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新宇宙戦艦ヤマト(GREAT YAMATO)コミュの宇宙戦艦ヤマト31XX(小説)

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無限に広がる大宇宙…

時に西暦3099年…二度の大きな統一大戦を経て、地球はようやく一つの国家としてまとまり、平和な世の中が訪れた。

しかし戦争にあけくれた人類は宇宙への憧れを失い…、大宇宙を駆け巡った情熱も技術も今は遠い昔となっていた。
今はもう失われた、遥か彼方を旅する波動エンジンとワープの技術
そんな時代に生まれた一隻の宇宙戦艦…、そして古代進29世とその仲間達。
無謀ともいわれながら遠い星の海をめざす彼らに何があるのか。


この作品は小学館刊行『新宇宙戦艦ヤマトーGREAT YAMATO−』を元にした同人小説です。
読み方は「うちゅうせんかんやまとさーてぃわんだぶるえっくす」です。
執筆者以外の書き込みはご遠慮下さい

ご感想はこちらへ

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コメント(125)

一見平和な日が続くかと思われた時、事件は起きた。
常日頃、古代達と対立していた料理人1人が辞めることになった。
艦内の人間関係において沖田艦長を信頼できないということだった。

その料理人は人間関係は服従のみであり、それ以外は絶対認めるべきではないとの発言を繰り返した上、それをしない組織を俺は許さないという主張を続けていた。
これに対し沖田艦長は上下関係が無ければ成立出来ない人間関係そのものは失敗で、それは指導者が無能だからと教えた。

それを言われた料理人は、沖田艦長に対し「あんたが無能だ。」と言って辞めてしまったのである。

もともとその料理人は普段から他の乗組員に対し、差別的発言を日常的に繰り返していた人物だった。
特に藪に対しては家系を理由に嫌がらせを続けていたが、差別を受け入れる事が人間関係と考える彼は何故それが悪いのか理解ができなかった。

古代はその人物に対し常に注意をしてきたが、古代を格下と考える彼は逆上するのみだった。
その度に新谷料理長と平田が出て来て納めるといった状態だった。
当然の事ながら狭い発想しか出来無い彼は、注意されている内容が理解できなかった。

新谷と平田が自分より上の立場と考える彼は、その時はいう事を訊くが少し経てばまた同じ事を繰り返してしまう。
彼には沖田艦長だけでなく、上下無く面倒見の良い古代もかなりの目の敵だった。

そして事態はこれでは終わらなかった。

彼に続いて何人もの乗組員が、次々と辞めることになってしまったのだ。
辞めていった乗組員の多くは、その料理人と仲の良い人物だったがそうでもない者もいた。

しかし共通していたのは差別を受け入れる事が人として重要であり、差別そのものが人間を成長させるという考え方だった。
「高等生物には支配するものと支配されるものしか存在しない。沖田艦長は長としてふさわしくない」という発言をする者もいた。

沖田艦長は全員に退艦を命じた。

そして残った乗組員にこう話した「差別が人を成長させることもあるかもしれない、しかしそれ以上に成長できなくなる可能性は高い。また差別以上に人を成長させる方法は数多くある。」

退艦していった人数は14人に上った、その多くは炊事部の人間であったため、古代は生活班以外の人間も時には調理を手伝えるように平田に提案した。
平田は古代の提案に喜び、是非ともスケジュールに組み入れたいと言った。

藪は自分をかばってくれた沖田艦長や古代の前では明るいそぶりを見せたが、退艦の人数が増えるにつれ落ち込むようになった。

そんなある日、艦載機のチェックを行う藪の前に森魅雪が現れた。

森「こんにちは、藪さん。」

森が自分に対し悪意の無い存在であったのは事実だった、しかしかつてのヤマトの話を知る者であれば気にならないはずがない。

森「あいかわらず熱心ね。」
藪「ありがとう、森さん。俺に出来るのはこれくらいだからね。」
藪は穏やかに答えた。
森「仕事熱心なのはいいけど、もっとみんなと一緒に過ごすことも大切なことよ。」
藪「そうなのかな…どうしても俺を嫌う人はいるよ、それは仕方ない、俺は覚悟の上でここに来た。」
森「最初から人の事を差別的に見る人は、自分の都合の事しか考えていない、気にすることはないわ。」
藪「そうなのかな、どうして森さんはそんなに優しいんだい。」

森は一息付くと言った。
「あのね、森家に古くから伝わる話があるの。」
それはヤマトがかつてイスカンダルに向かった時の話だった。

森「今は歴史の影に隠れてほとんど知られていない話になるのだけど…こんな話があるの。
かつてイスカンダルに残留を希望し反乱をおこした乗組員たちがダイヤモンド大陸に立てこもり、私の先祖を拉致した時、大陸の崩壊が始まったの。
その時反乱側にいた藪さんの先祖は、私の先祖だけでも助けなければと、溶岩に身を焼きながらヤマトに送り届けた後、死んでいったんですって。
反乱をおこした人達はあやまちをおかしたのかもしれない、でも皆が地球の事を考え悩んでいた時代だった。
だから森家の者は藪家の人に出会う事があっても、その事で責める事はしてはならないと代々伝えられてきたのよ。」

藪「ありがとう、森さん。」

藪は森の気遣いが何よりも嬉しかった。
それからの日々、藪に笑顔は増え、他の乗組員達と仲良くすごす日も増えていった。
3月になり艦内工場では艦載機に個別の塗装が施され、最終仕上げが終了した。

コスモタイガー117
一号機・加藤三四郎 機体色 黒
         ライン色 黄 
二号機・根本明雄 機体色 グレー
         ライン色 白
三号機・杉山和彦 機体色 濃緑
         ライン色ペパーミントグリーン
底面部は全機明灰白色

コスモゼロ191型
基本色は白
一号機・山本零 機首色 ライムグリーン 
       ライン色 黄
二号機・古代遙 機首色 赤
       ライン色 銀

制服の配布も行われた。
それは多くの地球人が知っていた、あの錨を思わせる矢印の服であった。
唯一の違いは左胸に、錨にGを重ねたグレートヤマトの紋章が入っている事だった。

遙「そういえば相原さんと森さんの着てる白地に黒帯の服だけど、昔は艦長用だったんだよね。
相原「そういえば通信班って黄色に黒帯だったかも?」
森「何でも昔は生活班と通信班の制服違いがはっきりしていなかったらしいのよ、黄色の濃さが違うとかいう説もあるんだけど後から通信班が白地に黒帯に変えられたらしいのよ。」

杉山「艦長が白地に黒帯ってのは最初の頃だけだったらしいね。」
一文字「そうなんだ。」
根本「あと昔の制服と違うのは、みんな色襟だろ。」
一文字「そういえば班長以外は白襟って聞いてたけど。」
京塚「私は班長以外は色襟に斜めの白線って聞いてたわ。」
平田が答えた。
「昔は班長とそれ以外はそういった違いがあったんだが、航海を繰り返す内、区別してもあまり意味が無いのではと言われるようになったんだ。
だから制服は一緒だ。
また、階級証の類いも存在しない。
階級証は元々昔のヤマトでも付けていなかったらしい、一部には付けた写真が存在するが、付けてないとする説が有力だ。
これは乗組員達は家族でありたいといった初代の沖田艦長の意向だったらしい。」
佐渡「それは沖田艦長らしい考えじゃのう。」

