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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『WOOD JOB!〜神かむ去さりなあなあ日常〜』[日本公開:2014年5月10日]

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●Introduction
『ウォーターボーイズ』など数々のヒット作を送り出してきた矢口史靖監督が、人気作家・三浦しをんのベストセラー小説「神去なあなあ日常」を映画化した青春ドラマ。あるきっかけで山奥の村で林業に従事することになった都会育ちの若者が、先輩の厳しい指導や危険と隣り合わせの過酷な林業の現場に悪戦苦闘しながら、村人たちや自然と触れ合い成長していく姿を描く。『ヒミズ』などの染谷将太をはじめ、長澤まさみ、伊藤英明、ベテラン柄本明らが共演する。

ストーリー:大学受験に失敗し高校卒業後の進路も決まっていない勇気(染谷将太)は、軽い気持ちで1年間の林業研修プログラムに参加することに。向かった先は、携帯電話が圏外になるほどの山奥のド田舎。粗野な先輩ヨキ(伊藤英明)のしごき、虫やヘビの出現、過酷な林業の現場に耐え切れず、逃げようとする勇気だったが……。
[日本公開:2014年5月10日]

コメント(2)

 都市の青年が林業体験することが映画のネタにどうなるのかと最初はタカをくくっていました。どうせ酪農高校を描いた『銀の匙』と同様に斜陽で廃れていく林業一家の涙の離散を描くのが関の山だろうと。しかも『銀の匙』なら食育という身近な問題を相手にできたのですが、材木なんて家を建てようとする人とか、日曜大工をやっている人を除いて、なじみが薄い分野です。
 けれども矢口監督にとって、どんな専門分野であっても、青春コメディーとして面白く描いてしまう才能は天才というほかありません。林業をネタに5分に1回は爆笑させてくれました。しかも、面白おかしく描く中にも、芯の通った山の自然と山の仕事への敬意をしっかり感じさせていくれる描き方なのです。今回は、林業体験研修にやってきた青年の目を通して、林業の魅力に触れていくことになります。林業のことなど知る由も無い観客も主人公に感情移入して、山の仕事のどこに主人公が感じ入っていくのか、気持ちが動くツボをピタピタと描いてくれたのでした。

 さて主人公は、大学入試に失敗して、自分の進路も決めきれないのに能天気な高卒ホヤホヤの18歳男子・勇気。もちろん林業なんか全く興味はありませんでした。けれども級友との飲み会の帰りに、たまたま見つけた研修案内のパンフレットの表紙に写っていた笑顔の美女(長沢まさみ)に一目惚れ。そのパンフレットこと、山奥での林業研修プログラムだったのです。ところで勇気が最初見たのは自衛隊の隊員募集でした。そこから一呼吸置いて林業研修のパンフレットがペラリと現れて、勇気がハッとする演出に、大笑い(^。^)のっけから矢口監督の芸の細かさに驚嘆させられました。

 東京をたつまでは、まさにお気軽な気持ちだった勇気が現地に赴いて直面する現実との落差の描き方も印象的。都会暮らしには、携帯も繋がらないし、電車も1日に3本程度しかなく、コンビニもないという生活が衝撃的に描かれます。
 林業の授業で扱うチェンソーもなかなか危険。福島で除染作業に従事したとき、山林班に属していたため、勇気と同じ体験をしました。たまたま地面に当たったとき、衝撃で飛んだ小石がはねて、30メートルも離れた人家の窓ガラスを粉々に割ったときはゾッとしましたねぇ。それと山林の急斜面を登ったり降りたりするのがキツかったです。
 だから勇気は、すぐにでも逃げ出すつもりだったのに、絶妙のタイミングでパンフレットに載っていた例の美女とバッタリ出会い、戻ってくるシーンもなかなか可笑しく描いてくれました。

 そんな勇気でも何とか林業研修を終えて、1年間の実地訓練に臨むことになりました。てっきりお目当ての美女の所属先と勘違いして、研修先に選んだのは、一番山奥にあたる山しかない神去村の中村林業。しかもよりにもよって、そこには野生の生きもののような野蛮さで、研修期間中に勇気たちをしごいてきたヨキ(伊藤英明)が担当社員としてまちか待ち構えていたのです。
 幾分山の暮らしに慣れていた勇気でも、神去村では容赦なく手荒な歓迎が待っていました。道ばたには鹿の死体が転がり、山で作業すればたくさんのヒルに噛まれて、マムシにも遭遇するし、ヨキから散々足蹴りを喰らってしまいます。

