ぼくらの就活のバイブル　コミュの＊ぼくらの就活のバイブル＊

【ぼくらの就活のバイブル】

それは２００６年のことだった。
　
時代は、ホリエモンが逮捕され、
大学入試センター試験でリスニングが導入され
塾も教師もパニックに陥り、
サッカーの中田英寿が現役引退を表明し、
甲子園ではハンカチ王子が活躍し、
美しい国という安倍総理の名言が生まれ、

フィギュアスケートの荒川選手がイナバウアーを決め、
プレステ３が発売され、「涼宮ハルヒの憂鬱」がアニメ化、
アニメ業界に旋風をもたらし、
北朝鮮が発射実験でテポドンを打ち上げ、
日本人の平均寿命が男女ともに短縮した。
激動の年に入ろうとしていた。
　
　
俺自身も、人生最大の転機を迎えようとしていた。
大学３年、就職活動のスタート。

それまで、就活のシの字も知らない俺は、
完全に無垢な赤ちゃんのような状態で、
社会人になるための一歩を踏みしめようとしていた。

あの日。就活を始めたあの日。

「映画とか、ゲームをつくれたら楽しいかもなー、
でも現実的じゃない。
落ちるやろ。まぁ、とりあえず。受けてみっか。」
　
　
そんなノリで始めた就活。
行きたいとこなんてまるでナシ。
俺のそんな就活はそんなノリで始まった。

そんなノリも、わずか開始４日でなぜか緊急停止し、
俺の就活は迷走し始めた。

ねむれる獅子よ。頼むから！頼むから起きてくれ！！

自分のやる気を、自分のなかに潜む、ねむれる獅子に全力で託し、
いずれくるであろう、やる気を待っていた。

そんな毎日が続いたが、やっぱり、
やる気は一向に溢れてくる気配はなかった。

ただ、川の流れのように、
たそがれて、せせらぎに身を任せていた。
人生の可能性＝ゼロに決めた俺は、
適当に就職して一生終える気マンマンだった。

やる気って売ってないのかね～。売ってくださーい。
行きたいとこない俺は、
・・・やだよ、こんなのやりたくない気満載だよ！！
　
　
でも、ともかく右に倣え！就活やらなきゃ！
ってことで、パソコンをつけて就活サイトにいってみた。
　
　
とりあえず、伊右衛門が好きだって理由だけで、
サ○トリーにエントリーした。
パソコンの前で９０分固まる。親に電話。

そして思ったこと。
このままじゃ、確実にニートぜよっ！！と。
新しい日本の夜明けぜよっ！！と。
そして自問自答が始まった。

「いや、あかん、岩ちゃんあかんで！！
手に職をもたんとあかん！！ニートって聞こえいいけど
ただの無職やろ？
じゃあなに？　その手のひらにある職はなんかないの？
手にひらにある職はないのん？」

まてよ・・・人に誇れるたったひとつの、
たったふたつの自慢があるじゃないか！！　それは！！

①ソフトテニス審判２級。
②スーパーのレジ。

＊ソフトテニス審判２級：これがあると試合とかがスムーズに行く。
＊レジ職人：３年続けた。接客とかが少しできる。
　
　
この２つぐらいしか、思いつかなかった。
よし、これをどう就活に生かすか？
　
　
いや、枠にとらわれるな！！　完全に、テイクオフフレームだ！！
型にはまることほど、つまらないものはない！！
じゃあ、どうする！？　どう組み合わせる！？

逆転の発想でいけ！
世の中で、"ぜったいに"組み合わさることのないような
トンデモない組み合わせを考えろ！！
そう！　理科で習った
王水（濃塩酸：濃硝酸＝３：１）のように！
　
　　
そう・・・・・

明石家さんまとダウンタウンの漫才、
フィギュアスケートVSフェンシング、メイド喫茶と古武道、アンパンマンとグラップラー刃牙、おすもうさんとデスノート、おばあちゃんがゴールキーパー、ヤクルトの中身がカルピスの原液、松岡修造がキャビンアテンダント、ディズニーランドがダブルブッキング、渡されたおしぼりが雑巾、愛嬌のいいネガティブ、ゆとり教育と競争化社会、バリアフリーと高齢化社会、グレムリンとグリム童話、シルバニアファミリーとシルベスター・スタローン、イレブンピーエムとＰＴＡ、野鳥の会と主婦の会、オタクとメンズナックル、行事が答辞で、坊主が屏風の絵を描いた、そのまんま東と東国原英夫！
みたいにッッ！！

ＣＯＯＬ！　になれ！
　
　
ソフトテニス審判２級×スーパーのレジ職人。
ソフトテニス審判２級×スーパーのレジ職人。
ソフトテニス審判２級×スーパーのレジ職人。
　
　
逆転の発想、逆転の発想、逆転の発想・・・。
　
　
・・・３０分後・・・
　
　
……んと……たとえば………ほら、その…喧嘩とかあったら、
その……仲裁とかができるかもしれん……やん。

岩永「あの…いまの言い方フォールトです。」
ヤンキー「あんっ？？なんだこら？」
岩永「セブンセットマッチプレイボール」
ヤンキー「しばくぞこらっ！！（襟につかみかかりつつ）」
岩永「１５－０（フィフティンーラブ）」
ヤンキー「なめてんのかお前！！！」
岩永「３０－０（サーティーラブ）」
　
　
・・・３０分後・・・

ヤンキー「へっ、こんくらいで勘弁してやらぁ！！！」
岩永「（エッエッ）ゲ、ゲームゼット。
まっ、またどうぞお越じぐだざいませ（泣）」
　
　
俺の就活は、妄想の頂点に達し、
ブームの過ぎ去ったキャラ芸人が次を模索するように、
一番分かりやすいカタチで迷走を始めていた。
　
　
そして、少しずつではあるが、
エントリーシートを書きながらの瞑想も始まっていた。
　
　
となりのトトロのように、
「夢だけど、夢じゃなかった！！」って、
朝起きたとき、
"夢で見たことが勝手にかなっている"就活ver.
を期待していた。

メイがそういうビジョンを描いていた。

今の自分はなにをすべきか迷った。
迷いに迷った、不思議の国のアリス状態だった。
　
　
不思議なものを見るように、
就活サイトを眺めていた。　
　
　
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