シュタッカート（仮）
登場人物
僕；高校生。いじめられっこ。学生服に学生帽、右目に眼帯。足が速い。
俺；高校の化学教師。白衣。
沢口サホ；女子高生。セリフは録音。
警官；声のみ
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プロローグ
サホ；あ、流れ星。一つ、二つ、三つ…数えきれない沢山の流れ星。
きれ〜い。でも綺麗すぎて、なんだか怖い…。
そうだ、お願い事しなきゃ。
ええと、でもこんな時って、なんにも思いつかないよ〜
せめて、せめて今から干す洗濯物が、きれいに乾きますように。
（暗転の中で曲「星に願いを」。激しい曲に変わる。明かりつく。）
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僕；君のパンツは光ってた〜！
そうそれは、すさみきった僕の地獄に光が射した瞬間だった。
君のパンツが光ってた〜！
手を伸ばせばきっと近くにある。でも掴むことはきっと出来ない。
どこまでも闇の中をさまよう僕の道しるべなんだ。
君のパンツは光ってた〜！
例え話なんかじゃない。もしかしたら幻かもしれない。
でも本当なんだ信じてくれいや信じなくてもいい。
君のパンツが光ってた〜！
（ハァハァと肩で息をし、やや落ち着いたら静かに語り出す）
いつのころからか、僕はクラスでハブられている。きっかけなんてもう覚えていない。
始まりは無視だった。
やがてクセーとかキタネーとか、僕を指して言っているののしりの言葉が聞こえてきた。
僕が本当にクセーのかキタネーのか、それは僕にはよくわからない。
僕の右目の眼帯が不気味だったのかもしれない。
もしかしたらどうでもよかった事なのかもしれない。
男子だけじゃない。クラスで４分の３を占める女子連中からも、僕は人間扱いされていなかった。
でもクラスにただ一人。前の席の沢口サホさん。
彼女だけは、僕に普通に接してくれた。
特別な接点なんてない。
ただ沢口サホさんは、授業中、僕が落とした消しゴムを拾ってくれた。
会話だって、「これプリント、後ろに回して。」普通に話してくれる。
只の最小限の日常会話だろう。
僕と同じ空間にいるだけで嫌だというクラスの女子達の中で、
彼女だけがごくごく普通に接してくれる。
それは僕とって、砂漠にオアシス、いや、ハライソ。
地獄に仏、しかも大日如来が佇んでいるような、そんな、そんな、凄いことだったんだ。
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僕；ある日僕は、コンビニで、嫌な物を観てしまった。クラスの女子達３人ぐらいの、万引きの現場。
一人が店員に「すいませ〜ん」と話しかけて注意を引く。
一人は体でバッグを隠し、もう一人がバッグにマニキュアなんかを入れる。
うわぁ。コイツらよくやるなぁ。よくある手口だなあ。
高校生にもなって万引きかぁ。
ウンザリしながら僕はヤンマガ読んでいた。
たまたま店に沢口サホさんが入ってきたっけ。
万引きしてた三人は堂々と出て行った。
次の日、何故だか例の三人に因縁をつけられた。
何故だか僕が万引きを告げ口した事になっていた。
見に覚えない事なんだけど何故だか殴られた。
げぼっ。
倒れ込んだら蹴られて踏まれて。ぐえほっ。ぎゃぼっ。うぎ。ぐげ。がごっ。
５分ぐらいそれは続いた。
いつしか僕の右目の眼帯は外れていた。
しばらくしたら沢口サホさんも連れてこられた。彼女も告げ口の容疑をかけられているのか。
万引きの時に店員の注意を引いてた女子が沢口サホさんに言った。
「告げ口してないんだったらあんたも蹴りなよ。言ってないんだったら出来るでしょ？」
どうゆう理屈なんだよ。彼女は関係ないだろ？
戸惑ってるよ。沢口サホさん戸惑ってるよ。
「ほら蹴りなよ」「つーか蹴れよ」「蹴ればいいじゃん」「ほら」
不条理なる命令。恫喝による強制。三人がかりで沢口サホさんを小突く。
拒否すれば明日からきっと沢口サホさんは、いじめられる側の人間になってしまうんだろう。
いいよ。沢口サホさん。蹴りなよ。僕を踏みつけにしなよ。
沢口サホさんに踏まれるんだったら僕、じぇんじぇん平気だし。
てか意外とそれ、イイかもだし。
…彼女は申し訳なさそうにこっちを見た。目があった。僕は頷いた。
意を決した沢口サホさんの足が飛ぶ。
沢口サホさん、沢口サホさん、けっこー痛いよ。意外と遠慮なしなんだ…
その時だ。僕の視界に飛び込んで来た面積の小さな白い布。スカートの奥の白い布。
沢口サホさんのパンツだ！
そして視力が低下して、ほとんど物が見えないはずの僕の右目に照らし出される光景。
沢口サホさんのパンツは輝いている！
沢口サホさんのパンツの輝きで、スカートの中はムーディーな間接照明のようだ。
例え話じゃないんだ。本当なんだ。
しかもパンツと肌の境界線からは、ヨーロッパの宗教画のいわゆる天使のハシゴみたいに、
光の筋がもれていたんだ。
僕の右目にしか見えない光。
沢口サホさん、君のパンツは光ってた〜！君のパンツは光ってた〜！
さっき見えた万引き女子のパンチラなんて勝負にならない。
君のパンツは光ってた、君のパンツは光ってた〜！
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
��
俺；やる気出ねえ。午後の授業、さぼっちまおうか…
だいたい俺ってさあ、高校教師なんて向いてねーっつーの。
俺はアレだよ。対人恐怖症だよ。人前に出てしゃべくるなんて一番苦手とするところだよ。
なのになんで高校教師なんてやってるんだろう
…大学の研究室をクビになったからだよ。
あの教授会の奴ら、俺のことを異端学者呼ばわりしやがって…今時異端って何だよ異端って。
カルト宗教か？魔女裁判で裁かれる人ですか？っつの。