通常の制服以外に宇宙服と各部署で必要とされる、用途別の服(医療用の白衣・炊事用の白衣・作業用つなぎ等々)も支給された。

制服の支給が終わると平田が続けた。
「今日はみんなにもう一つ報告がある、本日より新たに一人、ヤマトに乗艦することになった。」
見ると一人、金髪に白衣の女性がこちらの方に歩いてきた。
「平田静子です、よろしく。生活班にて栄養士として勤務させて頂く事になりました。」

平田は「私の姪だ、よろしくな。」と話した。

根本が「栄養士ってどんな仕事ですか?」と質問すると、新谷料理長が答えた。
「健康的な生活を送るために、体質や条件にあわせて必要とされる栄養を計算し料理に反映させる、栄養士とはそういった存在じゃ。」
佐渡「まあ長期航海には必要には必要な存在じゃ、正式な所属は医務課じゃが厨房にも入ってもらう事になる。」
平田静子「皆さんと賑やかにすごせればと思います、よろしく。」

平田静子のにこやかな挨拶に皆がざわついていた。

「それと人事が発表されたので見ておくようにな。」
平田は紙が貼られたパネルを示すとそう言った。

艦長:沖田十三
副長:真田士郎(工作班副班長兼任)

戦闘班班長:加藤三四郎(航空隊隊長兼任)
戦闘班副班長:坂巻浪夫
 古代進
航空隊:山本零
同:根本明雄
同:杉山和彦
同:古代遙
 他

生活班班長:平田一
生活班副班長:新谷隼(炊事部長兼任)
医務課責任者:佐渡酒造
医務課介護福祉士:京塚美也子
栄養士:平田静子
 アンドロコインダー
 他
 
工作班班長:藪助治
 北島充
 奈良山操
 一文字琢磨
 アナライザー
 他
 
機関班班長:山崎奨
機関班副班長:徳川彦左衛門
 赤木大六
 他
 
通信班班長:相原晶子
通信班レーダー係:森魅雪
 他

航海班班長:太田健二郎
航海班副班長:雷電五郎
 他

南部重工出向:南部康夫
 徳川太助
 他
以上47名

細かい配置については後日個別に連絡するとの話だった。
皆が自分の名前を探しあいお互いの名前を見つけ、教えあっているうちに、名前の無い人物がいることに気がついた。
人事が発表された次の日、羽黒がヤマトの会議室に現れた。

古代は声を掛けた、「羽黒さん。」
「あら、古代さん。」

「人事の発表ありました、羽黒さんの名前ありませんでしたね。」
一緒にいた遙・一文字も気になっていたようで近くに寄ってきた。

羽黒は一呼吸おいて言った。
「ええ、私は乗りません。今はその時ではないのです。」

古代「その時ではない…。」
羽黒「ええ、いつか私もヤマトに乗る時が来るかもしれません。
しかし今はまだその時ではないのです。
私には帰るべき船が別にあります。
プロトタイプグレートヤマトが旅立つほぼ同じ時、私も旅立つ事になります。
宇宙のどこかで皆さんの航海の無事をお祈りしています。」

古代はそれを聞いて答えた。
「羽黒さんも、どうかご無事で。」
「ありがとう…古代さん。」

そう言い残すと羽黒はその場から立ち去った。

4月7日の出航予定日が近づくと共に、ヤマトの中はいよいよ慌ただしくなってきた。

周辺の配線や囲いはほとんど取り外され、地面の掘り込まれた部分には砂が入り込み、ヤマトは船体のほとんどが地中に埋もれたような形になっていた。
地上に出ている部分にも砂が結構付いていたが、真田曰わく長持ちするコーティングがされているため心配ないとの話だった。

藪はすっかり皆とも仲良くなり明るい性格になってきた。
3月も終わりに近づき出発も近い事から、平田の提案により懇親会をしようということになった。
大会議室に机をならべ、火星では生育が難しい桜の写真のパネルを飾った。
写真は山崎の趣味だった。

皆すっかり仲良くなり気も合うようになったので、特定の者だけが飲み特定の者だけがかたずけるといった事は無く、みんなで協力し助け合いながら会食した。

酒も入っていたがマナーも良く、楽しく飲んでいた。
そこへアナライザーもやってきた。
「皆サン、楽シソウデスネ。私モイタダケマセンカ?」
杉山が聞いた。
「あれ、お前酒飲めるの?」
アナライザー「大丈夫デス、私ハ味覚回路ガツイテマス。」
根本「ああ、あの食糧が人体に与える影響を計測するとかいうやつだな。」

佐渡が一升瓶をもってきた。
「その味覚回路というのはどこにあるんじゃ。」
アナライザーは一番下のメーターを開き「ココデス。」と言った。

佐渡が「そこにあったか、ほら飲め。」と言って、コップに酒をついでやると「アリガトウゴザイマス。」と言ってアナライザーは勢いよく飲んだ。

佐渡は「おお、いける口じゃなあ。どうじゃもう一杯。」とすぐ二杯目をついだ。

ほとんどの乗組員はそれを面白がって見ていたが、雷電がポツリと一言言った。
「なんか悪い予感がするなあ…。」

一応一次会が終わり、飲み物にあまりがでたので希望者のみで二次会と言う事になった。
どのくらい寝ていたのか、古代は頭の重い状態で目を覚ました。
見ると周りに一文字と根本・杉山・佐渡がいた。

よく見ると営倉だった。「なんでここいるんだろう?」

次に佐渡が起きた。「何があったんかのう?」

アナライザーがやってきた。「皆サン、オ目覚メデスカ。」

根本・杉山・一文字も起きた。

アナライザー「皆サン、何デココニイルカワカラナイデショウ。」

全員が「わからん。」と声を揃えた。
アナライザー「マア、飲ミスギモアリマスガ、未成年飲酒モヨクナイトイウコトデ。」

根本「未成年?」
全員が一緒に飲んでいた者で、いないものがいる事に気がついていた。」

一文字「遙の奴がいないぞ。」
杉山「あいつ未成年だったか?」

古代は頭を振り絞って考えた。
「そういや19って言ってたかな…。」
アナライザー「ソウイウコトデス、彼ハ別ニ説教ヲケ受テイマスガ。
ココハ年上ノミナサンモ罰ヲウケテイタダクトイウコトデ。
皆サンハ二日間ノ営倉入リデス、デハ。」
そういうとアナライザーは去っていった。

しかしそれで問題は終わらなかった。

他の乗組員からアナライザーにも問題があると言われたからだ。
報告によるとそれは二次会に参加していなかった付近の乗組員も含めて捕まえ「テメエ俺ノ酒ガノメネエノカ。」と絡む、かなりタチの悪い代物だった。

アナライザーがその後、一週間の独房入りとなったのは言うまでもない…。





4月に入り古代は艦長に呼ばれ第一戦闘艦橋に向かった、正式な辞令を交付するとの事だった。
辞令には「戦闘班として第一戦闘艦橋勤務を命ずる。」と書かれていた。」

読み上げた古代は艦長に聞いた。
「自分が艦橋勤務ですか?」
「そうだ、お前の席はそこだ。」そう言って沖田は前部中央の席を指した。
古代は半信半疑で聞いた。
「自分がそこに…しかしその席は加藤さんか坂巻さんの座るべき場所ではないですか。」

