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日本企業の動きコミュの124.日本の家電は6重苦じゃない、「1重苦」だ  フジマキ・ジャパン社長 藤巻健史氏

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 家電メーカーが苦境に陥っている。再建策が練られているというものの、エルピーダメモリも破綻した。ひとえに円高のせいだ。円高の弊害もついにここまできたか、と思っていたら先日、某テレビ局から「日本家電の再建策」についてのアンケートが送られてきた。私は当然のことながら「個別企業の努力の段階ではない。円安政策に尽きる」と答えたのだが、他の識者と言われる方々の回答に驚いた。「円高が大問題」という認識が欠けているのだ。認識がある方でも「問題の一つにすぎない」程度のとらえ方だ。

 識者でさえこうなのだから、ちまたで枝葉末節の再建策議論がなされるわけだ、と思った。これが日本経済を低迷させた元凶なのかもしれない。今の円高は、オリンピックの100メートル競走で日本の選手だけスタートラインが後方にあって200メートル走らなければならないようなもの。負けて当然だ。その走行距離の修正を図らずにユニホームやスパイク、ランニングフォームの改良に努力したり、有名コーチを招聘(しょうへい)したりしたところでビリからは抜け出せない。

 日本の家電業界が置かれている苦境はセールス方法や経営者の発想、技術開発力に問題があるという次元ではない。よく言われる「6重苦」のせいでもない。円高による「1重苦」なのだ。

 A社とB社が国内でほぼ同一価格で同じモノを売っていたとしよう。その後、A社が5割値上げし、B社が5割値下げすればA社の売り上げはまず間違いなく落ち込む。倒産の危機に見舞われたA社の緊急取締役会で「セールスマンの教育をし直す」とか「販売店の展示方法を変える」などと発言する取締役がいたら、みんなにアホだと思われるだろう。値下げしてB社の販売価格に近づけるしか解決策はないのだ。その商品はあきらめてB社では作れない新商品を見つけるという方法もあるにはあるが、そんなことは世間の人がみんな考えていることであって、極めて難しい。

http://www.nikkei.com/money/column/moneyblog.aspx?g=DGXNMSFK2202U_22102012000000

 鎖国時代ならともかく、いまの日本企業が競争すべき相手は国内だけとは限らない。価格に非常に大きな差が生じた場合、価格を引き下げなければ危機脱出などできないのは国内での競争だろうと海外との競争だろうと変わりはない。

■輸出業者だけが海外と戦っているわけではない

 海外との競争というと、日本人はとかく輸出業者のことばかりを考えるが、彼らだけが海外と戦っているわけではない。すべての日本人が海外と競争している。熱海の旅館業者は客の取り合いでハワイのホテルと価格競争をしているし、日本人労働者は仕事の取り合いで海外労働者と価格競争をしている。内需に頼る製造業も輸入品と価格競争しているのだ。ハワイの方が安ければ熱海への旅行客は減り、海外労働者の方が安ければ工場の海外移転で日本人労働者は仕事を失う。輸入品が安くなれば内需に頼る製造業者も輸入品に国内販路を取られる。

 ビジネススクール在学中に友人になったビルジャービスが来日。10月25日にしゃぶしゃぶを囲んだ。我が家での3カ月を含め日本に1年間住んでいたこともある。私をJPモルガンに引っ張ってくれた恩人。弁護士でもある。

 日本人が競争を強いられる外国製品や旅行をはじめとする外国サービス、海外労働者の価格とは、その国の通貨での価格に為替がかけられたものだ。円が2倍に強まれば価格は実質2分の1になるし、円が2分の1に弱まれば価格は2倍になる。「安い労賃を武器にした中国が、日本にとって代わって世界の工場になった」とよく言われるが、過去3000年とか4000年の歴史をさかのぼっても中国の労働者の賃金はずっと安かったはずだ。中国の「安い労賃」が近年強調されるようになったのは人民元が安くなったせいだ。1980年には1人民元=160円だったレートが、今や12.7円。30年前に比べて通貨が12分の1と安くなったからこそ、日本人にとって中国人の労賃は12分の1になったのだ。日本の工場は中国に進出し、日本人の代わりに中国人が雇われたのである。

 人民元だけではない。84年末に1ドル=251円だったドルは今や80円だから、米国で日本製品は3倍の値上げをしたのと同じだ。これでは米国で日本製品が売れるわけがないし、米国人の日本への旅行意欲もしぼむだろう。米国の企業が日本に工場進出して日本人を雇いたくても、労賃が以前の3倍とあっては実現は難しいだろう。

 逆に日本人にとってみれば、ハワイ旅行に行くのも米フォード車を買うのも価格は実質3分の1になったことになる。熱海の代わりにハワイに行ったり、トヨタ車の代わりにフォード車を買ったりする人もいるだろう。米国に工場進出すれば、米国人を以前の3分の1の値段で雇える。対米国でさえこうなのだ。中国や韓国など対アジア諸国ではさらに円高が進んでいる。日本製のモノもサービスも日本人労働力も売れなくなる。海外市場でも国内市場でも、だ。