ふう。しかし研究室を追われても、野に下っても俺は研究をやめないんだな。
研究は大いに進展している。
あコレ。時空破断検知システム。
時空間の裂け目や異次元空間に繋がるトンネル・ワームホール。
そこから漏れる超次元物質ダークマターに反応し、金属探知機の要領で知らせてくれる。
こいつが時々、ぎゅんぎゅんきてるんだ。
はたして異空間へ通じる何らかの、ドアの様な物、
もしくはそこから漏れた物質がこの学校の付近に存在する、とでもゆうのだろうか…。
（時空破断検地システム、反応し音を出す。）
…お、反応しとる反応しとる。
こっちか。
理科室を出て長い廊下を進む。その先にある二年の教室の方に何か…
と思ったら、こっち？
女子トイレ。…何故だ、何故時空破断検知システムは女子トイレに反応してるんだ？
この秘密を探るには、女子トイレに入るしかないのか。
よし、未知の世界に挑むぞ。
…いいや待て待て。冷静になれ。そんな事をやってみろ。
自意識過剰の女生徒どもからトイレ覗きの変態教師の烙印を押されるぞ。
しかし、ここまで大きな反応は初めてなんだ。
この機を逃す手はない。
だが女子トイレに入ると俺は…ええい、ままよ。
これより突入しまーす。 と決意した俺。
しかしドーン。
いてててて。
トイレから勢いつけて飛び出してきた女子生徒と鉢合わせ。
サホ；「あ、先生すみません、大丈夫ですか？」
俺 ；そう言う君は…二年の、沢口サホ君。
サホ；「…てゆうか先生、女子トイレに用事？ まさか覗き？」
俺 ；え、いや、違う違う、先生さ、トイレットペーパーが切れてないか点検を、
全ての学校内のトイレにだね…。
サホ；「あ、そうなんですか。」
（沢口サホ、去ろうとしているらしい。しかし時空破断検知システムの反応音。）
俺 ；は、こ、これは！？待ちたまえ、君は一体何者なんだ。
サホ；「え…二年B組の沢口サホですけど。」
俺 ；それはわかっている、そうじゃなくて…
サホ；「先生わたし急ぐんで。」
俺 ；行ってしまった。何故だ…何故に時空破断検知システムは彼女に反応するのだろう。
沢口サホ。
二年B組、あまり目立たないが結構カワイイ方。
他は、他は…よくわからん。
よし、詳しく調べてみる必要があるな。
（短い暗転、明転）
��
俺；あれから３週間。時空破断検知システムはやはり彼女にのみ反応を示す。
ただし奇妙な事に、反応するのは、毎日ではない。
この三週間で、とぎれとぎれに内３日だけ。
その３日間は朝から夕方迄彼女に反応を示すんだが、それ以外の日はさっぱり無反応なのだ。
つまり週に一度、毎週水曜日だけ。
…不可解だ。水曜日の彼女に一体何が起こっているのだろう。という訳でまあざっと調べてみた。
（カンペ出し興奮した調子で読む。）
「学校での発育測定記録によると、身長１５２センチ．体重４7キログラム．
バスト８２！、ウエスト６０．ヒップ８６！
（ここまでハイテンション。次から急にやる気を失いトーンダウン。）
三者面談時の聞き取り記録。進路は国公立大学志望。
家族構成…父母と兄が一人づつ。 好きな教科、世界史。嫌いな教科、数学、英語。
あとネット上で見つけた彼女のアメーバブログとfacebookによれば
（ここからラップみたいに韻を踏んで）
好きな飲み物、アッサムティー。嫌いな食べ物、お茶漬け。
好きな芸能人、嵐の松潤。嫌いな芸能人、みのもんた。あとガンナムスタイルのサイ。
好きなキャラクター、スポンジボブ。好きなアニメは「化け物語」。
交際相手は… 居ないようだ。
（ラップやめて普通に読む）
日記はたいがい他愛もない出来事報告に終始するが、時折UPされる短いポエム、
みたいな文章。そうゆう時、沢口サホ君はなにがしかの悩みを抱えているようだ。
ちょっと読んでみよう。
「9月18日、アタシのいる街は太陽が遠すぎる。
赤い月だけアタシを照らす。
バスルームに鍵をかけて閉じこもる。
どんなに心で叫んでも、アタシの声は届かない、誰も気づいてくれないの。
アタシは堕天使アタシなナイフ。 ティーチミーホワイ、アタシの心は何故の嵐。」
さっぱりわからん！
（カンペを投げ捨てる）
一体なんなんだ。彼女は何者なんだ。
ちょっと痛いコか？だがそこがいい。
それはともかく。やはりフィールドワークで徹底的に調べるしかないな。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
�ァ幣般整鼎瓠�青とか？）
僕；10年前のその日その時は流星群が降り注ぐ夜だった。
夜空を流れては消え、流れては消える青き星たち。
食い入るように見とれていた僕。そして一つの流星が、僕をめがけて落ちてきた。
その光は、見開いていた僕の右目に吸い込まれるように入ってきた。
うぐわああああああああああ！
（明るくなる）
…すいません嘘をつきました。
そんな大げさな感じじゃなくて、目にゴミが入った程度の違和感だった。
けれどもこの日を境にして、右目の視力はどんどんどんどん落ちていく。
僕はその目を眼帯でおおった。
もう右目はうすぼんやりとしか見えず、バランスとれずにクラクラしたから。
…そんな右目にだけ、見えた。
ああっ沢口サホさん、君の股間の輝きが、見えない右目に焼き付いて、忘れられないんだ！
何故だ、いったい何故なんだ。君のパンツはなぜ光る。
いっそ本人に聞いてみようかいや、調べさせてもらおうか。
あ…あの…沢口サホさん、ちょっと、いいかな。
実はその…君の…
う、言えない。君のパンツを調べさせてくれ、どうしてもその一言が言えないよ。
やっぱり、いいです。
…でも、気になるよ。どうにかして確かめる方法はないものだろうか。うーん。
その1。僕の足の甲につけた小型の鏡で見る。
その2。ケータイのカメラをこう持って、こうパシャっと。
…バカバカ、見つかったら犯罪じゃないか！