沖田「加藤君は基本的に航空隊として指揮をとらねばならない、坂巻君は管制として席を離れなければならぬ時があるので、副班長席に座ってもらう事になった。
安定して席についてもらう人材が必要なのだ。
しかしこれだけは忘れるな、お前が鍛練を怠り、実力でお前を超える人材がいたと判断した場合。
いつでもその席はとばしてやる、それを忘れるな!」

古代は「はい!」と答え敬礼した。

沖田の隣りにいた真田が言った、
「今回は戦闘目的ではないので、実戦になる可能性は少ない。
だが外宇宙に出れば安全に絶対は無い、それを忘れるな。」

古代はもう一度「はい!」と答え敬礼した。


出向の前々日に、最期の休暇が与えられる事になった。
古代は何人かに声を掛け蜃気楼にて羽黒の送別会を開きたいと提案した。
一文字や京塚達も賛成で、高雄に相談したところその日は大丈夫との話だった。
開催当日、羽黒は大喜びで皆に一人一人に挨拶し楽しい1日となった。

こうして出航前の最期の休みは終わり、出航前日となった。
各部所は入念にチェックが終わり、明日の出航時について打ち合わせが行われていた。

藪「真田さん、出航前のアナウンスは誰がやりますかね。」
真田「アナライザーにしようか、観客も多いだろうし。」
アナライザー「私ゆるキャラ扱イデスカ。」
平田「アナライザー、なんか文章考えてみろ。」

アナライザーは一瞬考えると言った。
「毎度オ騒ワガセイタシテオリマス、タダ今ヨリプロトタイプグレートヤマト発進イタシマス。大変危険デスノデ、白線ノウチガワデオ待チ下サイ。」
太田「何のロボットアニメなんだ、うちは…。」

こうしてヤマトは出航の日を迎えることになった。

全員が持ち場についた状態で、主なメンバーが第一戦闘艦橋に集まった。
右側後部の予備席には南部、左側後部の予備席には加藤が着いた。

沖田は一同を前に言った。

「ようやく今日の日を迎える事が出来た。
これまでの道は決して平坦ではなかった、我々の活動を野蛮な挑戦という者は多い、そして我々の事を危険人物と呼ばわりしている者も少なくはない。
だが私はこの旅が太陽系圏内の、そして人類そのものの可能性にかける旅である事に間違いないと信じている。
以上だ、発進準備にかかれ。」

全員が「了解!」と答え作業を開始した。
機関長の山崎はエンジンルームにいる徳川彦左衛門と通話した。
「補助エンジン状況は?」

徳川「大丈夫です、行けます。」

それを聞いた山崎は「機関始動、第一波動エンジン始動開始。」と答えた。

波動エンジンがうなり声を上げた。

しばらく多数のメーターを見つめていた山崎は次にこう命じた。「第二波動エンジン始動開始。」
エンジンはまたさらに音を立てた。

しばし無言の後、山崎は続けた。
「波動エンジン内圧力上昇、エネルギー充填90%。」
「エネルギー充填100%。」

次に太田が続けた。
「フライホイール始動開始。」

山崎「エネルギー充填120%。」

太田「波動エンジン点火前10秒前。」

山崎「点火9秒前、
8・7・6・5・4・3・2・1…
0!」

太田「フライホイール接続、第一波動エンジン点火。
フライホイール回転数良好、第二波動エンジン点火!」

藪「装甲振動波発生!」
その声と共にヤマトの表面に付着した赤い砂が薄皮を剥がすようにはじけ飛んだ。
ヤマトの真新しい船体の上部が姿を現したのだ。

沖田は叫んだ。
「プロトタイプグレートヤマト発進!!」

太田は操縦桿を握り締めた、ヤマトの船体が大きく揺れ始めたのだ。
地面に大きく亀裂が走り、砂煙を上げながら船体は上昇を始めていった。

メインノズルとサブノズルが発光し、飛翔を始めたヤマトは垂直に上昇を続けると安定翼を開いた。

皆が安心そうな顔を浮かべていた。

しかし次の瞬間、森が叫んだ。
「前方に巨大物体、接近!!」
皆に緊張の気持ちが走った。

森は手元のレーダーを分析し、その情報に疑問を持ちつつも作業を続けている。
「11時の方向、かなり大型、このヤマトより大きい船です!」

「ばかな、このヤマトより大きな船だと!」
南部が驚きの声を上げた。

森は分析されたデータを読み上げた。
「船籍でました、船の名前は『まほろば』。」

「まほろばだと…。」沖田も驚きの声を上げた。

次に相原が言った。「艦長、まほろばより映像入電です。」

沖田「繋げ!スクリーンに切り替えろ!」

そこに映し出されたのは羽黒の姿だった。
古代「羽黒さん…。」

羽黒はにこやかな笑顔で言った。
「みなさん、おめでとう。
ようやくこの日が来ましたね。
ここで私の役割が終わりました、これから皆さんが自分達で道を切り開く時が来たのです。
あなた方にはこれまで長い間途絶えていた、遥か彼方への宇宙への旅を再開させるという使命が課せられています。
それは決して楽な使命ではありません、これからあなた方にいろんな試練が訪れるでしょう。
しかしそれは900年前、戦い続けながらイスカンダルに向かった、初代の宇宙戦艦ヤマトの旅に比べれば大した事ではありません。
皆さんの成功を心より祈っております。
またいずれ運命のそのときまで、しばしのお別れです。」


沖田は言った。
「羽黒さん、今までありがとう。
まほろばの艦長にもよろしく…。」
羽黒は続けた。
「ありがとう、よろしく伝えますわ。お互いの旅に幸ありますように。」

メインスクリーンから羽黒の姿が消えると、画像は大空を舞う戦艦まほろばの雄姿へと切り換えられた。

真田がつぶやいた。
「project great yamatoを影で支えていたと言われるまほろば…実在していたのか…。」

まほろばが肉眼で確認できる位置に近づくと、二隻の艦は同時に向きを変え同じ方向へと向かった。
共に大気圏外を目指したのだ。

沖田は艦内放送で全員に伝えた。
「手の開いている者は左舷を見ろ、まほろばへ向けて敬礼!!」

ヤマト艦内の数多くの乗組員がまほろばへ向け一斉に敬礼した。

二隻の艦はそのまま大気圏を抜け星空へと旅立った。

まほろばとヤマトはしばらく隣り合わせに飛び続けていたが、お互い発光信号を交わした後、右と左に別れた。
古代は遠く離れていくまほろばの姿を見ながら
「まほろばは一体どこへ行くのだろう?」
と考えていた。

まほろばの姿が見えなくなり星の海を見つめていた古代は、自分の旅は自分の力で進むしかないという事に気がついていた。

もう旅立ちの時は来たのだ。

西暦3100年4月7日、プロトタイプグレートヤマトは47人と2体と一匹の仲間と共に宇宙へと旅立ったのである。


第一部第二章完
第一部第三章

(宇宙空間に浮かぶ巻き紙)
『たとえその道が、数多くの先人達が歩いてきた道と全く同じ道だとしても。
その道が長く使われる事の無かった道であれば不安が無いはずなど無い。
彼らの選んだ道という道はそうしたものなのだ。』


暗き宇宙の闇の中、進む艦があった。
火星から飛び立ったプロトタイプ・グレートヤマトである。
火星で受けた訓練をもとに彼らは徐々に宇宙の生活に慣れ、任務をこなしていた。

順調に航海を進める彼らの姿を、監視しているものがいた。
それは日本海溝の下、さらにその下10km。
太陽系に住む人類のほとんどが、その存在すら気がつかない機密中の大要塞。

