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東日本大震災記録コミュの651、寵愛され続けた太陽光発電 その限界と可能性

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再生可能エネルギー“真の実力”の芽を摘むな(前編)

3・11以前の日本には、こんなエネルギー政策の青写真があった。「国民の理解及び信頼を得つつ、安全の確保を大前提とした原子力の新増設(少なくとも14基以上)」――。

 これは、2010年6月に政府が発表した「第2次改訂エネルギー基本計画」に盛り込まれた原発増設の具体的方針だ。だが、福島第一原発事故で、原発の「信頼」と「安全」は完全に失墜した。新増設はおろか、定期点検中の原発の再開さえ難しいのが現状だ。日本人の目と心に刻まれた忌まわしい原発の記憶は、簡単に消し去られるものではない。

 では、原子力に代わるエネルギーをどう得ていくのか。例えば、首が据えかえられる日本政府首相と、時代の寵児となった孫正義ソフトバンク社長の構想を見てみる。どちらも目指すは「再生可能エネルギーの普及促進」だ。再生可能エネルギーとは、一度使ってもある程度時間が経てば再び使えるようになったり、量を減らさずに連続的に使えたりできるエネルギーを指す。中でも「三大再生可能エネルギー」と言われるのが、太陽光・バイオマス・風力だ。

  ついに首相退陣となった菅直人氏は、5月に行われたG8サミットで「2020年までに自然エネルギーの割合を発電量の20%超に引き上げる」と発表し、計画の目玉として「太陽光パネル1000万戸設置」を掲げた。7月7日には、参院予算委員会で「現在の原子力発電費用に近いところまで、太陽光や風力発電の費用を下げたい」と述べ、その6日後には「脱・原発依存」を個人的に表明する。そして8月26日、「私の顔を見たくないのなら、早く通したほうがいい」とまで発言し、辞任の一条件にしていた「再生可能エネルギー促進法案」を国会で成立させるに至った。

 こうしたエネルギー政策の基本方針は、次の首相にも引き継がれそうだ。民主党代表選挙で代表に選ばれ、30日に新首相に指命されることになったのが野田佳彦氏。野田氏は、『文藝春秋』2011年9月特別号で「わが政権構想」を寄稿している。この中で、再生可能エネルギー関連の構想について、次のように述べている。

 「太陽光や風力、地熱、バイオマス(生物資源)といった自然エネルギーの拡大は新時代の国家戦略です。現在、わが国の自然エネルギー比率は9%(水力含む)に過ぎません。これを2020年代に20%まで上昇させるのが当面の目標です。野心的な目標ですが、国家として実現すべき目標です。自然エネルギーの拡大は、エネルギーの確保と新産業の育成の両面で意義があるからです」

 一方の孫氏は5月23日、参議院行政監視委員会で「電田プロジェクト」を表明。休耕田20万ヘクタールと耕作放棄地34万ヘクタールに太陽光パネルを敷き詰め、2020年までに5000万キロワットの発電容量を実現させようとする計画だ。原発1基で100万キロワットとして、原発50基分に当たる。さらに屋根の太陽電池からエネルギーを得る「屋根プロジェクト」も発表、2020年までに太陽光発電で1億キロワット(原発100基分)を実現しようとしている。

 明らかなのは、どちらとも再生可能エネルギーの中心に「太陽光発電」を据えているということだ。菅氏がG8サミットで示した「再生可能エネルギーの飛躍的拡大」でも、具体的数値をもって目標が掲げられたのは太陽光発電のみ。孫氏は太陽光以外の再生可能エネルギーも考えていないわけではないようだが、2020年までの設置目標で太陽光が1億キロワットであるのに対し、「風力、地熱他」は0.5億キロワット。少なくとも表向きは太陽光が中心だ。

 この太陽光第一主義は彼らに限ったことではない。政治も、産業も、官僚も、マスメディアも、市民も含め、日本全体が「再生可能エネルギーといえば太陽光」といった風潮に包まれている。だが、本当にそれでよいのだろうか。

寵愛され続けてきた太陽光
量子ドットに未来を託すが……

 他の再生可能エネルギーに比べて、太陽光発電は普及促進と技術開発の両面で“優遇”されている。再生可能エネルギー促進法案が俎上に乗る前から、再生可能エネルギーの中では太陽光発電のみが、固定買取価格制度の対象になってきた。また、経済産業省の2011年度資源・エネルギー関連予算案を見てみると、次世代再生可能エネルギーの技術開発への投資を示した「革新的エネルギー技術開発の加速化」の項目で、風力関連37億円、バイオマス関連66億円に対して、太陽光関連には80億円の予算が付けられている。