うーんもっと効率よく下着姿の沢口サホさんを観察するには…
その3。更衣室、女子トイレ、あるいは彼女の家の風呂。ビデオカメラを仕掛けよう！
って犯罪そのものだよ。あ、じゃあこんなのはどうだろう。
その4。僕が医者になって彼女を診察する。
どんだけ時間かけた計画だよ、だいたい僕の成績じゃ不可能だ。
その5。じゃあ無理やりに…ダメダメ絶対ダメ〜。
そんなんじゃないんだ。
彼女沢口サホさんは、もっと崇高にして神聖ってゆうか、とにかく敬うべき存在なんだ。
君は違う。クラスの他のくずな奴らとは根本的に違うんだ。
彼女を傷つけたり、不快な思いをさせたりせずに、パンツの謎を探るには、
一体どうすりゃいいんだよう。
彼女に装着されている真っ最中のパンツを調べるには彼女の許可が必要だ。
でなきゃ無理やりか盗撮になっちまう。
じゃあその6。彼女にアイドルになってもらい水着やセクシー下着でグラビア撮影を…
落ちつけよ。落ち着くんだ。どんどん現実味を失ってきたじゃないか。それよりもむしろ、
その7。僕の彼女になってもらってそしてそして…ムフフのドキドキタイム…
いや無理、絶っ対無理。この僕ごときがなんて大それた考えを。
勇気を出して、付き合ってくださいなんて言えたって、彼女がOKするわけないだろ。
その勇気は無駄だよ。
だいたいパンツを見たいから、彼女になってくださいなんて、動機が不純すぎだろう。
不純すぎるにもほどがある。
いいや果たしてそうなのか？
僕は沢口サホさんの、パンツが見たいだけなのか？
…………。
違うよ、違う。それだけじゃない。
そうか、僕は彼女が好きなんだ。自分の気持ちに気が付いた。
僕は、沢口サホさんのことが、好きなんだ。
…でもこの恋は、決して報われないだろう。彼女は僕に振り向かないだろう。
それでも沢口サホさんが欲しい！
…だったらせめて彼女の「何か」が欲しい。
そうだ、彼女のパンツが欲しい。
僕は！沢口サホさんの、パンツが欲しいんだ〜〜〜っ！
理想は今現在装着中のを脱ぎたてパンツがいいけれど、洗濯済みでも構わない。
あ、そうか、その手があった。
たぶん彼女の家の窓辺には、物干し台とかハンガーなんて名前で呼ばれる植物が、
枝を伸ばしているんだ。
枝の先には甘いクダモノが熟していて、収穫されるのを待っている。
光るパンツ。収穫するのは僕だ。
そう、下着狩りだ。
その8、これなら彼女の許可もなく、無理矢理でも盗撮でもないぞ。
…窃盗だけどね。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
�Α福屮侫�ールドワーク」と書いたフリップボードを持ち登場。）
俺；フィールドワークとは。
ある調査対象について学術研究をする際に、そのテーマに即した場所（現地）を実際に訪れ、
その対象を直接観察し、関係者には聞き取り調査やアンケート調査を行い、
そして現地での資料の採取を行う等、学術的に客観的な成果を挙げる為の調査技法である。
（フリップボードを投げ捨てる。）
この3週間、俺は沢口サホ君ウオッチャーとして、学校での彼女を見守り続けてきた。
その結果、実に驚くべきことに、彼女の存在が、俺の精神にも影響を及ぼしてきた。
つまりどうゆう事かというと、 …沢口サホ君って、すごくいいよね。
いや、べ、べつにロリとかそうゆう訳じゃないよ。でもなんてゆうかさホラ、あれだ。
「萌」ってゆうの？やーそれとは微妙に違うかもしれんのだが。
でも何枚もCD買って目当てのアイドルと握手したいって気持ち。それに近いかもしれん。
…俺も、体表と体表で、接触したいよな〜って。
あ、いや、しないよ！なんてったって青少年育成条例があるからねっ。
それにホラ、ぼかあ一応教師な聖職者な訳だし。そうゆうの、けしからなくね？
でもまあ先生と元生徒が卒業後に結婚するパターンとか多いってよく聞くしな…
そ−ゆーのいーなー…。あ、いや、違うって。沢口サホ君は研究対象だよ。
そうゆうやましい気持ちじゃないんだ！。Hな事などほとんど望まない。ほとんどだあああ！
（深呼吸）
…ちょっと迷いが生じただけだ。探究するんだ。科学の心だっ！
という訳で、沢口サホ君研究のフィールドワークも、
これまで行なってこなかった彼女の自宅周辺に手を広げ、資料の収集に努めてみたい。
或いは帰宅のルートに何か手がかりが転がっているかもしれん。
追跡、（服を着込み変装する）開始だっ。
（夕方）
50メートルほど距離を置き、つかず離れず後を追う。…彼女けっこう内股なんだな。
あ、猫ちゃんこんにちは…って猫はいいからまっすぐ帰ろうよ。
途中コンビニに立ち寄る彼女。雑誌のコーナーに行く、と見せかけてレジの方に…
何を買っているんだろう？ああ、おでんの餅巾着か。
…彼女がコンビニを出たその時！
俺の10メートル先つまり、彼女の40メートル後ろを横切る影。あやしい。あまりにあやしい男。
（僕、登場）
しゅたたたたっ、しゅたっ。電信柱の陰から電信柱の陰へ。あいつは斜めに走ってる。
一体何者なんだろう、うーむわからん。しかし彼女を尾行しているようだ。
お、着いたらしい。彼女の家だ。
��
僕；しゅたたたたっ、しゅたっ。しゅたたたたっ、しゅたっ。
追跡、追跡。お部屋を確認。
…よし、わかればもう、こっちのもんだ。
あとは日程を改めて、窓辺に実った洗濯物という名の果実を収穫するんだ。
では、撤収！しゅたたたたっ、しゅたっ。しゅたたたたっ、しゅたっ。
俺；待てーい。
僕；はっ！？
俺；誰だお前は。
僕；…なんかよくわかんないけど、ばれてる？ひとまず逃げろ。
しゅたたたたっ、しゅたっ。しゅたたたたっ、しゅたっ。
僕にアプローチするあやしい男。あいつこそ何者だろう。
俺；待あてーい！待たんかこら〜、お前誰だあ！
僕；ああっ、追ってきてるよお！全速力だっ！
しゅたたたたっ。しゅたたたたっ。しゅっ。（退場）
