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東日本大震災記録コミュの703、風力と地熱は、原発や火力と同じくらい安くなりうる 日本初、再生可能エネルギーの発電コストを体系的に試算する

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 コスト等検証委員会が昨年12月に取りまとめた報告書のポイントの解説の第2回目に当たる今回は、将来の主要電源として期待が高まる再生可能エネルギーの発電コストと普及ポテンシャルに焦点を当てて紹介したい。

 2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故を契機に、政府は昨年夏、原発への依存を低減すると同時に、省エネルギーを進め、再生可能エネルギーの比率を高め、化石燃料をクリーン化する、という新たなエネルギー戦略の基本理念を示した。

 この基本理念を具体化するための中長期的な戦略・計画を夏までに策定するに当たり、原発が果たしてきた電力供給の穴埋めを再生可能エネルギーは、いつ頃までに、どの程度まで果たすことができるのだろうか。この問題を考える上で初めに直面した疑問が、以下の2点であった。

 (1)他の電源と条件をそろえて比べた場合、再生可能エネルギーの発電コストは、どのレベルにあり、いつ頃までにどの程度まで下げられるのだろうか?

 (2)地域の特性に左右されがちな再生可能エネルギーは、日本において、どの程度まで普及するポテンシャルがあるのだろうか?

 (1)の発電コストについて見ると、これまで、原発や火力発電とコスト比較ができるように試算条件を揃えた上で、再生可能エネルギー設備が新設された場合の、現在及び将来のコスト試算を体系的に行った例は過去に見られなかった。

 (2)の普及ポテンシャルについて見ると、関係省庁がそれぞれ行った調査の定義や前提条件の異なる数字が、それらの違いを十分に認識されないままで他の電源の発電電力量との比較に用いられて、議論がかみ合わない事態がしばしば見られた。

 こうした背景を受けて、コスト等検証委員会では、再生可能エネルギーについても(1)や(2)の検証を行うことにより、今年の春に向けて検討する新しいエネルギーミックスや地球温暖化対策の選択肢提示に必要な基礎的材料を提供することとなった。

燃料費と社会的費用はかからない

 前回の解説でも触れたとおり、コスト等検証委員会では、2010年、2020年、2030年に新たに運転を開始するモデルプラントを想定し、それらの稼働年数にわたって発生する(1)資本費、(2)燃料費、(3)運転管理費、(4)社会的費用(環境対策費+事故リスク対応費用+政策経費)の合計額を、稼働年数期間中に想定される発電電力量で割るという計算式に基づき、発電単価(円/キロワット時)を試算した。

 再生可能エネルギーの試算に当たっては、(2)燃料費がバイオマス発電など一部を除き、かからないこと、(4)社会的費用については、温室効果ガスを排出しないこと、事故リスク対応費用を上乗せする必要がないこと、技術開発予算などの政策経費を直近のわずかな電力量で割った値をコストに上乗せするのは適当でないこと、などの理由から、基本的には、(1)資本費と(3)運転管理費を発電電力量で割るという計算式を用いることとした。

 その上で、割引率、稼働年数、建設費(補助金実績や事業者ヒアリングなどを踏まえ、上限値と下限値を幅で設定)、将来の価格見通しのシナリオのパターンに応じて、複数の試算を行った。この結果、例えば2010年の新設プラントの発電単価を見ると、住宅用太陽光で48パターン、地熱では120パターンとなった。その全てをここで紹介することはできないが、概観を紹介すると次のページの通りである。

2012年2月9日(木)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120206/226918/?mlp

<風力> 風力(陸上)については、立地条件によって建設コストが異なるが、系統強化・安定化のための追加投資もなく、建設コストが安いなどの条件が揃えば、2010年のモデルプラントで9.9円/キロワット時と試算された。

 2030年モデルプラントで見ても、量産効果・技術改善・ウィンドファームの大規模化などによるコスト低下を見込んだ「国際エネルギー機関(IEA)のシナリオ」の低減率を用いて試算すると8.8円/キロワット時となり、社会的費用を上乗せした原子力や石炭、LNGと同等のコストになりうると試算された。

 一方で、立地条件により建設コストが高い場合や、欧米と比べて立地制約・輸送制約などの高い日本の特殊性を勘案し、価格低下が見られない場合には、2010年や2030年のモデルプラントにおいて17.3円/キロワット時で高止まる、との試算も示した。

