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政治の動きコミュの164.貿易収支はこれから大きく悪化する

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 貿易統計の速報によれば、3月の貿易収支黒字は前年同月比で78・9%の減少となった。輸出が2・2%減、輸入が11・9%増なので、収支を悪化させた主たる原因は、輸出の減少ではなく輸入の増加である。これは資源価格が高騰したためである。実際、原油の輸入は数量では6・6%減少したのに、輸入額は14・8%増となっている(つまり、価格が23%程度上がっているわけである)。輸出の減少は、いうまでもなく東日本大震災による生産活動の停止・減少の影響だ(自動車が27・8%減、半導体が6・9%減などとなっている)。

 輸出の減少と輸入の増加というこの傾向は、今後、さらに拡大するだろう。事実、3月11日以降だけを見れば、輸出は前年同月比で9・7%減となっている。今後、火力発電増強の影響で、LNG(液化天然ガス)や原油の輸入が増加するだろう。大震災の影響は、3月の貿易収支にはまだ完全には表れていない。

 では、その影響が表れる4月の貿易収支は、どのような姿になるだろうか? これに関する一つの試算を左ページの表に示した。

 まず、3月下旬の輸出の落ち込み率を参照して、4月の輸出額が昨年4月より9・7%落ち込むと仮定すれば、5兆3184億円となる(表の(1))。

 他方で、火力発電への代替によって、原油の輸入量が増加するだろう。どの程度増加するかを見極めがたいので、ここでは前年と同量としよう(つまり、3月に比べれば増加するわけである)。そして、価格が3月と同水準、すなわち対前年3月比で23%上昇するとしよう。そして、他の輸入額が今年の3月と変わらないと仮定する。すると、4月の輸入総額は5兆8493億円となる(表の(2))。したがって、貿易収支は5109億円の赤字となる(表の(5))。

 仮に、今後1年間同額の赤字が続くなら、2011年度の貿易赤字は6・4兆円程度になる。もっとも、今後生産設備の回復で輸出は増えると考えられるので、実際には赤字は減少するだろう。また、原油輸入量が昨年と同じという仮定も、過大かもしれない(現在は、原油火力よりLNG火力のほうが多い)。しかし、原油価格がすぐに下落するとも思えないので、11年度の貿易収支が赤字になる可能性は否定できない。少なくとも、年度を通じて貿易収支が大きく悪化することは、ほぼ間違いない。

 高度成長期以降の日本で、年度を通じて貿易収支が赤字になったことはない(リーマンショックの影響で輸出が落ち込んだ08年度においては、08年11月から09年1月まで連続して赤字になった。しかし、年度を通しての貿易収支は、1兆1591億円の黒字だった)。09年度における所得収支は12兆円の黒字なので、仮に11年度の貿易収支が赤字になっても、経常収支が赤字になることはないだろう。それでも、日本の国際収支構造に大きな変化が生じる可能性は大きいと思われる。

貿易収支の悪化は景気悪化要因ではない

 これは、日本経済にとってどのような意味を持つのだろうか?

 新聞などの記事では、「貿易収支の悪化が景気の足を引っ張る」という解説になっている。確かに、普通であれば貿易収支の悪化は有効需要の減少を意味するので、国内の生産を減少させる。これは07年から09年の経済危機後の際、顕著に起こったことだ。このときは、主としてアメリカ国内における需要の減少が日本の輸出を減少させ、それが日本国内の生産活動を急減させた(そして09年の春ごろからは、対中国輸出の回復が国内の生産を引き上げた)。

 しかし、いま起きていることは、それとは違う。次の2点に注意が必要だ。

 第1に、今回の輸出の減少は、大震災による生産設備の損壊という日本国内の事情によってもたらされた。つまり、輸出減が国内生産を減少させるのではなく、国内生産減が輸出を減らしている。因果関係は経済危機のときとは逆だ。

 第2に、実質GDPに影響を与えるのは、実質輸出と実質輸入(数量)だ。表でいえば、(1)の要因である。表の(2)は、価格変化の影響なので実質輸入を増やしておらず、実質GDPを減らすことにはならない。

 実質輸入と名目輸入の乖離は、これまでも起きたことである。たとえば、02年から07年にかけて、実質純輸出が拡大し、これが実質GDPを拡大させた(これが「輸出主導の経済成長」である)。しかし、この間、名目純輸出は目立って拡大しなかった。それは、原油価格の上昇と円安によって名目の輸入額が増加したためである。

 つまり、今後の貿易収支の悪化は、景気悪化要因にはならないのである。実質輸入が増加すれば、日本国内の生産減少を補う効果を持つのである(ただし、そうした変化は3月の貿易統計にはまだ表れていない)。問題は、輸入物価の上昇を通じてインフレが輸入されることだ。

エネルギー価格は中長期的に上昇する

 名目貿易収支を悪化させている原油価格の上昇は、前回述べたように、大震災前から継続している現象であり、すでに日本の輸入物価を引き上げている。この原因は、アメリカの金融緩和(QE2)によるドル価値の低下だ。アメリカの金融緩和は、新興国のバブルを引き起こし、また資源価格の高騰をもたらした。これに加えて中東の政治情勢が不安定化したため、原油の産出が減少した。

 原油価格は、08年3月から7月ごろにかけて高騰したものの、その後反落し、09年初めには底値に落ち込んだ。その後再び上昇に転じ、10年前半には停滞気味であったものが、10年秋から再び上昇してきたわけだ。

 中長期的に見れば、新興国のエネルギー需要の高まりがある。だから、原油価格の上昇は、単に投機的なものでなく、今後も続く可能性が高い。さらに、原子力発電に対する逆風がある。世界各国で原子力発電の見直しが進んでおり、火力発電の比重が高まらざるをえない。

 これは全世界的な現象だが、日本においては、特に顕著だ。日本の場合には、ここ数カ月という期間でも、火力発電の比重が顕著に上昇する。東京電力は、今年夏に向けて供給能力の増強を図っているが、その大部分は火力発電だ。

 そして燃料単価は上昇している。電気料金には燃料費調整という項目があるので、直ちに料金に反映される。そして電気はすべての経済活動で用いられているため、製品価格に転嫁しやすい。だから、かなりのスピードで消費者物価に波及するだろう。経済が拡大できない中で、インフレが輸入されるのだ。

 ところで以上で述べたのは、海外要因だ。これに加えて日本は「巨額の国債」という潜在的インフレ要因を国内に抱えている。だから今の日本の状況は、次のようなものだ。

 海外から猛火が迫ってくる。これを防ぐ手立てはない。きわめて危険な火薬庫が国内にあるので、引火して爆発したら大変なことになる。一刻も早くその扉を封印しなければ。それなのに、「扉を開けよ」(日銀引き受けを行え)と叫んでいるマッドサイエンティストがいる。狼狽した政策当局者が、その声に惑わされてしまったら、いったい何が起こるだろうか?

http://www.toyokeizai.net/business/column/detail/AC/7e43338e8b54164cb9df336c16fdd515/page/4/

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