■浜田宏一名誉教授と主張が一致

 こうした議論を十数年にわたってしてきたが、誰も聞いてくれなかった。私が学者ではないせいだろうか? しかし、日経ビジネス10月1日号の52ページを見ていただきたい。「なぜ日本経済が成長しないのかという問題にはいろいろな理由があるが、一番の原因は貨幣に関した変数であるデフレや円高にある」「円が3割上昇し、ウォンが3割下落したとしたら、日本企業は韓国企業に7割近いハンディキャップを負うことになる。エルピーダメモリもそれで倒産した。輸出企業に7割もの負担をかけておいて、産業再編や技術進歩でそれを克服しろというのでは、政府も日銀も酷にすぎる」――。米エール大の浜田宏一名誉教授が、私とまったく同じことをおっしゃっているのだ。

 ご存じの通り、浜田名誉教授は経済界の大御所で私にとって雲の上の存在の方だが、私が今年初めに上梓した為替の本を「この本はいい」と非常にほめてくださった。「円高が諸悪の根源」ということを書いた本に対して、だ。私の友人を通じて先生からコンタクトがあって2月に東大でお会いし、考えが非常に似ていることを確認させていただいた。

 とはいえ、こうした主張に対しては「為替は人為的に動かすべきではない」とか「動かせない」という反論が出てくる。自他ともに市場人間と認める私に言わせれば「為替は動かせる」のだ。もちろん、経済実態に合った為替レベルから為替を動かすのは難しいが、実態レベルに戻すのは難しくないのだ。

 日本にある個人金融資産の1480兆円のほとんどが国内での預金・投資であり、海外に振り向けられているのは数%にすぎない。20年間も名目GDP(国内総生産)が伸びていない国に資産が滞留するなど、市場原理が発達している国では考えられないことだ。国内に非合理にたまった巨大マグマを海外に流せば、一瞬のうちに大幅な円安になる。市場原理を働かせればいいだけで、その方法は単に技術論にすぎない。

 脱線するが、そうはいっても「海外に資金を持っていけば為替でやられる可能性がある。その証拠に『円安論』を十数年も主張しているフジマキは大外れで、自分の主張通りにやっていれば今ごろ自己破産していたはずだ。破産していないところを見るとフジマキは口だけだ」とよく言われる。それを理由に海外投資を渋る方もいらっしゃる。
 しかし、私は買ったドルをドル紙幣で持っているわけではない。リスク資産を持てばキャピタルゲインも配当金も利息もある。日本のバブルがはじけた89年と比べると日本株は4分の1に下落したが、米株価指数であるダウ工業株30種平均は89年末の2753ドルから現在1万3500ドルと約5倍に上昇している。GDPが伸びる国は株も不動産価格も上昇するものだ。

■海外投資の是非は為替だけで見てはいけない

 為替が143円から半分の80円になっても、米株投資は円で考えると2.5倍になっているのだ。私が長年、米国株を推奨してきた理由はここにある。私が定点観測しているハワイの不動産は80年と比べるとドルで2倍になっている。為替で円が2倍に強くなってもチャラだ。確かにすべての海外資産を米国株にしたわけではないので、私もこの10年間は損をしたが、もちろん破産するほどのダメージではない。申し上げたいことは海外投資をするか否かは為替だけで見てはいけないよということだ。

 国内に滞留している1480兆円という巨大なマグマを動かす方法はいくらでもある。「為替の損を他の所得と通算できるようにする」「翌年以降に繰り越しできるようにする」といった税制改正が最も簡単だと思うが、ほかにも過激な例では前回このコラムで提唱した「マイナス金利」や、最近盛り上がってきた「日銀の外債購入」も一案だろう。

 この外債購入は最近でこそ多くの方が主張し始めているが、私は90年代から主張している。主張しているだけでなく、当時モルガン銀行の支店長としてニューヨークから来た副会長と一緒に日銀を訪ね、しつこく提案したこともあるのだ。ただ当時は誰一人として顧みてくれなかっただけである。ほかにも「ドル建て日本国債の発行」などのアイデアもある。

■国債バブルと円バブルを作った責任

 ところで、「フジマキさんは以前は『円安論による日本経済復活論』を述べていたと思いますが、現在は『日本経済破綻論』になりました。主張が変わったのですか?」という質問をこのコラムのコメント欄で受けたことがある。

 私の主張は変わっていない。日本経済は円安政策を導入していれば立ち直れたといまでも強く信じている。この十数年にわたってそう信じて主張してきたのだ。だが、残念ながら時間オーバーだ。私のもう一つの懸念(実はこれはいままで述べてきたように円高問題と根は一つなのだが)財政赤字問題が極限まで来てしまったからだ。

 いま政府が円安政策を明確にすると、国民がこぞって円預金を引き降ろし外貨投資を始めるだろう。そうすると国債を買い支えている銀行の国債購入資金がすぐにでも枯渇してしまう。明日、財政破綻が起きてしまうのだ。したがって、ここまで累積赤字が大きくなってしまった以上、政府は強烈なる円安政策をとれない。自分が財政破綻の引き金を引くわけにはいかないという袋小路なのだ。こうなると残念ながら市場の暴力に身をゆだねるしかない。

 「市場の暴力」という言葉を使ったが、暴力をふるう市場が悪いのではなく国債バブルと円バブルを作ってしまった私たち自身が悪いのだ。私がいま「ファースン・ザ・シートベルト・プリーズ」(シートベルトをお締めください)と言っている理由がお分かりになっただろうか。

http://www.nikkei.com/money/column/moneyblog.aspx?g=DGXNMSFK2202U_22102012000000&df=5

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