眠れぬ夜の物語コミュの不思議と小石と宝物

ふしぎ
ふしぎ・・・・

いつかはきっと探してた

けれどいつからか探すのをやめてしまった

なくしてしまった『たからもの』

それは僕らの『たからもの』・・・・・

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　　不思議と小石と宝物
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毎日
毎日毎日毎日毎日
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日

学校行って、つまらない授業うけて、意味のない時間を過ごす。
全く、時間の浪費・・・・と言うほかない。
とはいえ・・・・。
他にやることもないし。
やりたいこともない。

「あ～、つっまんねぇ・・・・」

開いた窓のさんにもたれかかってぐった～っとしていると友人と話していたアランが会話を止めて俺に話し掛けてきた。
スポーツ万能、成績優秀、社交的で、物腰柔らか。
それがアランだ。
正直な話。
万能超人然たるアランを見ると少々むかつくのだが。
何の因果か平々凡々たる俺の親友なんぞをやってる。

アラン曰く

『お前、もったいないよ、勉強も、スポーツも何もしないで上の下のランクにいられるんなら基本スペック相当高いだろうに。』

とのこと。

そのせいか事あるごとにちょっかいかけてくるのだが、結局のところ無気力の塊の俺に何をしたところで火がつくわけもなく。
こうやって無気力さらしてるというわけだ。

「リーデルまたその口癖かよ。
　いいかげんその口癖直せよ。」
「あぁ？
　あぁ～」
「うわ・・・・やるきねぇなぁ。」

またかよ・・・・・。
そんな感じの口調。
いつもの反応。
いつもの距離感。
最初は俺に対しても周囲のやつと同じさわやかな"お友達語"を使っていたアランも、いつのまにかあきらめたのか、くだけた話し方をするようになっていた。
と言うか、こっちが素ということは、"お友達語"はやはりつくりだったか・・・・とほくそえんでみたりしている自分がいる。

「あのなぁ、ちったぁ何かにやる気出せば、つまらねぇなんていってる暇なくなるぜ？」

そんなことを言われても。
俺の場合考え方が全く逆。
やる気があったらつまらねぇなんて最初から愚痴ってないって。
つまらないからやる気が起きない。
やる気は起こすものじゃなくて起きるもの。
それが俺の考え方なのさぁ～

とはいえ・・・・。
本当にやるきね・・・え～？

アランの言葉に無意識に反応して徒然ごとを吐き出していた思考にノイズが混じる。
アランの言葉以外に無意識に反応するなんてことは滅多にない脳なのだが・・・・・・。
それが反応しているということは、俺は"その事物"に対してかなり興味をそそられているということ・・・・・。

その正体は・・・・・・。

視界に入った黒い物体。
・・・・いや、この言い方は失礼か？
その"事物"とは黒い服をまとった女の子。
客観的に見てかなりかわいい部類に入る。
だが・・・・・制服指定のないこの学校においても浮いている。
それはかわいいからとかそんな理由ではなく。
その服装。

フリルをふんだんにちりばめたふんわりとしたドレスのような服
いわゆるゴシックロリータという部類に属する服装だろう。
背中まである軽くウェーブのかかったブロンドと、結構端整な顔立ち。
背は結構低め、遠目から見てもわき腹辺りのラインは結構細く見えるからやせ型なのだろう。
もともと、女性をふくよかに見せる作用のある服装だから彼女の体型、容貌を考えればかなり似合っているといって良いだろう。
うん、似合ってる・・・・似合っては・・・・いるんだけど・・・・。
普通、学校にそんな服装で来るのは金つんで頼まれたとしてもちょっと遠慮したい感じだろう。
そして、猫背気味に地面を見て歩いているその姿。
一見すると、親の趣味でそうゆう服をあてがわれ、あまりの浮きように恥ずかしくてうつむいている。
そんな感じに見えないこともないが・・・・・
目の動き、表情、そういったものに違和感がある。
なんか、恥ずかしそうっていう感じじゃない。
むしろ表情はどこかウキウキとしたような感じが見て取れるし。
目の動きも地面の一点に固定されているわけではなくて、まるで何かを探すように色々な場所を転々としている。
普通恥ずかしがっているのなら、視線は縦の運動はしても横の運動が入ってくることはありえない。
恥ずかしくてうつむくということは、つまるところ、周囲の反応を視界に入れたくないということなのだから。
まぁ、お金が落ちていたとかそうゆう理由ならわからなくもないけど・・・・・。
そう点々とお金が落ちているわけもなく。
その視線移動の理由は掴みかねる。

