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自作小説をリレーで書いてみるコミュのF 第18話

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『……』

みんな唖然と建物を見上げている。

「ここ…?」
恐る恐るという様子で、楓がレイに顔を向ける。

「…の、ようです、」
レイも、状況がつかめないというように、茫然と答えるだけだ。
彼女の手には、1枚のメモが握られている。

コメント(6)

ノーブルは海上都市と呼ばれながらも、その実、都市群である。
不時着した船団のいくつかを残し、都市へと改造した。その中心となる艦――都市――がここ『ハウプトシュタット』である。首都に合わせて『首艦』とよばれる。

イメージとしては、複数の艦で諸島をなし、その島1つ1つが都市として機能してる。と言えばいいのだろうか。
しかし、外観からは当然ながら自然物は一切見えない。金属の塊が海に浮いているとしか言えない光景には、やはり海上都市の呼称がしっくりくるものだ。
ハウプトシュタットの中心街(都市の中の街とややこしい事この上ないが)にあたるエリアの更に中心近くにある宿泊施設。
その前で、晃一たちは茫然としていた。

もともと、大地を求めて長い旅をしてきたというだけあって、ガノーダの宇宙船内部は、植物が豊かな緑化のモデル都市のようである。そして、そうした自然を尊重してのことか、内部構造はかなり広大だ。地球にやってきた難民(現・移民)が1000人程度だったことを考慮すると大きすぎるといわれても仕方がない。

そして、このエリアの天井もかなり高い。
その高い天井に届こうかという高さの高層建築(航宙船そのものが建造物であるのだから、内部に建築物を作る必要性は皆無なのだが、ガノーダ人の大地に対するこだわりがここにも見える)。
その高層建築こそが、今回の宿泊場所、らしい。

らしい。
というのは、今回の宿泊場所に関して誰も事前に知らされていなかった。
エリーの母親とレイの父親共通の、ノーブル時代の友人が経営しているという宿泊施設を紹介してもらったのだが……。

エリーの母親もレイの父親も、施設の名を教えてくれなかった。
2人とも笑いながら、「ちょっとしたサプライズ」としか。

「ここ……ノーブルの内外で人気の三ツ星ホテルだよ……」

呟く楓が開くガイドブックには、今彼らが見上げているものと同じ建物の写真が大きく掲載されている。


正直みんな――エリーとレイも含めて――民宿程度のものをイメージしていた。さすがに日本でいう民宿のような和風建築を想像していたわけではないが……。

「本当にいいのかよ…こんなところ……」

さすがの浩平も尻込みしている様子だ。思わぬセレブライフにはしゃぐ余裕もない。

それもそのはずだ。宿泊費用のほとんどをエリーとレイの両親が出してくれている。おかげで、晃一たちが出す分は格安を通り越して、タダ同然となっている。
ガイドブックを開いていた楓などは、手が震えてしまっている。
ガイドブックの宿泊費は最低額が掲載されていて上限はぼかされているのが常である。その最低額すらも大きく下回る予算で今ここに立っているのだ。

「ト、とにかく、中に入りましょ」

若干声を上ずらせたエリーがロビーへと向かう。
それに、恐る恐る付いていく面々。
入口に近づくと、サッと絶妙なタイミングでドアボーイがドアを開けて出迎えてくれる。

入るとすぐにホテルマンが出迎えてくれる。

「いらっしゃいませ。当ホテルへようこそ。お荷物をお持ちいたしましょう」

荷物を渡すことを強要しない、柔らかな物腰に、こういった場所に慣れていない晃一たちも自然に荷物を手渡していた。
この不快感の無さこそが、一流ホテルというところだろう。

「ご予約は?」

子供相手でもこの丁寧さ、緊張を覚えない方が無理と云えるかもしれない。

「ハ、はい。ヴァンキッシュで…」

代表して応えたレイも声が上ずっている。

「ではこちらでご確認をお願いいたします」

ロビーカウンターへと案内される一同。

チェックインの手続きは滞りなく行われた。
一流ホテルである事を差し引いても、高校生の身には余る接客が続いた。
そうして、通された部屋は……。
「な、何だこれ……」

部屋に入るなり、晃一も浩平も硬直した。
ホテルマンが何やらキーなどの使い方を説明しているが、ほとんど頭に入らない。

2人が通されたのはツインの部屋。のはずだが……。

ベッドが2つ。確かにツインだ。ベッドサイズがどちらもセミダブル並みでなければ。
しかもこのベッド、“部屋の奥にあったドアのさらに先”にあるのだ。
入ってすぐの部屋は、言うなればリビングエリアとでも言うのだろうか。

……部屋のグレードを確認した方が良いのか……。
……いや、でもそれでSとかRとか言われたら俺達眠れないぞ……。
……そうだけど……Rは無いだろ流石に……。

視線で会話をつづける2人に、ホテルマンは丁寧に頭を下げ、退室した。

「……」
茫然と部屋を眺める2人。

「……」
ぎこちなく首を動かしお互いに視線を交わす。

「k」
ドンドンドン

晃一が何かを言いかけた瞬間、ドアが激しく叩かれた。ノックというよりは叩く。いや、殴ると言えそうな勢い。

『2人とも無事っ!?』
ドア越しにエリーの叫びが聞こえる。

ドアを開けると女性陣がなだれ込んできた。
そして部屋の様子を見て一瞬固まるが、男たちほど長い硬直は見せなかった。

「こっちもなんだね」

楓が小さくつぶやいた。

「こっちも?」
「という事は……」


「私たちの部屋もかなりの等級の物が用意されていまして……」
「いや、あたし達の部屋の方がやばいかも……」
レイの説明を遮ったのは、奥の寝室を確認したエリーだった。

エリーと一緒に寝室を覗いたシエルが一言。
「こっちの部屋はせいぜい、セミダブルですよ」
口調と表情には、何やら優越感のようなものが感じられる。

「そっちの部屋は?」
晃一が楓に尋ねる。
「……クイーンサイズベッドが2つ」

『!!』

確かに女部屋は4人で宿泊。セミダブル2つではやや狭い。とは思うが…いきなりクイーンサイズとは…。

「どうする?部屋、変えてもらう?」
「ですが、せっかく用意してくださったものですし」
「先方の顔が立たないかも……」

……………………………
…………………
……………
……


長い議論の末。
「ノーブルに来て泳がない手は無いでしょうっ!」

シエルの現実逃避に全員が賛同したのだった。

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