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ASEAN情報コミュの25.バングラデシュは「世界の縫製工場」の座を守れるか 外資企業の最貧国撤退は正しいのか

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 4月24日、バングラデシュの首都ダッカの近郊で8階建てのビルが崩落した。このビルには主に縫製工場が入り、多数の労働者が働いていたという。崩落によって1000人以上が亡くなり、けが人も2400人以上に達した。事故から約20日経った5月13日には、軍による生存者の救出活動も終わった。

 崩落したビルは違法な増築をしており、かねてから労働者はビル内での作業を嫌がっていたとも報じられている。事故の起こった4月24日には、工場内で停電が起こった。この停電から復旧した直後、工場内のミシンが一斉に振動したことが、崩落の原因と見られている。

 事故を受け、首都ダッカでは、労働環境の改善を求める労働者によるデモが相次いだ。工場の安全性を確認するため国が一時的に工場を閉鎖させるなどの対応策も取られたという。

 ビル崩落の一報を受けた際、私は正直、「やはり起こったのか」という印象を受けた。昨秋に、取材でバングラデシュの縫製工場を回り、「いつか事故が起こるのでは」という一抹の危惧を抱いていたためだ。

 昨秋、バングラデシュを訪れて最初に感じたのは、何よりも「貧しい」という事実だった。

 これまでにも、インドネシアやタイ、ベトナムといったアジアの国々には訪れたことがあった。だがバングラデシュはそれらの国々と「貧しさ」のスケールが違った。

 車道はクルマと力車で溢れている。これはほかの国も同じだろうが、そこには他国で見たような一定レベルの交通マナーが存在しない。車線の概念もない。

 クルマ2台分の車幅の道路に、その倍のクルマがおしくらまんじゅうのように、ひしめいていた。当然、慢性的な渋滞が起こり、それぞれのクルマはひたすらクラクションを鳴らし続けている。道路にはあらゆる場所に段差があり、そこを通るたびにクルマが大きくひずむ。

 ダッカでの移動は、取材先のクルマに便乗させてもらった。どのクルマも窓にスモークが張り、そのうえでレースのカーテンを引いていた。

 理由を問うと、物売りや物乞いの対策なのだという。

 ダッカ市内では慢性的な渋滞が続く。クルマが速度を落とし、止まるたびに、現地の物売りや物乞いたちが車窓を覗くという。当初は窓にスモークを張っただけだったが、これでは物売りや物乞いが窓にぴったりと顔をつけて中を覗き込む。そこで仕方なく、カーテンまで取り付けたのだという。

2013年5月16日(木)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130514/248021/?leaf_bn

 「世界最貧国」の1つと言われるバングラデシュ。北海道の約1.9倍という小さな国土には、約1億4800万人が住んでいる。

 1人当たりGDPは755ドル(2011年、バングラデシュ財務省)で、実質GDPは1106億ドル(2011年、世界銀行)だという。縫製産業などが活況を呈し、毎年5〜6%のGDP成長率を誇るが、それでもダッカの法定最低賃金は50ドルを切る。法定最低賃金は、中国内陸の武漢でも150ドル以上、インド・ニューデリーやベトナム・ホーチミンでも100ドル近いことを考えると、極端に貧しいことが分かるだろう。

 貧しいバングラデシュにとって、産業の柱は3つある。農業と、出稼ぎによる海外からの送金、そして縫製産業だ。海外に売れるような資源はなく、電力の供給が不安定なので重工業の工場誘致も進まない。結局、安価な労働力と停電にも耐えうる産業として、縫製工場が増えていった。

 バングラデシュ国内では、衣料産業に携わる人は400万人に達し、周辺産業まで含めるとその数は700万〜800万人に上る。バングラデシュの総輸出量に占める衣料品の割合は実に8割以上を占めているという事実を見ても、縫製産業の存在感は際立つだろう。

   「世界の縫製工場」バングラデシュ

 だがバングラデシュにおける縫製産業の歴史は、決して古くはない。

 欧米のファッション業界が低コストの生産地を求めてバングラデシュを活用し始めたのは、1980年代のことである。その後、韓国勢や中国勢が参入し、中国の人件費が高騰し始めた2000年代からは日系企業も進出している。

