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「知らなかった少女の話」

 子供たちの笑い声が聞こえる。明るい太陽の下、のびの
びと駆け回っている。少女は見下ろしていた。薄暗い、屋
根裏部屋の窓の上から。誰も訪れない。母も、父も、兄弟
すらも。アルバムの中にすら、彼女はいなかった。毎日3
回、食事と薬が運ばれる。いつも同じ食事。階下で自分の
家族の笑い声が聞こえる。彼女はそれが誰の声か知らない。
物心ついたときから、彼女はそこにいた。母の声も、父の
声も、兄弟の声も、まるで他人の声のようだった。しかし
彼女は寂しくはなかった。なぜなら、寂しいということを
知らなかったからだ。
 彼女は夜になると、星を見上げる。星が好きだというわ
けではない。ただ、理由も無くそれを見ていた。感じると
いうことも、思うということも、彼女は知らなかった。故
に、寂しく感じることも、美しいと思うことも彼女は知ら
ない。
 そして、彼女に最後の時が訪れる。彼女は怖くも、苦し
くもなかった。怖いということも、苦しいということもし
らないから。結局誰にも看取られず、彼女は天に召された。
いや、最後に彼女は、美しいと思うことも、寂しいと思う
ことも、嬉しいと思うことを知ってから旅立った。それが
よかったかどうかは今となってはわからない。ただ、彼女
は最後の時に、笑い、泣き、悲しさを知り、嬉しさを知り、
最後に、笑顔で旅立っていった。

「そろそろ、時間切れだ。」
 黒衣の男は砂時計を持ち上げた。
「ありがとう」
 彼女は声にならない声で、男にそういって、眠るように
目を閉じた。黒衣の男は、淡い光るものを瓶に詰め、夜の
闇に飛び立った。
          「 思い出 」

 人通りの多い商店街。小さな子供がおもちゃ屋さんのショウィンドウの前に立っていた。
「車のラジコン・・・いいなぁ。」
 彼にとってそれはあこがれの品といってもよいものだった。彼の家はお世辞にも裕福とはいえなかった。買い与えられているおもちゃも特になかった。
「あ、母ちゃんだ。こんな所をみられたらまた怒られる。」
 そんな子供をみていた一人の男がいた。
 次の日・・・
 またその男の子はおもちゃ屋さんのショウウィンドウの前に立っていた。
「そこのおぼっちゃん。」
 一人の男がその男の子に話し掛けた。
「キミにいい話があるよ。」
「おじちゃんだれ?いい話って?」
「キミの願い事をかなえてあげようと思ってね。」
 そう言うと男は男の子に一冊のメモ帳を手渡した。
「これをキミにあげよう。願い事を書いて紙ヒコーキにして飛ばせば願い事がかなうよ。」
「ホントに!?」
 男の子は目を輝かせながら聞き返したがその男はすでに人ごみの中にまぎれてしまった。
 その日、男の子はメモ帳に「ラジコンがほしい」と書いて紙ヒコーキにして飛ばした。
 次の日・・・
「ラジコンが届いたのだけど、お前宛だよ。そういえばろくにおもちゃも買ってやれなかったねぇ。よかったこと。」
 母親は男の子にラジコンを手渡すと仕事に出て行った。
「あのおじちゃんの言ってたこと、ホントだったんだ!」
その夜のこと。子供は母親に、父の行方を聞いた。
「あぁ、父ちゃんはね、遠いところにいったんだよ。」
「いつもどってくるの?」
「おまえに言ってもしかたないよ。」
 母は、それっきり黙って台所にいってしまった。
「父ちゃん、どこにいるんだろ。」
それから、小さな子供は毎日のように紙ヒコーキを飛ばしたが、
メモ帳は一向に減る気配もなく、また、願いも最初の願い事以外、かなうことはなかった。
それでも、少年は紙ヒコーキを飛ばしつづけた。

