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東日本大震災記録コミュの638、東北など自然エネルギーを軸とした街づくりに いま求められる「地域の核」の3要素

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被災した東北地方では、自然エネルギーを軸とした街づくりを目指す自治体も多い。事業として地域がオーナーシップを持って育て、雇用や収益を域内にもたらせるような仕組みはどのようにつくれば良いのだろうか。過去、“補助金事業”の失敗例は枚挙に暇がなく、成功例は数えるほどしかない。それらから導かれる成功要因は、「地域の核」づくり――資質あるリーダー、需要プル発想、大局的視野を持つ首長の協力――にあるようだ。

 7月8日、宮城県気仙沼市を訪れた。津波の爪あとはすさまじく、まだ多くの瓦礫が残る。復興への道のりは容易でない印象を受けた。

 訪問の目的は他でもない。自然エネルギーをベースにした街づくりを進めていくための議論、意見交換をするためだ。現在、審議中の再生可能エネルギー法案が成立したとき、地域でどう受け止め活かしていくべきか。

 これは単に、エネルギーの地産地消だけを狙った取り組みではない。自然エネルギーを、事業として地域がオーナーシップを持って育て、域内に雇用や収益をもたらせるような仕組みを目指すのである。

 宮城県は、県議会議長の畠山和純さん以下、知事の村井嘉浩さんも自然エネルギーに熱心だ。加えて、(財)みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)や東北大学など、環境分野の市民社会は分厚く、これからの展開に期待できる。

 同じような希望を持つ自治体は、気仙沼だけではない。宮城県東松島市や福島県南相馬市も頑張っている。自然エネルギーをベースにした街づくりに向け、機運と希望はみなさん持っておられるので、あとは具体的な方法論が必要だ。

“補助金事業”の失敗を量産する
国・自治体・受託企業の無責任トライアングル

 しかしこうした取り組みは、期待が盛り上がる一方、現実には失敗することが多い。過去にも多くの失敗事例をみてきた。

 代表例は、茨城県つくば市の“回らない風車”だろう。小中学校のグラウンドなどに23機の風車を設置したが、ほとんど発電しないばかりか、電気を消費するだけで終わった。

2011年7月14日
http://diamond.jp/articles/-/13117

 この事業には、環境省が事業費の3分の2という手厚い補助金を出した。残りの3分の1も公金でまかなわれ、早稲田大学が事業委託を受けコンサルティングをした。つくば市は、住民監査請求で公金返還が決まったうえ、環境省からも補助金返還を求められ、早稲田大学を提訴する騒ぎに発展した。結局、早稲田大学は9000万円の支払いを命じられたが、つくば市も事業の検証が甘く7割の過失が認められることとなった。

 何が間違っていたのか?

 まず、掴みガネのように補助金を出す国も、受け取る地方自治体も、双方が補助金をもらえば事業が進む、と闇雲に信じている。「政策=補助金」という構図が頭で直結してしまっているのだ。

 しかも、国と地方自治体の担当者は二年ごとに替わってしまう。国と自治体の間に入るコンサルやメーカーも、競争入札で食らいついて最低限の仕事を終えたら終わり、だ。この“無責任のトライアングル構造”が、悲劇を生む。

 つくば市は象徴的な事例だが、他にも同様の失敗はいくらでもある。

 2002年に始まった「バイオマス(生物資源)ニッポン総合計画」も然りである。

 関連技術の向上と利用促進のために2003年度〜2008年度に実施された214事業について、総務省行政評価局が調査した。すると、その8割強で「効果が表れていない」として、2月に関連省庁に改善勧告が出されたのである。総事業費6兆5000億円以上、補助金にして5000〜6000億円がムダに使われた、という空恐ろしい事態である。

 私自身が委員を務めた総務省の「緑の分権改革推進事業」も同様だ。およそ実用からかけ離れた事業が提案される。

 ある地域では「太陽光のパネルの角度を変えた実験をやってみました」と発電効率が1-2%違うだけで実験しなくても分かることを4000-5000万円かけて実施していた。また別の地域では、省水力発電の実験として小さなおもちゃのような装置をつけたが、夏に計画して冬に実験して1年以内に撤去する計画なので、水が流れる肝心の春〜夏に実験できないという大根劇のような事態を招いた。

 この手の“補助金事業”は、日本中で行われている。お金がムダに使われても、地域に知識や場、人材が残るのであれば、まだ実施する甲斐もある。しかし、単に税金でガラクタをつくってはスクラップ&ビルドを続けるのであれば、賽の河原のごとく何も残らない。

当たり前だがリーダーの資質が重要
“上から目線”の“技術実証”型事業は失敗する

 では、自治体の事業で失敗しないためには、何が必要か。

 まず、「核となる場」が不可欠だ。知と経験と社会関係資本(ネットワーク)を積み重ねていく、地域の拠点である。

 この「地域の核」を形成するには、必要な要素が3つある。

 第1に、リーダーの資質は重要だ。“公”心を持ち、最低限でもキャッシュフローを読める事業センスがあり、何よりも地域の信頼の篤い人でなければならない。

 そういう人を中心に、小さくても良いから事業を計画して、実行プロセスを一度回してみる。そこにサクセスストーリーができる。乗り越えたささやかなブレークスルーを通して、関係者に知識や経験が蓄積され、その成功を見た新たな協力者も現れる。

 次には、もう一段大きなスケールの事業を回していくことができる。ちょうど真珠が核の周りに巻きを増していくイメージで、そうした積み上げによってしか事業は地域に根ざしていかない。

