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言葉の吹き溜まりコミュの晩夏

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晩夏と秋の狭間の夕暮れに歩きだす

アスファルトから立ち上る昼間の太陽の名残
蒸した熱気と夜気をはらんだ風の中
背に薄く浮く汗

気まぐれに買ったメロン・アイス
メロン味と思ったことは一度もない果汁を固めたアイスの中に、柔らかいバニラ・アイス
くりいむそおだ と同じ味

クリームソーダ
それは遠い遠い昔の思い出
錆びた匂いのする手すり
狭い階段の奥の喫茶店
円状に敷き詰められたタイルの床
地球儀、古い地図、ランプ…?
薄暗い明かりの下、ビニールのクロスをしいた卓上に、クリームソーダ

細長い銀のスプーン
ストローの尺取虫
暗い店から覗いた、格子硝子の扉の向こうの白い光………


つう、と棒を伝うメロン・アイス
ぽたりとアスファルトに落ちて、跡形もなく溶ける
溶けるメロン
溶けるバニラ
溶ける夏
夏が死ぬ

未だしぶとく生き永らえる残暑に、熱に、溶けそうな、からだ
人が溶けるなら皮膚が伸びて地面に倒れ伏すのが似合い
熱にやられたチーズのように
ダリの時計のように
記憶の固執のように
固執するクリームソーダの記憶のように

じーわ、じーわと
死にたくないよ
生きたいよ、と
断末魔の声をあげる蝉のように

原型を失いたくないと
からだは、だらしなく固執しながら、溶ける

熱に溶けるアイスでなく
最期に海になるクラゲでなく
夏でなく


夏には、なれなかった

夏が、死ぬ

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