その大きさは1万2千mに及ぶ。10kmの岩盤プレートの天井から吊り下げられた黒き球体の構造物。

「ディアドロップキャッスル」

真の意味での太陽系総司令部本部である。

その中に二人の男女がいた。
男の方は20代〜30代位に見える。
女の方も若いようだ、しかしそれは若く見えるというだけで実際の歳はわからない。

何台ものスーパーコンピューターが、宇宙空間から送られてきた数多くの画像とデータを凄まじいスピードで分析していた。
モニターを見つめていた男は言った。
「ドクター理霊、いかがでしょうか?」

ドクター理霊と呼ばれた女は答えた。
「わかる、私にはわかる…これはヤマトではない、だが…」

理霊はしばしの沈黙の後、口を開いた。

「もちろんこれが本物のヤマトでないことは私もわかっているのだ、しかし私はこの艦が気になって仕方が無い。
そう…、この艦からは本物のヤマトを思い起こさせる気迫と魂を感じる。」

男は静かに聞いていたが、モニターを確認しながら言った。
「本物のヤマトはやはり…既に無いのでしょうか。」

「わからん、この私にも。
だが私には、本当のヤマトがどこかにあるような気がしてならないのだ。何の確証も無いがそんな気がしてならないのだ…。
もしかしたらそれを見つける事ができるのは、この艦に乗っている彼らなのかもしれない…。」

男は分析を続けていた。
「このプロトタイプ・グレートヤマトを見てみると過去の宇宙戦艦ヤマトに似ていますが、細かい所は結構違いますね。
大型化した全長は368m、前甲板の副砲塔は撤去され、かつて後甲板にあった第三主砲塔がそっくり前甲板に移動している。
後甲板には副砲塔一基が取り付けられ、カタパルトとは別に発着両用の収納式の飛行甲板が装備されており、効率的な離着陸が可能。
艦底部の何度も破損することで有名だった第三艦橋は、前部二基、後部一基の副砲塔及び多数の機銃に守られ戦闘艦橋化している。」
男は続けた。
「艦首には波動砲の砲口らしきものはあるが、六角形の封印ボルトが打ち込まれており、その中央には錨にGの文字を重ねたエンブレムが誇り高く掲げられている…。」

理霊は次々にはじき出されるデータを見ていたが、次第にプロトタイプ・グレートヤマトの美しさに見とれていた。

男は理霊に話しかけた。
「いかが致します?」

「何もしなくともよい。」
理霊はそう答えた。

「そのまま行かせてやって構わないんですね。」
「ああ…。」
二人はずっと見ているだけだった。



第一部第三章『大銀河無責任時代』

静寂な宇宙の海をヤマトが進む。
宇宙航海初体験の乗組員の訓練も進み、艦内は平和な航海を維持していた。
古代達はシュミレーションだけではなく、宇宙空間に出た状態の訓練も行うようになった。

一たび慣れれば結構上手くいくものだ。

宇宙服はかなり分厚い大型の物を使用していた。
教官の加藤曰く、現在薄い物もあるが、それは当然航空隊が優先して使用しており、それ以外は艦内で製作中との事だった。
実際分厚い宇宙服は、艦載機でも使えない事はなかったが一瞬の判断を要求されるパイロットを最優先にするのは当然だった。

しかしある日、甲板にて宇宙船の航海が初体験の者が集められた、全員が宇宙服を着ていなかった。

艦橋側から甲板に出る際、扉近くのドアの近くの計器を見せながら加藤は言った。
「よし、外に出るぞ。」
全員がおそるおそるドアの外を見た。

遙が声を出した。「本当だ、空気がある。」

加藤が続けた。「ほら、大丈夫だろう。きちんと空間シールドが効いているからな。
必要時は切るときもあるが、基本的には作業をしやすくする意味もあり甲板には空間シールドが張ってある。
これは銀河鉄道で採用されている空間軌道と基本的には同じものだ。
但し訓練でも教えたが、緊急時の避難用の扉の位置をすぐ確認しろ。」

全員が「はい。」と答えすぐ周りを見渡した。

加藤は次の指示を出した。「そして酸素漏れの予兆を見つけたら、すぐ中に入り内側にある連絡用の電話で連絡する。ここまでわかったな。」

また全員が「はい。」と答えた。

全員で甲板を一周すると、加藤は何か質問は…と聞いた。
古代が手を挙げた。「なんでも昔、宇宙空間にて地球の代表とガミラスの総統が、お互い船と船の甲板の上に立ち、会話していたらしいのですが、それは可能なのですか?」

加藤が答えた。「あれはお互いの船と船でピンポイントでトンネル状にし空間シールドを繋げることができるんだよ。空気圧や大気成分の調整が必要だが、さほど難しい事ではない。」
全員が「へぇ〜。」と感心した声を出した。

加藤「ちなみにお互いの気圧を調整することにより、宇宙空間を浮かんで移動することも可能だ。
銀河鉄道に乗った者がいればわかるかもしれないが、銀河鉄道の車両から大型船に移動するときもこの方法が使われたりすることもある。」

その日は前甲板後甲板全体を一通り周り、要所の装備と使用方法の説明が行われたが、それが終わると通常の訓練が甲板にて行われた。

それから数時間後、真田・大田・坂巻・山崎・南部といった面々が左側の側方展望室に集まって過ごしていた、休憩中のくつろぎながらの会話であった。

南部が口を開いた。
「今こうして航海が始まり、まずは一安心というところですね。」
山崎もにこやかに答えた。
「ああ、こうしてヤマトに乗れてよかったな。」

大田は皆の顔を見渡しながら言った。
「でも、こうして皆さんとお会い出来たのは我々の先祖もびっくりでしょうね。」
坂巻「そうだなあ…、ヤマト乗組員の子孫は皆長い交流があるけれど、こうして同じ船に乗れるとはね。」
真田「残念ながら乗れなかった人達もいますが、その方々からも多数応援の声を頂いていますよ。」

大田がふと気がついたように言った。
「一応、公的な記録に記載されている人達には全員連絡が着いてたんすか?」
真田は答えた。
「ああ、一部の人を除いてはな…。」

少しの沈黙があった、皆気が付いていたのだ。
第一艦橋に勤務し、後の歴史にも名を残した人物でありながら今回その子孫に全く連絡が着かない人物がいることを。
しかしそのことを同じ航海班の大田に気にするなというのも、無理な話である。

真田は皆の不安を打ち消すように言った。
「でも必ず会えるさ、こうしてヤマトが発進した以上はな。」

南部は少し考えながら話した。
「でも、時々私らも本当にヤマト乗組員の子孫かって考える時ってありません。」
坂巻「あれ、一族経営の南部重工がやけに細かいところ気にしますね。」
南部「一族経営だからこそ気を使う事って結構あるんですよ、誰の子孫であろうと能力は正当に評価されなきゃいけませんから。」

真田がそれに答えた。
「そうだな、我々だって実力を正当に評価されてこの役職を引き継いでいるんだ。先祖から代々引き継がれた知識があるとはいえ、それだけで地位が継げるほど甘くはない。それは艦長とて同じだよ。」

真田の言葉に全員が納得していた。

その頃、訓練を終えた古代は煙突後部の艦長室を訪ねていた。
インターホンのボタンを押して「古代です。」と名乗る。
「入れ。」と返答があった。
沖田「よく来たな、座れ。」

