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東日本大震災記録コミュの421.日本企業なくして世界のものづくりは成り立たない ウィリー・シー米ハーバード大学経営大学院教授が抱く確信

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 2011年3月11日に起きた東日本大震災。巨大地震は大津波や原発事故を誘発し、戦後最大の災害に発展。その結果、多くの日本企業の事業活動は、東日本にとどまらず全国にわたってマヒしてしまった。

 これまで追求してきた効率経営の歯車が一気に逆回転して、さまざまな負の連鎖が広がった。その反省に基づいて、企業は自らのあり方を再考しなければならない。大震災を転機として新たに創造し直すべき経営のモデルとは。企業で経営再創造の最前線に立つ実務家の取り組みや識者の論考を通して模索していく。

 今回のテーマは、日本のものづくりの行方。震災で日本メーカーのサプライチェーンが寸断され、生産停止の連鎖が国内だけでなく世界にも広がっている。特定の素材や部品において日本企業の世界シェアが高かったからだ。

 日本のものづくりの強さが再認識された一方で、今回の事態をきっかけに海外メーカーが素材や部品の調達先を日本以外に移す“日本外し”が進み、日本のものづくりの弱体化や国内製造業の空洞化に拍車がかかることが懸念されている。

 日本企業の生産停止の余波をもろに受けた企業も多い米国の専門家は、この問題をどう見ているのか。米ハイテク企業のサプライチェーンや日本メーカーの動向に詳しい米ハーバード大学経営大学院のウィリー・シー教授に聞いた。

(取材構成:りっふ雅映子=フリージャーナリスト)

 日本から調達してきた部品が滞り、世界中で生産停止を余儀なくされる企業が相次いだ。 驚いたのは、米ゼネラル・モーターズ(GM)が地震の発生からわずか10日後に米ルイジアナ州にある工場の生産を停止したことだ。

 1999年に台湾大地震が起きた時、私は電機メーカーに勤めていた。当時、米シリコンバレーでは「台湾からの部品調達が滞る」と一時騒然となったのを覚えている。その時はメーンボードやDRAMの値段が上がったものの、実際に生産停止に追い込まれる大企業は出なかった。

 だが、今回はアメリカの工場も停止してしまった。私は思った。今回ばかりは米国企業もサプライチェーンのあり方を見直し、変えていこうとする機運が高まるだろうと。

理想のサプライチェーンが生産停止に拍車をかけた

 世界に広がった生産停止の連鎖は、皮肉にも無駄のないサプライチェーンを築いたことが原因の1つだ。

 米国企業も調達にかかるコストや時間の無駄をなくそうと試行錯誤してきた。地震から10日後にGMの工場が生産停止したという事実は、言い換えるとそれほど無駄のない体制を築き上げていたということを意味する。

 こうした事態を受けて我々は、「現在のサプライチェーンが、地震のようなリスクにどれだけ耐性があったのか」という問いに向き合わなければならない。

 製造業とは異なる業界の話だが、私は1990年代に空港の離発着を管理するオペレーションシステムを調査したことがある。その空港は数学だけを見ると、完璧と言っていいほど無駄がなかった。40機の飛行機が間断なく着陸し、乗客や貨物を入れ替えて、また離陸する。

 だが、このシステムは天気が良ければ素晴らしいものだったが、天候が悪化したり、機体に何か問題があったりすると、急に機能しなくなる。無駄がないほど、何かが起きた時の耐性が弱い。

 部品や仕掛り品の在庫に遊びがなかったということだけではない。無駄のないサプライチェーンを築こうとした結果、それぞれの部品のサプライヤーの数がどんどん減少していった。部品の調達コストを下げるためにサプライヤーが生産し販売する量を増やす。それに伴って、サプライヤーの数が減ったのだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110418/219494/?rt=nocnt

 また、ジャストインタイムの体制を構築するためには、サプライヤーとともに、納入先のメーカーに最も適合した体制を作っていく必要があった。これもサプライヤーが減少する要因となった。そして、サプライヤー1社当たりの市場シェアは高まっていった。

 例えば、信越化学工業の白河工場(福島県西郷村)。この工場だけで300mmウエハーの世界シェア22%弱を生産していた。三菱ガス化学と日立化成ポリマーの2社は、プリント基板の素材である銅張り積層板で実に世界シェア70%を占めていた。これだけ少数のサプライヤーに部品や素材の供給を依存していれば、リスクは分散されにくい。

サプライヤーを完全に把握できていないという実態

 我々に投げかけられているもう1つの問いは、「どこまでサプライチェーンを把握できていたのか」である。

 サプライチェーンに組み込まれているすべてのサプライヤーのリスクを把握するのは、非常に困難だ。例えば、ゲーム機器のマイクロプロセッサーに使われているある装置がマレーシアで生産されていたとしよう。だが、その装置に含まれる部品はマレーシア製ではなく、中国製ということがあり得る。

 自社が調達している部品がどこから調達されているか。5段階先、10段階先、15段階先まで把握するのは至難の業だ。だから、1つでも部品がそろわなければ製造できないことを分かっていながら、1つひとつの部品の調達リスクを正確に把握できていなかった。

