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東日本大震災記録コミュの608、“再生エネルギー起業家”が日本を変える

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東日本大震災は、日本の行方にどのような影響を及ぼすのだろうか。

日本は、東日本大震災から立ち直れずにこのまま沈んでいくのか、それともこれをテコにしてフェニックスのように再び蘇るのか。

その問いに答えるのはまだ早いかもしれない。なかでも一層混迷する政治が、日本の行く末を曇らせている。

しかし、日本の何かが変わるいくつかの兆しが見える。

例えば、震災後、日本の起業家たちが競うように表明した多額の義捐金拠出と脱原発と新エネルギー構築による日本再生への果敢な取り組みである。

孫正義ソフトバンク社長が被災地に私財100億円を寄附することを約束した後、10億円かけて「自然エネルギー財団」を設立したのはその典型的な動きである。

この財団は、自然エネルギーを研究する科学者100人に主に技術の視点でエネルギー・シフトのための助言をして貰い、政府に提言していくことを目的としている。

このほかにも、被災地支援のため私財10億円を寄附した柳井正ファストリテイリング会長、同じく10億円を拠出した三木谷浩史楽天社長の2人とも再生エネルギー推進に熱心である。新浪剛史ローソン社長と藤原洋ナノオプトニクス・エナジー社長をここに加えてもいいだろう。新浪氏は、地震後直ちに被災地に入り、コンビニを電力、水道、交通、ケータイと並ぶ新たな共同体のライフラインとすることに力を尽くした。藤原氏は、現在の日本の地域独占の電力体制を改編し、次世代送電網と次世代通信を融合する「第二電力会社」構想を進めようとしている。

彼らは、脱原発を進め、新エネルギーへの脱皮を目指す”再生エネルギー起業家”である。災害後の、なかでも福島原発破局の後の菅政権のつたない取り組みに苛立っていた国民は、これらの起業家の機敏で大胆なイニシアティブを歓迎した。彼らは、日本の新たなヒーローになりつつある。

1995年の阪神淡路大震災の時は、被災者救援のボランティアの若者たちが日本社会の新たな革新者として登場した。今度も50万人と言われるボランティアが被災地で活動しているが、今回の違いは起業家たちの社会貢献と政治的発言である。

彼らの関心は、「フクシマ」後の日本の脱原発と新エネルギー体制への転換、つまりエネルギー・シフトに向かっている。それをビジネスの面から加速させようという起業家魂に駆られている。今後、電力発送電分離と発電自由化が進めば、この分野に多くの起業家がなだれ込むことになるだろう。再生エネルギーに加えて、人間の安全保障・危機管理やヘルス・ケアなどの分野も含めて、新産業革命が起こる可能性がある。

それを牽引するのは、孫氏が自らを称して自嘲的に言うところの「ドンキホーテ」の存在である。つまり夢見る革新者の存在にほかならない。

1923年の関東大震災の後がそうだった。パナソニックは電池、シャープはラジオ、トヨタは自動車の分野に新規参入した。いずれも震災で、必需品としてその価値が痛感された商品だった。彼らはいずれも「ドンキホーテ」だった。

【コラム】“再生エネルギー起業家”が日本を変える(1)
http://japanese.joins.com/article/992/140992.html?sectcode=&servcode=


21世紀は、”再生エネルギー起業家”が日本を変えるきっかけをつくるだろう。

ただ、日本の再生のためには、彼らの夢を実現させるのに必要な政治的支持勢力とその足場・枠組みをつくらなければならない。

ここでは、次の三つの足場が生まれることになるかもしれない。

第一に、これらの動きに鼓舞された若い世代から日本版グリーン(緑の政党)が登場する可能性。

第二に、橋下徹大阪府知事や嘉田由紀子滋賀県知事のような「脱原発」を掲げ始めた知事の出現。橋下氏は、関西に電力供給している原発の新規建設や運転延長を止めるとの意向を表明している。

第三に、パナソニック、シャープを中心とする関西のビジネス群。リチウム電池にしてもLEDにしても、関西は再生エネルギー技術の集積基地である。大震災後の東京一極集中見直し機運の下、関西の復権がグリーンを促すことになるかもしれない。

こうした動きに対して今後は、既得権益層の抵抗が激しくなるのは間違いない。

東京電力をはじめとする九電力、経済産業省・資源エネルギー庁、経団連、電力労組、原子力産業会議、東京大学原子力工学科の”原発推進族”と自民党、民主党の中の”電力族”といった旧体制(アンシャン・レジーム)が脱原発に待ったをかけるべく立ちはだかるだろう。

民主、自民両党内の”菅下ろし”と大連立画策の背景の一つに、こうした旧体制のたくらみをかぎ取る向きもある。菅首相がG8サミットに出席するに当たって、孫社長と親しく連携を取り合い、浜岡原発の休止、2030年までに原発を現状より14基以上増やすとしていたエネルギー基本計画の「白紙」撤回、2020年の新エネルギー比率の20%以上への引き上げなど次々に脱原発路線を明確にしたあたりから、”菅下ろし”が勢いを増してきたこともそうした観測を生む結果となっている。菅首相その人も、そういう包囲網を感じ取っており、むしろそれを逆用し、”電力旧体制”という仮想敵をあえて投影し、国民に直接、訴える姿勢を鮮明にしつつあるようだ。

戦後、日本は水力から石炭火力へ、石炭火力から石油火力へ、石油火力から原子力発電へと3度のエネルギー革命を経験した。そのいずれも、既存勢力と新興勢力の熾烈な政治的闘争を伴った。今回は4回目のエネルギー革命となる。これまで同様、いやそれ以上の激烈な権力闘争を見ることになるだろう。

誰がこれからの日本を率いるにしても、エネルギー・シフトの過程で、東電の発送電分離、発電の自由化、九電力地域独占体制の解体、原発・核燃料サイクルの国家管理、再処理推進の是非、そして再生エネルギー普及加速化といった大きな政治決断を行わなければならない。いずれも激しい政治抗争を引き起こすことは避けられない。

船橋洋一前朝日新聞社主筆
http://japanese.joins.com/article/993/140993.html?servcode=100§code=140

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