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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『マザーウォーター』 [ 2010年10月30日公開 ]

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●Introduction
 『かもめ食堂』のスタッフとキャストが再集結し、自由に生きる女性たちを温かく描く。バーを経営するセツコ、コーヒー店を営むタカコ、豆腐屋を開いたハツミ、そして、散歩する女、マコト。銭湯の赤ん坊の母親は誰なのか、バイトのジンの言う「あの人たち」とは誰なのか、そして、4人の女性たちがなぜ1人で生きているのか、説明書きとなることは一切、語られていない。その自由さが、川の流れのような心地よいリズムとなって観る人に安らぎを与えてくれる。主演は、小林聡美、小泉今日子、もたいまさこ、他。監督は、『かもめ食堂』『めがね』でメイキングを担当していた松本佳奈。前2作に続き、フードスタイリスト飯島奈美が料理制作を担当。

 京都を舞台に、健気に自分を見つめながら暮らしていく男女7人の姿を描く群像劇。出演は「プール」の小林聡美、「トウキョウソナタ」の小泉今日子、「アウトレイジ」の加瀬亮、「おと・な・り」の市川実日子、「ソフトボーイ」の永山絢斗。「ヒーローショー」の光石研、「トイレット」のもたいまさこなど。監督は本作がデビューとなる松本佳奈。

 街の中を流れる大きな川、そしてそこにつながるいくつもの小さな川や湧き水。そんな確かな水系を持つ、日本の古都、京都に三人の女たちが暮らし始める。ウイスキーしか置いていないバーを営むセツコ(小林聡美)、疎水沿いにコーヒーやを開くタカコ(小泉今日子)、そして、水の中から湧き出たような豆腐を作るハツミ(市川実日子)。芯で水を感じる三人の女たちに反応するように、そこに住む人たちのなかにも新しい水が流れ始める。家具工房で働くヤマノハ(加瀬亮)、銭湯の主人オトメ(光石研)、オトメの銭湯を手伝うジン(永山絢斗)、そして“散歩する人”マコト(もたいまさこ)。
 店主のセツコは、オーダーが入るたびにグラスに大きな氷を入れ、マドラーで丁寧にかき混ぜてから水を注ぐ。家具職人のヤマノハは、セツコが言う「適当にやっているだけ」が、本当は適当でないことを知り、毎日のように店に来ては、その日に考えたことを話すのだった。

そんな彼らの真ん中にはいつも機嫌のいい子ども、ポプラがいた。ドコにいて、ダレといて、ナニをするのか、そして私たちはドコに行くのか……。今一番だいじなことはナンなのか、そんな人の思いが静かに強く、今、京都の川から流れ始める……。
[ 2010年10月30日公開 ]

コメント(1)

 頑なに『かもめ食堂』のスタイルにこだわり続けるプロデューサーサイドの作品。そのワンパターンぶりは不動です。今回も見事にヤマナシ、オチナシで一本の作品世界をまとめ上げました。ゆるゆるな展開には、猛烈に好き嫌いが激しく別れるところ。説明を極力省いて、観客が何を感じとるか、判断を委ねられている作品なので、小地蔵もおいそれとつまらないとは言いがたいのです。

 確かに、本作はよく観察していると製作側のメッセージがかすかに発信されていることに気がつきます。銭湯の脱衣場で「あすもあります」という看板が何気に置かれていて、それが何気にアップされたり、エンディングクレジットの後に、もたいまさこが満開の桜堤を後ろ姿のまま歩いているところなど、「はじまりの春」に向けて、みんなこころに希望をもって前向きに生きている暮らしぶりが、じんわりと描かれている作品なのですね。それがアコーステックの音楽によって奏でられると、とても心地よいのです。

 しかし「商会」側と断絶した『かもめ食堂』の荻上直子監督の『トイレット』やいまヒット中の『しあわせのパン』など、この手の作品にも、世界観を壊さず上手くドラマ性を取り入れて成功している作品も出てきています。「商会」シリーズも、次回はそろそろワンパターンを脱して、ドラマ性を上げて欲しいところです。

 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」
 方丈記で描かれた無常観をそのままに、川の流れの如く、変わるものと変わらないもの、人と人との関係をシンプルに、日常の暮らしにさりげなく重ねて描いた作品であると感じました。セツコとタカコとハツミは、最近この京都の疎水近くの街中でそれぞれ最近「水」に関わる商売をたまたま時を同じくして始めたようなのです。いわば、偶然にこの地に流れ着いた関係。この3人ばかりでなく登場人物のほとんどが標準語でしゃべりるもんだから、全く京都らしくない(^^ゞどこか、住所不定の不思議な場所に見えてきます。
 そんな新参者をつなぐ役割をするのが、散歩人のマコト。そしてこの街の不思議なところは、赤ちゃんが街の共有財産になっているところです。
 銭湯の主人オトメの子供(孫?)であるポプラは、街中の人が勝手に持ち出しても誰もそれを当然のように受け止めているのです。時には、連れ出しておきながら勝手に他の街の人に預けてしまうことも。さらに預けられた人が、ベンチで佇み眠り込んだから、まるで赤ちゃんをリーレーするかのように、別な人が勝手にポプラをお持ち帰りしてしまうのです。なんか他人に全然警戒しない、そんな街のつながりの深さに、いいなあと思えました。いま都会では、個人のプライバシーばかりが強調されすぎて、隣人と壁が厚くなりすぎていると思うのです。
 どこの家でも、ズカズカ上がってくるマコトにかかれば、プライバシーなんてあってないようなものにされてしまいます。でもそのうざったい付き合いが、素敵に見えてしまうから不思議です。そんなマコト自体は、まるで野生のネコのようにひとりで暮らすところに喜びを感じている設定が現代的ですね。
 ちなみにポプラの親は誰なのかすら、登場人物の設定に説明がありません。もう少し丁寧に説明して欲しかったです。

 全てが水で繋がっている本作。タイトルの『マザーウォーター』とは、ウイスキーの仕込み水に使われる水のこと。やはり気になるのはウイスキーしか置いていないセツコの店の存在。ちなみにウイスキーは、京都だけにサントリーの『山崎』のみ。
 例によってフードスタイリストの飯島奈美が、何気なくピュアな水が持つおいしいさを、豆腐やコーヒーや水割りの他、様々な料理で伝えてくれます。サントリーにとっては
すごくイメージアップになる作品です。

 ただ本作は水のビジュアルな美しさや味わいの他に、何の色も持たず何色でも染まるという無限の可能性にまで、拡大解釈してシンボルにしている感じがしました。

 家具職人のヤマノハが、セツコの営むバーに毎日のようにやってくるシーンも淡々として、何も感じずスルーしがちです。でもセツコが一期一会で真剣勝負のようにグラスに氷とウイスキーを入れてマドラーで慎重にとかきまぜる行為は、本人が語っているほどに「適当」ではなさそうです。ヤマノハは、自分の人生と仕事ぶりに渇を入れるため、セツコの店に通っているのではないでしょうか。

 無為自然ふうの語り口ながらも、意外とストイックに端正なたたずまいを積み上げていく日常を描いている作品ではないかとも感じたのです。

 これまでの常連メンバーの演技ぶりは相変わらず。そこに小泉今日子が参加して、前作よりも華やかさが増したところは良かったと思います。

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