ふしぎ、ふ・し・ぎ♪

良いじゃないですか。
興味引かれる。
これは、反応しない方が変でしょい！

・・・・・ごめん、うそ。
わかってますよ～、こうゆう"気になるもの"に反応しちゃう自分の方が変だって事くらい。

「オイ聞いてるか？」
「うぉ！！」

唐突にアランの声が耳に届く。

「な・・・・なに？いきなり？」
「・・・・・つまり、今まで呼びかけてたのは聞こえてなかったって事だな？」

呼びかけていたらしい。
こめかみの辺りに若干青筋が見えている辺り何度か呼びかけられたのだろうか？

「はぁ、まぁいい、どうしたんだ、急にやる気モードに入って？」

アラン曰く
『やる気になってるお前は目が違う』
らしいが俺はよくわからん。
まぁ、その"目が違っている"状態の俺をアランは"やる気モード"と呼んでいるらしい。
もっとも、内容を話すと大抵の場合"理解できん・・・"とさじを投げられる。
それこそ、そんなことに心血を注いでいる時間があればもっと有意義なことに使えば良いのにと、そうゆうことらしい。
まぁ、さじを投げられたところで、俺に影響があることはないのだが。

「あの娘」

と、端的に答えを返し指差す。
ちらりとそちらを見てアランは"あぁ"とかため息混じりにつぶやいた。

「また不思議系かよ・・・・・。
　・・・・・いや、対象が人間に移っただけましなのか？」

と自問自答。
何も説明がないのなら俺はとっととこの場を離れたいのだが・・・・

「あの子は"月組み"のリーア。
　リーア=サーストン。
　見ての通りの風貌だから結構有名なんだけどな。」
「へぇ・・・・今まで気付かなかった。」
「なっ！」

いくらなんでもあの風貌なら目に付くだろう！
そんなことを暗に言っている目。
だがしかし、服装や顔なんぞどうでもいいのだ。
俺の目を引いたのはあの不可解な"行動"だ。
他は結構どうでもいい。

アランから得られる情報はこんなもんだ。
"常識の範疇"良くも悪くもその程度。
最も、何をさせても"完璧"にこなせる。
アラン自体がある種一つの"不思議"なのだから別にいいんだけど。
そうでなかったら今ごろ友達の縁なんてとっくに切れていることだろう。
何しろ、俺の視界に入らないのだから。

「んじゃ、いってくる。」

それだけアランに言葉を残すと窓に足をかける。

「って！おい！ここ三階！」
「平気」

言葉を返して窓からダイブ！
あの娘を見つけたときに周囲の物の位置関係は把握した。
幸いなことにこの窓の下には結構大きく育った木がある。
葉の間から見える枝を追って枝の位置関係も把握している。
木の枝は繊維の集合で出来ているものだから掴む場所さえ間違えなければ。

"バサ！"

大きくしなって相当量の落下エネルギーを殺してくれる。
例え多少折れたところで桜みたいに病気に弱い木でなければ大丈夫。
でも、折る気は毛頭ないけど。
木の枝の戻ろうとする反発力の強さを測って手ごろなところで手を離す。
殺しきれなかった分はもう一本枝を挟めば余裕で打ち消せる。

"バササ！"
"スタ！"

見事、着地成功・・・・・・。
と、言いたいところだけど、手、切った。
結構いてぇ・・・・・。
次からは軍手を忘れないようにしよう・・・・。

それはともかく、木の下から出て三階の窓に向かって手を振る。
窓の横ではアランがこめかみを抑えて"とっとといけ"とでも言うように手をひらひらさせていた。

それを確認してから視線を校門に向けて走り出す。
彼女が歩いていたのは校門から大体30mくらい離れたところ。
歩いている速度は極めて遅し。
アランと話している間で１m進んでるかどうか。
本当に何か探してるみたいな、そんな速度。
走れば簡単に追いつけるはず。
・・・・・・
というか・・・・・追いついた。

「ねぇ、君・・・」

とりあえず、声をかけてみる。
わからないことは本人に聞いてみる。
これ、一番手っ取り早い方法ね。

ところが、何も聞こえてないかのように俺の言葉は無視して彼女は歩みを進めている。
・・・・・本当に聞こえてない？
あいも変わらず道を端から端まで眺めながら歩いている様子。