「はい。」古代は沖田のすぐ前にある応接用の椅子に座った。

沖田はねぎらうように言った。「どうだ、大分慣れたか。
古代「はい、皆様のおかげで。」

沖田は続けて言った。「君とは久し振りにゆっくり話したかった。お父さんはまだ月かね。」

古代「はい…。」

この時代、政治犯やそれに近い犯罪者は月の刑務所に収監されている事は多かった。古代進29世の父、古代進28世は収監されていたのだ。

沖田「やってしまったことは仕方がない、彼なりに一生懸命だったということはよくわかるよ、今まで大変だったろう。」

古代「でも、こうしてヤマトに乗れて今は幸せです。」

沖田はそれを聞いて嬉しそうに言った。「そうか、君のお爺さんも喜ぶだろう。」
古代「はい!」

古代進29世の祖父、古代進27世。

29世の生まれるずっと前、戦争があった。
沖田と27世は戦友だったのだ。

長く地球を収めてきた統一政府の崩壊による、第二次統一大戦の勃発…

世界中の国々が巻き込まれたこの戦争にて、日本側の空軍パイロットとして沖田と27世は戦った。
そして3056年、戦争終結。

結果、日本は他の数カ国とともに敗戦国となった。

統一政府の崩壊は時間の問題であった、長く自分達が支配者の地位に留まる事ばかりにあけくれ、権力の集中させ、他の者に権力をあけわたさない法律をつくりあげた政治家達は腐敗しきっていた。

当然いつ政府が崩壊しても不思議ではない状況はあったが、それと開戦のタイミングもまた、別物である。

そして戦争は決して一つや二つの原因で起きるものではなく、必ずしも敗戦国に戦争の原因があるとは限らない。
しかし戦争に負けたのは紛れもない事実だった、日本は数年間占領下に置かれる事となった。

一方終戦後、統一政府は復活したが、それまでの反省をいかし、国家の仕組みそのものの見直しを迫られることになった。
戦後の大きな変化として国境が復活したのである。

その大きな理由として、最初地球に統一政府ができた時代。
それまでの国ごとの習慣は悪とされ、地球人全てがあらゆる分野において同一の行動を要求されていた事にある。

そこで国境を復活させ政府を置くことにより、周辺部の地域の政治を活性化させ、お互いの国々を尊重することが重視された。

日本を始めとした国々は敗れたとはいえ、かつて主張したことの一部であり、国際社会がそれを認めることになったのだ。

但し、この時代の国境は現代ほど厳格ではない。
現代でいえばEUの感覚に近く、出入国の手続き等は大幅に簡素化されていた。
地球人がすこしずつ成長しているのは間違いなかった。

こうして日本は新たなるスタートを切ったのたが、
古代進27世は軍を辞め、野菜売りの商売を始めた。
終戦時、当然日本人の多くは貧しく、27世のまだ幼い息子は、周りの大人の働く姿を見て決意した。

「俺が日本を豊かにしてみせる。」と…

その名は古代進28世。
歴代の古代進から受け継いだ顔に、特徴的な下がり眉毛に腰の低そうな笑顔。

時代は流れ、成長した彼はありとあるゆる仕事に挑戦し、がむしゃらに働いた。

常に「いやーっはっはっはっはっ。」と周りに元気を与えるような笑い声が特徴の彼は、気配りも出来、人を差別せず、誰にでも平等に接した。

いつでも調子良く「真面目にやる奴はご苦労さん。」と言いながら、目立たぬ所で頑張る人達を励ます事も忘れなかった。

彼は幾つかの転職の後、神奈川県横須賀市に輸入商の会社を立ち上げる。(もちろん他星との宇宙貿易である)

タイミングを見つける才能に優れており、会社はスイ〜スイッ〜と時代の勢いもあり大きくなっていった。

ついつい酒が入ると次の朝まで飲んでしまうお調子者のところはあったが、社員を褒める事も欠かさない28世は、常に周りから信頼されていた。

そして3077年、古代進29世が誕生。

29世は幼少時、社員を大事にする父親を見て尊敬していた。

一方27世はそんな息子を見て、誇りには思っていたものの心配もしていた。
あまりに急成長を遂げたこの好景気はいつまでも続かない。
世の中の変化がいつ起きても不思議ではない、そして時代の勢いで、ここまでこれた自分の息子はその変化に対応できるだろうかと…。


こうして28世を始めた多くの労働者の功績により、日本は短期間で急速な復興を遂げていったが、私利私欲のため、卑劣な手を使う者はこの時代にもいた…。

28世の周りに、裏社会も含めた数多くの取り巻きが増えていった。
富が増える度に政治家との付き合いも多くなっていた。

それが徐々に28世自身を変えていった。


長い時を経て、戦後も終わったと言われた頃、日本の国も変化を迎えていた。
これまでの急激な高成長にブレーキがかかり、次第に低成長の時代へと変わろうとしていたのだ。

29世が小学生の低学年を迎えた頃だろうか。
これからは今までのとおりにはいかなくなる事を、周りの大人達は次第に口にするようになった。
それは28世にもわかっていたことだが、28世はその事実を決して認めようとはしなかった。

無理な開発による公害問題も発生。

会社の経営者達は自分達の利益を守るため、労働者を劣悪な労働条件で追い詰め、それを原因とする経営者に対する不満が世の中を殺伐にしていった。
戦後の再開発は復興の希望ではあったものの、その中には急ぎすぎた開発もあった。
無理な開発により、各地で開発反対の運動がおきていた。
新設の宇宙港にて、建設反対の過激派がたびたび火炎瓶を投げる姿を29世は毎日のようにテレビで見ていた。

29世は8歳になった頃、仲の良い友達ができた。
先祖代々の友人、島大介である。

同じ横須賀市に住んでいることと、ちょうど同じ歳頃という事もあり、29世は27世に連れられたびたび島の家を訪ねていた。
また、島の父親は28世の営む系列企業の社長で何度か顔を合わせていたこともある。
そうした事もあり29世と島大介はすぐに仲良くなれた。

そんなある日29世は、不思議なものを見る。

27世に連れられ商店街の大通りを歩いていた時の事、全身を全て同じ色の布で覆われた大人数の団体の行進を見たのだ。

全身を武装したようなオリーブグリーンの服にヘルメット、顔には覆面で一切の隙間も無く、全員が見分けのつかない姿だった。
手には文章の書かれたプラカード、何か喋っているようだが、幼い29世にはそれが何を意味するのかわからない。

29世は27世に聞いてみた
「ねえ、おじいちゃん。どうしてあの人達は全身同じ格好しているの?」
27世は答えた。
「うん、あれはな。デモと言って自分達の意見を主張するためにああしているんだよ。」

29世はさらに聞いた。
「どうして、顔を隠しているの?」
27世「それはね、周りの人達に顔をわからないようにしないと困る人もいるんだよ。」
幼い29世にしてみれば不可解な事だらけだった。

その後年が経つにつれ、デモの服装や装備は簡素化される傾向にあったが、この頃は情勢が緊迫していた時代であり各地でデモ抗議が暴動に発展することも珍しくはなく、凶器を持って武装した運動員が珍しくはなかった。

こうして混乱の状況の中、当時の政治家や財界人は自分達の都合の悪い相手を封じこめるため、裏社会との人物(主に三流宇宙海賊や三流宇宙山賊)と結びつきを強めていた。

雇用に関連した不正が増え、数多くの労働争議に加え、思想団体の立てこもり事件や総括による内ゲバの殺人事件が多発した。
大学生達も社会に対する不満から学生運動を起こし、それは日本の各地に蔓延していったのである。


