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政治の動きコミュの96.大前研一の「産業突然死」時代の人生論 債務危機で日本政府が切れる唯一の「カード」

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 前回の当コラムでは、日本の財政状況がいかに危機的なものであるかについて述べ、各国が「日本のようにだけはなりたくない」と考えていると書いた。税収、それを上回る歳出、公債発行の状況などについて具体的な数字で見ていくと、改めてその深刻さに気づいた方も多かったのではないだろうか。

 では、いよいよ日本の財政が抜き差しならぬ状況まで来たら、どのような手が打てるのだろうか。今回はこの問題について考えてみたい。

「現代フランス最高の知性」ジャック・アタリ氏との対談
 先日、私はフランスの経済学者ジャック・アタリ氏と「国家債務」をテーマにして雑誌「プレジデント」の依頼で対談した。アタリ氏は新たに『国家債務危機』(作品社)という本(菅直人首相も購入したとニュースで報じられたから、ご記憶の方も多いかもしれない)を出版し、そのプロモーションのために来日していたのである。

 実は私がアタリ氏と話をするのはこれが2度目だ。前回お会いしたのは随分と昔のことで、申し訳ないことに、私は何を話したのか、どういうことについて議論したのかはあらかた忘れてしまっていた。しかし彼は私のことを覚えていてくれ、対談は終始なごやかに進んだ。

 アタリ氏は故ミッテラン仏大統領の側近中の側近として知られ、1981年から91年まで大統領補佐官を務め、「現代フランス最高の知性」とも謳われる人物である。彼の考えに賛成できる内容も多く、特に私が1999年に上梓した拙著『新・資本論』(東洋経済新報社)の中で書いた、ユーロとドルの葛藤に端を発して世界の金融が不安定になることや、日本の債務はもはや解決不可能な域にまで達しており、このままではデフォルト(債務不履行)やハイパーインフレが避けられないことなどについては完全な意見の一致を見た。

2011年1月25日
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/258206/

過剰な公的債務の解決策は8つしかない
 さて、そのアタリ氏は「国家債務がソブリンリスク(政府債務の信認危機)になるのは物理的現象である」とし、「過剰な公的債務に対する解決策は今も昔も8つしかない」と言う。すなわち、増税、歳出削減、経済成長、低金利、インフレ、戦争、外資導入、そしてデフォルトである。そして、「これら8つの戦略は、時と場合に応じてすべて利用されてきたし、これからも利用されるだろう」とも述べている。

 では、これら8つの戦略のうち日本政府が取り得るものは何だろうか。

 一番いいのはもちろん「経済成長」である。企業も人も大いに儲けてもらって、税金をたくさん納めていただきましょうというわけだ。しかし少子高齢化が進む日本にあって、これを実現できるマジックはあるのだろうか。外資導入による経済成長策に関しては本稿でも何回か述べたし、近著『お金の流れが変わった!』(PHP新書)の最終章で詳述しているのでここでは繰り返さない。

 もう一つの策である「増税」に関してはなかなか微妙なところだ。菅首相は改造内閣で与謝野馨氏を経済財政相に起用し税制と社会保障の一体改革を進め、これに「政治生命をかける!」と発言している。しかし彼は環太平洋経済連携協定(TPP)を「平成の開国」と位置づけ、これにも政治生命をかけると言っているので、いくつの生命を何にかけようとしているのか、私には判断できない。谷垣自民党との共通点が消費税であることから、単に通常国会を乗り切る「政局」的判断からの発言かもしれない。本当に増税の意思があるのかないのか、少なくとも私には分からない。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/258206/?P=2

 日本人は世界一、増税が嫌いな国民であり、政府が増税をにおわすたびに大きな反発が起こってきた。特に消費税ともなると、首相はクビを覚悟で臨まなければならない。竹下内閣が消費税を導入したときも、また橋本内閣が税率を3%から5%に引き上げたときも、いずれも総辞職に追い込まれている。

民主党は歳出削減のタイミングを完全に失した
 「歳出削減」については、民主党は完全にタイミングを失したと私は見ている。本来ならば民主党は、政権を奪取した直後に財政状況を精査して「自民党はひどい。米びつを開けてみたら空っぽだった」と国民にアピールし、歳出削減への支持を取り付けるべきだった。

 英国ではデイビッド・キャメロン氏が首相に就任するや、前政権への批判を強めて4年間で歳出を10兆円、公務員だけで50万人(うち警察官が25%)を削減する猛烈なリストラ計画を打ち出した。

 政権を取ってから1年半も経って、2度も緩みきった予算を通してからでは、民主党がいくら前政権を責めたところで国民の支持は得られない。「お前たちのバラマキ政策のせいじゃないか」と言われて終わりである。

 タイミングという点では「外資導入」も難しい。20年前のバブル期ならいざ知らず、現在の疲弊しきった日本にいったいどれだけの外資が来てくれるというのか。「低金利」についても、日本は事実上のゼロ金利状態であるから、これ以上は手の打ちようもない。「戦争」については論外というべきだろう。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/258206/?P=3

