ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

大麻草検証委員会コミュの「大麻取締法の立法根拠を問うー伊那判決の意味するもの」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ジュリスト 1987年12月1日号(No.898)
 
「大麻取締法の立法根拠を問うー伊那判決の意味するもの」
                   
                         弁護士 丸井 英弘

  昭和62年5月30日、長野地方裁判所伊那支部は昭和60年(わ)第六号の大麻取締法違反事件について、懲役10月の求刑に対し懲役3月、執行 猶予2年という判決を下した。これは従来の量刑基準からすれば格段に軽いものであるばかりか、判決理由の中で大麻取締法の見直しを含む一歩踏み込んだ見解 が示された。
 この事件は、被告人が友人に対し、大麻草約20グラムを譲渡したとして起訴されたもので、逮捕手続きや大麻の無害性について全面的に争い、厚生省薬務局麻薬課長や東京都麻薬指定病院医師等が証人として呼び出されて、2年2ヵ月、計13回の公判が開かれたものである。
 平湯真人裁判長は判決理由の中で特に次のように述べている。
 「人への作用はそれまで考えられていたほど強くはなく、他の薬物、ことにヘロイン、コカイン等の麻薬や覚せい剤に比較すればかなりの程度作用の弱い薬物であること、また……慢性的使用の場合の人格荒廃、凶悪犯罪等の弊害はアルコールの方が具体的に危険であること」
 「アルコール、ニコチンタバコと比べて大麻の規制は著しい厳しい」
 「刑事責任は行為の違法性と合理的な均衡を保たれるべきであり、右観点からは、少量の大麻を私的な休息の場で使用し、かつその影響が現実に社会生 活上害を生じなかったような場合にまで懲役刑をもって臨むことに果たしてどれほどの合理性があるかは疑問なしとせず、少なくとも立法論としては再検討の余 地があると解される」
 「しかしながら本件は被告人が他人の使用に供することを目的として少なからぬ量の大麻を譲渡したというものであって、右のような場合と事案を異に しており、本件被告人の行為に適用する限りにおいて懲役はやむを得ないと言うべく、前記大麻取締法の規定は憲法13条、31条に違反しない」
 右判決については検察官も控訴せず確定している。右判決は一応有罪判決ではあるが、その中で指摘する「少量の大麻を私的な休息の場で使用し、かつ その影響が現実に社会生活上害を生じなかった」事案についてあ懲役刑を課するとすれば、少なくともその限度において大麻取締法の規定は憲法13条、31条 に違反するとせざるをえないものであり、画期的な判決であると思われる。
 大麻であれアルコールであれ、ある薬物を所持し、これを使用して「酔う」ことは、原則として自由である。それは基本的な自由および幸福追及権の行使として尊重されなければならない。
 薬物の「有害性」からすると国民の健康衛生上の危険を防止するという立法目的が是認されるとしても、その目的と規制手段との間に合理的な均衡が認められない場合、そのような規制立法には合憲性は認められないのである。
 大麻取締法の合憲性を求めた2つの高裁判決(東京高裁昭和56年6月15日判決、大阪高裁同年12月24日判決)は、大麻の「有害性」から、その 所持、譲渡、譲受に罰則を課することの相当性を肯定しているが、規制目的と規制手段との合理性均衡についての検討を全く怠っている。
 ところで、憲法判断を示すにあたって、立法事実論ということが今日強く主張されている。
 この立法事実に関しては、最高裁大法廷昭和50年4月30日判決が薬事法の違憲判断を下すにあたって、詳細に分析、論証した。
 そして、立法の合理性を構成するには、立法の合理性を裏付ける事実としての危険の発生につき、その危険の内容とその程度、発生するとみなされる危 険が「単なる観念上の想定」と言えないだけの合理的根拠の存すること、代替的手段をとることの可能性、当該規制措置と目的との均衡等が明らかにされなけれ ばならない、としているのである。
 大麻の輸出入、栽培、所持、譲渡、譲受を一切禁止し、この違反を犯罪として処罰するというのは、薬物に対する規制手段として最も強力なものである。
 言うまでもなく刑罰法規は、人の自由・財産等を強制的に奪うものであるから、行為規範としては最後に選択されるべきものであり(刑法の謙抑性、補充性)、かつ、法益侵害行為の内容とそれに対する制裁の内容は均衡していなければならないのである(責任と刑罰との均衡)。
 そして大麻の「有害性」が、アルコール等と比較して極めて少なく、ほとんど取るに足らない程度のものであることが明らかになってきた現在、大麻の 輸出入、栽培、譲渡、譲受による「国民の保健衛生上の危険」なるものは、全く「単なる観念上の想定」に過ぎないと言えるのではないだろうか。
 さて、厚生省薬務局発行の「昭和61年における大麻・覚せい剤行政の概況」によると、昭和61年度の大麻取締法違反事件は1624件、1337人が検挙されており、60年度より64人の増加となっている。
 大麻事件は被害者なき犯罪と言われながら逮捕、拘留が安易になされており、事件によっては判決の確定まで何ヵ月も何年もかかるうえ、その間保釈が許可されない例も多々ある。これは実質的な刑罰と言えるものであり、本人や家族の生活が破壊されているのが現状である。
 また一方、違法性の認識が極めて弱い大麻事件で、被告人を刑事罰に処することにどれほどの意味があるのかという疑問が存する。これは特に行財政改革が政治的なテーマとなっている現在、社会的コストという観点からみても問題とされねばならない。
 このように大麻取締法をめぐる矛盾点は次第に明らかになってきており、この伊那判決を機に改めて大麻取締法の是非が問われなければならないと考えるものである。(第二東京弁護士会会員)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

大麻草検証委員会 更新情報

大麻草検証委員会のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング