十八代目中村勘三郎コミュの勘三郎はこんな人

昨夜は文藝春秋「菊池寛賞」授賞式＆忘年会に招ばれ、知り合いの某作家・編集者とそのまま銀座で午前様。

帰宅して即、録画を拝見。

冒頭から小山三さんの号泣。

先の日記にも書いたけど、５、６日に楽屋にかけた電話の応対、あれはいったいどういうことなの？小山三さんは、18代目の訃報をとうに知っていたんじゃない。それにしても不可解な応対。きっとその時、動転してたんだと思います。

録画視聴後、熱い風呂につかり、目をつぶると、あたいが３５年間取材執筆していた『世界の一流品大図鑑』（講談社刊）の中のコラム「私の愛用品」でインタビューしたときのことをはじめ、数々の丈との思い出が。
貴重な写真を入れて、これから徐々に書いていくつもりです。

その前に、他校ながら同じ歌舞伎研究会に在籍していたと思われる日本経済新聞の記者の記事を挙げておきますね。

勘三郎って、いつもこういう人だったんだよぅ。

＞勘三郎さんに受けた演技指導の思い出　記者が語る
2012/12/7 17:04

12月５日、57歳の若さで死去した歌舞伎俳優の中村勘三郎さん。実は本紙記者が学生時代、当時勘九郎を名乗っていた勘三郎さんから、思いがけない経験をさせてもらったことがあった。記者が思い出をつづった。

■勘三郎さんは手帳を取り出して…

ありし日の中村勘三郎さん
記者が大学３年生だった1996年の夏のこと。前年に東京・歌舞伎座でのアルバイトを通じて声を掛けてもらったことから勘三郎（当時・勘九郎）さんの楽屋に招いてもらった。中学・高校の後輩だったので共通の恩師の消息話に花が咲き、記者が大学で歌舞伎を実演するサークルに入っていることを話すと身を乗り出して「そりゃいいことだ」と繰り返し、真剣な表情で話を聞いてくれた。

「何やるの？」。記者は次の学園祭で「菅原伝授手習鑑」で「賀の祝」の桜丸を演じると恥ずかしながら明かした。菅原道真の左遷を自分の責任と感じて切腹する若者の役で、前年に勘三郎さんが演じていた舞台を参考にしていた。すると、勘三郎さんは手帳を取り出し「来週の火曜か木曜だったら時間が空いてるから、また楽屋に来い。教えてやるよ」。

今思えば世間知らずの学生で、その言葉に甘えて舞い上がり、後日、台本と菓子折りを片手に本当に楽屋に伺った。

■自ら手と顔を動かして指導

2011年９月、新歌舞伎座で舞踊劇「お祭り」に出演する中村勘三郎さん（大阪市天王寺区）
　勘三郎さんは歌舞伎座出演の空き時間で、普段はにぎやかな人気俳優の楽屋にも人の出入りはなく２人きり。座椅子に座った勘三郎さんは「まず切腹の動きやってみてよ」。扇を刀に見立てて恐る恐る手順をおさらいする。刀を腹に刺した瞬間の表情、その後のかすかなセリフ回し、首を切ってゆっくりと伏せるところまで、自ら手と顔を動かしながら指導してくれる。「こうだよ。そうそう」。のれんから舞台に出る瞬間の表情や、若い妻や父親を残して先立つ気持ちについて、祖父の六代目尾上菊五郎の話などを織り交ぜて話してくれたのを記憶している。

あっという間の１時間だった。公演当日よりも緊張した。就職して記者になってからは毎月歌舞伎に通うこともできず、また遠慮なく楽屋を訪ねることもできず、しばらくお会いできずにいた。

2007年の秋、記者が赴任していた福岡市内のホテルで偶然再会する機会があった。名刺を渡して11年前の出来事を話すと思い出してくれて「おお。桜丸！　こんなところで何やってんの」。そして次に出てきた言葉は「いま時間ある？　お茶行こうか」――。ありがたい言葉だけもらってその場は遠慮した。

南座の「吉例顔見世興行」で口上を述べる中村勘三郎さんの長男勘九郎さん(右)と次男七之助さん（５日午後、京都市東山区）
　突然の訃報に接した日、記者は大阪文化担当として勘三郎さんの２人の息子が奮闘公演する京都南座に駆け付け、取材することができた。「六代目勘九郎襲名披露口上」で看板俳優たちが口々に勘三郎さんの死を悼み、襲名した勘九郎さんが「父のことを忘れないで下さい」と声を振り絞った舞台に立ち会い、記事にした。どんな出会いにも愛情を注いでくれた勘三郎さんの笑顔を生涯忘れることはできない。＜

（日本経済新聞　大阪・文化担当　小山雄嗣）