「えっと・・・・サーストンさん？」

ピクリと反応して足を止める。
どうやら、声は聞こえていたらしい。
あえて無視したか、あるいは自分を呼んでいるとは思わなかったか・・・・

「そう、今、足止めた君ですよ～。」

俺がそう言うと、顔だけをこちらに振り向かせる。

「えっと・・・・・あなた、誰ですか？」

どうやら、後者が正解だったようだ。
特に俺のことを怪しむそぶりもなく。
純粋に誰かわからない、そんなはてなマークを頭いっぱいに浮かべてる感じ。

「初めまして変わり者さん。
　俺はリーデル=マイン。
　同じ変わり者やってます。」
「？？
　はぁ。」

俺の回答に対してなにやら気の抜けた返事を返しながらこちらに体を向ける。

「ところで、なにやってたの？」

向こうは気付いているのかいないのか、自己紹介するつもりはないらしい。
というか、こっちとしても自己紹介は必要ないしな。
この娘のテンポだと多分話が進まないので勝手に話を進める。

「え？家に帰るところですけど？」

・・・・・いや、自分で話を進めておいてなんだけど。
この娘大丈夫？
ある程度の反発を覚悟してたんだけど、全然ないし。
なぜか無意味に笑顔での回答。
怪しい人とかに声かけられてついて行ったりしないよね？
さすがにそこまでは無用心じゃないよね？ね？

「あの・・・大丈夫ですか？」

思わずこめかみを抑える俺になにやら心配そうに声をかけてくる。

「いや、大丈夫、君こそ気をつけてね。」
「はぁ・・・・？」

頭にはてなマークいっぱい浮かべながらも一応返事はくれる。
やっぱりテンポ遅し。
こちらで話を進めよう・・・・・。

「家に帰る途中なのはわかるんだけどさ。
　なんというか・・・。
　何か探してるみたいだから。」
「え？？
　・・・・・・
　・・・・・・・・・・
　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・！
　あぁ！、そうゆうことですかぁ。」

俺の言葉をかなりの時間をかけて咀嚼して、ようやく腑に落ちたというように手を合わせて満面の笑みを浮かべる。

「ちょっと、宝物を探してたんですよ。」

そんなことを口にする。

「宝物？
　もしかして、落としたの？」

本当に落し物か？
だとしたら非常につまらない結果だ。
というより、俺の読みが外れたという方が驚きだが。
普通、宝物、若しくはそうでなかったとしてもわざわざ"探そう"と思うようなものを落としたなら、"ワクワクしたような表情"なんて浮かべるだろうか？
多少なりとも悩んだような表情を浮かべるのが普通だろう？

「いえ、何も落としてませんけど？」

心底なんでそんなことを聞くのかわからない、そんな疑問の表情。
だがしかし、わからないのはこちらの方である。

落としてない宝物を探している？

なんじゃそりゃと。
落としてないなら探しても見つからないんじゃなかろうか？
いや、そもそも探す必要がないだろう。

「何も落としてないんなら、探しても見つからないんじゃない？」

俺の当然の疑問にリーアは"なんでそんなことを言われるのかわからない"という表情を浮かべる。
何か、お互いの認識に齟齬があるのだろうか？

おそらく、今この状態をはたから見たらさぞかし奇妙なものに映っていることだろう。

学校帰り風の男子学生と女子学生が向かい合ったまま頭をひねっているのだ、一体どんな状況やねんと。
まぁ、世の中そうゆう刺激も必要だ。
見かけた人はせいぜい悩んでくれるとこの不毛な時間も救われるというものだ。

「あ、なるほど。」

お互い頭をひねること数分(というか数分間、どちらも不毛だという突込みを入れないのも凄いが)、リーアが何かに気付いたらしく声を出した。

「少し、一緒に歩きませんか？
　えっと・・・」

そう言って言葉を捜しながら俺を見る。

「・・・・あの、なんとお呼びすれば？」

・・・・・・あぁ、なるほど、俺のことを呼ぼうとして呼び方に困ってたのか。

「お好きにどうぞ。
　出来ればファミリーネーム以外が良い。」
「わかりました、では、リーデルさんで。」
「うぃ、そっちはなんて呼べば良い？」
「好きに呼んでもらってかまいませんよ。」
「んじゃ、リーアで。」