 第2に、発想の転換が必要である。補助金は、“上から目線”で下に押しつける“供給プッシュ”の典型だ。そういう発想をする人に限って新しい技術が好きなので、成熟技術を無視して新技術を実証しよう、と言い出す。ところが、新しく奇をてらった技術が普及するはずもなく、肝心の市場と社会のニーズを無視するので、必ず失敗する。

 大事なのは、「上から目線」「供給プッシュ」「技術実証」ではなく、市場と社会に寄り添った「需要プル」の視点である。

 最上流でビジョンを計画する段階だと、内容も抽象的で、知識量も努力量も少なくてすむ。ところが、そのビジョンを具体化しようとすると、1000倍から1万倍もの知識量や作業時間が必要となり、多くは途中で現実の壁で行き詰まる。さらに実現化するには、その10万倍から100万倍の労力と知恵が必要になる。これを突破するには、知識と経験を持った分厚い人材が必要となる。だから「地域の核」が必要なのだ。

 こうして「地域の核」で、実践のプロセスを積み重ねてゆくことこそが、社会の姿を変えていくのに大事な知恵の積み重ね方ではないだろうか。だがその重要性が、国や自治体、受託企業など、“上から目線”の経験と視点しかない人たちには分からない。

大局的視野を持つ意思決定者で
慣習や縦割りのハードルを乗り越える

 確実に実績を上げている自治体も、数は少ないが存在する。

 長野県飯田市は一つの成功例である。

 市や信用金庫、市民の出資した「おひさま進歩エネルギー」を軸として、太陽光発電と省エネ設備を運用している。市内の幼稚園の屋根に太陽光パネルを設置。これだけでは充分な収益が確保できないため、市の美術博物館に省エネ設備を入れ、長期契約でサービス費用を得ることで、採算のとれる構造となっている。おひさま進歩エネルギー代表である原亮弘さんが責任を負ってくれ、私が代表を務めるNPOも共同事業者として参加している。

 ここでは「リーダー」と「需要プル型発想」が根付き、一応黒字事業として成り立っている。それでも、過去のプロセスを振り返ると、非常に地味で下らないハードルが数々立ちふさがった。

 主に旧来の規則との攻防で、これらを突破するには「大局的な視野を持つ上位者」が必要だった。これが、「地域の核」に必要な第3の要素だ。

 たとえば当初、市の幼稚園の屋根に太陽光パネルを設置する場合、「行政施設の目的外使用」に当たるため、固定資産税と賃貸料が発生すると言われた。それではビジネスモデルは成り立たない。そもそも、行政は身銭を切り補助金を払ってまで太陽光パネルを普及させようとしているくせに、積極的に設置しようとしている我々にカネを払わせるというのは、ちぐはぐな言い分である。

 そのほか、太陽光発電の収入の扱いについても揉めた。電気代をセーブできる上、うまくすれば中部電力に売ることで収入が入るが、そう大きな額ではない。そのお金は両方ともおひさま進歩エネルギーの収入とし、それも市民出資の団体なので20年契約にして欲しいと行政に要望を出したところ、「長期債務負担行為」になると断られそうになった。

 役人が、目先の古い秩序だけに従うと、こうした事態に陥る。多くの自治体が同様で、「マジックテープ(ベリベリっと着脱可能なマジックテープのように、個々は大した引っかかりではないのに、全部がくっつくと動かない)社会」なのである。

 結局、これらの問題は、飯田市の牧野光朗市長が「そんなのいいじゃないか」とトップダウンの英断を下してくれて、乗り越えられた。役人が目先の仕事だけを忠実としようとすると動かない問題も、大局的な視点を持った上位者が「そんな馬鹿なこと言わなくても」と議会の質問にも誠意を持って答えれば改善は可能なのだ。

 そういうことを一つ一つ乗り越え、いったんブレークスルーできると、後は早い。日本人は横を見るのが得意なので「飯田市では認めているらしい」と前例になり、他地域が倣う好循環もうまれる。

石油ショック時のOPECと同じく
地域にマネーを還元できる体制を目指せ

 この飯田市の事業は、環境省が04年と05年に10箇所ずつ採択した「平成のまほろば事業」の一つである。冒頭に挙げた「回らない風車」のつくば市も、その一つだった。

 当時、採択された事業のうち、今うまくいっているのは、飯田市と岡山県備前市の二つのみである。いずれも地域に事業の核と場をつくったことが継続できたゆえんだ。

 この7月に再び、環境省が新設した再生可能エネルギー事業に対する補助金の公募が始まる。手厚い補助金を出すと、かえってカネ目当ての失敗事業が多発した過去の教訓から、今回は地域の拠点の運営費(人件費など)のみを3年間支援するスキームとなっている。事業自体は、全量買取制度などで十分まわしていけるので問題ない。地域に根ざす事業をつくり育てるために、ぜひ、幅広く応募してもらいたい。

 ただし懸念は、自然エネルギー設備を導入しても、地元にその収益や雇用が還元されないケースも過去にしばしば見られたことだ。たとえば、青森県に風車が約200本あるが、そのうち青森資本は3本しかない。残りは東京・大阪の資本に依るものである。これでは売電収益は青森から出て行く、いわば「植民地型開発」だ。

 ここで、70年代のオイルショック時にOPEC(石油輸出国機構)諸国がとった行動が参考になる。OPECは、油田採掘の粗利9割をせしめるセブンシスターズ(国際石油会社7社。エクソン、モービル、シェブロン、テキサコ、ガルフオイル、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル)からの支配脱却を狙い、石油開発へ経営参加・国有化することで粗利配分を逆転させた。これから日本の地域社会は、OPECと同じことを自然エネルギーに関して実現する必要がある。

 地域の資源からの便益は、地域のものに。それが地域の豊かさにつながるのである。

http://diamond.jp/articles/-/13117?page=4

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