俺；…はあ、はあ、はあ、はあ。何だあいつ。足むっちゃ早いでやんの。
つうか俺、ナチュラルボーン・インドア派だっつーの。走るとか無理ですから。
しかし彼女をつけまわす、あいつは一体何者だろう。謎は深まるばかりなり。
…。
ひとまず。沢口家に戻ってみると…やややっ、彼女が家から出てきた。
まずい、感づかれたのか？いや違う。ごみだ。近所のごみ捨て場にごみを出しに来たのだ。
…彼女が戻るのを見計らって、あのごみを俺が回収しよう。
このお宝は貴重な研究資料になるぞ。
早く帰って開けてみたい。
（短い暗転）
��
俺；ごみとは、生活の歴史である。ごみを調べれば文化がわかる。
古代のごみ捨て場・貝塚から縄文人の生活が紐解かれた。
俺も謎に包まれた沢口サホ君の生活史を解き明かすぞ！
…幸せは、薔薇の包みを開くとき。そう言ったのはどこの誰だったっけ？
俺は今、薔薇色の包みを開いている。
俺は今、幸せかい？…わからんが少なくとも、うきうきしてる。俺の鼓動は、高鳴っている。
ビニールビニール紙屑…さてまず出てきたのは、NTTドコモの明細書だ。
これで通話の記録がおぼろげながらもわかるかもしれん。彼女のプライベートを探る鍵だ。
ビニールビニール紙屑テイッシュ…このテイッシュは…たばこ臭あ…はっ！これは罠だ。
用心するべき事は！彼女は家族と同居つまりこのテイッシュの使用者が、彼女ではなく、
彼女の父親とかかもしれんという事だ！
…危ないなあ。そんなの一緒にしないで欲しいよ。
沢口家のごみはぁ、家族の分と娘の分とを分別して出すべきだよぅ。
まーったく、ゴミをあさる人の身にもなって考えてよぅ。
ペットボトルは…燃えるごみに混ぜちゃダメじゃないか。
そして！…ああ、俺はついてる。
彼女、沢口サホ君の使用済み下着、ブラジャー！エ〜ンド、待望のパンツ。
獲ったど〜〜〜。お宝、ゲットだぜ。
はっ。もしやしてこれは母親の物だったりはしないのか？
いやいやいやいや。これとか女子中学生がしてそうなスポーツブラだしな。
熟女がつけてるとかありえんし。
しかし彼女は何故これを捨てたんだろう…何か、汚れでも？シミでも？
（匂いをかいで調べる）
うん！うん。うん。…ま、おおかた肉体的な成長に伴い許容を超えたんだろうな。
きっとこうゆう事だ。
（ブラを身に着け、女子になりきり）
「また大きくなってる…やだなあもう、はち切れそうだよ」 な〜んてな！
…女子が初めて身に着けるブラジャーって、こんなのだろうか。
小学校高学年にもなると胸が膨らんでくる。そして…
「男子がまた私の胸ばっか見てる。やだなあ。…あ！今さきっぽがスレて痛ぁい。
クラスの早い子はもうブラ着けてるってゆうのに、どうやって選んだらいいかわかんないよう〜」とか、そんな風に心にカオスを抱えて初めてのブラジャーを選びに行くのだろうか。
「しまむら」とかに。
もしかしたら俺は大変な宝を手にしたのかもしれん。すごい、すごいぞおおお！
…お、落ち着け俺！落ち受け。
ちょっと興奮してしまった。見失っていたぞ。当初の目的を。
とりあえず、（時空破断検知システム出す）
時空破断検知システムに反応なし。はずれか。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
��
僕；待あてえい！って追いかけてきたあのあやしい男。
なんなんだ？
落ち着いて考えてみよう。
その1、警察？いや違う。
僕は、ただ、沢口サホさんを追跡して、家を突き止めたってゆうだけで、
あの時点での僕はまだ、なんにもやましい事はない。
まだ下着狩りを楽しんでないよ。
だから警察なんかじゃない。
だいいち体力なさそうなおっさんだった。
その2、沢口サホさんの、お父さん？…調べてみないとわからないけど、なんか違う気がする。
その3、沢口サホさんを狙っている変質者？
うーんそれならありそうだなあ。彼女はきっと変質者にモテそうなタイプだ。
…それにしてもあの男、どっかで見たことあるような、そんな気がするんだけど、
それがどこだか思い出せないんだよなあ。
なんにせよちょっぴりスリリングなことになってきたけど、それでも僕は手にしたい。
沢口サホさんの光るパンツ。それは僕だけに見える一筋の光。
見えない右目に見える光。僕の希望。僕のみちしるべ。あのパンツだけは渡さない。
しゅたたたたっ。
という訳で、闇にまぎれてやってきた彼女の家。
窓辺には、下着という名の甘い果実。
沢口サホさん。君のパンツ、君の代わりに大事にするよ。
（眼帯を外す）
光ってない！そんなバカな。何のためにここまで来たんだ…
そういえばあの時のとは違うパンツだ。
光らないパンツなんて、そんなの沢口サホさんのパンツじゃないよ！
…でもとりあえず貰っていくか。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
登場人物
僕；高校生。いじめられっこ。学生服に学生帽、右目に眼帯。足が速い。
俺；高校の化学教師。白衣。
沢口サホ；女子高生。セリフは録音。
警官；声のみ
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プロローグ
サホ；あ、流れ星。一つ、二つ、三つ…数えきれない沢山の流れ星。
きれ〜い。でも綺麗すぎて、なんだか怖い…。
そうだ、お願い事しなきゃ。
ええと、でもこんな時って、なんにも思いつかないよ〜
せめて、せめて今から干す洗濯物が、きれいに乾きますように。
（暗転の中で曲「星に願いを」。激しい曲に変わる。明かりつく。）
��
僕；君のパンツは光ってた〜！
そうそれは、すさみきった僕の地獄に光が射した瞬間だった。
君のパンツが光ってた〜！
手を伸ばせばきっと近くにある。でも掴むことはきっと出来ない。
どこまでも闇の中をさまよう僕の道しるべなんだ。
