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ASEAN情報コミュの24.ここに工場作れますか インド、工業団地視察で見た現実

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 「着きました」とのガイドの声に、バスの車内には失笑が広がる。

 場所はインド南部のタミル・ナードゥ州クリシュナギリ。2月末、日本からインド進出を検討する中堅中小企業を中心とした視察ツアーに同行する機会があった。

 「インドのシリコンバレー」と呼ばれるカルナータカ州バンガロールから車で3時間弱。国道で州境を超えてタミル・ナードゥ州へ入ると道幅はどんどん狭くなり、最後は舗装されていないデコボコのルート。60キロ余りの道のりをノンストップで走っても、これだけの時間がかかる。

 到着したのは「GMRクリシュナギリ特別経済特区」。その名称とはややギャップのある、巨大な岩山に囲まれた荒野が広がる。門もなければ看板もない。道路の建設予定らしき場所に、石灰で白線が引いてある程度。なぜか、ヘリコプターが離発着できる円形のヘリポートだけは完成している。

 敷地内に設置されたテントで日本企業の関係者は説明を受けた。ここでまず3300エーカーの工業団地が開発されるという。東京ドーム300個分の面積となる。見渡す限り、遮るものは岩山か遠方に見える鉄道の線路だけ。とにかく広い。

 「ここを教育やヘルスケア分野なども含めたスマートシティにします」とマーケティング担当者は話す。インドにはまだ少ないレンタル工場も建設する予定で、将来的には日本企業専用の工業団地も考えているという。プレゼンテーション用の画面には、美しいコンピュータ・グラフィックスで描かれた近代的な工業都市の絵が浮かぶ。

 しかし現状は、なにもない。現地までの舗装道路はもちろん、現地の整地や、上下水道、電力。企業活動に必要なインフラは皆無。唯一、携帯電話の3Gの電波が入るぐらい。今の環境だけで判断すれば、ここに工場を立てて生産活動をするのも、日本からの駐在員が生活するのも極めて難しそうである。

 まるで原野商法のようであるが、決してそうではない。プロジェクトの開発主体はGMR社というインドでも有数のインフラ開発会社。同社は首都ニューデリーの国際空港を始め、各地の高速道路や発電所の建設を手がけた実績もある。この工業団地へも、自社の発電所の電力を融通することで、インドで頻発する停電リスクを回避できるという。

中国、ASEANの壁

 視察団の多くは自動車部品業界の中堅中小企業の関係者。南インドにはトヨタ自動車も日産自動車も進出しており、それぞれ生産量を拡大しているが、この工業団地を見ての大半の参加者の反応は「ポテンシャルは認めるけど、さすがにまだ早い」「とても駐在員は生活できない」とネガティブなものだった。

 中国や東南アジアでは、地元の政府や日本やアジアの商社、インフラ開発会社が整地して電力と水道などのインフラを揃え、日本人や日本語が使える窓口担当者まで用意してくれることも多い。

 しかしインドの場合、主要都市近郊ではそうした場所は少ないか、あっても既に他の企業によって抑えられている。GMRの担当者が胸を張って言うセリフが象徴的だ。「みなさん、何と言ってもこの場所は農地ではないんです」。意味するところは、民主主義国家インドにおいて、土地の収用がいかに困難を極めるか、という点だ。

 工業団地に限らず、インドで道路や発電所など社会インフラの建設が進まないのは、単に資金不足という側面もあるが、自由に動かせる土地が極めて少ないという事情がある。その点は、政府の一声であっという間に見事な道路が出来上がる中国とは対照的である。

 だからインドでは、進出先の工業団地をアジアの他の国と同じ条件で探していても、簡単には見つからない。大企業ならまだしも、中堅中小企業にとって、現地でビジネスを軌道に乗せる以前に大きなハードルが待ち受ける。ただ、インドの乗用車市場でマルチ・スズキの次に高いシェアを持つ現代自動車などは、いち早くグループ企業と従業員を南部のチェンナイに送り込み、自ら街を築いていた。成功事例の大半が、そんなケースだ。

 「いいカメラだね」。説明会場の後ろで写真撮影をしていると、このGMRのマネジャーが話しかけきた。そしてこう問いかけてきた。「どうして日本企業は韓国企業と違ってアクションが遅いんだ。このインドで大きな機会を逸しているのは非常に惜しい」。

 日本製品が好きだという彼が手にするのは、アメリカで2000ドルで買ったキヤノンの一眼レフとタムロンの交換レンズという組み合わせ。文房具からカメラまで、インドで高品質な日本製品がまだ手に入りにくいことをしきりに嘆く。私は無難にこう答えた「もちろん徐々にではあるが日本企業もインドに進出するだろう。これまで、中国に偏重しすぎていたのを修正しているところだからね」と。

 工業団地の開発会社から一般消費者まで、日本の企業、製品を求める人や企業がいるインド。一方、市場や生産場所としてのポテンシャルを認めながらも、中国やタイなどと比較して厳しさが目立つ環境に尻込みする日本企業。その両者のギャップを再認識した一日だった。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20130313/244979/?ST=pc

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