2011年08月30日(Tue)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1470

 しかし、世界各国が主要な再生可能エネルギーと位置づけているのは、風力発電であって、太陽光発電ではない。なぜ、日本ばかりが太陽光に傾注するのだろうか。歴史を見ると、1974年に始まった「サンシャイン計画」に行き着く。この計画は、前年の石油危機を契機に、通商産業省(現・経済産業省)が自然エネルギーの開発と実用化に向けた計画を打ち出したもの。当初は太陽熱発電に力が注がれていたが、採算性が見合わない。そうしているうちに1980年前後、薄膜シリコンを使う太陽電池などの技術開発が進み、太陽光発電の気運が高まっていったのだ。

 さらに、この頃太陽光発電の技術開発が進んだ背景には、半導体技術の向上がある。太陽電池は半導体を応用した装置だ。サンシャイン計画の実施時期と重なる80年代、日本は半導体産業で隆盛を極めていた。日本のお家芸と極めて近い位置に太陽電池はありつづけたのだ。

 だが、お家芸もいつかは敗れる。日本の半導体産業は2000年代に入り、韓国や台湾などの戦略的成長を前に完全に凋落してしまった。半導体技術そのものが沈みゆく中で、日本は太陽電池の技術だけは攻め落とされまいと必死だ。

 では、いま、太陽電池技術のなにが世界で争われているのか。太陽電池には、「三つの技術的要素」がある。量産化の技術、薄膜化の技術、そして変換効率向上の技術だ。量産化すればその分、製造コストを下げることができる。薄膜化を進めればシリコンなど主要材料の使用量が減るので材料費を抑えられる。そして、太陽光エネルギーから電気エネルギーへの変換効率を高めれば、全体のコストを下げることができる。

 中でも、三番目の「変換効率の向上」をめぐる競争はとくに注目に値する。なぜなら、いま使われている太陽電池において、変換効率の“限界”が近づいているからだ。一口に太陽光と言っても、実際にはさまざまなエネルギーをもつ光が含まれている。すべての光が電気に変換できればよいが、エネルギーの低い光は太陽電池に吸収されず、エネルギーの高い光は熱という無駄な熱となってしまう。米国の物理学者ウィリアム・ショックレーらは、太陽光を電気エネルギーに変換できる理論的限界を「約31%」と算出している。世界的に普及しているシリコン型太陽電池では、変換効率が研究ベースですでに23%台まで達し、限界が見えはじめている。

 そこでいま、世界の研究者は、このショックレーの限界を超える技術革新を打ち立てようと争っている。その切り札と目されているのが「量子ドット型太陽電池」だ。

 「究極的には変換効率を約70%にまでする技術」。量子ドット太陽電池の実力をこう説明するのは、東京大学先端科学技術研究センター教授の岡田至崇氏だ。これまで太陽電池の変換効率を画期的に高めるための研究を続けてきた。

 量子ドットを岡田氏は「原子核のない人工原子」と説明する。自然に無数ある原子では、原子核が電子の動きを強く束縛している。一方、原子核をなくした量子ドットでは、電子が自由に動ける距離が広がる。そのため、量子ドットを使えば電子を簡単に取り出して発電に利用することができる。さらに量子ドットを積層させた構造にすることで、光の取りこぼしが少なくなる。岡田氏は「5層にすれば、変換効率は約50%まで向上する」と考える。量子ドット太陽電池が実現すれば、太陽から届くエネルギーの半分以上を電気エネルギーとして使うことができるわけだ。

 ただし、いまは技術より理論が先行している段階で、実用化までにクリアしなければならない技術的課題はある。例えば、量子ドットの大きさの均一化だ。大きさがばらばらな量子ドットが混在すると十分な電圧が得られなくなってしまう。シリコンなどで作る量子ドットを、直径2ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の寸法で揃えて作る超微細加工技術が必要となる。

 太陽光発電全般について言えるのは他の多くのエネルギーに比べて発電コストが高いということ。太陽光発電のコストは現在1キロワットあたり40円ほどだ。対して、水力は10円、石油は14円、原子力は5円、風力は12円ほどだ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が太陽光発電の発展の将来像を描いた「PV2030+」というロードマップには、2050年のところに「新しい原理、構造による超高効率(40%)太陽電池の投入」が示されている。中心技術と目されるのが量子ドット太陽電池で、この時点でのコストは1キロワット時あたり7円以下。これでようやく現状の火力発電や原子力発電のコストと勝負できる程度となる。