 それでも勇気は、林業と山の暮らしの魅力に目覚めていくのでした。そこには都会では失われた山の男たちの人情と絆がありました。そして、大きな杉の木を登って見渡せば、神去村の山々が一望に。その美しさに打たれた勇気は、山の神への敬意も自然に抱くのでした。余談ですが、後半遭難した地区長の孫を勇気が救出すシーンでなぜ手の甲に飯粒がついているのか不思議に思われることでしょう。あれってもずっと前に山の神さまの石像に、勇気がおにぎりの半分をお供えしたからなんですよ。憶えておいてくださいね。
 なかでもヨキが大きな杉の木を切り倒すときの格好良さに、勇気は目を輝かせて惚れ込んでしまうのです。そしてもっと目を輝かせたのは、切り倒した大木が市場に出され
競り落とされた値段でした。1本で140万円という卸値に勇気はびっくり!けれども中村社長とヨキは、今切り倒した木は自分たちの祖先が植林し、丁寧に間伐や枝打ちを100年続けてきた努力が実を結んだものなんだとたしなめます。決して一本売れれば丸儲けでいいのではなく、今植えた木を切り倒すのは自分たちの子孫であり、そのためにも地道に植林していく必要がある。この仕事は、100年先を見据えた、気の長い“未来を作る”仕事なんだとも。
 ふと気づければ、勇気も同僚の山師たちと木こり唄を唄い逢い、林業ならでは木の香りと山の空気の虜になっていたのでした。この香りこそ、研修を終えた勇気がどんな決断をするのか深く関わっていくことになります。

 そんな勇気でも、神去村の住民たちはよそ者扱い。中でも勇気が憧れる例の美女の直紀は、同棲までした林業研修生にトンズラされたこともあって、同じ研修生であった勇気を邪険に扱います。けれども区長の孫を救出してからは関係が一変。ラストは勇気も、村の奇祭にも正式に参加して、怒濤のクライマックスへ!
 何と言ってもこの祭、男衆は全員ふんどし一丁で徒党を組んで、ご神木の切り出しへ向かうのです。途中出遅れた勇気をバイクで送ることになる直紀でしたが、ハダカの男衆に囲まれて、演じ長澤まさみもさぞかし目の置き場に困ったでしょうね。
 ご神木の切り出しから始まる祭りのメインイベントは、矢口監督の割には真摯な描き方。ビシッとした厳かなさが画面からよく伝わってきました。そしてトラブルでご神木に跨ってしまった勇気に待ち受ける過酷な試練。その大迫力シーンはCGや吹き替えなしで撮ったというから凄いです。

 物語の展開はそれほど目新しくはないけれど、矢口監督のコミカルでスピーディーな演出であっという間に引き込まれてしまうので、安心して楽しむことができました。

 そして原作小説のタイトルにもある「なあなあ」は、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」などを意味する方言とされている。その言葉の通り、全編にゆったりとした時間が流れていて、まぶしいほどの山の緑とともに、とても心地よく感じられたのです。タイトル通りののどかな雰囲気もたっぷりで、ぎすぎすした生活に疲れている人にとっては一服の清涼剤となる作品となることでしょう。

 勇気役の染谷将太のヘタレぶりが傑作。そして次第にマジに林業に入れ込んでいく姿、そしてラストで山に残るのか、街に戻るのか決断を下す微妙なスイッチの入れ方の表現も秀逸でした。そんな主役を完全に喰らったのがヨキ役の伊藤英明。ワイルドさで「海猿」シリーズとは対称的ながさつなキャラを演じきりました。妻みきとの絡みでは、夜の夫婦生活の話題で、ちょっとエッチでコミカルなところも見せて、完璧なイメチェンを果たしました。またヒロイン役となる直紀を演じた長澤まさみも、可愛さばかりでなく、男勝りで勝ち気なキャラを好演。主人公を揺すぶる印象深い演技を披露してくれました。

 ちょっぴり泣けて、何より自分も日常から離れて何かにチャレンジしなくちゃという気持ちにさせてくれる素敵な映画です。ぜひご覧くださいね。

追伸
 本作が撮影された津市美杉町に2日、撮影で使われたセットなどを展示する記念館がオープンしました。舞台の「神去村」は、林業が盛んな同町がモデル。記念館は8月31日までの期間限定です。

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