 ここアメリカで昨年7月にバラク・オバマ大統領の署名を受けて成立した米金融規制改革法(ドット=フランク法)でも、同じような議論が産業界から巻き起こった。「血のダイヤモンド」と称される宝石類など、内戦国で生産され紛争当事者の資金源になっている鉱物を使用している場合に、米国企業にそのことを開示するよう義務付けた法律だ。

 この法律を順守するのは極めて困難だというのが、一般的な見方だ。メーカーはサプライチェーンの奥の奥の方にある素材の調達先まで把握できていないところがほとんどだからである。

それでもサプライヤーはリスク分散を求められる

 では、サプライチェーンはどのように見直されていくのか。

 今までの考え方をすべて否定することにはならないだろう。サプライチェーンを巡る問題が難しいのは、リスクの軽減とコストの削減が極めて両立し難い点だ。どちらか一方を重視すれば、片方を犠牲にしなければならなくなる。

 リスクの軽減を重視してコストが高くなると、ビジネスで勝つことができなくなる。だが、少なくとも部品や素材のサプライヤーは、顧客であるメーカーから「リスクを分散しろ」とプレッシャーをかけられることになるだろう。日本のサプライヤーの場合、「すべての生産を海外に移転しろ」ということにはならない。あくまで生産拠点を複数設けて、リスクを分散するということだ。

 これも容易なことではない。だが、できなければ、「これ以上、御社に依存するのは危険だから、ノウハウを他社へ開示してほしい」と言い出すメーカーも現れるだろう。

 もっとも人間は、「本当に変えないといけない」と思えば、変われるものだ。中国のレアアース(希土類元素)を例に挙げよう。中国はレアアースの供給で世界の約9割を占めている。

 レアアースの発掘は環境問題につながりやすく、危険も伴うため、多くの国がやりたがらなかった。しかし、中国に依存するリスクが顕在化すると、企業は中国以外での生産体制の構築に乗り出した。「我々は変わらなければならない」と重い腰を上げたのだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110418/219494/?P=2

 日本では、世界のメーカーが地震リスクの高い日本の企業をサプライチェーンから外そうと動くのではないかと懸念する声があるようだ。しかし私は、日本のものづくりに対する評価が、今回の大震災をきかっけに失墜するとは思わない。

 日本のメーカーは依然として、高品質でほかに類を見ない製品を創り出す力がある。確かに韓国や台湾、中国などのアジアのメーカーの追い上げはすごい。うかうかしてはいられない。とはいえ、中国にはまだイミテーションからイノベーションの段階へ移行している企業はほとんどない。

 私は、今回の大震災がもたらす困難をバネにして、日本企業がものづくりの力に一段と磨きをかけて復活すると楽観視している。特に停電を回避するために節電や省エネに取り組む中で、限られた電力で効率的に生産する力が鍛えられるだろう。これは日本企業の強みになる。

電力危機が日本のものづくり力を一段と高める

 1970年代のオイルショックを機に、日本の企業は生産性を向上させた。電力の供給量が15%落ちても、生産量まで15%落ち込むわけではない。

 原子力発電の見直しも含めて、これから世界ではもっと電力を使わない方法を見つけていく必要がある。その時に、日本企業が世界をリードする存在になるかもしれない。

 ただし、短期的には、顧客を他社に奪われるケースは出てくるだろう。まずは、自社の製品が他社でも作りやすいものかどうかを改めて見極める必要がある。

 基本的な考え方として、サプライヤーを変えることはそう簡単ではない。競合他社が技術的に生産できないということもある。部品が変われば製品の設計までも変えなければならないわずらわしさもある。しかし、生産停止が長引けば、取引先の業績にも大きな支障が出る。となれば、新しい調達先を見つけて、そこへ発注を移す動きが出てくる。

 シリコンウエハーのような製品やソフトウェアは他社に受注が流れやすい。一方で、特定の素材や特定の製品専用に作られたセンサーやマイクロコントローラーなどの重要部品は代替生産が難しい。

 他社への切り替えが起きるタイミングは、各社の製品次第だが、日本のメーカーはなるべく早く生産を再開する姿勢を示すことが求められる。

 信越化学工業は、欧米やアジアの別の拠点での代替生産を行うと表明した。このように、ほかの場所で生産したり、代替品を用意したりといった対応を早く取らなければ、顧客が他社へ流れることを食い止めるのは難しくなる。

 最後に日本の方々へメッセージを送りたい。

 私が電機業界にいた2003年、中国で重症急性呼吸器症候群(SARS)が広まり、部品メーカーの生産体制も崩れた。その時、いつもは熾烈な競争を繰り広げていた部品メーカー同士が、部品の供給を止めないようにするため協業したことを覚えている。

 このような災害が起きた時、企業は顧客第一主義を思い出すものだと感動した。だから、日本のみなさんも今、自社の利益を後回しにしてでも、必死で今の状況を打開すべく汗をかいていることと思う。

 今回の震災が日本のものづくりに打撃を与えるかどうかと聞かれると、私はこう答えている。

 「短期的には難しい局面が出てくるかもしれないが、長期的には日本企業はさらにすごい力を付けて戻ってくると信じている」と。

2011年4月21日(木) 日経ビジネス
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110418/219494/?P=3

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