ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

東日本大震災記録コミュの188.日本自動車産業史上最大の危機! 震災復興と同時に忍び寄る空洞化スパイラル

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 2011年3月11日(金)午後2時46分、筆者は島根県松江市にいた。

 島根県民ホールで開催されていた「次世代自動車最新動向セミナー」のなかでの筆者の講演「2015年の自動車、その現状と真相」の後半だった。

 午後3時前、壇上から見て、150人ほどの観衆の後方、主催のしまね産業振興財団関係者数人が慌しく会場を出入りする姿が気になった。

 講演終了後、筆者は一時閉鎖された羽田空港まで戻ることを諦め、松江市内のホテルに止まった。その夜、松江駅周辺の飲食街では、「テレビを見たか」が挨拶代わりになった。地震の揺れを実感しなかったこの地域の人たちにとって、東日本を襲った大震災はその時はまだ遠いところで起きた出来事だった。

 話を震災前に戻せば、島根県民にとって、最大の関心事は産業振興である。つまり、雇用だ。同県関係者たちは、島根の産業構造についてこう漏らす。「ここは長年にわたり、公共事業に極めて大きく依存してきた。県民ひとりあたりの額は全国トップクラス。だが近年、(公共事業は)激減している。その代替として自力での産業振興が不可欠だ。雇用の創出が急務なんだ」。じつは現在、その雇用の多くは自動車産業に依存している。

 同県の総人口は約71万人と、全国47都道府県のなかで46番目(47番目は鳥取県)。東京都練馬区とほぼ同じ数だ。経済産業省・工業統計調査(最新調査の平成20年版)によると、同県の事業所数は2395箇所(全国45位)、従業員数は45860人(同44位)、出荷総額は1兆876億円(同44位)だ。

 主力産業は、農業、漁業など第一次産業(出雲大社、石見銀山など観光事業もある)。工業面で見ると、大手企業は日立金属と三菱農機のみ。その他は、隣接する広島県を本拠とするマツダ関連で、自動車部品のティア2、ティア3(二次下請け、三次下請け)の中小企業が多い。

 そして、その頼みの自動車産業が今回の震災で大きな打撃を受けたのだ。

 本稿執筆時点(3月24日時点)で明らかになっているのは、トヨタが3月14〜26日まで日本国内全工場(関係会社を含む)で生産休止するということ、そして同28日から愛知県堤工場と福岡県トヨタ自動車九州で、動力系統を共有する「プリウス」「レクサスHS250h」「同CT200h」の最終組み立て作業を再開するということだ。

 ホンダは4月3日まで主力の埼玉県・埼玉製作所狭山工場、三重県・鈴鹿製作所を休止。震災被害の大きかった栃木県にある栃木製作所については修理と点検が完了するというものの、生産再開時期は明らかにされていない。また同社の主力開発拠点である栃木県本田技研研究所四輪R&Dセンターとホンダエンジニアリングは、施設内の復旧に数ヶ月を要するため、両社機能の一部を狭山市、鈴鹿市、和光市の各ホンダ事業所に移管して対応するという。

http://diamond.jp/articles/-/11623

 日産は神奈川県追浜工場、同横浜工場、同日産車体、栃木県栃木工場、福岡県日産車体九州で3月24日から在庫部品による一部生産を再開。そして、島根県の中小企業の支えであるマツダは22日から、広島県・本社工場、山口県・防府工場で一部稼動再開している。だが、仕掛かり在庫品を活用した防府工場での車両組み立ては28日から休止するという。

 一般的に知られているように、自動車産業は、ティア1(一次下請け/部品メーカー)からティア2、ティア3と、いわゆる垂直統合型のピラミッド構造を形成している。

 ガソリン車・ディーゼル車・ハイブリッド車は、約3万点の部品で構成されており、その部品の多くがモジュール化され(小型部品を組み立てた状態で)組み立てラインの脇に並べられている。モジュール化された完成部品は、ティア1が組み立て工場に直接納入する。そうしたティア1だけでも、各自動車メーカーは100社以上との取引がある。ティア1のなかでも、自動車メーカーが資本参加する「身近なティア1」は、サプライヤーパークの形態で組立工場の近隣に部品工場を設置している場合が多い。

 マツダの場合、ティア1の多くは地元広島県内に拠点を持ち、広島県に隣接する島根県にティア2、ティア3が存在している。だが、電子系部品などのティア1ではトヨタ系列などの部品メーカーからの納入もある。そのため、被災した地域から最も離れた場所に本社と生産本拠地を持つマツダも、工場休止や生産大幅縮小を余儀なくされたのだ。