 風力(洋上)については、着床式を想定し、資本費を陸上風力の1.5〜2倍と見込み、2010年モデルプラントで9.4〜23.1円/キロワット時、2030年モデルプラントで8.6〜23.1円/キロワット時と見込んだ。

<地熱> 地熱については、稼働年数も長く、安定的な発電が可能という特徴があり、発電コストは2010年や2030年のモデルプランともに10円/キロワット時前後と試算され、コスト的には社会的費用を上乗せした原子力や石炭と同レベルとなった。

 ただし、この試算には地熱資源量の調査費用が含まれていないこと、規制区域外から規制区域内の熱源に向けて斜め掘りして水平距離が長いと、コストが増え、掘り当てる確率が下がることに留意する必要がある。

<太陽光> 太陽光については、2010年モデルシステムは、近年の補助実績や関連事業者へのインタビューに基づき試算したところ、30円/キロワット時以上と、他の電源と比べても高い水準となった。

 この点については、ここ2〜3年の足元の急速な価格低下を反映していないとの指摘も見られたが、[1]他の電源とデータ収集方法を揃えるという理由や、[2]世界的な需給ギャップを受けて、海外企業の倒産を招くような無理な価格低下が適切な生産価格を反映していると言えるのか、という理由から、上記のとおり試算を行うこととなった。

 しかし、将来については、欧州太陽光電池工業会(EPIA)の累積生産量見通しを用いて、生産量が増えることにより価格が低下するという学習効果や、耐久性の向上などの技術進展を前提とした試算を行ったところ、2030年には大幅な価格低下が期待され、現在の2分の1から3分の1となり、石油火力よりも安くなる可能性が示された。

系統安定化費用や電源線費用を試算に含めなかった理由

 再生可能エネルギーのコスト試算に当たり、大きな議論になったのが、「系統安定化費用」を試算コストに上乗せするか否かであった。

 電力システムは、瞬時瞬時の需要と供給を一致させる必要があるが、発電量が気象条件に依存し、出力の調整が難しい太陽光や風力などの導入が拡大していくと、そのための系統安定化対策(発電側への出力抑制装置の取り付け、蓄電池や揚水による需給調整、電圧変動対策など)が必要となる可能性があることが、その理由である。

 しかし、全体の電源構成によって、必要な系統のあり方や対策は異なるため、エネルギーミックスの検討結果から導かれる日本全体の再生可能エネルギーのマクロ的な導入量に応じて、最適な系統安定化対策を検討した上で、トータルな対策コストを考えるべきとの理由から、今回の個別の電源の発電コストには系統安定化費用は上乗せしないこととなった。

 また、再生可能エネルギーだけでなく、原子力も火力も同様であるが、発電所から電力系統へ連系する「電源線の費用」も、今回のコスト試算に計上すべきではないかとの議論も行われた。しかしながら、電源線は、電源の出力規模や距離に応じて、電力系統へ連系する電圧階級や線種が異なり、また、その長さや通過する地形により、コストが異なり、一概に特定の電源の発電コストとして計上するのは難しいことから、今回の個別の電源の発電コストには上乗せしないこととなった。

再生可能エネルギーの導入ポテンシャルを検証する

 再生可能エネルギーの普及のポテンシャルについては、省庁や電源の違いにより、少なくとも6つの政府系の調査があったことから、共同事務局(内閣官房、経済産業省、環境省、農林水産省)においては、まずこれらの調査に含まれる様々な数字の違いが、どのような定義の違い(例:賦存量、導入ポテンシャル、導入可能量)、対象区分の違い、前提条件の違いを要因とするのかを突合させて、整理した資料を作成し、報告書の参考資料3として示すこととした。

 その上で、系統制約や制度的制約、経済性の確保などは勘案していないが、現在の技術水準の下で、自然条件などにより現状では事実上開発が不可能な地域を除いた再生可能エネルギーの導入量という、一つの客観的データであり、エネルギーミックスの選択肢を検討するのに参考となる指標である「導入ポテンシャル」に着目して、複数ある各省の数値を電源別に統一して示すこととした。