海洋国家発のバイオマスエネルギー
海藻から水素をとりだす

 次に、「三大再生可能エネルギー」の一角、バイオマスエネルギーの日本での将来性を見ておきたい。

 まず、企業、研究者、行政の共通見解としてあるのは、サトウキビやトウモロコシを育てて燃料を得る米国・ブラジル的手法は日本ではナンセンスということだ。食糧自給率が40%前後と低い日本が、農業大国の米国やブラジルをまねできるはずがない。

 ただし、日本でも可能なかたちでバイオマス利用の活路を見出そうとしている研究者もいる。東京海洋大学名誉教授で海洋生命科学を専攻する能登谷正浩氏は、ホンダワラという海藻を海で育てて回収し、バイオ燃料としてアルコール生産を行う構想を三菱総研とともに打ち上げている。さらに、バイオマスエネルギーを利用した水素生産に関する研究を元横浜国立大学教授の谷生重晴氏と共同で取り組んでいる。

 能登谷氏が描いている海藻利用構想は、例えば次のようなものだ。九州の玄界灘などでホンダワラを放流する。放流されたホンダワラは、対馬海流に乗って成長しながら津軽海峡まで向かう。青森県沖にたどり着いたホンダワラを回収し、当地のバイオマス転換工場で燃料をつくる。

 「海洋大国である日本の強みを生かそうという発想です。海水の浄化作用も期待できる。海藻のまわりには魚も集まり、漁獲にも効果がある。そして燃料を得ることができる」と、環境保全、漁業資源保全、燃料生産の“一石三鳥”の効果を能登谷氏は強調する。「一般的なバイオ燃料生産には、環境保全や天然資源保全の観点が抜けています。サトウキビ畑を開墾するなどして、環境破壊をしながら燃料をつくるのであれば、将来、再び同じような環境問題を出すことになる。地球環境や資源保全に関する問題を先のばしにすることにしかならないことを考える必要があります」。

 だが、海藻のバイオマス利用には、実現に向けての大きな壁があることも自覚している。「国家管理の観点から海上保安庁はまず許してくれない。巻き網漁船がひっかかるといった漁業問題もありうる。ほとんどの海洋関係者は反対でしょう」。

 そこでいま、能登谷氏らが視野に入れているのが、離島近海の養殖施設に固定式でホンダワラを育て、島のエネルギー自給自足を満たすといったコンパクトなバイオマスエネルギー利用法だ。実際、人口2500人ほどの島根県隠岐海士町で、町の協力のもと実証研究を始めようとしている。

 こうした地産地消型の小規模エネルギーとして、バイオマスエネルギー活用の可能性はありえるだろう。「大規模開発は巨大企業の戦略。本来エネルギーを資本の対象にする構図がおかしいのではないでしょうか。各地域でエネルギーをまかなえることができれば、環境破壊を最小にすることができるのです」。

 だが、再生可能エネルギーに対しても、巨大企業が資本の対象に使用としている現実はある。産業の枠組みの中で再生可能エネルギーを考えた場合、バイオマスエネルギーが国の将来を担うほどの主力エネルギーになるだろうか。いまのところバイプレーヤーとしての位置付けで考えるのが現実的という印象だ。

 日本が得意とする半導体技術から誕生した太陽光発電、それにカーボンニュートラルで環境負荷が少ないと謳われているバイオマス。これらのエネルギーは、再生可能エネルギーの中でも“日本人好み”といえそうだ。

 ところが、世界の主流に位置づけられている再生可能エネルギーはというと、日本では人気があるとはいえない。もうひとつの次世代エネルギー「風力発電」は、日本の風土に適していないのだろうか。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1470?page=4

るエネルギーのうち、太陽光とバイオマスの現状と未来を見てきた。発電コストが高いながらも国が力を入れ続け、革新技術の開発も続く太陽光。そして、海洋資源に望みを託すバイオマス。日本におけるこの二つのエネルギーの現状は、そう表現できる。