 自動車部品業界では近年、「市場規模の大きな中国へのティア1進出⇒地場のティア2、ティア3の採用と教育の強化⇒日本国内のティア2、ティア3の事業縮小」「日本市場規模の定常的な縮小⇒ティア1、2、3の事業縮小」「円高による自動車メーカーの利益目減り⇒ティア1、2、3への値下げ要求」など、ティア2、ティア3に吹く逆風が強い。未曾有の経済危機といわれた「リーマンショック」をなんとか乗り切ったティア2、ティア3だが、今回の大震災の影響による自動車メーカー組み立て工場の長期休止で、資金繰りが再び悪化するのは避けられそうにないのだ。

 さらに言えば、震災復興と同時進行で、自動車メーカーは「次の大きなステップ」に踏み出す可能性が高くなったと筆者は感じている。これは、ティア2、ティア3にとっていっそう厳しい結果をもたらすことになるだろう。

 しかし、その「次の大きなステップ」については後述するとして、自動車産業だけでなく、より広い視野での産業振興を模索している島根県の現状をまずはおさえておきたい。

 松江市街から車で約10分、宍道湖を見下ろす海抜70m・広さ70ヘクタールの高台にソフトビジネスパーク島根が広がっている。その中核は、島根県産業技術センター(通称テクノアークしまね)だ。

 同センターを運営する財団法人しまね産業振興財団の山根泉副理事長は以下のように語った。ちなみに、同財団は県の商工労働行政の外郭団体で、県の施策を最前線で実行している。「各都道府県にも、こうした産業技術センターは存在し、どこも基本的な形態は同じ。そのなかで、大きく2つの傾向がある。ひとつは、助成金・補助金のウエイトが大きい形態。もうひとつが、人が企業に行って技術・経営の指導をするマンパワー型だ。島根県は後者であり、(助成金や補助金は)ISO取得など一部に限定している」(山根副理事長)。

 さらに島根県は他ではあまり行われていない方策を採っている。それが、県の公費を使って県が主導で推進する、新産業創出プロジェクトだ。通常の産業技術センターでは、民間企業から頼まれた事案について研究開発する場合がほとんど。県側から能動的に動くケースは少ない。

 同プロジェクトは5つある。?熱制御システム開発(電子部品等への熱伝導性の高い材料の開発)、?新エネルギー応用製品開発(太陽電池製品等の開発)、?ICT技術開発(各種センサー等、情報通信技術関連の開発)、?機能性食品産業化(県内で生産、加工される食品の加工技術開発及び健康食品の開発)、?プラズマ熱処理技術開発(放電等による気体状況/プラズマ下で、金属部材の表面加工処理で、耐久性に優れた自動車部品等の開発)。

 県の自発的な活動について「県内民間企業の技術開発力が小さい。生産現場はあるが、企業規模が小さいために開発部署自体がない企業も多い。そのため県側で(将来の事業性の高いと思われる)テーマを決めた。(これらのプロジェクトを)事業化させることで、県内の民間技術力を上げ、さらに県外からの(企業誘致や投資の)呼び込みにつなげたい」(山根副理事長)という。

http://diamond.jp/articles/-/11623?page=3

 筆者は今回、センター施設内を、熱制御システム開発プロジェクト・プロジェクトマネージャーである工学博士の佐藤公紀氏に案内して頂いた。同センターは2001年10月、八束郡東出雲町から移転。ふたつの本棟と6つの研究棟が円形上に連なった、3階立ての同センター。正直なところ、建物自体はかなり贅沢なつくりに感じる。

 第2研究棟の新エネルギー応用製品開発プロジェクトでは、色素増感太陽電池を開発。高耐久性、シースルー、デザイン性の高さをウリに、日本写真印刷株式会社(京都市中京区)と事業化している。 

 第3研究棟の熱制御プロジェクトでは、「STC(スーパー・サーマル・コンダクティブ・コンポサイト/超熱伝導材料)」を開発。これは、黒鉛と金属の複合化により、銅や銀を大幅に超える高い熱伝導率(630W/mk)を実現した。さらに、半導体素子として必要不可欠な熱傍聴率が低く、しかも低密度のために部材が軽量だ。県内の株式会社守谷刃物研究所とともに本格的な事業化を進めている。

 この他の研究棟では、県内で多く採掘されるゼオライトを用いた触媒の開発、県内特産の西条柿を用いた二日酔い対応飲料などが目を引いた。

 佐藤氏は「島根県の勢いを増すため、こうしたプロジェクトは県の最重要課題として進めている。県の他部署では予算が厳しいなか、(同プロジェクトには)潤沢な予算と人を投入している。そのため、(事業化を成功させるという)答えを出すことが強く求められていることを認識している」と語った。

 筆者はこれまで、島根県以外の数箇所での県の産業振興の現場を見ている。そうしたなか感じることがある。それは、各都道府県どうしが競い合うことが「時代遅れ」ではないか、ということだ。

