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Tanz bitte,Hermann!*コミュの高架下の。

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素敵な出会いなんか、自分でそう思わないと、無理よ。
私はそんな上の空でレジ前に向かって、客に接して、イラッシャイマセヒャクエンショーヒンガサンテン、サンビャクジューゴエンデスチョウドイタダキマスアリガトーゴザイマシタマタオコシクダサイマセエ(なーんて、思ってないよ)。
高校生のまみちゃんは、健気に品だしばっかしてるし、あーあ、たのしいことないかしら。
なんて、たまにくる100円じゃない商品に脳内で舌打ちしながらも、接客を続けるわけです、本日も。
そんなフリーターの私にだって、夜は夜で充実させなきゃならんのだ。夜7時に100均を出たところで元彼のフミヤが待っていた。無造作にフミヤのBMWに乗る。
「おつかれ。」
フミヤは一浪と一留してるから、まだ大学3年で。私は短大出て、それでいてフリーター。授業の話なんて勝手にしてくれるからフミヤといるとかなり楽だ。それでいて運転も丁寧だし、気がつけばファミレスに着く。二人でミラノ風ドリアを注文して、フミヤは少食を治せっていつものように言って、私たちは交互にドリンクバーに向かう。
「そろそろ、小説書いた?」
「ううん、最近忙しくって。」
「フリーターの癖に?、よく言いますね。」
そう言ってフミヤはカルピスを一気に流し込む。よっぽど喉が渇いていたのか。私は黙ってその一部始終を見ている。
「もしかしたら、書くの、辞めるかも。」
わたしがそう言い出したところでドリアがやってくる。てめえ、タイミング悪いよ、早いのは助かるけどさ、と、口腔内で言葉を噛み殺し、それでも食指は止まらない。
イタダキマス。二人で言う。
「なんで。」
「だって、掴めていないんだもの。」
「それだけ?」
「うん。ソレダケ。」
じゃあ、おれのおよめさんになってよ。いいよ、専属のメイドになってあげりゅ。噛んだ。笑われた。
「無理だよ。」
「ああ、無理だ。」
「だって、私たち別れた。」
「そうだね、俺が浮気した。」
氷が、カロン、と言う。フミヤと別れたのは去年の暮れで、クリスマスにもらったネックレスはどぶに捨てた。指輪はフミヤの浮気現場に遭遇した瞬間に投げつけたし、ゲーセンでとってもらったぬいぐるみは何も知らない妹のベッドに追いやった。
「ウワキスルヤツナンカ、サイテー。」
「ほんとだよ、ごめん。」
それでも二人は笑ってる。半分は、壊れてる。それでも、きっと、今日だってこうやって付き合ってたときみたいにごはんだって食べに行くし、これからだってそうするし、さみしくなって、もっと壊れて、身体だって重ねるかもしれない。
「でも、やっぱり、俺はみなみがす、」
「言わないで。」
悲しくなります。
「ごめん。」

「海外に、行きたいな。」
ドリアを食べ終えて、フミヤが言った。
「何を急に。」
「俺、死ぬらしいよ。」
コツニクシュ。今日、休学申請してきた。膝に爆弾あったらしい。笑うよな、笑えよ。
バスケサークルに所属してるフミヤが、悲しそうに笑った。
「俺、このまま、どっか行きたい。」
フタリデ。二人で?
「いやだよ。」
私の放った言葉はそれくらいで。転がったその言葉は、店員にも届かない。
「水曜に入院したら、サイゴだよ、もう、出られない。」
「なんで、そういうこと言うかな。」
「俺、勘だけはいいから。」
「じゃあ、浮気してるとこを彼女に見せる凡ミスはなんなの。」
「とりあえず、俺、死んじゃうよ。たぶん。若いし。ほら、佳人薄命、な?」
ばかじゃないの。そこで笑うんじゃねえ。
「すきだよ。」
きっと、フミヤに私のこと好きと言わせてるのはコツニクシュだ。こいつは自分の危機だけ人を利用する。縋る、頼る。じゃあ、元彼の私は寄りを戻して、フミヤの傍で見守れってか。
「とりあえず、治ったら、考えてやっから、がんばれ。」
「うん、そうするよ。」
2杯目のカルピスに手をつけずに、フミヤは席をたった。私はその後をついてく。
車に乗ったところで、私だっていろいろ聞きたいことに気がついた。
「彼女は?」
別れた、ふられちゃったよ。いや、ふったのかな。そんなことを言う。
「病気になったから、別れよって言ったら、すんなり、離れてった。」
「じゃあ、それで私に言ったわけ?」
私が意地悪く質問をしたところで、時間が止まった。
カンガスルドイネ、ミナミハ。頭を撫でられる。キスなんか、するもんか。私はそっぽを向いた。動き出したBMWは。練馬ナンバーに抜かされた。
私は、100均を辞めようと思った。で、貯金してた21万で、海外に1週間は逃げられるか考えた。フミヤは嘘をついている。きっと。
もう、偶然出会ったあの100均のレジが憎くてたまらなかった。まみちゃんには解らないでしょうが、きっとあのレジスターは呪われてる。
「海が見たい。」
「いいよ、千葉なら、近いかな。」
二人はきっと、もう、地元には帰れないな、と、思った。

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