君のパンツは光ってた〜！
例え話なんかじゃない。もしかしたら幻かもしれない。
でも本当なんだ信じてくれいや信じなくてもいい。
君のパンツが光ってた〜！
（ハァハァと肩で息をし、やや落ち着いたら静かに語り出す）
いつのころからか、僕はクラスでハブられている。きっかけなんてもう覚えていない。
始まりは無視だった。
やがてクセーとかキタネーとか、僕を指して言っているののしりの言葉が聞こえてきた。
僕が本当にクセーのかキタネーのか、それは僕にはよくわからない。
僕の右目の眼帯が不気味だったのかもしれない。
もしかしたらどうでもよかった事なのかもしれない。
男子だけじゃない。クラスで４分の３を占める女子連中からも、僕は人間扱いされていなかった。
でもクラスにただ一人。前の席の沢口サホさん。
彼女だけは、僕に普通に接してくれた。
特別な接点なんてない。
ただ沢口サホさんは、授業中、僕が落とした消しゴムを拾ってくれた。
会話だって、「これプリント、後ろに回して。」普通に話してくれる。
只の最小限の日常会話だろう。
僕と同じ空間にいるだけで嫌だというクラスの女子達の中で、
彼女だけがごくごく普通に接してくれる。
それは僕とって、砂漠にオアシス、いや、ハライソ。
地獄に仏、しかも大日如来が佇んでいるような、そんな、そんな、凄いことだったんだ。
��
僕；ある日僕は、コンビニで、嫌な物を観てしまった。クラスの女子達３人ぐらいの、万引きの現場。
一人が店員に「すいませ〜ん」と話しかけて注意を引く。
一人は体でバッグを隠し、もう一人がバッグにマニキュアなんかを入れる。
うわぁ。コイツらよくやるなぁ。よくある手口だなあ。
高校生にもなって万引きかぁ。
ウンザリしながら僕はヤンマガ読んでいた。
たまたま店に沢口サホさんが入ってきたっけ。
万引きしてた三人は堂々と出て行った。
次の日、何故だか例の三人に因縁をつけられた。
何故だか僕が万引きを告げ口した事になっていた。
見に覚えない事なんだけど何故だか殴られた。
げぼっ。
倒れ込んだら蹴られて踏まれて。ぐえほっ。ぎゃぼっ。うぎ。ぐげ。がごっ。
５分ぐらいそれは続いた。
いつしか僕の右目の眼帯は外れていた。
しばらくしたら沢口サホさんも連れてこられた。彼女も告げ口の容疑をかけられているのか。
万引きの時に店員の注意を引いてた女子が沢口サホさんに言った。
「告げ口してないんだったらあんたも蹴りなよ。言ってないんだったら出来るでしょ？」
どうゆう理屈なんだよ。彼女は関係ないだろ？
戸惑ってるよ。沢口サホさん戸惑ってるよ。
「ほら蹴りなよ」「つーか蹴れよ」「蹴ればいいじゃん」「ほら」
不条理なる命令。恫喝による強制。三人がかりで沢口サホさんを小突く。
拒否すれば明日からきっと沢口サホさんは、いじめられる側の人間になってしまうんだろう。
いいよ。沢口サホさん。蹴りなよ。僕を踏みつけにしなよ。
沢口サホさんに踏まれるんだったら僕、じぇんじぇん平気だし。
てか意外とそれ、イイかもだし。
…彼女は申し訳なさそうにこっちを見た。目があった。僕は頷いた。
意を決した沢口サホさんの足が飛ぶ。
沢口サホさん、沢口サホさん、けっこー痛いよ。意外と遠慮なしなんだ…
その時だ。僕の視界に飛び込んで来た面積の小さな白い布。スカートの奥の白い布。
沢口サホさんのパンツだ！
そして視力が低下して、ほとんど物が見えないはずの僕の右目に照らし出される光景。
沢口サホさんのパンツは輝いている！
沢口サホさんのパンツの輝きで、スカートの中はムーディーな間接照明のようだ。
例え話じゃないんだ。本当なんだ。
しかもパンツと肌の境界線からは、ヨーロッパの宗教画のいわゆる天使のハシゴみたいに、
光の筋がもれていたんだ。
僕の右目にしか見えない光。
沢口サホさん、君のパンツは光ってた〜！君のパンツは光ってた〜！
さっき見えた万引き女子のパンチラなんて勝負にならない。
君のパンツは光ってた、君のパンツは光ってた〜！
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
��
俺；やる気出ねえ。午後の授業、さぼっちまおうか…
だいたい俺ってさあ、高校教師なんて向いてねーっつーの。
俺はアレだよ。対人恐怖症だよ。人前に出てしゃべくるなんて一番苦手とするところだよ。
なのになんで高校教師なんてやってるんだろう
…大学の研究室をクビになったからだよ。
あの教授会の奴ら、俺のことを異端学者呼ばわりしやがって…今時異端って何だよ異端って。
カルト宗教か？魔女裁判で裁かれる人ですか？っつの。
ふう。しかし研究室を追われても、野に下っても俺は研究をやめないんだな。
研究は大いに進展している。
あコレ。時空破断検知システム。
時空間の裂け目や異次元空間に繋がるトンネル・ワームホール。
そこから漏れる超次元物質ダークマターに反応し、金属探知機の要領で知らせてくれる。
こいつが時々、ぎゅんぎゅんきてるんだ。
はたして異空間へ通じる何らかの、ドアの様な物、
もしくはそこから漏れた物質がこの学校の付近に存在する、とでもゆうのだろうか…。
（時空破断検地システム、反応し音を出す。）
…お、反応しとる反応しとる。
こっちか。
理科室を出て長い廊下を進む。その先にある二年の教室の方に何か…
と思ったら、こっち？
女子トイレ。…何故だ、何故時空破断検知システムは女子トイレに反応してるんだ？
この秘密を探るには、女子トイレに入るしかないのか。
よし、未知の世界に挑むぞ。
…いいや待て待て。冷静になれ。そんな事をやってみろ。
自意識過剰の女生徒どもからトイレ覗きの変態教師の烙印を押されるぞ。
しかし、ここまで大きな反応は初めてなんだ。
この機を逃す手はない。
だが女子トイレに入ると俺は…ええい、ままよ。
