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眠れぬ夜の物語コミュの剣と華との夢幻郷。

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いつからか、目を閉じると
不思議な光景が浮かぶのです。





青々と茂る、枝下の木々に囲まれた
暗くて澄んだ池のほとり。
夜ではないようなのですが、
どこか夕暮れのように薄暗くて
けれど不思議と辺りはよく見えるのです。

池のあちこちから、
真っ赤な鳥居が生え出でて、
中ほどから折れ砕けていたり、
朽ちているものもあります。

そうした鳥居の足下を
優雅に長い尾を翻しながら
白や、朱や、黄金や、色とりどりの魚達が
悠々と泳いでおりました。



その池の真ん中を
真っ赤な橋が通っているのです。
屋根のない、小さな細い橋です。

虹のように鮮やかな弧を描いて
等間隔に大きな石畳に着地しては
また次の石畳を目指して伸びている
一人分の幅しかないような、狭い橋です。



そこをあの日、
女性が通ったのです。

御付きの者を前後に従えた
とても静かで神妙な
何とも不思議な光景でした。



遠目で顔は見えませんでしたが
白い肌に紅の映える、美しい女性でした。



何故女性と分かったかって
それが花嫁衣装だったのですよ。



真っ白な着物に身を包み
池の上の真っ赤な橋を
慎ましやかに歩んでゆくのです。



けれども、彼女の顔は
鼻先から下の横顔しか見えぬ彼女の顔は
何故だか、哀しそうに見えたのです…。



まるで死に装束を着せられて
処刑台へと向かう囚人のよう…。

まるで
運命に立ち向かうかのような様子でした。





つと、
彼女の歩みが緩くなりました。

と同時に、

彼女がこちらを微かに振り返ったのです。



驚いた私の顔を見、
彼女は柔らかに微笑みました。

………ただ、それだけでした。



しかし
私には確かに聞こえた気がするのです。
彼女の、声が。








―貴方様が心より幸せにおなりなら

よろしゅうございました…。

それだけで、貴方様の花は、

今日も明日も、笑むことが出来ましょう。








薄暗い池のほとり。

凛と歩み行く彼女の姿だけが

白く浮かび上がるようでした…。










「……て…起きて。」

「ん…。」

愛しい声に、薄く目を開くと
目の前の怒ったようだった顔に、
ぱっと笑顔が咲きました。

「早く仕度しないと。時間がないわ。」

…そう。
今日は結婚式。
私と彼女の、幸せな生活への第一歩。

そんな日だからこそ
あの夢が焼き付いて離れないのです。



式には代々伝わる家宝を用いるのが
この地方の習わしでした。

私の家には、古くから伝わる宝剣。

そして、彼女の家には、
代々娘が嫁ぐ際に纏ったという
真っ白な、花嫁衣装。

幸せな…
本当に幸せな結婚式でした。



その結婚式の日以来、
あの夢は見なくなりました…。








―こんな老いぼれの言葉では
きっと誰も信じてはくれないでしょうが…
あの白い着物の女性は、
確かに居たのですよ。

あれは一体
何を伝えに来たのでしょう………。



**************************************
あとがき

朝起きたら不思議と浮かんできたお話。
何を伝えに来たのでしょうねぇ…。
皆さんは目を閉じたら何が浮かびますか?
↓一応続編にもなってますので良ければ。

『剣と花との恋語り』
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=35933162&comm_id=492442
『剣と英との戦唄』
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=37683604&comm_id=492442

読んでくださりありがとうございました。
ではまた。

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