相変わらず情勢が不安定な時代は続いたが、古代進29世が10歳になると、大きな楽しみができた。

「宇宙戦艦ヤマト」のアニメの放送を始まったのだ。

かつて900年前、地球を救ったヤマトの話は何度かアニメ・実写・講談などで伝えられていたが、数百年の間作新作が途絶えていた。

29世は自分の先祖の話を、たびたび祖父の27世から聞かされていたこともあり大喜びだった。
27世も29世と共に毎週楽しみに観ていたが、28世は一切見ようとはしなかった。

この頃の28世には、かつて地球を救った先祖の存在が精神的な重荷になっていたのだろう。
自分の立場ばかりを気にした見方しかできなくなっていた28世には、全く受け止め方が違っていたのだ。

時代は進み、29世が中学生になった頃、28世にはかつての前向きな姿はもう無かった。

少しでも立場が上の者に対しては、陽気にゴマをするものの、それ以外の者に対しては陰気な顔を見せるようになった。
酒の席でも威張り散らすようになり、社員からも嫌われるようになった。
29世は成長するに連れ、親への反発を強めるようになる。

このころになると28世は政治家絡みの仕事を求め、その関連の仕事が増えてきた。

特に宇宙運輸大臣を勤めていた、ある大物政治家の家に通う事が多くなった。

その名を、大金池下原 康平善栄丸(おおかないけしたばら やすひらぜんえまる)という。

たびたび他星の商社マンが古代の家を尋ねていた。
その中でも28世と親しい人物に、α星人のミスターKがいた。
外見は地球人そっくりでやや太り気味に見える。

α星はこの時代、地球にとって数少ない外宇宙の貿易相手だった。
29世とも何度か顔を合わせた事もあり、28世とは気も合うようだった。
α世との取引が増えると同時に28世の会社の業績は回復して、仕事も増えたように見えた。

しかしそれは安心できる状況ではなかった。
世の中は相変わらず荒んでおり、企業倒産や銀行強盗等も相次いだ。

会社の業績が向上しても、28世は相変わらず周りの人物に横柄な態度をとり、社員を人と思わぬ態度を続けていた。

そんな28世は29世に対し、自分の後継になるよう命令していたが29世の反発は当然の事だった。
親の堕落ぶりを見て、行儀よく真面目になれるはずもなかったのだ。

小さい頃、宇宙戦艦ヤマトのアニメを見て、心に宇宙への夢をもちながら、親の姿に悩む29世も次第に精神的に荒れていった。

悩み尽きない15の頃の夜、29世は喧嘩に明け暮れるようになる。

16になりバイクの大型免許を取ると、親友の島と朝まで走り回った。
この頃髪を気合の入ったリーゼントにした島は、相変わらず29世と仲がよく、29世の数少ない理解者だった。

ある頃から、29世と島達は仲の良い仲間達と暴走族を結成する。

チームの名は『横須賀舞羅亞句大河嗚呼澄』。

走り以外は何もやらない族で、決して一般人に迷惑は掛けなかった。
喧嘩もこちらからは出来る限りしない、ただ仲の良い仲間たちだった。

27世は29世が暴走族を始めた事自体は良く思わないものの、バイクに乗る事そのものは咎めたりしなかった。
27世は自らオートバイに乗ると29世を鍛えることにした。
元職業軍人の27世は老いたとはいえ、オートバイの腕前はかなりのものである。
27世はたびたび29世に言った。
「お前がバイクで怪我をしようが、死のうがお前の勝手だexclamation ×2 だがお前の走りで他人に迷惑をかけるんじゃない!それがバイクに乗る上で最低限の責任だ。」

27世は運転のテクニックはもちろん、歩行者や他車に対して、いかに安全な運転を行うかという点について特に厳しく教えていた。

27世の特訓に耐えた29世は、その腕前をぐんぐんと上達していった。
29世の腕前は仲間内からも尊敬され、27世の元に島はもちろん、多数の仲間が教えを請いに集まってきた。

一方28世は29世が暴走族であることに対し、表だって言う事は無かったものの、明らかに家庭というものに対し無関心になっていた。




こうして古代進29世は沖田艦長に過去の思い出を語り続けた。
沖田はずっとうなずきながら聞いてくれていた…。

沖田の部屋を出た後古代は、窓から宇宙を眺めながら気が付いた事をつぶやいた。
「じいちゃんがバイクに乗ることを止めなかったのは…ヤマトに乗せるためだったんだ…。」



次の日、古代達戦闘艦橋勤務のメンバーは、第一戦闘艦橋に集まりミーティング及び操船を行っていた。

本来プロトタイプグレートヤマトは、発進着陸時以外は上部にある第一操船艦橋にて指揮をとる。
しかし有事に備え時々はこの第一戦闘艦橋に集まり、計器や操舵装置のチェックも兼ねて、こちらで指揮をとることもあるのだ。

予定の項目を終えると、指揮系統を第一操船艦橋に返し、全員が退席した。
しかし古代は先程まで大田の座っていた航海班班長席をじっと見つめていた。
「島…今お前はどこに行ってしまったんだ…島…。」
それは今どこへ旅立ったのかわからない友への叫びだった。

沖田はこの日、佐渡の医務室に来ていた。
時々はこうして佐渡と酒を酌み交わしているのだ。

「そりゃあね、いろいろ苦労したと思うよ。彼は。」
そう言うと佐渡は沖田に酒を注いだ。

沖田「佐渡先生は最初彼とあったのはいつ頃ですか?」
佐渡「最初は彼が小学校に入ったころでしたのう、先々代…彼の爺さんに連れられて、うちのラーメン屋、当時はうちの親父がやってた頃だった時、何度か来てました。
何せ彼の親父さん…先代はあまり子育てに関心ない人だったし、彼のおふくろさんもあまり熱心とは言えんかったしのう。
そういえば時々やってたヤマト乗組員子孫の集まり、あれにも先代はとうとう顔は出さんかった気がするが。」

沖田は思い出すように言った。
「そういえば、来なかったな…、先々代は確かにいたが。」

二人は古代家に起きたその後についても、よく知っていた。
何故ならマスコミの報道で大きく報道されており、日本人の多くが知っている事件に関わっていたからである。
29世が高校三年の頃、大金池下原は総理大臣に就任。

29世は高校卒業後、宇宙航海を専門とする大学に進学する。
28世は先祖に対するコンプレックスから、29世の志望を受け入れる事にはあまり積極的ではなかったが、自分の仕事が宇宙に関係していることを考慮し承諾した。


この頃になると、政治団体の闘争や学生運動は大分おとなしくなってきていたものの、まだまだ社会不安も大きく反社会勢力の力も大きかった。

その一方では宗教なのか科学研究なのか、区別のつかない団体が街頭でビラ配りや演説を行い

『人類死滅の大予言、世紀末地球は核の炎につつまれる。』
『恐怖の大総統が降臨し3099年に地球は壊滅する。』
『地球の陸地全部沈没』

等々主張、それをネタにした漫画・小説も多数発表されており、日本全体に終末思想が色濃く見えていた。

29世が大学二年のころ、大金池下原の周りが騒がしくなってきていた。
以前からその金権体質に黒い噂があったが、周辺の人物も含め何者かの監視が行われるようになったのだ。

