夢の跡地〜君の描いた幻想〜コミュの〜プロフェッショナル 仕事の流儀「もしも，やることがないときは」〜

茨城県つくば市．
市民の約半数を学生が占めるこの街に，一人の学生が居た．

大学の周りには，沢山のアパートがある．
そのアパートの一室に，山本は住んでいた．

朝早くから玄関を出る彼に，我々は声を掛けた．

ーー 朝早いんですね．

「いえ，今から寝るところだったんです．
　冷蔵庫開けたら，色々と足りなかったんで，今から買い出しに行きます」

ーー 午後からでも良いのでは？

「午後からだと，スーパーに人が多くなるので．人が多いところ嫌いなんですよ（笑
　夜だと，野菜とか無くなってるでしょ」

ーー 自炊されてるんですね．

「まぁ，それくらいしかやることないんでね（笑」

毎週火曜朝七時に，山本は買い物に行く．
開店と同時に，山本はスーパーの中へ颯爽と入っていった．

〜プロフェッショナル 仕事の流儀「もしも，やることがなくなったら」〜

午後２時，山本は起床した．

ーー こんにちは．

「あぁ，どうも」

目覚めた直後の山本は，枕元にあったスマートフォンを手にとった．

ーー メールの確認ですか？

「いえ，違います」

彼の指先は細かに動き，その度に，軽快な電子音が鳴り響く．

「ゲームですよ．ZOOKEEPERっていう」

ーー 面白いんですか？

「面白いですよ．最近は，基本的にこれやってますね」

１０分近く，山本はスマートフォンの画面をずっと見つめていた．
彼の真剣な眼差しに，我々は声をかけることを忘れていた．

山本の指先の動きは止まったが，やはり，
彼の視線はスマートフォンの画面から離れない．
しかし，先ほどまでの真面目な表情と打って変わって，今の山本は，笑っていた．

ーー 何か良いことでも？

「すみません（笑 ２chのまとめ読んでて．ﾌﾌｯ」

「最近は『コナンマジキチSS』っていうまとめサイトばっか見てますね．
　その中でも，
　『阿笠博士「できたぞ新一、元太くんの家庭を崩壊させるスイッチじゃ」』
　っていうのが面白かったですね（笑
　あれは短い割にーー」

山本は，とても楽しそうに，我々に語ってくれた．

午後３時，山本はようやくベッドから降りた．
こたつに入り，ノートパソコンを手元に寄せる．
ブラウザには，動画投稿サイトが開かれていた．

ーー 何か動画でも見られるんですか？

「一応，自分が追ってる動画投稿者が何か上げてたら見てますね．
　あと，毎週見てるアニメとか．まぁ，今日はそれが無いので残念ですが」

山本は，キーボードを叩いて検索キーワードを入力し，
動画のサムネイル画像を見送った後，再びキーボードを叩く．
しばらく，我々は彼の一連の動きに注目した．

その後，我々は驚愕する．
山本は再びベッドに横になったのだ．

「なんですか（笑 そんな驚いた顔して」

ーー ……体調でも悪いんですか？

「いえ，全然．ただ，もう一度寝ようかなと思って」

ーー さっきまで寝てたのに？

「はは．よく言われますよ．ただ，眠いんでね」

その後，山本は我々の呼びかけに応じることなく，眠りについた．


午後５時，再び，山本は起床した．

ーー こんばんは．

「おはようございます」

山本は挨拶と同時にベッドから降りた．
寝る前に比べて，山本の動きは素早かった．
何か慌てているようにも見える．

「やばい．忘れてた」

ーー 何か用事でも？

「１８時から，先生とゼミを入れていたんです」

山本はトースターにパンを入れて，ケトルで水を沸かすと同時に，
服を着替え始めた．

ーー いつも，こんなに忙しいんですか？

「こんな感じですね．
　なんか，昔からギリギリにならないと動けないんですよ．
　この癖直したいと思ってるんですけど，できなくて（笑」

着替え終えた山本は，トーストとスープを忙しく食べ終えて，
歯を磨き終わると同時に家から出た．

ーー ゼミの準備は，終わってるんですか？

「いや，終わってないです．
　でも，まぁ，この前まとめて色々やっといたんで，
　先生には小出しで成果を見せて毎週やったように見せてます」

ーー 大丈夫なんですか？

「大丈夫じゃないと思います．
　でも，これで２年くらいやってるんで，先生にもバレてると思うんですよ．
　バレてて怒られないってことは，まぁ，良いのかなって解釈してます」

山本は研究室で資料を印刷し，颯爽と研究室から出て行った．


５時間後，山本は研究室に戻ってきた．
疲れ果てた顔で，椅子に座り，大きくため息を吐いた．

「こってり絞られました」

ーー 怒られたんですか？

「怒られたというより，当然のことを言われましたね．進学予定なのに，
　このペースで研究やっててどうにかなると思ってるのとか言われました．
　まぁ，僕もどうにかなるとは思ってないんですけど．
　なんというか，色々と疲れますよね．
　僕は一生懸命やってるつもりなんですけど」

ーー お疲れ様です．

「まぁ，世間には僕よりお疲れ様な人間のほうが多いんでね．
　文句を言ってちゃあいけないと思ってます．
　自分は大器晩成型だと思ってるんでね，これからですよ」

そう語る山本の顔は，精悍さに溢れていた．

ーー 今日はこの後どうされるんですか？

「そりゃあ，帰りますよ」

　　山本は，これからまた，面白い動画を探すという．

茂木「最後に，山本さんに聞いてみたいんですが，
　　　山本さんにとってプロフェッショナルとは何ですか？」

山本「『毎日を充実させること』，ですかね
　　　将来働くことになったとしても，これだけは，
　　　忘れずに居たいと思います」

BGM「ずっと探し〜ていた♪ 理想のじぶ〜んって♪
　　　 もうちょっとかっ↑こよかったけれど♪」

終わり