この作品は二つの点で、気になっていた作品です。
ひとつめは、フランク・トーマス/オーリ−・ジョンストン著『The Illusion of Life 生命を吹き込む魔法』に言及されていた作品で、少し長いですが引用すると、
〜『プルートの大暴れ』の有名な蝿取り紙のシークエンス。アニメーションに個性を表した画期的な例である。ネバネバした蝿取り紙の上にうっかりすわってしまったプルートの災難は、逃れようとすればするほどひどくなっていく。彼が事態をどうとらえ、次にどうしょうと思っているのかは、シークエンス全体を通して観客にもはっきり伝わってくる。スクリーン上のキャラクターが考えているように見えたのはこれが初めてで、65秒という短さにもかかわらず、このシークエンスは、本物の問題にぶつかった本物のキャラクターをアニメートする道を切り開いた。〜(日本語版より引用)とあります。
通してみると、一貫してプルートは一切擬人化されず、実際の犬がこうしたアクシデントに遭遇したら現実にこういう反応を示すのではないかという、らしさにあふれている作品でした。
もうひとつはプレストン・スタージェス監督作品『サリヴァンの旅』(1941年)に重要なモチーフとしてこの作品が使われているからです。虐げられた人々が、一時の喜びとしてみる映画がこの『プルート大暴れ』なのです。