もちろん27世は28世の背後に潜む、黒い影に気がついていた。
29世の周りにも怪しげな姿が見える。

大金池下原は元々は志のある政治家だったのだろう、貧しい家庭に生まれ、義務教育しか受けずに幼い頃から苦労してきた彼の働きは数多くの日本人の支持を受けてきた。
しかし政治家として成功するに連れ、初心を忘れた彼は堕落した。
それは数多くの人々が自分達の利益追求のために彼を利用した結果でもある。

ある日29世は島に尋ねた。
「なあ島、俺たちが小さい頃って将来の夢を尋ねると政治家って答える子供がたくさんいたなあ。」

「うん、いたなあ。でも最近はそんな子供全然いなくなったもんなあ…。」
島も寂しそうに答えた。

29世が大学三年になる頃、島の様子がおかしくなったように見えた。
彼の父親の事業がおかしくなっていたのはわかったが、29世は28世に尋ねても何も答えなかった。

そして29世が四年の時、大金池下原の周辺に検察の手が伸びた、彼はα星との取引に際し不正なリベートを受け取っていたのだ。

連日マイクを向けられた大金池下原は
「まーぁーっ、そっーの〜。」
と独特の節回しできまりが悪そうな言い訳を繰り返し、人目を避けるように逃げ続けた。

当然、この取り引きに関与していた28世の元にも捜査が入り、周辺は大騒ぎとなった。

証人喚問が始まり、壇上に上がった大金池下原は一言、
「あ〜。」と言って一息つくと。
「う〜。」と続けた後、こう言った。

「記憶にございません…。」

その醜い姿にもはや日本人のほとんどが絶望していた。
しかし本当の絶望はその後である。

大金池下原の秘書が自殺したのだ…。

その遺書には秘書が自分一人の犯行であることを書いていたが、明らかに不自然さだらけの状況であることはわかりきっていた。

この時代数多くの組織において、このような事態が多発していた。
中には企業経営者自らが自分達の立場を守るため社員の家族に金銭的な保証をし、「主君を守った英雄」等の賞賛をして自殺を要求するなどの事件が珍しくもなかったのである。

それが多くの人々が疑心暗鬼となり、怒りのはけ口を爆発させていった。

国会議事堂はもちろん、関連のある建物全てにマスコミ、野次馬、政治団体までもが押し寄せる。
野党の政治家はもちろん、「宙核派」「革麻呂派」「ガ平連」など旗を掲げたデモ隊までもが押し寄せた。
連日機動隊も出動し、激しい攻防が繰り広げられた。

連日声を挙げ大騒ぎを続け、投石を始める。
暴徒と化し近所迷惑など考えず、周辺住人を脅迫した。
さらに身体不自由者や知的障がい者等逆らいにくい立場の人々に協力を強要し、人数を集めていた。

これに乗じた商売を始める者もいた、関西弁のおばちゃんが籠を担いで石を売り始めたのだ。
「安いで安いで、皆買うてや。」

すぐにおばちゃんはパトカーに連れて行かれたが、その商魂たくましさに警官たちも苦笑していた。


国会前の騒ぎが落ち着くと、それらは古代の自宅にもあらわれた。
投石も始まり当然警官が出動したが、野党議員が国家権力の不当な逮捕だと騒ぎ始め、無許可で私有地に侵入し演説を始める始末だった。
「こんなことをして、皆さん近所迷惑だと思いませんか…」

一体誰が迷惑を掛けているのかと思うと、立てこもっている29世自身が馬鹿馬鹿しくて笑いだしていた。

全てを予想していた29世は、自宅の各部に反応式雨戸はもちろん、衝撃吸収の備えをしており防御は完璧だった。

マスコミの不当な侵入を予想しており、監視カメラも配置しておいたのだ。

カメラと防御装置をコンピューターにて連動させる事により、自宅から一歩も出る事無く、ほとんどゴロゴロしていたのである。
マスコミは古代の自宅近くを毎日中継し、それを見た不審人物があたりにゴミをまきちらし、騒音を上げた。
古代はそれら証拠になるものも全てチェックして警察に送信した。
当然逮捕されたが、なぜ逮捕されるのか理解できていないものも多く、あきらかに常習犯である者もいた。


この時既に28世は警察に出頭しており、27世は畑仕事をするための地上の家にいたので当分帰って来ないよう話していた。
母は実家に疎開させた。
ほぼ籠城の状態を続けながら時には気になるのでテレビのニュースを見る。

すると自宅周辺の中継が映った後、自分の友人という人物が出てきて自分と親父の話をし始めた。
「なんだこれ?」

顔はわからないようにしているが、体型と大体の雰囲気はわかる、が全然知ってる者では無い。

島から電話があった。

「見たか?」
「ああ、でも誰なんだ全然わからねえ。」
「俺も全然わからねえ、でも俺たちの全く知らないやつだろうなあ。なりすましだよ、言ってる事が全然違うもんなあ。」

古代は続けた。
「そっちはどうなんだ、こっちは連日大騒ぎになってるけど。」
「ああ、こっちは大丈夫だ。自宅も会社のほうもお前の作ってくれた、レーダー探知機と防御システムが効いてる。おかげで荷物も運びだせたよ。
事業は別の場所でなんとか継続していく方向だ。お前がどうなんだ。」
「こっちはこんなこともあろうかと食料は三ヶ月分用意した、当分外に出ないよ。」

とりあえず何の面識も無い人物が成りすましをしていることは間違いないだろう、テレビ局もいいかげんなものだ。

父親の事はありがちの、政治家に近い商売人にありがちの内容だが、自分の事になると全くのでたらめであった。
テレビ局によってそれぞれ人物は違うが、どれも的外れだった。
高校の同級生とかいうのが一人いたが、高校で面識がある人物なら自分が暴走族をやってたことを知らないわけがない、ましてやテレビ局が一番喜びそうなネタである。
あと、小さい頃からよく知る人という人物が、あいつはアニメ好きとか話していた。
それは間違いないのだが、出て来るタイトルがまるで見たことも無いものだった。
少なくとも会った事のある人物なら、自分の同名の先祖が活躍する「宇宙戦艦ヤマト」を知らないはずがないだろう。
いつの時代もアニメ好きといえば、いくらでも叩けると思っている人物が世の中にはいる。

一方、大金池下原は体調不良を理由に入院した。

もう政治家としては再起不能である事は間違いなかった。

騒ぎは二、三週間で収まったが、それから29世は弁護士の元に通いつめることになった。
違法行為を行った者は全て起訴したが、多くの者が無罪を主張したため難航した。

28世は拘置所にいたままだった。

大学に戻れたのはしばらく後だが、校内をみて愕然とした。
ベニヤ板四枚を組み合わせた立看板に自分の名前が書かれ、糾弾しろなどのスローガンが書かれていたのだ。
お構い無しに校内に入って行ったが、たいていの学生は直接近寄って行こうとはしなかった。
看板は無許可でだいたい2・3日後に撤去されるのだが、また少しするとまた同じようなものができるといった具合である。
ある日29世は親しい学生に声を掛けられた、三ヶ所ある寮の内のC寮の近くには近寄るなと言われたのだ。

29世は言われたものの気になって遠くの場所から見てみると、そこには廃墟のように何年間も荒れ果てたような風景が見えた。

29世が子供の頃にあちこちで見ていた、第二次統一大戦の戦後がそのまま残っているような雰囲気だった。
有刺鉄線の塀の中、戦後のバラックのような崩れかけた建物のある土地の塀に、大学構内よりもさらにでかいベニヤ板12枚分もの看板が建てられていたのだ。

