ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『J・エドガー』[ 2012年1月28日公開 ]

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
●Introduction
約50年にわたりFBIの長官としてアメリカの権力の中枢に君臨し、名声とともに悪評も高い男、J・エドガー・フーバー。この一人の孤独な男の生涯を、名匠クリント・イーストウッド監督が描き出した。J・エドガーを演じるレオナルド・ディカプリオは、特殊メイクも取り入れながら、20代から77歳までの彼を見事に演じている。実際のJ・エドガーの私生活は謎に満ちていたが、現存するすべての資料を入手したという製作陣は、彼を、母の期待に応えようとして自分を抑え、権力欲を肥大させていく男として描く。彼の母を演じるジュディ・デンチの迫真の演技も素晴らしい。J・エドガーを支え続ける部下を演じたアーミー・ハマー、ナオミ・ワッツも特殊メイクで役作りに挑んでいる。

「インセプション」のレオナルド・ディカプリオが、FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーに扮し、創設から50年もの間、そのトップに君臨し続けた権力者の隠された生涯を描く。監督は「ヒア アフター」のクリント・イーストウッド。共演は「フェア・ゲーム」のナオミ・ワッツ、「007/慰めの報酬」のジュディ・デンチ。

FBIのジョン・エドガー・フーバー長官(レオナルド・ディカプリオ)は、人生の終盤に差し掛かり、部下に命じて回顧録を書き取らせる。記憶はFBI誕生以前へと遡り、彼の表の経歴が語られるとともに、その裏側の野望、企み、葛藤、苦悩が次第に明らかにされていく……。20世紀の半分を占めるおよそ50年もの間、アメリカで大統領さえも及ばない強大な権力を手にしていた男。そのたった一人の人間が、アメリカのあらゆる秘密を掌握し、国さえも動かしていたという事実。50年間に入れ替わった大統領は8人にのぼり、その誰もが彼を恐れた。それが、ジョン・エドガー・フーバーFBI初代長官である。20代でFBI前身組織の長となり、以後、文字通り死ぬまで長官であり続けた。今日では当たり前とされる科学捜査の基礎を確立し、犯罪者の指紋管理システムを作ったのも彼なら、FBIを子どもたちの憧れの的にまで押し上げたのも彼だった。紛れもない英雄であるにもかかわらず、彼には常に黒い疑惑やスキャンダラスな噂がつきまとった。やがて、国家を守るという絶対的な信念は、そのためになら法を曲げてかまわないというほど強く狂信的なものとなる。それゆえ彼は正義にもなり、悪にもなった。国を守るという大義名分のもと、大統領を始めとする要人たちの秘密を調べ上げ、その極秘ファイルをもとに彼が行った“正義”とは一体何だったのか?映画やコミックを使ってFBIの素晴らしき喧伝させる裏側で、彼は何を画策していたのか……?あきなく高みを目指した男の深い心の奥底が描かれる……。
[ 2012年1月28日公開 ]

コメント(2)

 物語は1960年代前半、公民権運動の先頭に立つキング牧師を、目の敵にし、ノーベル平和賞受賞を妨害しようと手をまわす、60代後半のフーヴァーから幕をあけます。左翼や
マイノリティ運動に対して、敵視するところはフーヴァーの生涯を通じて一貫していました。
 公式の回想録をのこすため、広報担当官にフーヴァーが過去の業績をかたるという形でストーリーは展開していきます。随所で、まだ若かった頃の自身を回想することで、FBIが創設しようとしたきっかけのエピソードや、フーヴァーとFBIが名を上げた数々の事件にスイッチバックしていきます。
 フーヴァーが活躍した半世紀は、ルーズベルトやケネディ、ニクソンなどが大統領として統治したアメリカの最もはなやかだった時代であったと思います。その影の部分をフーヴァーの半生を通して浮き彫りにしていくことが、イーストウッド監督の目指したところなのでしょう。でもあまりに多くの要素をつめこみすぎて、イーストウッド監督の演出には、いつものようなシャープに伏線を集約していくテーマ性にやや欠けている感がします。特に前半は、この作品の狙いが見えてこなくて、ちょっときつかったです。
 やはり名匠をしても、伝記物の難しさを感じました。約半世紀の長い時間を2時間に絞り込むのは、容易なことではなく、どこを切り取るべきか決断が難しいということでしょうか。

