い光に気がついた。
中の様子はわからないが、外の男の様子は中からは見えているのだという事を、その時点で理解する。

「・・・わかりました。じゃ伺います。」
男は電話を切り、ひとしきり考えた。しかし「うまいラーメン店」の誘惑には勝てない。
シャッターに手をかけ上へと押し上げる。古びているように見えたシャッターは思いのほか軽く開き、入り口が姿を現した。

「・・・あ。ラーメンだ。」
目の前に広がった店内の光景は普段目にするラーメン店そのものだった。入ってすぐ左手に大きな食券の販売機。奥に伸びるカウンターが7席ほど。カウンターには誰もいない。向かって左側が厨房になっており大きなずん胴やら、まな板・リーチインのショーケース。業務用冷凍冷蔵庫などが配置されている。

表のシャッターがするすると音もなく閉まった。

厨房スペースには白衣の男性がひとり。そして外側には女性の店員がひとり。
「いらっしゃいませ。」
「あ・・・はい。どうも。」
男は財布を取り出し、食券機に向かおうとした。
「お客様。ちょっと買う前に、ここのお店でのちょっとした決まり事があるのです。」
女性店員に制される。
「お客様は、ここの店の事をどこでお知りになりましたか?」
「・・・○○○○っていうグルメサイトですが?」
「ああ。やっぱり」
女性店員が満面の笑みでうなずく。
「○○○○でしか実はこの店は見つからないのです。実はお願いがあるのですが、食後に率直な感想を○○○○にレビューしていただきたいのです。あのパソコンで。」
彼女が指差す先にカウンターの一番奥に置かれているパソコンが目に入る。

なるほど。
そういうわけだったのか。
男は、なんとなく事情が飲み込めた気がした。この店はまだプレオープンの状態なのだ。○○○○でいいレビューを集めてから一気に人気店としてデビューするつもりなのではないだろうか?
そもそも店内の店員のいる前で悪いレビューも書きづらいわけで、それがあの高評価か。

「・・・大丈夫です。食後、書かせていただきます。」
「ありがとうございます。それでは食券をどうぞ。」

男は言われるまま、食券を買う。
ラーメン。
ラーメン大盛。
ちゃーしゅー麺。
ちゃーしゅー麺大盛。
ビール。
大きなボタンは五つしかなくひどくシンプルである。

ラーメン大盛とビールを買うと男はカウンターに着いた。
冷えたジャスミン茶とおしぼりが出される。そしてビール。

そして厨房の中では、着々と調理がすすむ。麺をほぐして大鍋で湯がき、その間にスープを丼に。冷蔵庫から具材を取り出し、一人前に整える。

店内はひどく清潔であり、静かである。

ほどなくして、そのラーメンが着丼した。
実食。
スープは、かつお節系のあっさり醤油味。生姜の香りがほのかに漂う。
麺は、黄色い細打ち。やや腰のあるウェーブのかかった麺。
具材はチャーシュー。ほうれんそう。なると。しなちくとオーソドックス。

男は一気にラーメンを食べきった。そして手元のジャスミン茶を飲み干す。

「・・・ありがとうございました。では、パソコンでレビューをお願いいたします。」
女性店員に促され、男はパソコンの席に移った。パソコンの電源はすでに入っており、○○○○というグルメサイトのトップページにセットされていた。

男は自分のIDとパスワードを打ち込み、自分のレビューページへとたどり着いた。

「さて・・・。どう評価したものかな?まずは価格とひとり当たりの使った金額か・・・。まあ悪いラーメンではなかった気がするけどなあ。そんなにみんな高い評価なのは・・・なぜ?うまいラーメンって・・・あれ?」

あれ?
あれ?
手足がひどく重くて、動けない。
目が霞む。

女店員の右手が頚動脈に触れる。
「もう大丈夫みたい。椅子を降ろしてちょうだい。」
厨房の白衣の男性が手元のスイッチを押す。するとパソコンの前の椅子がかすかな機械音を下げながら、まるで舞台の奈落のように、ゆっくりと地下室へと降りていった。座っていた男の視界は溶暗し、まっくらでもう何も見えない。やがて意識もまた暗闇の中に切れた。

途中まで入力されたグルメサイトの画面。女店員は、その評価を全て☆五つの満点に書き換える。
「こんなうまいラーメンを食べたのは、後にも先にもありません。もう最高です。」
絶賛のレビューが書き込まれている店内で、厨房の男性は携帯電話で話し込んでいる。
彼の口からは
「健康そう」「腎臓が」「検体で」などといった、およそラーメン店店主らしからぬ会話の端々が聞いてとれる。

その時、ふいに店の電話が鳴った。

五回ほどの呼び出し音の後、電話に出る。
「・・・・はい。ラーメン菜楽です。」
「すいません。今日開店してますか?」
「・・・はい。大丈夫です。」
「場所がわからないんですけど・・・。」
厨房の男性は店内の監視モニターに目をやった。
「・・・茶色のコートを来た髪の長い女性の方ですよね。」
男の頬がかすかに笑みで吊り上る。

「オ・ッ・ケ・ー」
女店員が声を出さず、口を動かし親指と人差し指で丸をつくる。

古びたシャッターが音もなくまた開いた。


うまいラーメン屋の特徴ランキング
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1851284&media_id=45

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