アホが隙ですコミュの人生で一度きり

皆さん、健康診断は受けていますか。

僕はね、社会人になって程よく時を稼いでおりますけれども、健康診断で胃の検査だけは頑なに拒否し続けてきたんです。

何故かってね、僕はアホだから胃が痛くなったことなんてないわけ。
アホは悩み無用なんですね。
それにね、胃ってわりと敏感な臓器じゃないですか。
胃が悪かったらね、必然的に食欲がなくなるとか、痛むとか、何かしら感じると思うわけなんですね。

世間的な意見としては「早期発見」という正攻法で僕を責めるんでしょうけど、こっちも言わせてもらいたいことはまだあるんです。

噂に聞くところでは、バリウムが腸の中で固まって手術で摘出した人がいるとか。
そもそもね、消化できないものを飲み込んでる時点で健康に悪いって話じゃないですか。
これこそ本末転倒だ。

しかも胃の検査の放射線は強い。
そして、僕は今までにこの検査で引っかかった人を見たことも聞いたこともない。
肺がんはあるけど、胃がんはないわけ。

なぜならそれは、胃だと自分で気づいて医者に行き、胃カメラを飲んで発覚するからだと思う。
意地はったり、怖がったり、面倒だったり、忙しかったりといった理由で健康診断まで胃の異常を引っ張った人以外、この検査を受けるメリットは皆無と断言したい。

と、いうわけで、僕ちゃんはこれまで一度も受診したことがなかったのです。
テケトーな理由をつけてはスルーしていました。

ところが、いよいよやらなければならない時がやってきてしまった。
それは、昨年のことでした。

転職をしたことで、会社から検査を余儀なくされたのです。
これはしかたないかと諦め、初めての検査を受けました。

看護婦さんに冒頭で「何か心配や不安なことはありますか？」と聞かれたので、「バリウムが初めてなのでそれがちょっと不安です」と伝えた。

とても親切な施設でしてね、かなりわかりやすく説明してくれたと思います。
検査室で女性の職員さんに一つ一つ説明をされながら検査は進みました。

僕はね、なんとなくのイメージですけど、バリウムって一気に飲まなければならないって気がしてたんです。
それと、ゲップをしてはいけないというルールもよく聞いていました。

この二点をへんに知っていたことで悲劇は起こりましたね。
僕のことですから、何か起きる気はしてましたけど。

まず胃をふくらませるための粉末を飲まされました。
これが一気に飲むとむせかえる代物でしてね。
さっそく検査室を水浸しにしてやりました。
こうなったら俺をこの部屋に入れたことを後悔させてやるくらいの勢い。
なんなら出入り禁止にいていただいて、僕に代わって会社に説明してほしいところです。

それでも奴らもなかなかのもんでしてね、検査はしらっと続きました。
やっと炭酸の飲み方がわかったところで、バリウムですね。

さっきも言った通り、僕はバリウムの飲み方くらいは知ってますからね。
そこはグイっといくじゃないですか。
いつになく男らしくいきましたよ、そこはね。

そしたらね、炭酸が入ってる分だけ激しさを増して噴火しましたね。
あっさりですよ。
僕にかかったら、ただの胃の検査も大惨事です。

職員さんもさすがに初めてアドバイスだったんでしょうけど、「ゆっくり飲んでください。ゆっくりでいいんです」とあわててましたね。
ほんと出入り禁止にならないかな。

それで、昨日、二年目の健康診断だったんですけど、僕は「こないだ胃カメラ飲んだんでいいです」という大嘘をついてスルーしました。
できるものですね。

スルーの仕方を覚えたので、僕は一生バリウム検査をすることはありません。
人生でたった一度の検査は、見事な散かしっぷりでした。

みなさんも、僕を参考にしてくれるといいな。