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HARUHLEY'S COMETコミュのBack in the Koenji Groove! #2

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【Rocket Ride】

暗闇を、まるで深海魚のように規則的に点滅する光が突き進んでいく。

エイのような形のこの船が深海魚と違うのは、こいつのボディがハニカム構造の特殊合金で覆われた、高速長距離移動が可能な宇宙船だ、という事だ。
どこまでも静寂の広がる宇宙を、切り裂くかのように突き進むこの船の行き先は、地球。
ついこの間まで、旧友達と輝かしいステージの上で飛び回り、「ロックン・ロール」という極上のドラッグをまき散らしてきた、辺境の星。
確かに辺境ではあったが、イカした車とホットな女達と冷えたビール、そしてロックン・ロールへの愛にあふれた、素晴らしい星だ。
俺たちの任務は、「ロックン・ロール」をこの宇宙の隅々にまで広める事。

だが、この旅路を邪魔しようとする厄介なヤツらが現れたようだ。

ちょうどマクラクラン星系を過ぎた辺りから、一定の距離を保って追いかけてくる船が1隻。
サイズはこっちよりも大きく、こっちがレーダーで様子をうかがえるギリギリの距離を、追い越すでもなく離れるでもなく付いてくる。
まるで、静かに獲物を付け狙うサメだ。

マクラクラン星系は比較的治安が安定している区域だったが、ここから先はそうはいかない。
連邦パトロールの目も届かない空域で、自分たちよりも小さな相手を追いかけて来るヤツら。
数刻前にわざと予定のコースを若干変えてみたが、やはり付いてくる。

まちがいない。
海賊だ。

貨物船ならば、この空域はまずパスするし、どうしても通過しなければならない時は運行会社の警備船が並行する。
海賊船と言えど、返り討ちに合う可能性がない訳ではない。
しかし、この船の外見とデータバンクの性能を見て、絶好のカモだと思ったのだろう。
それほど、この船は「公式には」ふた昔前のオンボロで、たいしたスピードも出ず、ましてや脅威となる武装なんかありはしない事になっているからだ。
向こうの船はデータバンクにはない。
おそらく、既存の船を出所が判らなくなるほど改修・改造して、自分たちにとって使い勝手の良い様にカスタマイズされている船なのだろう。
どのくらいの性能を持っているのかが、全く読めない。

こちらにとっては、実に厄介な相手だ。

シートベルトを締め直し、コントロールを「自動操縦」から「マニュアル」に変更した。
ヤツらの常套手段として、まず一発「大きいヤツ」をぶっ放して来るはずだ。
それで相手を威嚇し、距離をつめ、拿捕する。
頂けるものを頂き、めぼしいものがなければ、船ごとかっさらう。
船ごと売り払うには何かと足がつきやすいので、バラバラにしてパーツごと売り払う。
哀れな船の乗組員は、女子供であればやはり売り払い、男どもは殺されるか、降伏してもその場で宇宙へと放り出される。

さて、どうしたものか、と考えていた時。
後方警戒レーダーがけたたましく警報を鳴らした。

ヤツら、ついに仕掛けてきやがった。

後ろから、凄まじい勢いでミサイルが接近してくる。
俺は、レーダーとにらめっこしながらレバーを操り、回避行動をとった。
どうやら赤外線や熱探知型のミサイルではないらしい。
簡単な回避行動でミサイルは俺の船の脇を通りすぎていった。
ほっと安心した矢先、前方でさっき俺を追い抜いていったミサイルが爆発した。

ミサイルは爆発のついでに、大小さまざまな金属片をまき散らした。
「しまった!」と思うのも間に合わず、俺の船はその金属片のゴミに突っ込んでいった。
船の方々から、衝突音が聞こえると同時に、船が大きく揺れ始めた。
金属片は、俺の船のあちらこちらにぶつかり、穴を開けたり、へこませたりしていった。
いくらこの船がカスタマイズ済みで、船体が特殊合金に包まれていても、これはヤバイ。

