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〜日記から始まる日々のエール〜コミュの【笑】魔法のブルブル

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*キングさんから作品を提供していただいたので掲載します


モテたい−

それは、偽らざる男の願いであろう。

そう、あの頃の僕らもけして例外ではなかった。

世紀末、1999年−

僕らは、全力で、モテたかった……



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


キング、14歳。思春期真っ盛りである。

今ではどうかは知らぬが、私がまだ中学生の頃は彼女など都市伝説であった。

付き合っているのは、よほどのイケメンかヤンキーばかり。私のような一般人には、『彼女』など手が届くものではなかったのだ。


だが!しかし!

手にはいらぬなら、諦めるのか?否!違う!

手に入らぬからこそ、追い求めるのだ。叶わぬからこそ、願うのだ。

少数の勝ち組に対し、大多数の『モテたい組』はありとあらゆる手段を用いた。


ある者は、ワックスで髪を立ててきた。しかも、気合いの入り方が違う。スーパーハードだ。ガッチガチのてっかてかである。

どれくらいガッチガチかというと、薄いノートが上に載ってもへたれないくらいだ。

彼は気合いの入りすぎで逆に引かれ、『岩飛びペンギン』や『剣山』などという不名誉なあだ名をいただいただけだった。


ある者は、ムダ毛を処理した。

中学生だもの、ムダ毛くらい徐々に生えてくる。それが自然の摂理だ。

だが、ムダ毛は「モテ」の敵である。

彼等は、果敢にもムダ毛に対抗した。

彼等は休み時間ベランダへ集まり、各々ムダ毛の処理をはじめた。

ある者はむしり、ある者は剃り、またある者はライターで焼いた。

特に、このライターが画期的であった。むしるよりも痛くなく、剃るよりも自然に脱毛できるのだ。

男達はこぞってライターを求めた。そして、焼いた。

ベランダで何人もの男子が自分のすねをライターであぶっている。あちこちからあがる「アチチ!」の声。

モテるためとは言え、なんと奇妙な光景だろう。

結局、その『ムダ毛焼き』の儀式は、先生がライターを見つけ喫煙していると勘違いされた生徒が指導室送りになったことと、乳首に生えた毛(通称:パイ毛)を燃やそうとして乳首を焦がした者が多数いたことにより、自然消滅した。



だが、モテたいという思いは消えはしない。消せはしない。

僕らははぐれメタルやヘルバトラーより…それどころか伝説のポケモン・ミュウよりも、彼女をゲットしたかったのだから。

そして僕らは、ついに禁断の器具を手にすることとなる……

そう…あの、夜中の通販でやっている…

ブルブルと震える…

あの…




腹筋ブルブルベルト(通称)

これは腹筋運動などキツイことをしなくても、着けているだけでいつの間にか割れた腹筋が手に入るという『魔法の道具』なのだ。

しかし、そこは中学生の悲しさ。当時、最も有名であったメーカーの物はとても高くて手が届かず、安っぽいパチ物(偽物)だった。

思えば、これが間違いだったのだろうか?

皆、こぞってそのベルトに群がり、我先にとベルトを装着してみた。

あのね、あれ…ヤバい!なんか、凄く不快!

ブルブル振動するんじゃなくて、腹筋が痙攣するみたいな感じ。

内臓を、素手でギュッと掴まれたみたいな、凄まじい不快感。

しかし、ブルブルベルトの底力はこんなものではなかった。



ブルブルベルトには当然ながら強弱をつけるためのボタンがあった。

さらに、オススメコースなるものがあり、あらかじめインプットしてあるコースを選ぶことができた。

例えば「お手軽シェイプアップモード」では、「弱→中→強」と自動的に強度をあげてくれる、といった具合だ。

そして、そのコースの中にソレはあったのだ。その名も…

『ウワサの空手チョップモード』

コースの中でも一際異彩を放つその名前。どこがどうウワサなのかさっぱりわからない。

そして何より、その破壊力!

このコースに設定しても、しばらくは何も起きない。

…あれ?故障かな?と思った瞬間、不意打ち気味にいきなり「強」をかましてくるのだ。

油断していたこちらとしてはいきなりの奇襲に「ぉうすっ!」と奇声をあげることとなる。まさに外道。

結果として、僕らの期待を裏切ったこのブルブルベルトは本来の使い方とは全く違う使われ方をすることとなる。

それは−罰ゲーム。

ジャンケンで負けたやつが一時間の授業中、ずっと『ウワサの空手チョップモード』をつける、ということになった。

その罰ゲームをうけることになったのは、ブルブルベルトを購入してきたY田くん。

わざわざ購入してきたのに自らその毒牙にかかるというオイシイ…いや、かわいそうな運命を背負うこととなった。

そして、運命のチャイムが鳴る。

教科は国語。時間は給食を終えたばかりの5時間目。

最高の条件で、Y田対ブルブルベルトの世紀の対戦は幕をあけた。

授業開始早々、Y田の席から定期的に「っふん……くっふ……」という、何かを堪える小さい吐息が洩れる。

よく見るとY田の体はびくっ…びくっ…と小刻みに震えている。


体に取り付けられた、震える異物。それによって痙攣する体。抑え切れない声。

…状況によってはめちゃくちゃやらしいシチュエーションだが、僕たちにしてみれば笑いを堪えるのが精一杯だ!

堪えすぎてうちらの腹筋もプルプルいっている。


そして−

「よし、じゃあこの部分を…Y田、読んでみろ」

!!!?

あろうことか、Y田に朗読が当たってしまった!!

しかも読むのは名作『走れメロス』だ。大丈夫なのか!?Y田!!

「…はい」

おお!!落ち着いている!この不測の事態にも、必死に腹筋を引き締めながら平静を装っているっ!

『ウワサの空手チョップモード』を喰らいながら朗読なんて出来るはずがない…それでもY田なら…Y田なら、きっとなんとかしてくれるはず!!

教室内は期待に満ち、Y田を見つめた。そして、Y田が口を開く…



「走れ…メロォウスッ!!!」


ダメだった。

『メロス』のところでタイミング良く空手チョップが入ってしまった!


その後、堪え切れなくなった僕たちは爆笑し、Y田のブルブルベルトはバレて没収されることとなった。


でも、直接的ではないにしろ、教室中の男子の腹筋を爆笑で筋肉痛になるまで巻き込んだブルブルベルトは、偽りではなく、本当に魔法の道具だったと今でも思っている−


(終)

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