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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『死にゆく妻との旅路』[ 2011年2月26日公開 ]

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●Introduction
 末期がんの妻をワゴン車に乗せ、9か月もの間日本各地を彷徨い、夫は妻の願いを受け入れ、葬った。そして夫は逮捕された――罪状は「保護責任者遺棄致死」。2000年秋に雑誌「新潮45」に掲載された夫・清水久典氏の手記は大きな反響を呼び、文庫本は15万部を売り上げたという。本作は、272日間、6000キロに及ぶ夫婦の道程を丹念にたどるべく、石川、冨山、鳥取、兵庫、静岡、山梨などを実際に車で移動しながら撮影したという。夫婦役の三浦友和と石田ゆり子が渾身の役作りと繊細な演技で謳いあげた夫婦愛――新聞の片隅に載った小さな事件の裏にある、報道されなかった夫婦の深い愛が、涙とともに静かに観る者の胸に迫ってくる。

 多額の借金がもとで、病気の妻とともに9か月間に渡ってワゴン車で全国を放浪した男が保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたという1999年に実際に起きた事件を、男の手記に基づいて映画化。苦境の中で支えあって生きる夫婦の愛情を描く。出演は「沈まぬ太陽」の三浦友和、「サヨナライツカ」の石田ゆり子。監督は「初恋」の塙幸成。

石川県七尾市で小さな縫製工場を営む清水久典(三浦友和)は結婚して20数年、平凡な家庭を築いていた。だが、バブル崩壊で経営が傾き、4千万円の借金を抱えてしまう。彼が金策に走り回る一方で、大腸癌の手術をしたばかりの妻ひとみ(石田ゆり子)は、娘夫婦のアパートに居候して、夫の帰りを待っていた。3カ月後、久典は帰ってくるが、金策も職探しも成果はゼロ。姉からは自己破産を迫られるが、久典はそれを渋る。そんな夫に、“好きにしたらええ”と微笑むひとみ。なけなしの50万円を持った夫婦の旅は、こうしてほとんど無計画に始まった。キャンプ用のコンロで煮炊きし、ワゴン車の後部座席に2人で眠る生活。だが、ひとみは久典と一緒にいられるだけで幸せそうだった。観光地なら住み込みの仕事がすぐに見つかるという久典の当ては外れ、50歳以上の求人は見つからない。焦りと怒りを露わにする久典を元気づけるひとみ。姫路城、鳥取砂丘、明石海峡大橋、三保の松原、山梨を経て石川へ。山間の道から姿を現した富士山、久典が初めて作った味噌汁、水平線に沈む美しい夕陽。沢山の初めてを重ねながらも、ひとみは確実に衰弱してゆく。医者からは、癌が3か月で再発するかもしれないと言われており、すでに4か月が経過。夏の暑さが和らぐ頃には、ひとみの身体は食べ物を受けつけなくなっていた。見かねて病院に担ぎ込む久典。だが、彼女は1人にされることを断固拒否。その様子を見た久典は、最期の時まで妻と一緒にいることを決意する。献身的な介護に努めるが、叫び声を上げるほどの痛みと錯乱から当たり散らすひとみに、久典の意識も次第に朦朧としてゆく。久典がロープを手にした夜。ひとみがカミソリで手首を切りつけた朝。幾度も2人で涙を流すのだった。あるとき、小康状態を得たひとみは、旅の初めに2人で訪れた東尋坊で夕陽を見たいと告げた。久典は車を東尋坊に向けて走らせた……。
[ 2011年2月26日公開 ]

コメント(1)

 タイトルが、結末をネタバレしているロードムービーです(^^ゞだから、『127時間』を引き合いに出すまでもなく、監督の演出の技量が問われる企画でしょう。何しろ劇中の殆どが、車中の映像で、夫と妻の二人芝居なんですから。
 けれども対した演出もなく、原作通りに終わってしまったという感じです。特に不満なのが、妻の最期があっけなかったこと。これが韓国映画なら、どんな駄作でも最期のシーンぐらいは、たっぷり涙腺を刺激してくれるものです。けれども本作の6000キロに及ぶ夫婦の道程の最後は、本当に淡々としたものでした。

 衝撃的だった宮崎あおいの出世作『初恋』の塙監督だっただけにいささか残念です。個々のシーンの芝居の付け方は、決して悪くないのですが、6000キロの長い旅。そして故郷に舞い戻ってからの、車中での闘病生活など、どうしても単調になりがちな途中のシーンをどう盛り上げていくのか、アイデアが不足していて、ひと味足りない感じが否めません。特に、「保護責任者遺棄致死」に問われる事になる、なぜ病院に連れて行かなかったのかという事情を明かしていくところでは、石田ゆり子が相当頑張って、いかに病院に行きたくないか。夫といつも一緒でいたいか、病院から逃亡してしまった妻ひとみの気持ちを切々と訴えかけてきます。
 邦画としては、かなりねちっこい芝居ではありましたが、それでも韓国映画の涙腺攻撃と比べると、あと一押しが足りない感じなのです。普段韓国映画に涙している人なら、小地蔵が伝えたいもどかしい感じが、よく分かっていただけると思います。
 ひとみの体調が徐々に悪くなっていく後半は、めっきり動きも少なくなって、二人が佇むだけのカットが目立って多くなってしまいました。

 全体としては、イマイチだけど、個々のシーンは凄く印象的です。やはり塙監督の芝居の付け方、感情の出し方は、上手いと思います。
 ラストで、夫久典がひとみの首にロープを手にした夜のシーンは、思わず涙してしまいました。
 何よりも三浦友和のトホホなおっちゃんぶりが素晴らしいのです。普段は、凛々しい二枚目役をこなしてきたのに、本作ではすっかりオーラをそぎ落として、立派な普通のオッサンに成りきっているではありませんか。そして妻役の石田ゆり子の愛らしいこと。年齢を感じさせない愛嬌たっぷりのひとみを演じています。
 二人の名演技で、一貫してちょっと風変わりな空気を感じさせる夫婦像が浮かび上がっていきました。
 自分の夫を、おっちゃんと呼んで、旦那と言うよりも、お友達感覚で甘えている妻。そんな妻のわがままを、言われるままに受け入れる夫。長い病院からの逃避行は、一体愛のためなのか、失業して職に就けない自信喪失からの現実逃避なのか。敢えて、はっきりした意思表示を示さず、何とも煮え切らない不思議な空気感とともに、死にゆく妻の現実を受け止めるしかない久典だったのです。
 これは、夫婦で闘病生活を経験された方にしか分かりにくい感覚なのかも知れません。余計な演出がない分、同じ看病経験を持っているご夫婦には、きっと身につつまされる話でしょう。
 その点で、遺棄致死罪での裁判過程には全く触れず、二人の旅路のみに絞り込んだのは、正解だったと思います。
 そして、本作はこれから老いていく人たちに、最期はどうあるべきか。植物人間みたいにただ生かされることが良いことなのか。往生のあり方について、問いかけをしている作品なのだと思います。
 ぜひ皆さんも、本作に触れて、愛する人をどう看取るべきか、お考えになってみてはいかがでしょうか。
●追伸
 塙監督の『初恋』は、なかなかの名作です。ぜひDVDでご鑑賞下さい。

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