 それから月日がながれ・・・。
 20歳の誕生日。すっかり大人になった男の子はメモ帳をくれた男に出会った。
「ずいぶん大きくなりましたね。」
「あなたは・・・。」
「メモ帳、覚えてますか?願い事のかなう・・・。」
「あぁ、思い出しました。あの時は夢をかなえてくれてありがとうございます。だけど、最初の願い事しかかなわなくて…」
すこし悲しそうな顔をして少年は言った。
「すっかり大人になりましたねぇ。その悲しそうな顔はお母さんにそっくりだ。そういえば、そんな顔しかさせてなかったなぁ。」
男は寂しそうに言った。
「ぇ・・・。なんで母のことを…」
すっかり大人になった男の子はその男をよく見た。
「私はあなたの父です。ちょうどあなたが生まれた頃に、お母さんと離婚しました。彼女は苦労していました。あなたへのおもちゃすらかって上げられないありさまでした。なにひとつ父親らしいこともできなかった私の、あなたへの償いのつもりです。」
「そんな・・・。」
「あなたが20歳になったら、このことを知らせようと思いました。無事に伝えられてよかったです。」
そう言った後、父親は人ごみの中に消えていった。そして、いくら探しても、見つからなかった。
 家に帰ってから。
「母さん、なんで父さんと別れたの?」
「父さんはお前が生まれた日に死んじまったよ。さぞかしお前を見たかったんだろうねぇ・・・。お前が生まれること、ものすごく楽しみにしてたから。」
「父さん・・・。」
 すっかり大人になった男の子は、今は亡き父親の墓に線香とボロボロになったメモ帳をたむけた。
「街の話―a」

 誰もいなくなった街。疫病のためでもなく、飢餓のためでも
なく盗賊の一団に略奪されたためでもなく……。
 広場にある噴水は水が枯れ、残っている建物には蔦がからみ
家々の窓ガラスはどれもなくなっていた。
 風が吹き抜ける。雑草がすこしだけゆれた。
「もうすこし、早くここに着きたかったな。」
 誰かが、そう言った。

 建物すら朽ちた街。疫病のためでもなく、飢餓のためでもな
く盗賊の一団に略奪されたためでもなく……。
 広場にある噴水はわずかに形を保っていた。残っている建物
には枯れた蔦がかすかに張り付いていた。家々はどれも崩れか
かっていた。
 風が吹き抜ける。朽ちた建物が軋む音がした。
「さぞかし、よい街だったんでしょうね」
 誰かが、そう言った。

 何も無くなった街。疫病のためでもなく、飢餓のためでもな
く盗賊の一団に略奪されたためでもなく……。
 広場だった場所や家の建っていたところが間取り図のように
かすかに残っていた。
 風が吹き抜ける。ひゅうという寂しい音だけがした。
「歴史に残るほど街だったらしいが…」
 誰かが、そう言った。

 ここにきた誰かはみんな最後には
「でも、無くなったものはしょうがない。」
 そう言って、忘れ去っていった。
 
 街は、無くなった。
 人々の記憶からも。
「街の話―b」
 人々は自分達の街を誇りに思っていた。ずっと発展していく
ものだと信じていた。深い歴史があり、強固な守りもあり、整
備された美しい町並みはあり、健やかな住人たちがいた。その
街の名前は遠くまで知れ渡り、旅人も絶えなかった。
 旅人で常にいっぱいだった街。常に新鮮な情報が流れる酒場。
満員御礼の宿屋。

 しかし、人々はあることに気がついた。そして、その気が付
いた人から、徐々に旅立っていった。とても大きな忘れ物をし
て。

 もう、誰も戻ってこない街だけが残った。
 旅人の街が旅立てないまま、そこに残った。
「夜の街―勝負の話―」

 それは、まだ人々が灯りをランプでとっていた頃のおは
なし。昼は人々の文化が栄え、そして夜は『魔物達』の文
化が栄えた。そんな時代のどこかの夜の街のできごと…。

「はぁ…、はぁ…。そろそろ、勘弁してよぉ…大事なもの
 なんだから…」
「だーめ、あなたそれでも人狼でしょ。なんで水妖の私よ
 り足が遅いのよ。泳ぎの勝負だったらわからないことも
 無いけど、走りの勝負はあなたの土俵でしょ?私に勝て
 るまでコレはお預けね」
 水妖は楽しげにペンダントをくるくると回しながら笑っ
ていた。
 事の発端は些細なことだった。人狼が顔を洗おうとして
川を覗き込んだときにいつも身に付けているペンダントを
川に落としたのだった。それを水妖が拾ったのだが、不運
にも、その水妖はそのペンダントを気に入ってしまってな
かなか返してくれなかった。そこで、人狼は街の端から端
まで走りで勝負しようとしたのだった。水妖は最初は返す
つもりだったのだが、なんとこの人狼、とてつもなく足が
遅かったのだった。それから毎晩のように水妖に走りの勝
負を挑むという情けないことになっているのだった。