 一方、世界が主要な再生可能エネルギーと位置づけているのは風力発電である。しかし、なぜか日本では冷淡な扱いを受け続けている。

日本で嫌われ者の風力
本格普及の鍵は洋上にあり

 世界の再生可能エネルギーの設備容量は、原発300基分相当の300ギガワットほど(大規模水力発電を除く)。このうち風力発電は2010年初頭時点で半分以上の約160ギガワットを占めている。太陽光発電はわずか約10ギガワットなので、その差は16倍もある。再生可能エネルギーの普及度合などで日本と比較されることの多いドイツでは、電力供給量に占める太陽光発電の割合が1.1%なのに対して、風力は約6倍の6.5%。スペインでは、太陽光2.6%に対して風力は約8倍の21%だ。日本はといえば、太陽光0.2%に対し、風力も0.2%。この差を見れば、日本は世界の再生可能エネルギーの趨勢に目を背けてきたといわれてもしかたない。

 サンシャイン計画が始まった1970年代前半、風力発電は自然エネルギー戦略に含まれていなかった。1977年、ようやく電電公社と東海大学がそれぞれ風車の実験機を設置し、風力発電の研究開発が始まった。翌78年には、科学技術庁(現在の文部科学省)が、ゴルフ場などに風力発電装置を設置してカートの充電などを試す「フートピア計画」を実施した。だが、自然エネルギーの技術開発において、この頃から傍流に置かれていた感は否めない。

 なぜ、日本では風力が嫌われてきたのか。まず、用地の問題がある。日本は人口密度が高い上に、風向も変わりやすいため、風力発電に適した場所が少ないというものだ。次に、風が安定して吹くかという安定供給の問題や、低周波など人体への影響の問題、さらには周辺の景観を損ねるとか、台風や落雷に弱い、建設費が嵩むといったことが言われてきた。

 これらの問題点を、東京大学工学系研究科社会基盤学専攻教授の石原孟氏にぶつけてみた。風工学の研究で培った知見を土台に、風力発電の技術開発を進めている研究者だ。

 石原氏は、風力発電をめぐって否定的に言われてきた課題は、どれも解決済みであるか、解決可能であると言う。

 まず、用地の問題については、「広い海を使えばよい」と主張する。「太平洋側の海での風向を調べると、南から北へあるいは北から南へと一定方向に吹く傾向が強い。風速も洋上のほうが大きい」。

 洋上風力発電は、すでに北海で本格的に普及している。2010年時点で、欧州における洋上風力発電の設備容量は296万キロワット。建設中が300万キロワット、計画中が1900万キロワット。知名度は低いが、日本でも北海道せたな町、山形県酒田市、茨城県神栖市に洋上風力発電施設が建設されており、風車が動いている。

2011年08月31日(Wed)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1471

 日本が風力発電の潜在力をもっていることを示唆するデータも相次いで示されている。昨年度から洋上風力発電の実証研究に着手しているNEDOは、日本の海岸から30キロ以内、水深200メートルまでの海域で年平均風速7メートル以上の風が吹くという条件で、利用できるエネルギーの量を試算した。計算結果は約12億キロワット。「この海域のうち4%を風力発電に利用できるとして、洋上風力発電の設備利用率を30%とすると、利用可能なエネルギーは4800万キロワット。これは、設備利用率80%の原子力発電所18基分ほどになる」と、石原氏は付け加える。

 環境省も今年4月、再生可能エネルギーを導入した場合の発電量の見込みを発表している。洋上風力の導入ポテンシャルを、NEDOの試算を上回る16億キロワットとはじき出した。ちなみに、陸上風力の導入ポテンシャルは2億8000万キロワットだった。

 洋上に風力発電施設をもっていけば、問題視されている人体への影響や、景観問題などもほぼ避けることができる。

 もうひとつ、日本の気象条件として特徴的なのが、台風と落雷の多さだ。日本の嵐に風車は耐えられるのだろうか。実際、2003年9月には、台風14号が沖縄県宮古島を直撃し、風力発電設備が倒壊した過去がある。石原氏は「あれはヨーロッパで使われていた風車を沖縄にそのままもってきていた。日本での最大瞬間風速はヨーロッパより高く、台風時の停電により風車が制御不能になった。倒れたのは当然だった」と話す。この反省から石原氏は、日本における風力発電施設の設計方法を見直し、07年に台風や地震についての対策も含めた約400ページにわたる「風力発電設備支持物構造設計指針・同解説」を作った。「それ以降、台風で風力発電施設が倒れた事故は日本では一度も発生していない。東日本巨大地震の揺れと津波でも、倒れた風車は一基もなかった」と、石原氏は技術力向上に自信をのぞかせる。