「よくこんなもん作ったもんだ…。」
と29世は感心してしまった。

看板を見ようとは思わないが、自分の事が書いてあるのは間違いないだろう。

そしてほとんど人気がなかった。
夜になると薄暗く電球が光るのだが、人の動きは無い。
隠れるように生きているようだった。

29世は翌日、昨日教えてくれた学生に聞いてみた。

「ありゃなんだい?」

「あれはな、伝統的に過激派の政治団体が使ってる寮だよ、暴力行為で何度も停学くらってる連中だけが住んでて、8年以上住んでる奴らばかりなんだ。」

「よく大学もそんな連中退学にしないなあ。」

「それが地元の応援もあるとかでそうそうできないらしい。」

確かにあの寮の周辺の雰囲気はおかしかった。
あちこちにゴミがたまり、タバコの吸い殻も落ちていた。

彼の名はラメールと言った。

ある日29世は、大学の理事に呼び出された。
家の近くにて迷惑行為を働いた者に対し起訴を止めろとの話だった。

当然断るが、その理事は納得いかない様子だった。

「就職先に苦労するぞ。」と言ってきたが、
「あなたの関係するようなところに就職したくありません。三流の就職先を見分ける手間をはぶいて下さりありがとうございます。」
と言ったところ、
「俺に逆らって済むと思うのか。」と怒りだした。

「済むと思ってますよ。」
喧嘩の場数をこなしてきた29世はなんともない小物でしかなかったのだろう。

理事は「全く嘆かわしい事だな、就職する事に重要なのは職場に対する忠誠心だぞ。」と続けた。
29世はこう答えた。「それは実力の否定でしょうね。」
「学生の実力を見る面接官などどこにもおらんよ。」
この理事は大学のアメフト部の顧問をしており、常に多くの卒業生を脅迫していた人物だった。

卒業生を自分の知っている関係企業に就職させ、すこしでも自分に逆らう部員には卒業後も電話を掛け、横暴を続けていたのだ。
29世はこう答え睨みつけた。
「ならば必ず自分は実力でやってみせます。」と答えるとその理事は苛立ち始めた。

おそらく関係する学生にも命令していたのだろう、その理事は学生達にあたり散らすようになり、さすがにその行為が問題視されるようになった。
この理事の言動は後々問題視はされたが本人は理解できておらず、結果この騒ぎは長期化することになった。

当然、この件に関係する人物で29世にケチをつけてきたものはいたが、29世が何も不正を働いていない以上どうすることもできなかった。


一方、28世は調査の関係もあり、現場復帰は難しいと考え会社を解散する事にした。

29世の元にMr.Kが尋ねて来た。

Mr.Kもつらい目にあっているのだろう。
自分自身も取り調べを受け、いずれはα星に帰る事になりそうだと話していた。

「君もいろいろ、大変だったな。正直わしもこんなことになるとは思わなかったよ。
結論から言うと、私の星が大金池下原を不要と判断したんだろう。
でも、途中で気が着くべきだったんだ。
わしらもやりすぎてるって、なぜ、気がつかなかったんだろう。
最初はみんな楽しかったんだよ、でも途中からわしら何のために働いていたんだろうなあ…忠誠心忠誠心て言われて、自分の家族も社員も守らず何を守るべきだったのかなって…」

Mr.Kは28世を本当に親友と思っているようだった。
こうしてMr.Kは29世の前から姿を消した。

そして29世は島に連絡が取れない事に気が付いた。

島の親が経営した会社を尋ねると、すでにそこには閉鎖された跡であった。
拘置所に28世を面会に行くと、28世曰く島は親の会社が解散すると共に他星に働きに向かうと言っていたようだが、お前には黙っていてくれと言われたのだと、は29世に伝えた。

落ち着いたら連絡するとは言っていたものの、具体的にどこに行ったのかはわからないらしい。

そして長く離れていた、母から離婚の話がついた事も伝えられた。
27世は憔悴しきってしまったようで、自宅に戻ってはきたものの、弱々しく病気がちになっていた。


大学に向かっても気力は出なかった。
だがそんな29世にも声を掛けてくれる者がいた。

ラメールと数人の仲間達であった、そして佐渡三兄弟も力になってくれた。

29世は奨学金の手続きをすると、大学を続けることにした。

復帰すると、早速ラメールに会いに行った。

「そういやあのC寮の連中、あのアメフト顧問と関係あったのかな?」
「それが少しはあるが、あまり関係ない。」
「じゃあ、なんで言ってきたんだろう。」
「とりあえず、上下関係を成立させないと気が済まないらしい。」
「何のために?」
「それが企業の信頼を得るための教育と思ってるみたい、教育は忠誠心だって。」
「人の事批判できんのかよ、やってることは一緒じゃないか。
おかしなものだなあ、みんなうちの親父の事をもちだして政治家と企業の関係を批判するけど、そのくせ人には忠誠心とか持ち出して言ってる事は一緒じゃないいか。」
ラメールはこう答えた。
「自分に有利な上下関係は要求するからね、あれはおかしいよ。上司が自殺しろといったら自殺しろって、それが教育だって。
就職先が満足すれば、学生の事はどうでもいいらしい。企業がそうした人材を求めているのは事実なんだろうなあ…。能力は関係ない、自分の顔で就職させてるって思っているからひどすぎるよ。」

29世は言った。
「実力は求めてないってことか!奴隷にされてたまるかよ。」

ラメール「でも高卒の就職先もひどいからね、大企業の悪口言う奴は多いけど中小企業や公務員もひどい所はひどいしね。」

「そりゃそうだが。」
29世は困惑の状態で思わず言った。

ラメール「何十年後にどうなるか気になるね、もしかして俺らと同じ年の奴らがろくでもないことしでかすかもしれないし。」
29世「そうはなりたくないなあ。でも本音と建前を使う奴、いるんだよなあ。」


29世はふと、C寮の事が疑問になった。
「あの看板立ててた連中、卒業してからどこに就職してんだろう?」
ラメール「それはさすがにわからない、何しろ8年以上経っても寮にこもっている連中だから、卒業すらしてないし。」

29世「大学卒業しても、通用してるのはほんの一部って本当だな…。」


父から離婚の手続きが完了したと報告が来た。

もちろん父に大きな責任があるのはわかっていたが、あまりに縦社会の上下にこだわる母の性格を考えると、父だけに責任があるとも思えなかった。

表では男女平等を発言したかと思うと、女性同士の序列をつけたがる母だった。

そして、祖父。
古代進27世は29世が大学を卒業した頃、最後を遂げた。
時に西暦3099年…

心労もあったのだろう、この時代の人としては短命のほうだった。
葬儀に参列した中には、沖田達ヤマト乗組員の子孫も多くいた。

祖父の死後、横須賀の屋敷は売却することになった。

29世は大学を卒業後、研究室にいたが教授達との対立を経て辞めることになる。
それまで住んでいた横須賀を離れ、東京の大山越館へ移った。

そして今は宇宙にいる。

古代進29世はあの当時から今までの自分を振り返り…暗黒の宇宙を見つめていた。

古代はその日の訓練を終えると窓から宇宙空間を見て、島の事を考えていた。

島は今、どうしているのだろう。
あれ以来便りも無く、誰も知らないままだった。

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