現実的な選択肢は「インフレ」だけ
 最後の「デフォルト」は、政府としては何としても避けたい事態だろうから、これも現実的な選択肢にはならない。もちろん今のような緊張に欠ける予算を通していけば結果としてデフォルトは十分あり得るが、政策としてそこを狙うわけにはいかない。

 2001年にデフォルトしたアルゼンチンは、政府が2009年になって突然、デフォルトした国債を当時の額面100に対して30の割合で新しい国債と交換すると発表した。これはアルゼンチン政府が投資家の資産の7割を掠(かす)め取ったも同然だ。もし日本政府で「公債は3割しかお返ししません」と言ったとすれば、いくら日本人がおとなしい国民だといっても、さすがに暴動が起きるだろう。

 となると、現実的な選択肢は「インフレ」だけ、ということになる。現にアタリ氏自身も「(公的債務に対して)採用される戦略は常にインフレである」と述べている。お金をたくさん刷って、あるいは日銀が吸収している資金を市場に供給して貨幣価値を下げ、借金をチャラにしてしまいしょう、というわけだ。かつて竹中平蔵氏が主張していた「インフレターゲット論」はまさにこれで、いってみれば一番簡単な方法である。

 これは氏の師匠であるポール・クルーグマンの日本に対するアドバイスでも常に出てくる案である。「ターゲット(目標)」というと計画的で聞こえはいいが、デフレの長引いている日本でこれを無理に起こすと「ターゲット」で止まらない可能性が大である。止まらなければ、ハイパーインフレに一直線ということになる。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/258206/?P=4

債務危機で日本政府が切れる唯一の「カード」8つしか手段のないことを認識することが大切

 実際、財務省はインフレ政策にシフトしている。それに加えて、デノミと新通貨も検討の対象だった。通貨の切り下げ、新紙幣発行の混乱に乗じて、額面の2割くらいをさらってしまえ、ということである。

 ところが、新紙幣発行については数年前に噂こそあったものの、ATM製造会社からこの情報が漏れて大騒ぎとなり、政府が新通貨を旧通貨と取り替えるときに2割くらいパクるという悪巧みは流れてしまった。デノミは鳩山由紀夫氏が首相時代に導入を検討したという報道もあったが、藤井裕久財務大臣(当時)が辞任したためにこちらも頓挫している。

 日本の財政危機についてはメディアで毎日のように報道されている。そのため、我々国民はイソップ寓話の「狼少年」に惑わされた村人よろしく、この手のニュースに対して鈍感になりがちだ。それはもちろん褒められたことではない。

 大切なのは、国家債務に対して政府が取り得る手段は前述の8つしかないこと、そして日本では実質的にインフレ政策しかないことをきちんと認識することだ。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/258206/?P=5

ハイパーインフレで「悲惨」を極める
 もし日本が本格的なインフレ政策に踏み込めば、債務の巨額さからしてハイパーインフレになる可能性が高い。そうなれば政府の借金も大幅に目減りするが、国民の金融資産もガタ減りとなる。銀行は危ないと見ていた人のタンス預金も二束三文となる。国の借金はチャラにはなるだろうが、同時に我々の仕事も生活も何もかもがすさまじい濁流の中に放り込まれることになる。

 過去15年くらいの間にハイパーインフレになったトルコ、ブラジル、ロシア、スロバニアなどを見てきた経験から言えば、「悲惨」という言葉以外は思い浮かばない。

 金融資産の大半を国債に転換してしまっている日本国民は国債のデフォルトでも資産の大半を失うことになる。つまり、ハイパーインフレでもデフォルトでも日本の誇る個人金融資産は国家に召し上げられることになる。増税が嫌いで、せっせと貯蓄してきた国民も、その時、増税で国家の借金を着実に返しておいた方が良かった、と悟ることになる。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/258206/?P=6

国会論議には、私たちの財産がかかっている
 政治家のばらまきの財源は国民の負担以外にない。この単純な方程式を理解すれば、抜本的な歳出削減と増税で国家債務の大幅な圧縮をしなければ、この国は数年待たずして「(戦争以外の)以上すべて」が起こるのである。

 自民党も民主党も地雷原に雷管を埋め込んだ、という点においては同罪だ。マスコミや識者といわれている人々も「国家債務がソブリンリスクになる」という「物理現象」に警鐘を鳴らさずに放置してきた責任は重い。国会で政局をもてあそぶ余裕など、もとよりない。

 菅首相が本屋で買ったといわれるジャック・アタリ氏の『国家債務危機』を読んだとして、その彼の理解力が試される修羅場の国会がいよいよ始まった。私たちの持つ不動産以外のすべての財産がかかっている、という緊張感を持って注視しようではないか。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/258206/?P=7

コメント(1)

ンチャさん情報ありがとうございました。
第7回社会の学習会のテーマにします

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