「むぅー…。わかったよ、また勝負だ…」
 ガックリとうなだれて人狼は帰っていった。そんな人狼
を水妖はボンヤリみていた。

 月が綺麗な晩だった。人狼は今晩も勝負を挑もうと川岸
に向かうときだった。
「あれ?」
 水妖が橋の上に座っていた。なぜか悲しそうな顔をして
いた。
「おーい」
 人狼が呼びかけに水妖慌てて反応した。
「勝負してくれ!」
「あはは、毎日毎日がんばるなぁ」
 水妖はいつもの笑顔で答えた。
「たまには泳ぎで勝負だ!いつもこっちの土俵じゃ情けな
 くなってくる」
 苦笑しながら答えた人狼とは対照的に水妖は辛そうな笑
顔で答えた。
「あなたの土俵のほうがいいんじゃないかな?ペンダント、
 私のものになっちゃうんだし…」
「えーい、やるったらやるの!はやく!」
 そういうと人狼は川に飛び込んだ。水妖も慌てて川に飛
び込む。

 ばしゃばしゃと音を立てながら、それこそイヌカキで人
狼は泳いでいたが、水妖はというと…おなじようにイヌカ
キで泳いでいた。
「やーりぃ!俺の勝ちだぁ!」
 人狼は嬉しそうに後ろをふりかえると、まだ水妖は苦し
そうにイヌカキをつづけていた。
「なにもハンデくれなくったっていいんだぞー」
 人狼は陽気に言った。しかしそれを聞いた水妖はすぐ岸
にあがると人狼にペンダントを投げつけて
「なによ!一生懸命泳いでたのに!」
 泣きながらどこかへ走っていった。

「あれ…俺まずいこと言ったかな…」
 ボリボリと頭をかきながら人狼はペンダントを身に付け
て寝床に帰った。

「おーい、勝負しよー」
 いつものように川岸に人狼は向かって言った。しかし水
妖はでてこなかった。おかしいなと橋のまわりを探してみ
てもどこにもいなかった。
 諦めかけて帰ろうとしたときだった。
「あ…」
 とぼとぼと裏路地にむかって歩いてゆく水妖をみつけた。
「おーい、どこいってたんだよ、探したんだぞ」
「もうペンダント返したんだから勝負しなくてもいいじゃ
ない」
 水妖は振り向かないでそういった。
「あぁそうか、毎晩のことだからつい習慣になっちゃった」
 水妖はポツリと言った。
「いままで、ごめん」
「え?なんで謝るのさ」
 泣きながら水妖は振り向いた。
「あなたが走るの遅いって知ってた。橋からずっとみてた。」
「え?なんだかよくわからないんだけど…」
「あなたは誇り高い種族なんでしょ?」
「いやぁ、俺の種族はそうだけど、俺みたいなのもいるし…」
 困ったように人狼は頭をかいた。
「なのに私、あなたのプライド傷つけるようなことした…。
 私ね、水妖のくせに泳ぐの苦手なんだ…。昨日勝負に負
 けてあなたのことどれだけ傷つけてたかやっとわかった…」
「えーと…その…」
 人狼は困った顔をしてボンヤリ立っていた。
「だから、謝る、ごめん」
 人狼は照れながらペンダントをはずして言った。
「これ、あげるよ。気に入ってたんだろ?」
「なんで?これは大切なものじゃなかったの?」
「これは母さんがくれたんだ。『大事な人がいたらあげな
さい』って。なんだかきみはほおって置けないし…」
 恥ずかしそう水妖はそれを受け取った。
「ありがと…」
「さぁ、勝負だ!」
 そういうと人狼は走り出した。しばらくして水妖はいつ
もの笑顔で走り出した。

 それは、まだ人々が灯りをランプでとっていた頃のおは
なし。昼は人々の文化が栄え、そして夜は『魔物達』の文
化が栄えた。夜になると外を走るおとや川を泳ぐ音がする。
その音の主の魔物たちの、お話。
「広場の話」

