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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレアリ】『ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナ・ツアー2012』[2012年12月15日公開]

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●Introduction
「美女と野獣」「アイーダ」の作詞家ティム・ライスと、「エビータ」「オペラ座の怪人」の作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーの名コンビによる、1971年初演の伝説的ロック・オペラに、再び2人の手によって新たな息吹が吹き込まれた。本作はイギリスで21日間上演された21世紀版アリーナ・ロック・オペラを最先端の技術で映像に収めた作品。イスカリオテのユダ役には、数々の賞を受賞しているミュージカルコメディアンで、ウェスト・エンドの大ヒットミュージカル「マチルダ」の脚本家でもあるティム・ミンチン。マリー・マグダレン役は、元スパイス・ガールズのメラニー・C。ヘロデ王役はラジオDJのクリス・モイレス。そして、イエス役はイギリスのITVの番組「スーパースター」で一躍脚光を浴びたベン・フォースターが演じている。(作品資料より)
解説 - ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナ・ツアー2012

『オペラ座の怪人』のアンドリュー・ロイド=ウェバーが作曲、『美女と野獣』のティム・ライスが作詞した伝説のロック・オペラ21世紀版公演を映像化。作詞・作曲を手がけた『マチルダ』が2012年ローレンス・オリヴィエ賞最優秀新作ミュージカル賞を受賞したティム・ミンチン、元スパイス・ガールズのメラニー・C、イギリスのTV番組『スーパースター』で人気を博したベン・フォースターらが出演。映像化にあたり、『オペラ座の怪人』25周年公演のローレンス・コナーが演出を担当、エリザベス女王即位60周年コンサートを手がけたマーク・フィッシャーと2012年ロンドン・オリンピック開会式を手がけたパトリック・ウッドローフが携わっている。
あらすじ - ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナ・ツアー2012

イスカリオテのユダ(ティム・ミンチン)の視点から、イエス・キリスト(ベン・フォースター)が磔刑に処せられるまでの7日間を描く。
[2012年12月15日公開]

コメント(1)

 『オペラ座の怪人』のロンドン記念公演の映画化スタッフが総出で取り組んだ伝説のロック・オペラ21世紀版公演を映像化作品です。
 超有名な作品の割に、初めて映画を通して舞台を見ることができました。でもねぇ、バッハのマタイ受難曲を聞き慣れているものとしては、イエスさまのロックオペラというのは違和感を感じます。劇団新感線がお釈迦さまの出家成道物語をロックで奏でるような感じでしょうか。

 今回の2012版では、最新の舞台装置を導入して、より現代的な感覚を導入。特に斬新なのは、大型液晶パネルを背景面に加えて、奥行きを感じさせる映像を映し出させるようになったことです。
 舞台設定は、明かに現代のニューヨークのストリート風。登場人物も、若者たちはパンクやストリートファッションに身を包み、役人たちは背広姿という出で立ちなんです。なのに語られる台詞は、聖書の引用のまま。つまり、イエスさまの時代のユダヤの役人たちが、タイムワープしてきて現代人の出で立ちで登場するので、どう解釈すればいいのか戸惑いました。
 ヘロデ王なんて真っ赤なスーツ姿なんですね。そしてイエスさまり評決の仕方は、何とネット投票で、有罪が決まってしまうというもの。果たして、これは現代なのか、昔のユダヤのことなのか、はっきりしません。

 そんな時代設定ばかりでなく、イエスさま自身が、あまりに人間的で俗人なのです。早い話が、弟子たちも若者ばかりで、まるでストリートミュージック界のスーパースターといったほうが早いキャラでした、高尚な愛は説かず、むしろ出来の悪い弟子を罵ったりする凡人ぶりが気になりました。
 それもそのはずで、本作はイスカリオテのユダの視点から、「教団主導者には必須なはずの計画性に欠け、早すぎた聖者としての名声の上にあぐらをかいて、新しい方策を見いだすことができないジーザス」という、ただの人気者にしか過ぎないイエスさまが描かれてしまうのです。そして、ユダの期待は大きな失望にかわり、ジーザスの存在はローマ支配下にあるユダヤ人社会を危険にさらすものになりかねない、という危惧を抱くようになるユダという新しい解釈を加えているのです。 またマグダラのマリアも単なるイエスさまの恋人のような関係で登場していました。それはそれで歴史の一面をついていることは事実ですが、ひとりの人間として神や民衆の狭間で苦悩する面ばかりが強調されていたのです。聖人としての尊さが全く描かれないところは疑問ですね。

 だから初演当時から、演劇批評家からは絶賛を浴びる一方で、この作品には当初から敬虔なキリスト教徒やキリスト教原理主義者らから「聖書に忠実ではない」「神に対する冒涜だ」などという道徳的な批判も受けていたのは当然だと思います。

 但しミュージカルの完成度は満点。ロイド・ウェバーの作曲する楽曲は、なんてドラマテックで情熱的なんでしょうか。映画『レ・ミゼザブル』のぼそぼそと語るような楽曲など足元にも及びません。
 マクダラのマリアがイエスさまを恋忍んで歌い上げるバラードは、『オペラ座の怪人』を彷彿させる甘い歌声でした。曲のベースが、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲になっていました。ロイド・ウェバーの作曲は聖歌など何かベースの曲があるようです。
 ピラト総督が逮捕されたイエスさまに、そんなに殉教したかったら勝手にしろと吐き捨てるシーンは、壮絶な歌い方でした。口泡飛ばしながら狂ったように歌う姿に、ピラトのこの人を有罪にしていいものかどうか呻吟する姿が良く出ていたと思います。
 そして何よりも、ユダがイエスさまを裏切ったことを後悔するシーンは、ものすごく感情がこもっていて、ユダの思いがヒシヒシと伝わってきました。破天荒なストーリーの中に、要所で当時のイエスさまと使途たちの思いは、案外正確に描かれているのじゃないかなと思ったくらいです。
 あと、ラストのイエスさまが昇天するシーンは、深紅の花びらがひらひらと舞い、天使が見守るなか、弟子たちがイエスさまの亡骸に嗚咽するという、とても悲しく美しいシーンでした。トンデモ設定が続いた本作で一番まともな形で終わって、ヤレヤレという気分で見終えることができました。

 ところでカーテンコールには、ロイド・ウェバーも登場してスピーチ。そこでこの復活公演を、かつての愛妻で『オペラ座の怪人』のロンドン キャストで不動の「クリスティン」役を演じていたのサラ・ブライトマンに捧げるというコメントにグッときました。1990年に別れて、年月が経っているのに、まだ愛しているのですね。その思いは『オペラ座の怪人』のラストの演出にも影響していて、それを知っているからこそ、ロイド・ウェバーの思いの丈は幾許(いくばく)なるやと思い巡らしました。
※1月17日(木)まで日比谷シャンテにて上映中。

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