これより突入しまーす。 と決意した俺。
しかしドーン。
いてててて。
トイレから勢いつけて飛び出してきた女子生徒と鉢合わせ。
サホ；「あ、先生すみません、大丈夫ですか？」
俺 ；そう言う君は…二年の、沢口サホ君。
サホ；「…てゆうか先生、女子トイレに用事？ まさか覗き？」
俺 ；え、いや、違う違う、先生さ、トイレットペーパーが切れてないか点検を、
全ての学校内のトイレにだね…。
サホ；「あ、そうなんですか。」
（沢口サホ、去ろうとしているらしい。しかし時空破断検知システムの反応音。）
俺 ；は、こ、これは！？待ちたまえ、君は一体何者なんだ。
サホ；「え…二年B組の沢口サホですけど。」
俺 ；それはわかっている、そうじゃなくて…
サホ；「先生わたし急ぐんで。」
俺 ；行ってしまった。何故だ…何故に時空破断検知システムは彼女に反応するのだろう。
沢口サホ。
二年B組、あまり目立たないが結構カワイイ方。
他は、他は…よくわからん。
よし、詳しく調べてみる必要があるな。
（短い暗転、明転）
��
俺；あれから３週間。時空破断検知システムはやはり彼女にのみ反応を示す。
ただし奇妙な事に、反応するのは、毎日ではない。
この三週間で、とぎれとぎれに内３日だけ。
その３日間は朝から夕方迄彼女に反応を示すんだが、それ以外の日はさっぱり無反応なのだ。
つまり週に一度、毎週水曜日だけ。
…不可解だ。水曜日の彼女に一体何が起こっているのだろう。という訳でまあざっと調べてみた。
（カンペ出し興奮した調子で読む。）
「学校での発育測定記録によると、身長１５２センチ．体重４7キログラム．
バスト８２！、ウエスト６０．ヒップ８６！
（ここまでハイテンション。次から急にやる気を失いトーンダウン。）
三者面談時の聞き取り記録。進路は国公立大学志望。
家族構成…父母と兄が一人づつ。 好きな教科、世界史。嫌いな教科、数学、英語。
あとネット上で見つけた彼女のアメーバブログとfacebookによれば
（ここからラップみたいに韻を踏んで）
好きな飲み物、アッサムティー。嫌いな食べ物、お茶漬け。
好きな芸能人、嵐の松潤。嫌いな芸能人、みのもんた。あとガンナムスタイルのサイ。
好きなキャラクター、スポンジボブ。好きなアニメは「化け物語」。
交際相手は… 居ないようだ。
（ラップやめて普通に読む）
日記はたいがい他愛もない出来事報告に終始するが、時折UPされる短いポエム、
みたいな文章。そうゆう時、沢口サホ君はなにがしかの悩みを抱えているようだ。
ちょっと読んでみよう。
「9月18日、アタシのいる街は太陽が遠すぎる。
赤い月だけアタシを照らす。
バスルームに鍵をかけて閉じこもる。
どんなに心で叫んでも、アタシの声は届かない、誰も気づいてくれないの。
アタシは堕天使アタシなナイフ。 ティーチミーホワイ、アタシの心は何故の嵐。」
さっぱりわからん！
（カンペを投げ捨てる）
一体なんなんだ。彼女は何者なんだ。
ちょっと痛いコか？だがそこがいい。
それはともかく。やはりフィールドワークで徹底的に調べるしかないな。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
�ァ幣般整鼎瓠�青とか？）
僕；10年前のその日その時は流星群が降り注ぐ夜だった。
夜空を流れては消え、流れては消える青き星たち。
食い入るように見とれていた僕。そして一つの流星が、僕をめがけて落ちてきた。
その光は、見開いていた僕の右目に吸い込まれるように入ってきた。
うぐわああああああああああ！
（明るくなる）
…すいません嘘をつきました。
そんな大げさな感じじゃなくて、目にゴミが入った程度の違和感だった。
けれどもこの日を境にして、右目の視力はどんどんどんどん落ちていく。
僕はその目を眼帯でおおった。
もう右目はうすぼんやりとしか見えず、バランスとれずにクラクラしたから。
…そんな右目にだけ、見えた。
ああっ沢口サホさん、君の股間の輝きが、見えない右目に焼き付いて、忘れられないんだ！
何故だ、いったい何故なんだ。君のパンツはなぜ光る。
いっそ本人に聞いてみようかいや、調べさせてもらおうか。
あ…あの…沢口サホさん、ちょっと、いいかな。
実はその…君の…
う、言えない。君のパンツを調べさせてくれ、どうしてもその一言が言えないよ。
やっぱり、いいです。
…でも、気になるよ。どうにかして確かめる方法はないものだろうか。うーん。
その1。僕の足の甲につけた小型の鏡で見る。
その2。ケータイのカメラをこう持って、こうパシャっと。
…バカバカ、見つかったら犯罪じゃないか！
うーんもっと効率よく下着姿の沢口サホさんを観察するには…
その3。更衣室、女子トイレ、あるいは彼女の家の風呂。ビデオカメラを仕掛けよう！
って犯罪そのものだよ。あ、じゃあこんなのはどうだろう。
その4。僕が医者になって彼女を診察する。
どんだけ時間かけた計画だよ、だいたい僕の成績じゃ不可能だ。
その5。じゃあ無理やりに…ダメダメ絶対ダメ〜。
そんなんじゃないんだ。
彼女沢口サホさんは、もっと崇高にして神聖ってゆうか、とにかく敬うべき存在なんだ。
君は違う。クラスの他のくずな奴らとは根本的に違うんだ。
彼女を傷つけたり、不快な思いをさせたりせずに、パンツの謎を探るには、
一体どうすりゃいいんだよう。
彼女に装着されている真っ最中のパンツを調べるには彼女の許可が必要だ。
でなきゃ無理やりか盗撮になっちまう。
じゃあその6。彼女にアイドルになってもらい水着やセクシー下着でグラビア撮影を…
落ちつけよ。落ち着くんだ。どんどん現実味を失ってきたじゃないか。それよりもむしろ、
その7。僕の彼女になってもらってそしてそして…ムフフのドキドキタイム…
いや無理、絶っ対無理。この僕ごときがなんて大それた考えを。
