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カニエ・ナハコミュの「シイノキヒナコ(三十二才・ダンサー)は、踊り場で踊る。(現代アーチストの肖像シリーズその7)」(2009年)

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【プロフィール】
シイノキヒナコ。一九七六年、神奈川県横浜市生まれ。ダンサー。K美術大学絵画学科油絵専攻(中退)。二十八才のある雨の日の信号待ちに突然踊りはじめて、以来数十回にわたりおもに都心のスクランブル交差点を舞台におこなわれた、車や歩行者のあいだを縫って踊るダンス作品で注目を集める、がこのパフォーマンスの際、突然右折した車に撥ねられて左足を骨折、しかし二ヶ月後には早くも松葉杖を巧みにつかったダンスでみごとカムバック、以後ひきずる左足を活かしつつ、郵便ポストのうえで踊る「ポスト・ダンス」シリーズ、石のしたでアリンコたちと踊る「石のしたでアリンコと踊る」シリーズ、等などつぎつぎとダンス作品を発表。


【現在の活動】
シイノキはいわゆる「舞台」(ホールや劇場)で踊るのが好きでなく、たとえばスクランブル交差点だったりポストのうえだったり石ころのしただったり、ときにはだれかの夢のなかだったりが彼女の「舞台」で、そんな彼女の現在のお気に入りの舞台は「踊り場」である、踊り場といっても「踊るための場所」ではなく、「階段と階段のあいだにある平らな場所」のほうの踊り場。
「階段と階段のあいだ、というのがポイントなんです」と彼女はインタビューで語っているが、それがなぜポイントなのかまでは語っていない、それは彼女のしんたいが語ることなので、わたしたちは彼女がじっさいに踊るのを見たり聞いたりすればよい。
そんなわけで目下、彼女は踊り場で踊っている、どこかの団地や高層マンションの、あるいはホテルや廃病院の、特徴的なあるいはとりたてて特徴のない、踊り場で彼女は気が向くとおもむろに踊り出す、たまたまそこを通りかかるひとのたいていは迷惑そうに顔をしかめて彼女のわきを黙ってとおりすぎていき、なかには怒り出して彼女をドナリつけるひともいるけど、そんなとき彼女は「踊り場で踊ってなにがわるい!」ともの凄いケンマクでやりかえす。
なかには(それは子どもと老人が多いのだけど)、いっしょに踊り出すひともいて、それからもちろん幽霊と踊ったりもする、幽霊たちはたいてい踊り場にたむろしているので(でなかったらパチンコ店かゲームセンターかカラオケ)、彼女はひまをもてあました幽霊たち(それもやはり子どもと老人の幽霊が多いのだけど)をさそっていっしょに踊り場で踊る、幽霊というのはつまるところ水分だから、踊って汗をかいてしまうと消滅してしまう、そうして踊り場の床もしくは踊り場の壁もしくは踊り場の天井のシミとなる、彼女はそれらの踊り場の幽霊たちのシミを記念するために写真におさめており、いまや数百点にものぼるそれら踊り場のかつて幽霊だったシミを写した写真をまとめて、写真集を出版するにあたり、同シリーズによる写真展を近々開催する予定なのだけど、どうせならやはりどこかの踊り場で、ということで目下その場所を探してるところ。

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