 本来は、国の産業振興母体である、独立行政法人産業技術総合研究所(略称:産総研)が全国の民間企業の技術集約をし、その実行部隊として各都道府県の産業技術センターが機能するべきだ。

 今回の島根県のケースでも、「事案によっては産総研と直接連携する」(佐藤氏)というが、島根県としては同県民の税金によって産業振興を進め、同県民の雇用創出が最大の課題であり、「わが県優先」の意識が強まるのは致し方ない。県関係者は、産業振興では「外貨獲得が必要だ」という。この外貨とは、「県外貨」を指す。そのため、各都道府県どうしが必要以上に競争意識を持ち、時として都道府県のあいだに壁が生まれ、中小企業の事業の広がりを阻む結果となる。

http://diamond.jp/articles/-/11623?page=4

 現在、国は大震災に関する復興の真っ最中にある。その過程において、全国での産業振興の統一性を目指す新たなる施策が講じられることを強く願う。

 さて、今回の松江市での「次世代自動車最新動向セミナー」には、島根県内の自動車関連ティア2、ティア3、自動車販売会社、コンバートEV事業者、カーシェアリング事業者などが多く参加していた。

 筆者は講演の後半、「2015年、日本で起こること(自動車製造)」という自身の業界予測を披露した。そのなかで、「製造拠点の海外移転が進行」するとして、「動く日産とホンダvs悩むトヨタとマツダ」という話をした。

 事実上の外資系でありトップダウン型経営である日産は現在、創業の地である神奈川県横浜市に本社を構えるが、近年の経営を見ている限り、今後ドラスティックな経営判断で日本国内製造の転機を模索していると考えられる。同社関係者や関係企業の内部から、製造拠点の海外移転について様々な憶測、うわさ、不安の声を筆者は実際に聞いている。仮に日産が本格的に製造拠点を海外に移転すると、工場のある栃木、神奈川、北部九州の経済に打撃を与えるのは確実だ。だが、これらの地域はまだよい。他業種の事業者も多く、地域社会の崩壊までには至らないだろう。

 ホンダは、海外での生産力、販売力が強く、ブランドイメージは日本国内では考えられないほど高い。対して、日本国内では一部のミニバンやコンパクトカーに偏った販売増があるが、軽自動車、高級大型車での苦戦が続いている。本連載の第50回「社長会見で披瀝されたホンダの覚悟!同社10年構想で見えてきた日本自動車業界の未来」で書いたように、市場の変化に応じて、ホンダは大きな決断をせざるを得ない場面が来る可能性が高い。ただ仮にホンダが本格的に製造拠点を海外に移転しても、工場のある栃木、埼玉、三重では日産のケースと同じく、地域社会の崩壊を招くほどの衝撃は与えないはずだ。

http://diamond.jp/articles/-/11623?page=5

 だが、それに対してトヨタは、東三河地域を背負って生きている。マツダは広島はもとより、島根県などを含む中国地方全体を背負って生きている。トヨタ、マツダが本格的に日本製造拠点を海外移転すれば、中京地方と中国地方の経済は崩壊してしまう。

 このような仮説について、今回の講演の聴講者、または自動車産業関係者、さらには一般日本国民の多くが「理屈ではあり得るが、まあ、それが現実化することはまずない」と思っているだろう。だが、そうした先入観は捨てたほうがいい。

 前述したように、すでに大震災の影響で、自動車メーカー各社が製造休止に追い込まれている。また、計画停電による電子部品等の製造工場の運営に関する先行き不透明感、そして円高株安トレンドへの不安、福島原発事故に関する情報開示についての東京電力と日本政府の対応に対する国内外からの不信の高まりなど、日本の自動車業界のリスクは、枚挙にいとまがない。

 これを一言でまとめると「カントリーリスク」である。

 付け加えれば、そもそも資源に乏しい地震列島に製造事業所を持つことも「カントリーリスク」だ。

 あまり考えたくないことだが、自動車メーカーの経営者が近年、熟慮してきた国内製造拠点の海外移転について、上記のような「カントリーリスク」を「言い訳のひとつ」に使い、自らの行為を正当化するかもしれない。これが前述した、自動車メーカーの「次の大きなステップ」である。

 日本経済新聞は3月24日、前原誠司前外務大臣が同日開催された自身のグループ「凌雲会」の会合で、「このままだと企業の海外移転が加速する。日本全体の復興に向けたグランドデザインを考えないといけない」と発言したと報じた。この前原発言は、産業界の情報が集まる永田町で「カントリーリスク論」が現実味を帯びていることの証左だと思う。

 震災復興のプロセスと同時に、日本の自動車産業界が「次の大きなステップ」に乗り出していったとしても、なんら不思議ではないのである。

http://diamond.jp/articles/-/11623?page=6

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

東日本大震災記録 更新情報

東日本大震災記録のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。