 さて、最初の回想は1919年、24歳のころにさかのぼります。まだFBIが創設される以前の司法省につとめはじめた彼は、爆弾テロをうけた司法長官ミッチェル・パーマー邸の現場にかけつけ、共産主義者の脅威を確信。長官の信任もえて、アカ狩りに邁進することになります。
 これまでハリウットでは赤狩りはネガティブに語られることが多かったのに、イーストウッド監督は、共産主義者が爆弾無差別テロを行うところを描き、フーヴァーが連邦捜査局の必要性を思いいたった理由にしていました。
 このシーンを見ているともし赤狩りが行われなかったら、アメリカの自由社会は共産主義者のテロ破壊活動で転覆されていたかも知れないと思わせる映像でした。

 やがて、若くしてFBI長官となったフーヴァーは、32年のリンドバーグの愛児誘拐殺害事件の犯人逮捕や、マシンガン・ケリー、ジョン・ディリンジャー等のギャングの逮捕・射殺で名を上げたことを広報担当官に書かせます。

 かたられる過去の時間がすすむ一方、かたっているフーヴァーの時間もすすみます。そして回想はニクソン大統領の70年代にいたり、次第にフーヴァーの闇の部分が明るみに浮上していくのです。
 フーヴァーは、FBIを大きな影響力を持つ組織へと創り上げた点で称賛べきですが、一方で自らの権威を盾に、有名人に対する諜報活動や恐喝に加え、政治的迫害を行ったことを始め、その巨大すぎる権力行使は、大きな非難を受けていたのです。

 けれどもイーストウッド監督は、意外にもそういった政治的な謀略や駆け引き面を押さこんでしまいました。本作の宣伝文句とはえらい印象が違うのです。
 フーヴァーの私生活の一面をえぐり、強面で語られてきた人物にも弱みやアブノーマルなところがあることが強調されています。本作の軸が腹心のトルソンとの同性愛関係だったことや生涯マザコンだったことはすごく意外でした。
 結局本作は、フーヴァーの人間味を浮き彫りにするのか、フーヴァーの謀略性を暴くのか、テーマの不徹底を感じます。それでも、フーヴァーが意中の女性との結婚をトルソンに告白したときのトルソンの切れ方や、晩年のふたりの深い絆で結ばれているやりとりなどは、さすがにイーストウッド監督ならではのリアルティを感じさせる素晴らしい演出でした。
 特に晩年のフーヴァーの老けた所作を演じるデュカプリオの演技は素晴らしい!また若い頃の理想に燃えていたフーヴァーの情熱を感じさせるのに余り有る演技でした。きっと彼は、本作で各賞の主演男優賞を総ナメにすることでしょう。
 ところで、フーヴァーの法規と人権を逸した盗聴活動には多くの観客は疑問に思われることでしょう。でも小地蔵は一概にフーヴァーに悪人のレッテルを貼り付けたくありません。政治は結果責任が大切。時として汚れ仕事を覚悟しなくてはいけないときもあります。たとえば社会矛盾に対峙したとき、教会に籠もって祈るばかりでは、問題が解決しないでしょう。フーヴァーが赤狩りをしたり、盗聴したことの結果はどうか。それが社会の安定に繋がり、多くの人の幸福に寄与したなら、フーヴァーの犯した行為は必要悪として是認されるべきではないでしょうか。

 私たちは、小さな善悪に囚われて、ついつい問題行動を起こすことを厭いがちです。本作に登場するフーヴァーは、前途の広報担当官に書かせた自伝では経歴詐称して、部下の手柄を自分の実績に組み込むなど、なかなか理想像には遠い存在でもあります。本編では触れられていませんがマフィアからの収賄も受けていたようです。それで地獄行きかというと、トータルでFBIを組織しアメリカの凶悪犯罪を激減させた功績は無視できません。きっとフーヴァーもしかるべき世界に戻って、FBIを天上界から指導していることでしょう。従って、私たちも時として小善に囚われることなく、必要があれば腹を据えて玉石混淆で事に臨む覚悟が必要ではないでしょうか。失敗や法に反するリスクを厭わず、3次元世界でどう正義を真っ当すべきか、この作品が示しているように思えました。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

映画レビューアーフォーラム 更新情報

映画レビューアーフォーラムのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。