 また、日本の風車の被害要因となっている落雷については、NEDOが2008年に「日本型風力発電ガイドライン 落雷対策編」を策定。羽根にレセプタとよばれる雷保護装置を、また発電機の入ったナセルと呼ばれる容器に避雷針を付けるなどの雷保護対策をまとめて強化をはかっている。

 さらにもうひとつ、日本で洋上風力発電を導入した場合、建設費がかさむことが懸念される。近海の海底が急に深くなるからだ。現在、欧州で主流となっているのは着床式。支柱を海底に突き刺す方式で、浅い海が広がる北海には適しているが、水深60メートル以上の深さで設置するとなるとコストが急に跳ねあがる。日本近海には、水深100〜200メートルの大陸棚が広がっている。

 これに対して、石原氏が示す解決策は「風車を浮かせる浮体式」の導入だ。海底まで支柱を突き刺そうとすれば、建設費は水深が増すにつれて高くなる。だが、風車を浮き台などに乗せて浮かせてやれば、水深の深いところに設置しても、電力を陸上まで送る海底ケーブルを長くする程度の費用の上乗せで済むという。「100〜200メートルの水深であれば、浮体式にかかるコストはほぼ同じ。水深にコストが依存しない点が、浮体式の特徴。目標は2015年から浮体式洋上風力発電を実用化すること」と石原氏は話す。

太陽光だけに
注力してはならない

 風力発電の研究者である石原氏が、その将来性を大きく見積もっている部分はあるだろう。しかし、これまで太陽光やバイオマスをはじめさまざまな再生可能エネルギーを取材してきた筆者から見ても、この洋上風力発電という選択肢は、技術的ハードルの難易度や日本の置かれた環境を考慮すると、かなり現実味のあるものに思える。

 もちろん、風力発電だけで良いという話ではない。再生可能エネルギーは、常に変化する自然環境からエネルギーを捻出しなければならないゆえに、一種類で人びとの活動すべてを請け合うようなものではない。火力、原子力、水力が主流だったこれまでも、「エネルギーのベストミックス」の重要性は言われてきた。再生可能エネルギーの普及率が高まれば、ベストミックスはますます重要な課題となるだろう。

 これまでの半導体技術や太陽電池技術の蓄積を活かし、太陽光発電に再生可能エネルギーの一翼を担わせる。これは、もちろん今後も続けていけばよい。

 ただ、筆者が主張したいのは「日本は太陽光発電だけに力を集中させるべきではない」ということだ。太陽光発電に傾注するあまり、“真の実力”をもつ別の再生可能エネルギーがその力を発揮する好機を失ったとしたら、それこそ国の大きな損失になる。世界が風力発電の技術を高め、風力発電の普及に向けた施策を次々と打つ中で、日本は太陽光発電の技術のみをせっせと高め、太陽光の普及のみを考え続ける。その結果、世界に大きく遅れをとる。そんな未来を迎えてはならない。

“農耕型”を育てた先に
未来の繁栄はある

 火力や原子力と比べてみると、再生可能エネルギーは、とても貧弱で効率の悪いエネルギーである。風、光、生物、水、熱、波……どの再生可能エネルギーをとっても、火力や原子力のように効率的に大量のエネルギーを捻出するのは、物理的に難しい。

 「人間が使えるエネルギーを得る」という行為を科学技術の視点から考えてみれば、原子力や火力を利用するという選択が合理的であるのは間違いない。科学者には、「原子力や火力は効率的で合理的だ」という主張を変えない人もいる。ある意味、当然のことだろう。

 しかし、前出の石原氏は、そんな合理的な“旧来エネルギー肯定派”に対しても異を唱える。「これまでのエネルギー利用は、“狩猟型”だった。一瞬で動物をしとめて大量のカロリーを得るように、発電所で一挙に大量のエネルギーを獲得する。しかし、狩猟型社会では増大する人口を支えることができなかった。これからもエネルギーの消費量が増えていくとすれば、そのエネルギー消費社会を支えるのは、やはり“農耕型”の再生可能エネルギー利用であるにちがいない」。

 人間は、自らの選択で狩猟型社会から農耕型社会に踏み出し、その結果、繁栄を手に入れた。おなじことが、これからのエネルギー社会に求められている。未来の繁栄を手にするかしないかは、現代を生きるわれわれ自身の選択に掛かっている。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1471?page=3

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