 欧米、アジアの先進国がバングラデシュの地元企業家に投資をし、ノウハウを提供してようやく、この国の縫製産業は成長をし始めた。そして今では、「世界の縫製工場」とまで呼ばれるようになっていた。

 昨秋の取材では、あらゆる規模の工場を訪れた。雑居ビルの数フロアで数百人が働く小規模工場から、グループ全体で数万人の工員を抱える工場まで。工場では安い人件費を生かして、多くの工員が単純な手作業を繰り返していた。下の写真の通り、デニムのダメージ加工からTシャツのペイント、裁断・縫製すべてが、工員の手作業である。

 取材を通して見えたバングラデシュの縫製産業については、日経ビジネスムック『グローバル経営の教科書〜「カワイイ」を支えるファッションビジネス最前線』にまとめてある。

 バングラデシュの安い労働力を生かした縫製産業には、これまで批判や非難もつきまとってきた。低賃金でバングラデシュ国民を搾取している、または児童労働をさせているという懸念である。

 これらを払拭するため、欧米の大手ファッションチェーンはバングラデシュ国内の取引先に対し、様々な労働環境順守の条件を出してきた。児童労働を避けるため、出生年の分からない工員については、医師が歯から年齢を推定するなどの努力も続けてきたのだ。

 しかし、そうした配慮を重ねてもなお、今回のようなビル崩落事故が起こった。

 これを受けて、EU(欧州連合)は「一般特恵関税制度(途上国からの輸入品への関税を減免)」の対象として、バングラデシュの適用を見直すことを示唆した。「発展途上国に関するサプライチェーンについて責任ある管理を促すため、一般特恵関税制度などの適切な対応を検討している」というのだ。

 これまでバングラデシュを重要な生産地としてきた欧米ファッションチェーンも姿勢を変えた。

 報道によると、ZARAなどを展開するスペインのインディテックスは、バングラデシュで生産する下請け会社との取引を中止したという。スウェーデンのH&Mも、ビルの防火対策などについて、他の利害関係者とともに協議していると声明を出した。

 H&Mは2012年、バングラデシュでの生産量を今後5年で約2倍に増やすと発表したばかりにも関わらず、である。

 バングラデシュでは、外資企業がにわかに撤退し始めているのだ。

「撤退」が最善の解なのか

 確かに進出企業にとって、今回のビル崩落事故は、ブランドイメージを大きく毀損しかねない。工員を危険な状況で働かせたうえで作られた製品であれば、購入しないという消費者が増える危険性もある。

 しかし、だからと言ってバングラデシュから撤退することが、果たして正しい解決策なのだろうか。これまで書いた通り、バングラデシュにとって縫製産業はほかに替え難い基幹産業となっている。毎年5〜6%の経済成長率を支えしてきたのも縫製産業だ。

 それにもかかわらず、この段階で欧米勢が撤退すれば、バングラデシュの国家の衰退につながりかねない。

 「バングラデシュでは違法労働がはびこっている。地元の工場経営者にはコンプライアンス意識がない。だから我々はこの国から撤退する」。

 そう判断するのは簡単かもしれない。苦労はするかもしれないが、バングラデシュと同じように安い労働力のある別の国を探すこともできるかもしれない。(実施にはそんな選択肢はほとんどないかもしれないが)

 だが、欧米勢がこれまで散々アピールしてきたように、彼らが本当にバングラデシュを搾取しておらず、産業を育成し、経済発展や地域貢献に尽くす思いがあるならば、打つべき手は別にあるのではないだろうか。

 必要なのは、バングラデシュとの取引を続け、そのうえで工員の労働環境改善に取り組むことである。それは地道で難しい道のりであろう。労働環境の改善を進めれば、今まで享受してきた安さは実現できなくなるかもしれない。

 だが、地道にコンプライアンス意識を根付かせ、産業を発展させることからしか、「最貧国を搾取している」という批判はかわせないのではないだろうか。

 今回のビル崩落事故を受け、どの企業がバングラデシュから去り、どの企業が残るのか。企業の姿勢が試されている。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130514/248021/?P=3&nextArw

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