 白銀の広場に場所に、一人の男がベンチに座っていた。
黒いコートを風になびかせ、寒さにやや震えながらも、何
かを待っていた。
「彼女こそ……私の想っていた人なのだろうか…。」
 誰からも返事はなく、男は待っていた。誰も来ない白銀
の広場。時折吹く風が粉雪を散らし静かに、ただ静かに、
時を刻んでいた。
「あ……」
 男は見遣る。白いコートを身に纏った、腰まであろう銀
色の髪の毛を風になびかせながら、寂しそうな今にも泣き
そうな笑顔を湛えた女性の姿を。
 時が止まる。そこだけ切り抜いた、一枚の写真のように
黒と白とは重なり合う。
「私は……」
「さぁ……行こう……」
 やがて時は動き出し、何もない白銀の広場に戻る。そこ
には、幸せそうに眠る男が一人。
「諦めないVol.1/ライバルVol.1」

目的を持つと、楽しさに目覚める

「・・・やめたいな。」
少年はそうつぶやきながら、帰り道をとぼとぼと歩いていた。

走るのが好きだったから、陸上部にした。
小学校の運動会では常に一番だったし、みんなも「中学じゃ陸上部に入るの?中学でもきっと一番だろうね」なんて言うから、何の迷いもなく入部した。けど・・・
・・・本当に僕、走るのが好きで入ったのかな?
目立つから・・・
皆に褒められるから・・・
ホントの理由はそっちだったのかも。
中学に入ったら、僕より早い奴が現れた。
目立つのは、褒められるのは一番の奴。
今日も部活中、先生はあいつのことばっかり褒めてたし。

ちぇっ・・・もう部活やめちゃおうかな。

あ、しまった!家の鍵を部室に忘れちゃったよ〜!・・・最悪。

職員室の中から見えるグランドは、夕焼けで赤く染まっていた。
「先生〜、部室にうちの鍵を忘れちゃったので開けて下さい。」
『部室にか?これじゃないのか?』
「あ!それです。ありがとうございます。そういえば・・・」
と鍵を受け取りつつ、気にしていないそぶりで
「あいつはまだ居残り練習してるの?」
『もう帰ったぞ。生徒の自発性に任せてるからやりたくなきゃやらなきゃいいんだが・・・お前は必ず帰るよな。』
「だって、あいつは必ず残るじゃん。僕が練習してもあいつが練習したら、差は絶対縮まらないじゃん。無駄だもん。」
『やっぱりそういう理由だったか。』
「やっぱりって?」
『お前は走ってて、負けそうになったら「あ〜だめだ〜。」みたいな感じでいつも諦めるだろ?あいつはな、お前が最後まで諦めない走りをしたら負けそうな気がするからって言って、居残り練習を俺にお願いしにきたんだぞ。』
「え?」
『でも一人でやらせる訳にはいかないから、生徒皆に聞いてやってるって訳だよ。』
「・・・ふーん。」
『結局あいつの心配こそ無駄なんだろうなぁ。
「あいつにどう思われようが関係ないです。失礼します。」
職員室のドアが勢いよく閉められた。

間もなくガラガラっとドアが開き、サッカー部を受け持つ中年の先生が鼻息も荒く入ってきた。
「まったく、廊下は走るなとあれほど言ってあるのに!あんな勢いで曲がってきおって!しかも悔しい事に早すぎて呼び止める事もできんかった。あいつはどこの組の生徒だ。まったく・・・」

