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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『ワン チャンス』[日本公開:2014年3月21日]

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●Introduction
 イギリスの人気オーディション番組での優勝をきっかけに、一夜にして携帯電話の販売員から世界的オペラ歌手となったポール・ポッツの半生を映画化。恥ずかしがりやでパッとしない容姿、不運続きの彼がオペラ歌手になるという長年の夢をかなえるまでを描く。監督は、『プラダを着た悪魔』などのデヴィッド・フランケル、主演は『人生は、時々晴れ』などのジェームズ・コーデン。ポール本人の吹き替えによる「誰も寝てはならぬ」などの名曲の数々が、奇跡のようなサクセスストーリーを彩る。

 子どもの頃から典型的ないじめられっ子のポール・ポッツ(ジェームズ・コーデン)は、引っ込み思案で今ひとつな容姿のケータイ販売員。何をやってもうまくいかない彼の誰にも言えない夢は、オペラ歌手になることだった。挫折の繰り返しに自信をなくしつつも周囲の励ましに支えられながら、最後の挑戦としてオーディション番組に挑む。
[日本公開:2014年3月21日]

コメント(2)

 映画館なんかで泣いたことがない人、映画を見過ぎてチョット見ただけで筋が分かったしまい、感動できなくなった人もこの作品のラストに歌い上げるシーンには、思わず感動の涙を抑えることはないでしょう。
 『プラダを着た悪魔』の名匠デヴィッド・フランケル監督と『最高の人生見つけ方』の脚本家がタッグを組み、世界的オペラ歌手となったポール・ポッツの実話を、ラブコメタッチで感動作に仕立てたのが本作。
 ポッツの凡庸さを引き立てるために、地元の市議会議員にも当選した非凡な知性の持ち主だったところを、全く普通の携帯ショップの店員に置き換えてしまったこと。そして、本当は以前にもテレビ番組に出場して優勝し、賞金の8000ポンドを掴んで、イタリアへのオペラ留学の資金にに当てたことも、劇中では場末のパブのコンテストに優勝したことにして、フィナーレの成功の場面との落差を印象づけた演出は効果的だったと思います。
 タイトルは、番組の名物辛口審査員で音楽プロデューサーのコーウェルが手掛けた、ボッツのデビューアルバム「ワン・チャンス」に依ります。このアルバムは、全英アルバムチャート3週連続No.1に輝いた作品となりました。

 なお、本編の歌唱シーンはすべてボッツ本人のもの。トニー賞を獲得したミュージカル界のトップ俳優であるジェームズ・コーデンでも、ボッツの奏でる魂の響きには及ばなかったのです。また最後の番組シーンのホンモノそっくり度も注目。完璧なコピーぶりには驚かせられました。

 また、本作はメールで知り合ったジュルズとのラブストーリーが、伏線として語られています。容姿にコンプレックスを持っていたボッツ。実際の本人は、それでイタリア留学までしていたオペラ歌手への夢さえ諦めるほどだったのに、メール友のジュルズと初めてリアルで出会ったデートで、恋人同士になり、やがて結婚する仲にまで発展します。女性に対して自信のない人でも、勇気と自信が湧いてくるような物語でした。

 さらに、オペラが苦手な人でも、ストーリーに填ってしまうユーモラスな台詞が盛りだくさん。特にオペラが嫌いなポッツの父親が、苦手な人の身代わりになって、食卓のそばで歌い続けるボッツに苦言を呈してくれます。だけど、そんなボッツに理解を示す母親に痛烈な反撃を喰らって、ギャフンと言わされるところが可笑しくてたまりませんでした(^。^) 
 父親は単にオペラ嫌いだけでなく、学生時代にラグビーで脚光を浴びた自らの栄光が忘れがたく、また製鉄労働者としての誇りも持っていて、自分のような男らしい生き方をしようとしない息子のことを歯がゆく思っていたのでした。
 でもね、そんなオペラ音痴な父親でも、フィナーレのボッツの出場シーンで歌われる
プッチーニの歌劇『トゥーランドット』劇中歌「誰も寝てはならぬ」では、思わず涙をこぼすのです。オペラって本当に、音楽という領域をこえて魂の醸し出す波動なんだと思えました。その波動を受け入れたとき、オペラに無知な人でも、嗚咽させてしまう力が宿っていたのです。

 さて、物語はボッツの少年時代から始まります。舞台は、イングランド西部の港湾都市ブリストル。はじまりに映し出させる町並みの映像はいかにも工業地帯という感じで、芸術とは無縁の土地柄でした。そんな街で、歌が好きだったポッツは、10歳から教会で聖歌隊として歌い始めます。けれどもクラスメートには、ボッツの歌う聖歌やオペラの一節が雑音にしか思われず、激しいいじめに遭います。疑問なのは、大人になっても、いじめは続き、元クラスメートたちに暴行されるのは、なぜと思いました。
 でもこのいじめがもポッツを「歌っている時だけ唯一、自分に自信が持てた」と、歌の世界にのめり込ませたのです。