 具体的には、陸上風力、地熱、太陽光の導入ポテンシャルを示した図2〜4をご覧いただきたい。それぞれ、導入ポテンシャルの数字を、規制地域の内外(図2、3)、発電コストに直結する資源の特性(図3)、立地条件(図4:屋根、壁面、耕作放棄地)といったカテゴリーごとに分類(緑の○)して示すことにした。

 また、参考情報として、2007年度実績(ピンクの○)、現行のエネルギー基本計画の2030年推計値(紫の○)、電源の設備利用率の特性から比較対象となる大規模集中電源の2007年実績(青の○)を示すことにした。

 さらに、コスト等検証委員会の委員からは、(1)導入ポテンシャルの数字は経済性(事業採算性)を加味しておらず、コスト試算に用いた諸元データのもとになった施設の立地条件と、導入ポテンシャルがあるとされた区域の発電単価は必ずしも一致しないことから、導入ポテンシャルの数字が実現するためには経済制約や制度制約などを克服する不断の努力が必要であることを読者に誤解のないよう図示すべきとのご指摘を受けた。

 また(2)どのような区域・場所の発電単価がどうなっているのかが分かるように図示すべき、などのご指摘も受けた。しかし、(2)については、すぐに答えを出せる作業ではないことから、苦肉の策として、発電単価の「イメージ」を、色にグラディエーションを付けて図示することにした。

 以下が、導入ポテンシャルを検証した結果である。

陸上風力は系統及び系統間連系の強化が課題

 陸上風力の導入ポテンシャルは、保安林外・国有林外・自然公園外で約2,700億キロワット時あり、風況がより良い場所では、ベース的な電源としての役割の一部を担う可能性が示された。

 ただし、北海道北部、東北北部などの風況の良い場所では、受け入れる余裕のある電力会社の現状の系統から遠く離れていることが多く、震災前には、従来の系統接続可能量を考慮すると、約170億キロワット時程度が風力の導入可能量ではないか、との推計も見られた。このことから、このポテンシャル量が実際に開発されるためには、系統及び系統間連系の抜本強化や、さらなる制度的な制約が解消されることが喫緊の課題であることが示された。

地熱は立地上の制約を克服する必要あり

 地熱発電の導入ポテンシャルは、国立・国定公園の特別保護地区・特別地域外の制約が少なく、かつ、150℃以上の熱水資源が利用できる場所で約260億キロワット時ある。地熱の出力安定性も勘案すると、条件の劣る場所も活用することにより、ベース電源の一定の部分を担うことが期待される。

 地熱の導入可能量拡大には、国立・国定公園内への立地に必要な許可要件の明確化や、地元温泉関係者などとの共生強化などの政策的課題を解決し、また、導入可能量拡大を進めやすくするような技術開発・実証研究などを進めていく必要性が示された。

太陽光は設置可能な場所の有効活用を

 太陽光の導入ポテンシャルは、屋根などの比較的条件が良いと考えられる場所で約930億キロワット時ある。こうした場所をフルに活用することができれば、ピーク、ミドル電源としても用いる火力発電の炊き減らしに資する電源として期待される。

 ただし、930億キロワット時は、日本の一戸建ての家で設置可能なほぼ全ての屋根、及び、現在普及の遅れているマンションや公共施設・工場などでパネルが設置可能なほぼ全ての屋根へのパネルの設置に成功した場合の数値である。

 太陽光発電の普及には、低コスト化に向けてさらなる技術開発を進めていくとともに、耕作放棄地や、マンション、工場などの壁面などで設置を進めていくための制度改革、それらに採算性を持たせるノウハウの開発が不可欠であることが示された。

 今回、原子力や火力などの電源と比較可能な形で、再生可能エネルギーの現在と将来のコスト試算を行えたことは、大きな前進ではあった。しかし、技術進歩や、ビジネス環境の変化が激しい再生可能エネルギーについては、不断にコスト試算を更新していく必要性が高いと考えている。

 また、普及ポテンシャルの分析の改良を進め、誤解を招かないよう数字の持つ意味を十分に説明することにより、幅広い関係者が、優先順位を付けて政策課題を「選択」し、その克服に優先順位を付けて「集中」して努力するための出発点となり、制度改革・政策支援・ビジネスを加速させる可能性があると考えている。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120206/226918/?P=5

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