基本的に、周囲にいる人間は全てファーストネーム呼び捨てで通している。
特に理由がないならこれが一番覚えやすい。

「わかりました。
　それじゃ、行きましょうか。」

そう言ってリーアは道上に視線を走らせながら歩き出す。
俺はその後に続いて歩いていく。
歩いている間はただひたすら無言。
進む速度はやはり遅い。

「ねぇ、いつもこんな風に歩いてるの？」
「そうですねぇ。
　基本的には。」

そう話している間も視線は道路に釘付けだ。
今日が特別、というわけではないようだ。
ますます、"宝物を探している"という言葉の意味がわからなくなる。

「あ、リーデルさんここ、曲がります。」
「え？曲がる？」

俺の問いには答えずに、道を曲がる。
曲がった道は舗装の進んでいない砂利道である。
この国は結構交通網は発達していて、基本的には砂利道を通らずに全ての建物に到達することが出来るはずだ。
地元人間が一部の砂利道を近道として利用する他は特に砂利道を使う必要はない。
いや、使う必要がないから砂利道として残されているといった方が正しいかもしれない。
地元民が近道としてよく使う道も次第に舗装されつつあるのだから。

「ねぇ、この道、近道だったりするの？」
「いいえ、どちらかといえば遠回りになりますねぇ。」

わざわざ遠回りしてまで砂利道を歩く？
何なんだそりゃ。
と、思っていると、唐突にリーアが足を止める。
そのままその場にしゃがみこんでなにやらごそごそと蠢き始めた。

「な・・・なにして・・・・」
「あった！、ありましたよ！！」

にぱぁ
っと、満面の笑み、というか瞳をきらきらと輝かせながらリーアはなにやら俺に差し出してくる。
そのてに握られているのは何の変哲もなさそうな小石だった。

「なにこれ？」
「宝物ですよ！！」

にぱぁ

思わず彼女の背後に後光を幻視してしまう。
でも、その手に握られているのはただのいしっころ。

「どの辺が宝物なのさ？」

思わずそんなことを聞いてしまう。
正直な話、俺には彼女の持っている石の意味わからない。

「えっとですね・・・・」

そう言って俺の目の前に立ち、丁度太陽の辺りに石をかざす。

「ちょっと石を見てみてもらえますか？」

彼女が何をしたいのかはよくわからないのだが、とりあえず見てみる。
夕方とはいえ、夕暮れにはまだちょっと早く、直射日光は目にいたい。
それゆえ少し目を細めて石を見る。

するとどうだろう。
石の所々に、色とりどりの"光"がさしていた。

「おぉ～～～？」
「みえましたか？」
「ん～なんか光が・・・・」
「そう！それです！」

そう言ってかざしていた石を手元に下ろす。

「こういった砂利道の小石とかの中に時々混ざってるんですよ。
　色のついたガラスだったり、水晶だったり、はたまた他の宝石類だったりが
　くっついている石が。
　他にも、顔に見える石だったり。
　瑪瑙とかの原石だったり。
　そうゆうのを集めてるんです、私。」

なるほど・・・・それで"宝物を探している"わけか。
"宝物"と決めたものを探してたわけじゃなくて。
"宝物"と決めるために探していたと。
それが俺と、彼女の間にあった齟齬だったわけだ。
しかし、こうしてみてみると・・・・・

「確かに、宝物にする価値はあるかもなぁ。」
「でしょ！」

彼女は目をきらきらさせながら石について語り始める。
実に楽しそうに。
丁度、俺が興味を引かれたものを見つけたときはこんな表情をしているのかもしれない。
何はともあれ、不思議だったリーアの行動のなぞは解消されたわけだが。
どうやら、俺も石の世界に引き込まれそうである。
なかなかに不思議が多そうだ。

「あ、そうだ。」

彼女の石談義が一段楽した頃、もう一つ気になったことを思い出した。

「なんですか？
　石のことで質問とか？」

と、またしても目を輝かせるリーアだが、残念なことに、これは石の質問ではない。

「リーア、その格好、学校でかなり浮いてると思うんだけど、恥ずかしくないの？」

まぁ、外見が浮いてようがういてまいが、どうでもいいのだが、一般的に恥ずかしがる状況でそれをしない精神構造には少し興味がある。

「え？なんでですか？
　かわいいんだから良いじゃないですか。
　こうゆうかわいい服大好きなんです！
　それとも似合いませんか？」

と、あっさりと言ってのける。
自分が好きなら周囲の視線はどうでも良いと。
この娘も結構俺に近いところあるなぁ。

「いや、俺も一般的な視点を持ってるとは言い難いからなんとも言えないけど。
　多分、似合ってるよ。」

一般とはちょっと・・・・
いや、かなりか？
ずれた感覚を持った女の子。

ふしぎ、ふ・し・ぎ！

だから、ポケットに入れておこう。

俺の唯一の収集品。
不思議という宝物に。