 用事のツテで携帯ショップの店員なっていたボッツは、1年間メル友だったジュルズと初デートに臨みます。彼女へのフレゼントに花屋が売りきれだったといって、雑貨屋で見つけた、変わり種の懐中電灯を差し出すところがボッツらしいご愛嬌。でもジュルズは、ボッツの純朴さを気に入り、意気投合。ボッツの実家の食事まで招待し、すっかりラブラブな関係になっていくのです。
 ボッツは、ジュルズにオペラ歌手になる夢を語ります。このときは単なる夢でしたが、ボッツの心音の純粋さと音楽性をに惚れてしまったジュルズは、ボッツを叱咤激励し、本気にさせていくのでした。確固とした将来の夢すら描けず、冴えない日常を過ごすのみだったボッツにとって、ジュルズは一筋の光のように希望を灯してくれたのでした。
 ただ、ボッツの失敗は、留学が叶いヴェニスへ辿りつくまで連絡しないと誓ってしまったことでした。チャンスを掴んだボッツは本当にイタリア留学を果たします。その間、音楽学校でペアの合唱組んだ美人のクラスメートから誘惑されるものの、ジュルズとの約束を守るため断ってしまう一途ぶり。大変な美女だっただけにもったいなかったです。

 しかし、憧れのパヴァロッティを前にして歌うチャンスを掴んだとき、緊張で思い通りに声がです、「君はオペラ歌手には絶対になれない」と断言されしまうのです。ボッツは失意の帰国に。しかし、落ち込むのは早計でした、成功するまではと連絡するのを我慢していたことが仇となって、待ちわびたジュルズから絶交を告げられます。
 諦めきれず、彼女の職場まで飛んでいき、仕事帰りをボッツは待ち伏せします。でも覆水盆に返らず、ジュルズはボッツを振り切って、通り過ぎていくのでした。これでふたりの関係はジエンドかと思ったとき、突然ボッツは、「君を永遠に愛している♪」とオペラの一節を歌い出して、ジュルズを振り返らせたシーンには、グッときましたねぇ。そこからとんとん拍子にふたりは、結婚式を迎えます。初夜の夜を迎える前に、ジュルズはボッツに蓄音機をプレゼント。レコードが奏でるクラシカルなオペラのアリアをバックに、部屋を暗くし、ふたりが唇を合わせやがて…となるシーンはとてもロマンチックで感動しました。
 
 それからの夫婦生活では、病気で倒れたり、交通事故に遭って入院したり、幾度となくピンチを陥っても、さらにはろくな収入を稼がず、生活がピンチに陥っても、自らが働いてまで家計をささえ、ジュルズは妻として、夫の夢の実現を支え続けたのです。彼女の励ましがなければ、運命のオーディションすら受けようとしなかったでしょう。

 演出で強調されているとはいえ、よくもまぁポッツには次々と艱難辛苦が降りかかるものです。ここまで描かれたら、悲劇と言うよりも喜劇です。笑うしかありません。それはボッツが二度と愛する歌なんて歌うもんかと思わしめるほどの忍耐の連続だったのです。 でも、ポッツのいいところは思考がネガティブにならなかったことと、愛する妻夫唱婦随で支えてくれたこと。
 最後は念願のオペラ歌手として世界で名声を得て、女王陛下の前でも歌唱を披露することになったボッツ。その成功の原動力は、妻の愛と忍耐の時代に、夢をあきらめずコツコツとボイストレーニングに励んだからこそと思います。そして、夢があればこそ、忍耐は苦にはならないし、むしろ艱難辛苦したぶん、夢が実現した時の喜びを爆発させる糧となるのではないでしょうか。
 番組に出場した時は、ごく普通の携帯ショップ店員でした。大切なことは法華経で語られる七喩のひとつ「長者窮子」の逸話のように、どんな凡人のなかにも「才能」が隠されているということです。
 その才能は神仏が放って置くことはありません。周利槃特(しゅりはんどく=レレレのおじさんの仏弟子版)のように、爪に火をともすように、凡才でもコツコツ磨いていければ、ボッツのような成功を手に入れることも不可能ではないということ。それをこの作品をご覧になって、ぜひ感じて貰えたらと願います。

 明日には、あなたさまが、成功の舞台に立っているのかもしれません。

 裏の畑でポチが泣くぅ〜♪ ワン!チャンスを掴もう(^^ゞ

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