勇気を出して、付き合ってくださいなんて言えたって、彼女がOKするわけないだろ。
その勇気は無駄だよ。
だいたいパンツを見たいから、彼女になってくださいなんて、動機が不純すぎだろう。
不純すぎるにもほどがある。
いいや果たしてそうなのか？
僕は沢口サホさんの、パンツが見たいだけなのか？
…………。
違うよ、違う。それだけじゃない。
そうか、僕は彼女が好きなんだ。自分の気持ちに気が付いた。
僕は、沢口サホさんのことが、好きなんだ。
…でもこの恋は、決して報われないだろう。彼女は僕に振り向かないだろう。
それでも沢口サホさんが欲しい！
…だったらせめて彼女の「何か」が欲しい。
そうだ、彼女のパンツが欲しい。
僕は！沢口サホさんの、パンツが欲しいんだ〜〜〜っ！
理想は今現在装着中のを脱ぎたてパンツがいいけれど、洗濯済みでも構わない。
あ、そうか、その手があった。
たぶん彼女の家の窓辺には、物干し台とかハンガーなんて名前で呼ばれる植物が、
枝を伸ばしているんだ。
枝の先には甘いクダモノが熟していて、収穫されるのを待っている。
光るパンツ。収穫するのは僕だ。
そう、下着狩りだ。
その8、これなら彼女の許可もなく、無理矢理でも盗撮でもないぞ。
…窃盗だけどね。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
�Α福屮侫�ールドワーク」と書いたフリップボードを持ち登場。）
俺；フィールドワークとは。
ある調査対象について学術研究をする際に、そのテーマに即した場所（現地）を実際に訪れ、
その対象を直接観察し、関係者には聞き取り調査やアンケート調査を行い、
そして現地での資料の採取を行う等、学術的に客観的な成果を挙げる為の調査技法である。
（フリップボードを投げ捨てる。）
この3週間、俺は沢口サホ君ウオッチャーとして、学校での彼女を見守り続けてきた。
その結果、実に驚くべきことに、彼女の存在が、俺の精神にも影響を及ぼしてきた。
つまりどうゆう事かというと、 …沢口サホ君って、すごくいいよね。
いや、べ、べつにロリとかそうゆう訳じゃないよ。でもなんてゆうかさホラ、あれだ。
「萌」ってゆうの？やーそれとは微妙に違うかもしれんのだが。
でも何枚もCD買って目当てのアイドルと握手したいって気持ち。それに近いかもしれん。
…俺も、体表と体表で、接触したいよな〜って。
あ、いや、しないよ！なんてったって青少年育成条例があるからねっ。
それにホラ、ぼかあ一応教師な聖職者な訳だし。そうゆうの、けしからなくね？
でもまあ先生と元生徒が卒業後に結婚するパターンとか多いってよく聞くしな…
そ−ゆーのいーなー…。あ、いや、違うって。沢口サホ君は研究対象だよ。
そうゆうやましい気持ちじゃないんだ！。Hな事などほとんど望まない。ほとんどだあああ！
（深呼吸）
…ちょっと迷いが生じただけだ。探究するんだ。科学の心だっ！
という訳で、沢口サホ君研究のフィールドワークも、
これまで行なってこなかった彼女の自宅周辺に手を広げ、資料の収集に努めてみたい。
或いは帰宅のルートに何か手がかりが転がっているかもしれん。
追跡、（服を着込み変装する）開始だっ。
（夕方）
50メートルほど距離を置き、つかず離れず後を追う。…彼女けっこう内股なんだな。
あ、猫ちゃんこんにちは…って猫はいいからまっすぐ帰ろうよ。
途中コンビニに立ち寄る彼女。雑誌のコーナーに行く、と見せかけてレジの方に…
何を買っているんだろう？ああ、おでんの餅巾着か。
…彼女がコンビニを出たその時！
俺の10メートル先つまり、彼女の40メートル後ろを横切る影。あやしい。あまりにあやしい男。
（僕、登場）
しゅたたたたっ、しゅたっ。電信柱の陰から電信柱の陰へ。あいつは斜めに走ってる。
一体何者なんだろう、うーむわからん。しかし彼女を尾行しているようだ。
お、着いたらしい。彼女の家だ。
��
僕；しゅたたたたっ、しゅたっ。しゅたたたたっ、しゅたっ。
追跡、追跡。お部屋を確認。
…よし、わかればもう、こっちのもんだ。
あとは日程を改めて、窓辺に実った洗濯物という名の果実を収穫するんだ。
では、撤収！しゅたたたたっ、しゅたっ。しゅたたたたっ、しゅたっ。
俺；待てーい。
僕；はっ！？
俺；誰だお前は。
僕；…なんかよくわかんないけど、ばれてる？ひとまず逃げろ。
しゅたたたたっ、しゅたっ。しゅたたたたっ、しゅたっ。
僕にアプローチするあやしい男。あいつこそ何者だろう。
俺；待あてーい！待たんかこら〜、お前誰だあ！
僕；ああっ、追ってきてるよお！全速力だっ！
しゅたたたたっ。しゅたたたたっ。しゅっ。（退場）
俺；…はあ、はあ、はあ、はあ。何だあいつ。足むっちゃ早いでやんの。
つうか俺、ナチュラルボーン・インドア派だっつーの。走るとか無理ですから。
しかし彼女をつけまわす、あいつは一体何者だろう。謎は深まるばかりなり。
…。
ひとまず。沢口家に戻ってみると…やややっ、彼女が家から出てきた。
まずい、感づかれたのか？いや違う。ごみだ。近所のごみ捨て場にごみを出しに来たのだ。
…彼女が戻るのを見計らって、あのごみを俺が回収しよう。
このお宝は貴重な研究資料になるぞ。
早く帰って開けてみたい。
（短い暗転）
��
俺；ごみとは、生活の歴史である。ごみを調べれば文化がわかる。
古代のごみ捨て場・貝塚から縄文人の生活が紐解かれた。
俺も謎に包まれた沢口サホ君の生活史を解き明かすぞ！
…幸せは、薔薇の包みを開くとき。そう言ったのはどこの誰だったっけ？
俺は今、薔薇色の包みを開いている。
俺は今、幸せかい？…わからんが少なくとも、うきうきしてる。俺の鼓動は、高鳴っている。
ビニールビニール紙屑…さてまず出てきたのは、NTTドコモの明細書だ。
これで通話の記録がおぼろげながらもわかるかもしれん。彼女のプライベートを探る鍵だ。