びくびくする先生たちの中、陸上部の先生だけひとりクスッと笑った。

夕焼けの中を少年は駆け続けた。長くのびた自分の影を追い越そうとでもするかのように。
「変わったお仕事 -初日-」
目覚まし時計の音で目を覚ます。デジタル時計はPM8時を示している。さぁて、活動開始。
アパートに鍵を掛け仕事場を目指す、と言ってもメールで配信されてるとこに行きゃいいだけなんだけどね。で、今日の行き先は駅前…の裏通り。相も変わらず妙なとこに来いと云うものだ。まぁそこに行くだけで金が振り込まれるんだから安いもんだけど。8月だというのに街は妙に寒い。暑いかと思えばそうでもなくTシャツ1枚できたことに軽い後悔なんかをしちゃってる内に目的地に到着。で、タイミングよくメール。
「角材転がってるだろうからそれを持って奥に進め」
やれやれ、このパターンかよ。労働値が報酬を上回るパターン。
案の定ガラの悪いにぃちゃんが3名、こっちを睨んでる。まいったなぁ、もう。
で、早速囲まれる。にぃちゃん達、悪いけど仕事なんだよね。
「あはは、アンタ片目かよ。おしゃれな眼帯だねぇ」
「で、なに?そんなモン持って俺らになんか用?」
「残った目が大事ならさっさと帰んな?」
云いたい放題言っちゃってくれるから困る。好きで片目じゃないの、と角材を早速横に振るう。狭い裏通りで囲むから悪いのさ。そうこうしてるうちに一人倒れ二人倒れ俺も倒れで残った一人を逃がしちまった。いけね…。投げ出した角材がくるくる周り逃げ出したにぃちゃんを直撃。結局なんとか仕事は達成。疲れた疲れた。ポケットで携帯がバイブでお知らせ。 「20万振り込みした。また頼む」
時間を見ればまだ10時。早速コンビニで金おろしてバーで飲むか…。
名前:木塚 境界(きづか さかい)
年齢:23
性別:男
仕事:掃除屋

「君、仕事探してるんだろ?どうだい?やってみないかい?」
事の始まりはアパートに突然現れたスーツのおっさんだった。なんでも夜にうるさい奴らを掃除して欲しいんだとか。そんでまぁ悪い条件じゃないから引き受けたってわけ。
「変わったお仕事 ー初日ー 〜後日談〜」
後から聞いた話だとこういうことだったらしい。昨晩の3人はいわゆるオヤジ狩りを楽しんでた輩でサラリーマン達が度々被害に会ってたとか。で、スーツ姿で現れたおっさんはそいつらの被害を減らす為に俺を雇ったらしい。酷い仕事をさせるものだ。いくら悪人だからといっても見ず知らずの人間にいきなり襲いかかるのはやっぱり人間としていただけない。ま、金も仕事もちょうどなかった俺には選択の余地はなかったんだけどね。 日の光に極力当たらないようにしなきゃいけない生活じゃ致したない。
燃え尽きる前の蝋燭は、なぜあんなに激しく燃えるのだろう。
 それは最期の最後になって、散りゆく己を目立たせるため?
 それとも残り少なくなった自分を知り自棄になったから?
答えは出ないまま、僕は白いベットの上に横たわっていた。夏も終わりに近づき蝉の声もだんだんと聞かれなくなった頃だった。相変わらずベットで時計の針を追いかける毎日。秒針がとてつもなく遅く動いたり、そうかと思えば短針が有り得ない速さでぐるぐる回って見えたりしてた。医者は僕の症状は厄介だと言ったことを覚えている。
「君の症状は生きている分には問題ないんだ。しかし…生活には大きな支障をきたす。悪いことは言わない、ここで暮らしなさい」
耳を疑った。医者の言う言葉だろうか。しかし僕は同意するしかなかったのだった。
ふとした興味から、始めた蝋燭遊び。なんの興味を持って始めたかは覚えていない。だけどそれはあの時の僕にとってはとても楽しい遊びだった。時間が刻々と過ぎていく様を眺めること。それから自己暗示によって遅く感じたり早く感じたりを操る遊び。しかしいつしか本当の時の流れを感じることが出来なくなり、やがて自己暗示のコントロールを失った。
しかし…本当の所、僕の自己暗示は周りにも影響を与えていた。

鈴美ヶ丘病院。ここは特殊な症例をもつ「患者」が入る病院。表向きには病院となってはいるが実際はこういった人の研究施設であった。

ケースNo.1
患者氏名:八雲 崇
性別:男性
年齢:60才
症状:自己暗示による時間感覚の変調。半径50センチ以内にある全てのものと本人が自己暗示で操られた時間の影響を受ける。なお、本人は自己暗示のせいか外見は20代半ばである。
危険等級:1級
処置:個室隔離
備考:自己暗示の干渉の範囲を抜ければ問題はないが近づかないこと。会話は電話を利用すること。

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