コックピットが警報音に包まれる。
コックピットの強化ガラスへの直撃はなんとか避けられたものの、金属のゴミ達は船体に穴を開けただけでなく、中のケーブル類やらセンサーの一部も滅茶苦茶にしてくれたらしい。
俺は船のスピードを上げた。
しかし、ダメージを喰らったせいか、思う様に加速しない。
金属のゴミは通り抜けたものの、このままではまずい。

後方レーダーが新たな警報を鳴らした。
ヤツらの船が距離を縮め、またミサイルを撃って来た。
さっきのよりは小型だが、今度は追尾式のヤツで、俺の動きを完全に止めるつもりだろう。

このままじゃエンジン部に直撃を喰らう。
レーダーには、船体を示す中央のアイコンに接近して来るミサイルを表示している。
接触まで後30秒。

俺は天井にあるスイッチのうちのひとつをONにした。
コックピット後ろにうずたかく積まれていたビールの空き缶。
その床下が開き、空き缶の山が落ちていく。

「目には目を、ゴミにはゴミだ」

さっきのスイッチの隣にあるボタンを押す。
すると、船体後部のハッチが開き、さっき床下に落ちていったビールの空き缶が宇宙空間にばらまかれる。
俺の船に迫っていたミサイルは、無数のビールの空き缶に突っ込み、爆発した。

俺は、口元が緩んでいくのを止める事が出来なかった。
ミサイルをかわせたからだけではない。
一歩間違えれば命に関わるようなこのスリル。
イカした車でハイウェイをブっ飛ばしたり、ギターを手にステージに上がっている時と同じ、アドレナリンが最大レベルで分泌されているこの感じ。
思わず叫び声を上げたくなるような、こんな感情は久しぶりだった。

海賊船がスピードを上げた。
もう振り向けば見えるほどにまで、近づいている。
このまま船体をぶつけて来るつもりか。

「そういはいくかい」

俺は、シート横のボタンを押した。
残りのビール数を示す横のデジタル数字が急速にカウントダウンされていく。
シートに仕込んである、未開封のビール達が、船体後方へと運ばれる音がした。

「少しばかりもったいないが・・・」

天井のボタンを再び押す。
船体後部のハッチが開き、今度はカプセルが射出された。
カプセルはうまい事ヤツらの船のコックピット辺りに漂い、爆発物かと慌てるヤツらの目の前で、炸裂した。
カプセルは無数の缶ビールを宇宙空間に放り出し、真空に放り出された缶ビールはことごとく破裂し始めた。
破裂したビールの中身が、海賊船のコックピットの強化ガラスに付着し、急速に凍り、視界を遮り始める。

同時に俺はレバーをフルスロットルに叩き込み、船を急速上昇させた。
やがて船は大きな弧を描いて宙返りを決め、海賊船の背後をとった。

「あばよ」

ターゲットスコープのど真ん中に映る海賊船。
俺は、レバー横の赤いボタンを押した。
船体のパネルが発光し、船首にあるレーザー砲から美しい光の束が発射される。
光の束は瞬く間に、ヤツらの船を飲み込んでいった。
中の海賊達も、何が起こったか理解する間もなかったろう。
海賊船は、文字通り塵一つ残さず、宇宙から消えた。

宇宙に再び静寂が訪れた。

俺は、せっかく訪れたエキサイティングな事件が終わってしまった事へのちょっとした落胆と、生き残れた安堵を感じながら、傷ついたこの船の修理と、さっき大盤振る舞いしてしまったビールの調達をどうしたものか、考え始めた。

未練がましくシート横を見る。
すると、デジタルが「001」を示していた。
ビールはすべて排出したハズだったが・・・引っかかっていたのか、偶然か・・・それとも単に表示エラーなだけか。
ボタンを押すと、シートから最後の一本が出て来た。

俺はニヤリと笑ってプルタブを開け、ビールを渇いた身体に流し込んだ。

【地球】まではもうすぐだ。



作/ヤマセ・コーダイ 無許可複製・転載を禁じます。
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コメント(1)

見たか!缶ビールECMの威力を〜。YEAH!

読んでいて完全にこの世界に引き込まれてしまうなぁ。
よしっ、缶ビール飲もうっと。
プシュッ!これで我が家のカウンターは000になってしまった

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