ビニールビニール紙屑テイッシュ…このテイッシュは…たばこ臭あ…はっ！これは罠だ。
用心するべき事は！彼女は家族と同居つまりこのテイッシュの使用者が、彼女ではなく、
彼女の父親とかかもしれんという事だ！
…危ないなあ。そんなの一緒にしないで欲しいよ。
沢口家のごみはぁ、家族の分と娘の分とを分別して出すべきだよぅ。
まーったく、ゴミをあさる人の身にもなって考えてよぅ。
ペットボトルは…燃えるごみに混ぜちゃダメじゃないか。
そして！…ああ、俺はついてる。
彼女、沢口サホ君の使用済み下着、ブラジャー！エ〜ンド、待望のパンツ。
獲ったど〜〜〜。お宝、ゲットだぜ。
はっ。もしやしてこれは母親の物だったりはしないのか？
いやいやいやいや。これとか女子中学生がしてそうなスポーツブラだしな。
熟女がつけてるとかありえんし。
しかし彼女は何故これを捨てたんだろう…何か、汚れでも？シミでも？
（匂いをかいで調べる）
うん！うん。うん。…ま、おおかた肉体的な成長に伴い許容を超えたんだろうな。
きっとこうゆう事だ。
（ブラを身に着け、女子になりきり）
「また大きくなってる…やだなあもう、はち切れそうだよ」 な〜んてな！
…女子が初めて身に着けるブラジャーって、こんなのだろうか。
小学校高学年にもなると胸が膨らんでくる。そして…
「男子がまた私の胸ばっか見てる。やだなあ。…あ！今さきっぽがスレて痛ぁい。
クラスの早い子はもうブラ着けてるってゆうのに、どうやって選んだらいいかわかんないよう〜」とか、そんな風に心にカオスを抱えて初めてのブラジャーを選びに行くのだろうか。
「しまむら」とかに。
もしかしたら俺は大変な宝を手にしたのかもしれん。すごい、すごいぞおおお！
…お、落ち着け俺！落ち受け。
ちょっと興奮してしまった。見失っていたぞ。当初の目的を。
とりあえず、（時空破断検知システム出す）
時空破断検知システムに反応なし。はずれか。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
��
僕；待あてえい！って追いかけてきたあのあやしい男。
なんなんだ？
落ち着いて考えてみよう。
その1、警察？いや違う。
僕は、ただ、沢口サホさんを追跡して、家を突き止めたってゆうだけで、
あの時点での僕はまだ、なんにもやましい事はない。
まだ下着狩りを楽しんでないよ。
だから警察なんかじゃない。
だいいち体力なさそうなおっさんだった。
その2、沢口サホさんの、お父さん？…調べてみないとわからないけど、なんか違う気がする。
その3、沢口サホさんを狙っている変質者？
うーんそれならありそうだなあ。彼女はきっと変質者にモテそうなタイプだ。
…それにしてもあの男、どっかで見たことあるような、そんな気がするんだけど、
それがどこだか思い出せないんだよなあ。
なんにせよちょっぴりスリリングなことになってきたけど、それでも僕は手にしたい。
沢口サホさんの光るパンツ。それは僕だけに見える一筋の光。
見えない右目に見える光。僕の希望。僕のみちしるべ。あのパンツだけは渡さない。
しゅたたたたっ。
という訳で、闇にまぎれてやってきた彼女の家。
窓辺には、下着という名の甘い果実。
沢口サホさん。君のパンツ、君の代わりに大事にするよ。
（眼帯を外す）
光ってない！そんなバカな。何のためにここまで来たんだ…
そういえばあの時のとは違うパンツだ。
光らないパンツなんて、そんなの沢口サホさんのパンツじゃないよ！
…でもとりあえず貰っていくか。
（暗転・明転、もしくは明りの位置切替）
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KENT氏からのコラボの提案は、二人芝居をリレーで書く、というものでした。長崎市と佐賀市、遠いので頻繁に会って稽古するのはなかなか厳しい。ならば交互に一人芝居を重ねて終盤で対決する、「ルパン三世と銭形警部」の様な追う追われる関係と。企画は結局僕が書く方向に落ち着いて、僕は二人の関係性について考えてみました。ルパンと銭形の様な関係、それは…。
�“蛤畆圓帆楮困垢觴圈�しかしあまりに重大な犯罪なら個人で追うことにはならない。ならば被害者が困る度合いが小さい軽犯罪ならどうだろう。
�◆屮襯僖鵑帆�形」の関係をなぞることに興味がわかない。それより立場は違うがどこか同じような二人がやがてわかりあったり対決したりする構図はどうか。おお、「エレクトリックドラゴン8000V」みたいだ。(今思えばどちらも浅野忠信だ。) かくして悲しみを背負った二人の変態が対決する物話に。
最後の対決の種目にも悩みました。なるべく馬鹿馬鹿しい勝負で。(没案には「ウルトラ怪獣しりとり」とか。)最もバカバカしく軽めに変態的な競技を思い付いたのですが、これが結果的に精神的解放と、かつ悲劇的な結末に結びつけられたので良かったです。
�“蛤畆圓帆楮困垢觴圈�しかしあまりに重大な犯罪なら個人で追うことにはならない。ならば被害者が困る度合いが小さい軽犯罪ならどうだろう。
�◆屮襯僖鵑帆�形」の関係をなぞることに興味がわかない。それより立場は違うがどこか同じような二人がやがてわかりあったり対決したりする構図はどうか。おお、「エレクトリックドラゴン8000V」みたいだ。(今思えばどちらも浅野忠信だ。) かくして悲しみを背負った二人の変態が対決する物話に。
最後の対決の種目にも悩みました。なるべく馬鹿馬鹿しい勝負で。(没案には「ウルトラ怪獣しりとり」とか。)最もバカバカしく軽めに変態的な競技を思い付いたのですが、これが結果的に精神的解放と、かつ悲劇的な結末に結びつけられたので良かったです。
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