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CLIMB-mixi-コミュのSSS1

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朝霧の漂う中を、俺はただひたすらに走っていた。

「はっ…はっ…」

規則正しい呼吸。朝の冷たい風に白い息が霧散していく。
腕を振るたび、ジャージの生地の擦れる音が人気の少ない道で響く。
特注のシューズの裏から伝わるコンクリートの硬さ。この体を大地に縛り付けようとする重力。鍛え上げた脚がそれらを押し退け、自分の体を更に前へと押し、進めて冷たい朝の冷気を切り開く感覚に、微かな爽快感を感じる。

いつも通りの朝。いつも通りの道。
だがいつもより速く走れた気がして、朝の空気が澄んでいる気がした。
この胸の高鳴りは、決していつもより長く走っていただけが原因じゃない。この歳になってもまだ、『それ』は俺の心を踊らせるらしい。
いや、今年の『それ』は今まで以上に、そしてこれからの俺の人生の中である『それ』の中でも一番意味を持つと言ってもいい。

腕時計を見る。朝の7時。

――2時間か。思ったよりも長く走ってたな。

だが家に戻るにはちょうど良い時間だった。

「戻ってシャワーでも浴びないとな」

流石に一族一同が全員集まる場で汗臭いというのは締まりが悪い。
先程よりもいくらかゆっくりなスピードで、俺は家への帰路へと着いた。



「ただいまー」
「お帰り兄さん」

…家に帰ると出迎えてくれたのは家政婦じゃなく妹だった。珍しい。普段ならまだ寝ていてもおかしくない時間だろうに。

「おはよう、早いな。どうしたんだ、お前がこんなに早く起きるなんて」

からかってやると妹は形の良い眉を歪め、ふてくされた顔になる。

「もう、今日は大事な日で、一族一同全員来るんだよ?いつまでも寝てたら親戚の人達に笑われるよ」

言われてみれば、家の駐車場には自家用車と家政婦達の車しか見なかった気がする。まだ親戚達は来ていないようだ。

「はは、そうだな。お前も成長したな。頭でも撫でてやろうか?」
「…っ、兄さん汗臭い、臭い移るから触らないで」

妹は最近妙に色気付き始め、朝のランニング後や頭に触れようとするとこの有り様だ。思春期というやつなのかも知れない。
投げられたタオルを受け取り、はいはいと苦笑しながら居間へと向かった。

居間には母が居た。自分よりも早く起きて、今日の支度を家政婦達とやっていたのだ。
こちらに気付き、振り返る母。いつ見ても薄紅色の和服と薄い金色の髪とのコントラストは奇妙な感覚を与えてくる。

「お帰りさい、いつもより長いみたいね。子供違うんだからはしゃぐよくないわ」

…少々日本語が怪しいが、母の母国の事を考えればこれは仕方がない。それに長年一緒に居れば何を伝えたいのかもだいたい分かる。

「ただいま。あぁ、わかってるよ母さん。自分の事なんだし。それに家政婦達の前でやめてくれよ、恥ずか」「ならすぐシャワー浴びる。そんな格好、みっともない」

いつも思うが子供っぽい人だ。あの厳格な父が、この母に惚れ込んだというのは未だに信じられない。普段自分達の前では口も聞かないのに。ただ照れくさがっているだけという可能性もあるが。

「そうそう。親戚着てからじゃ言えなそうから前に言っておくわ」

―きたか。

母は身なりを正し、皺の現れ始めた顔に笑みを浮かべ、その言葉を紡いだ。

「誕生日おめでとう、白銀。今日より貴方は天野の記録者、レコードホルダーよ」




天野白銀=フレイアSS
「再誕の日」




「あぁ、ありがとう母さん。天野の秘宝も役目も、俺がちゃんと受け継いでみせるよ」


…この時はまだ知らなかった。
今日という日が、俺からすべてを奪うあの“金色の魔王”と出遭い、それからの俺が生まれる日だという事を。



続く。

コメント(1)

おかんでたーーーーー!wwww
妹よりおかんのほうが存在感あるw

やべぇ、書いてくれたよ…ありがとう!

ご馳走さまでした!w

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